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第三章:聖女は一般人になる
29.聖女の番付
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半年もするとなんとなく序列ができてきて、そろそろ番付を作ってみようと言う話になった。もちろん強制ではないので希望者のみである。
私は女子初代横綱を目指すべく参加者を次々に倒して行ったが、最後の最後でスタミナが切れて、ヘロヘロなところを学年一番の力持ち女子にやられてしまった。
「アキナが負けたぞ! クリスすげえええ!」
「さすがクリスだ、でかいだけじゃなく強い!」
「まるで猛獣みたいだ、クリスったら強すぎるよ」
「ちょっと男子? 女の子に向かって失礼すぎない?」
「猛獣とか言ってさ、クリスがかわいそうじゃないの!」
「男子なんて力任せで押し合ってるだけのくせに!」
全ての取組が終わった後、私とクリスが水を飲みに行き休憩している間に男子女子での言い合いに発展していた。しかもきっかけはクリスが勝ったことなんだから肩身が狭いに決まっている。
かわいそうに、せっかくの勝者なのにクリスはうつむいてしまった。こんなはずかしめを許してはおけない、ここは私が何とかしないと!
「ちょっとどっちもやめなさいよ。いい勝負で楽しかったんだから水差さないでほしいわね。クリスを泣かしたらただじゃおかないからね!」
「うわっ、アキナが怒ってるぞ。いつの間にか倒されちゃうから気をつけろー」
「二番のくせに生意気言って、やれるもんならやってみろ!」
こうして無事に? 矛先は私へと移り、よくわからないまま男子と勝負することになってしまった。はっきり言ってもう完全に体力がなくて相撲を取るどころじゃない。
きっとそこを狙って私を負かしてやりたいと思ってる子がいるのだ。そう思った私は睨みつけるようにケイラムへと視線を移した。
すると――
「おまえら、女子相手にみっともないことするなよな。見てみろよ、アキナなんて完全にへばってるじゃないか。あんなの倒したって自分が恥ずかしいだけだぞ?」
この意外過ぎる言葉に、私は虚をつかれ言葉が出てこない。しかし睨みつけてしまったからにはこの気持ちをどこかへ着地させる必要があるのも確かだった。
「何言ってんのよ。確かに疲れてるけどあと一回くらいダイジョブよ。なんならケイラム? アンタが挑戦してきてもいいんだからね」
「僕はアキナが万全な時に再選を申し込むつもりだ。そうだな、次の相撲の時間ってことでどうだ?」
「へえ、随分と立派なこと言うじゃないの。わかったわ、受けて立とうじゃない。次ってことは再来週ね」
そんなちょっとしたトラブルもあったが、無事に初代番付が決まった。とはいっても一番下の学年だけだから人数は少ない。相撲に参加したのは男子が八人、女子は五人だけだ。
張り出された番付表は左右に男女、縦に番付が書かれており東西はない。それでもそれっぽく見えるだけで気分がアガる。女子はまあ順当で横綱がクリス、大関に私、全敗のクラリアは一番下の小結だった。
では男子はと言うと、あれだけ大口をたたいていたケイラムは私よりも下の関脇じゃないか。これでは勝負は決まったようなもんだと余裕を見せていたのだが、どうやらなにか理由があるらしい?
「いいかアキナ、ケイラムさまは絶対に負けないからな! 今日だって本当は勝てたのに、お前を相手にした時のことを考えてたら負けちゃっただけさ」
「ペドロの言うとおりだぞ。本気でやったらケイラムさまが負けるはずあるもんか」
取り巻きのペドロとマルトが悔しそうに言い放ちケイラムの後を追った。
「なにあの子たち、バカなの? だったら本気でやって横綱になってからいいなって感じ。アキナちゃん気にしちゃダメだからね」
「うん、ダイジョブ、ありがとねクラリア。多分次やるときは奇襲奇策が通用しないってことが言いたいんだろうなぁ。事前に教えちゃっていいのか、それともわざと言って混乱させようとしてるのかわからないけど、ウチは負けないよ!」
なんだか血がたぎってきて今すぐにでも立ち合いたい気分になる。しかし体は正直で、おやつの時間になるとおしゃべりもそこそこに、頭をぐらぐらさせながらウトウトしていた。
そして帰りになると、いつものように迎えに来てくれたリヤンに、いつものようにおんぶされるのだ。まったくこの体には体力が足りてない。なにかとすぐ疲れてしまって眠くなるから不便で仕方ない。
こんな風に、夢心地で揺られている私の耳にはリヤンの言っていることがまともに聞こえてなかったのだが、一つ引っかかる言葉が聞こえた私は思わず飛び起きた。
「ちょっとリヤン? 今なんて言ったの?」
「あれ? 寝てるのかと思ってたんですけど聞こえてました? 街中の学校で相撲を授業に取り入れることが決まったって言ったんですよ。それで代表者を集めて中央広場で大会を開こうって話です」
「それホントなの!? 学校がいくつあるのか知らないけど、全部の生徒を合わせたら結構な数になるんじゃない? ねえねえ年齢別? それとも学校で代表は一人だけ? ねえ、教えなさいよ!」
「苦しい…… 首がしまってます…… はぁはぁ、そこまでは知りません。お迎えに上がる前統括から軽く聞いただけですからね。でもすぐには無理でしょうから来年とかになるんじゃないかなぁ」
あまりに興奮して背後から揺さぶっていたつもりが首元を締め上げていた。だってこれが落ち着いていられますかって話だ。
同い年のちびっこだけならいざ知らず、上級生と一緒ではさすがに全員全敗してしまうだろう。
私は何とかしようと眠い目をこすりながら、このままルカ統括のところへ運んでもらうようリヤンへと頼んだ。
私は女子初代横綱を目指すべく参加者を次々に倒して行ったが、最後の最後でスタミナが切れて、ヘロヘロなところを学年一番の力持ち女子にやられてしまった。
「アキナが負けたぞ! クリスすげえええ!」
「さすがクリスだ、でかいだけじゃなく強い!」
「まるで猛獣みたいだ、クリスったら強すぎるよ」
「ちょっと男子? 女の子に向かって失礼すぎない?」
「猛獣とか言ってさ、クリスがかわいそうじゃないの!」
「男子なんて力任せで押し合ってるだけのくせに!」
全ての取組が終わった後、私とクリスが水を飲みに行き休憩している間に男子女子での言い合いに発展していた。しかもきっかけはクリスが勝ったことなんだから肩身が狭いに決まっている。
かわいそうに、せっかくの勝者なのにクリスはうつむいてしまった。こんなはずかしめを許してはおけない、ここは私が何とかしないと!
「ちょっとどっちもやめなさいよ。いい勝負で楽しかったんだから水差さないでほしいわね。クリスを泣かしたらただじゃおかないからね!」
「うわっ、アキナが怒ってるぞ。いつの間にか倒されちゃうから気をつけろー」
「二番のくせに生意気言って、やれるもんならやってみろ!」
こうして無事に? 矛先は私へと移り、よくわからないまま男子と勝負することになってしまった。はっきり言ってもう完全に体力がなくて相撲を取るどころじゃない。
きっとそこを狙って私を負かしてやりたいと思ってる子がいるのだ。そう思った私は睨みつけるようにケイラムへと視線を移した。
すると――
「おまえら、女子相手にみっともないことするなよな。見てみろよ、アキナなんて完全にへばってるじゃないか。あんなの倒したって自分が恥ずかしいだけだぞ?」
この意外過ぎる言葉に、私は虚をつかれ言葉が出てこない。しかし睨みつけてしまったからにはこの気持ちをどこかへ着地させる必要があるのも確かだった。
「何言ってんのよ。確かに疲れてるけどあと一回くらいダイジョブよ。なんならケイラム? アンタが挑戦してきてもいいんだからね」
「僕はアキナが万全な時に再選を申し込むつもりだ。そうだな、次の相撲の時間ってことでどうだ?」
「へえ、随分と立派なこと言うじゃないの。わかったわ、受けて立とうじゃない。次ってことは再来週ね」
そんなちょっとしたトラブルもあったが、無事に初代番付が決まった。とはいっても一番下の学年だけだから人数は少ない。相撲に参加したのは男子が八人、女子は五人だけだ。
張り出された番付表は左右に男女、縦に番付が書かれており東西はない。それでもそれっぽく見えるだけで気分がアガる。女子はまあ順当で横綱がクリス、大関に私、全敗のクラリアは一番下の小結だった。
では男子はと言うと、あれだけ大口をたたいていたケイラムは私よりも下の関脇じゃないか。これでは勝負は決まったようなもんだと余裕を見せていたのだが、どうやらなにか理由があるらしい?
「いいかアキナ、ケイラムさまは絶対に負けないからな! 今日だって本当は勝てたのに、お前を相手にした時のことを考えてたら負けちゃっただけさ」
「ペドロの言うとおりだぞ。本気でやったらケイラムさまが負けるはずあるもんか」
取り巻きのペドロとマルトが悔しそうに言い放ちケイラムの後を追った。
「なにあの子たち、バカなの? だったら本気でやって横綱になってからいいなって感じ。アキナちゃん気にしちゃダメだからね」
「うん、ダイジョブ、ありがとねクラリア。多分次やるときは奇襲奇策が通用しないってことが言いたいんだろうなぁ。事前に教えちゃっていいのか、それともわざと言って混乱させようとしてるのかわからないけど、ウチは負けないよ!」
なんだか血がたぎってきて今すぐにでも立ち合いたい気分になる。しかし体は正直で、おやつの時間になるとおしゃべりもそこそこに、頭をぐらぐらさせながらウトウトしていた。
そして帰りになると、いつものように迎えに来てくれたリヤンに、いつものようにおんぶされるのだ。まったくこの体には体力が足りてない。なにかとすぐ疲れてしまって眠くなるから不便で仕方ない。
こんな風に、夢心地で揺られている私の耳にはリヤンの言っていることがまともに聞こえてなかったのだが、一つ引っかかる言葉が聞こえた私は思わず飛び起きた。
「ちょっとリヤン? 今なんて言ったの?」
「あれ? 寝てるのかと思ってたんですけど聞こえてました? 街中の学校で相撲を授業に取り入れることが決まったって言ったんですよ。それで代表者を集めて中央広場で大会を開こうって話です」
「それホントなの!? 学校がいくつあるのか知らないけど、全部の生徒を合わせたら結構な数になるんじゃない? ねえねえ年齢別? それとも学校で代表は一人だけ? ねえ、教えなさいよ!」
「苦しい…… 首がしまってます…… はぁはぁ、そこまでは知りません。お迎えに上がる前統括から軽く聞いただけですからね。でもすぐには無理でしょうから来年とかになるんじゃないかなぁ」
あまりに興奮して背後から揺さぶっていたつもりが首元を締め上げていた。だってこれが落ち着いていられますかって話だ。
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