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第四章:聖女はどこへ向かうのか
37.聖女の立ち合い
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西と東になっているのかは怪しいが、とにかく両サイドに分かれて土俵をはさみ相対している私とケイラム。彼の表情は真剣そのものだ。
正直言って女子人気が高いのもうなずけるくらいには凛々しい。別に私の好みじゃないだけで、成長したらきっとイケメンになるだろうなと思わせる顔立ちである。
もうすぐその表情も崩れ、下手をしたら泣いてしまうかと思うと少々悪い気がしなくもない。しかし真剣勝負を挑んできたのは向こうなのだから受け入れてもらいたいものだ。
私の今の心境は、ありていに言えば慢心、油断、傲慢、自信過剰、うぬぼれなどいくらでも思いつくくらいにはよくない状態だろう。こんなのパパだったら叱り飛ばしてくるに違いない。
そんな風に自己分析ができてるのもおかしな話だが、これもすべて神力のせいだと思われる。わかっていても抑えきれないこの気持ちをどう昇華すればいいのかといつも悩んでいた。
とにかく三月の日を過ぎて数日は、力はみなぎって自信には満ちあふれるし、宝くじは当たるし彼女もできてしまう、なんて怪しい広告並みに舞い上がってしまうのだ。
だが同時に、冷静に自身を見つめるもう一人の自分もいる。だからきっと大丈夫なはずだ。決して舞い上がって調子に乗っているだけの私ではない。
「では二人とも準備はいい? じゃあ挨拶してから始めましょう。相撲を始めてからみんなが礼儀正しくなって先生はとってもうれしいの」
「はい! 私のいた国には『礼に始まり礼に終わる』と言う言葉がありました。勝ち負けだけにこだわるんじゃなくて、精神的にも強くなりましょうってことですね」
「ふん、アキナにしてはいいことを言うじゃないか。僕もその意見には賛成だ。心身ともに強くないと王の器ではないなんて言われてしまうからな」
「志だけは立派だけどこれは真剣勝負。負けてなんてあげないんだからね。どっちが勝っても恨みっこなしだよ!」
「もちろんだ! まあ勝つのは僕だけどな!」
たった今、自分で言った言葉は何だったのかと思わなくもないが、いざ勝負になれば勝ちにこだわるのは自然なこと。
こうして互いを牽制しあった私とケイラムは、先生がうなずいたのを合図に土俵の中へと一歩進みそんきょをする。
「それでは泣いても笑っても一発勝負! 恨みっこなしね。では見合って見合ってぇ、はっきょーい ―― のこったあ!」
これまでの取組では変化を何度も使ってきた。もちろんそれは体の大きさと力のなさを補うための奇策であって、どちらかと言えばほめられる手ではない。
だけど今回は男女の学年横綱同士ということもあるし、私にも力士の娘としてのプライドがある。それに神力が満ちあふれてるおかげで、心身の心部分だけは間違いなく最強だ。
その過剰なまでに膨れ上がった最強メンタルが、私に真正面からのガチンコ勝負を促していた。
問題は力が上がってるわけじゃないことと、体格差は結局覆せないことだけどそれはそれ、勝負はやってみないとわからない。
『ッバアァーン』
立ち合いの瞬間、私は小さな体を目いっぱい加速させケイラムの胸元へと飛び込んだ。ケイラムはきっと変化してくると踏んでいたのだろう。立ち合いに出遅れたようになり受け身に入っている。
どうやら観客も予想していなかったらしく、悲鳴と怒号と歓声が入り混じって大騒ぎになっていた。
いつもの私なら身軽に左右へ揺さぶるはずなのに、正面からぶつかったことを心配したのか、それとも予想外の展開に興奮しているのか、まあそんなとこだろう。
とはいってもさすがにこのまま寄り切って行けるはずもなく、ケイラムは力任せに私の上手から背中越しにまわしをつかみに来る。
しかし私はその手がまわしに触れた瞬間、つかませないよう腰を引きながら素早く振って頭を下げた。
言っておくが私はバカじゃない。正々堂々の真剣勝負だから付き合いで組み合うなんてことがあるものか。勝ち目があるからこそ、この体勢を選んだんだと言うことを思い知らせてやる。
よりいっそう気合いが入った私はさらに力をこめ、今まさに次の手を繰り出そうとしていた。
正直言って女子人気が高いのもうなずけるくらいには凛々しい。別に私の好みじゃないだけで、成長したらきっとイケメンになるだろうなと思わせる顔立ちである。
もうすぐその表情も崩れ、下手をしたら泣いてしまうかと思うと少々悪い気がしなくもない。しかし真剣勝負を挑んできたのは向こうなのだから受け入れてもらいたいものだ。
私の今の心境は、ありていに言えば慢心、油断、傲慢、自信過剰、うぬぼれなどいくらでも思いつくくらいにはよくない状態だろう。こんなのパパだったら叱り飛ばしてくるに違いない。
そんな風に自己分析ができてるのもおかしな話だが、これもすべて神力のせいだと思われる。わかっていても抑えきれないこの気持ちをどう昇華すればいいのかといつも悩んでいた。
とにかく三月の日を過ぎて数日は、力はみなぎって自信には満ちあふれるし、宝くじは当たるし彼女もできてしまう、なんて怪しい広告並みに舞い上がってしまうのだ。
だが同時に、冷静に自身を見つめるもう一人の自分もいる。だからきっと大丈夫なはずだ。決して舞い上がって調子に乗っているだけの私ではない。
「では二人とも準備はいい? じゃあ挨拶してから始めましょう。相撲を始めてからみんなが礼儀正しくなって先生はとってもうれしいの」
「はい! 私のいた国には『礼に始まり礼に終わる』と言う言葉がありました。勝ち負けだけにこだわるんじゃなくて、精神的にも強くなりましょうってことですね」
「ふん、アキナにしてはいいことを言うじゃないか。僕もその意見には賛成だ。心身ともに強くないと王の器ではないなんて言われてしまうからな」
「志だけは立派だけどこれは真剣勝負。負けてなんてあげないんだからね。どっちが勝っても恨みっこなしだよ!」
「もちろんだ! まあ勝つのは僕だけどな!」
たった今、自分で言った言葉は何だったのかと思わなくもないが、いざ勝負になれば勝ちにこだわるのは自然なこと。
こうして互いを牽制しあった私とケイラムは、先生がうなずいたのを合図に土俵の中へと一歩進みそんきょをする。
「それでは泣いても笑っても一発勝負! 恨みっこなしね。では見合って見合ってぇ、はっきょーい ―― のこったあ!」
これまでの取組では変化を何度も使ってきた。もちろんそれは体の大きさと力のなさを補うための奇策であって、どちらかと言えばほめられる手ではない。
だけど今回は男女の学年横綱同士ということもあるし、私にも力士の娘としてのプライドがある。それに神力が満ちあふれてるおかげで、心身の心部分だけは間違いなく最強だ。
その過剰なまでに膨れ上がった最強メンタルが、私に真正面からのガチンコ勝負を促していた。
問題は力が上がってるわけじゃないことと、体格差は結局覆せないことだけどそれはそれ、勝負はやってみないとわからない。
『ッバアァーン』
立ち合いの瞬間、私は小さな体を目いっぱい加速させケイラムの胸元へと飛び込んだ。ケイラムはきっと変化してくると踏んでいたのだろう。立ち合いに出遅れたようになり受け身に入っている。
どうやら観客も予想していなかったらしく、悲鳴と怒号と歓声が入り混じって大騒ぎになっていた。
いつもの私なら身軽に左右へ揺さぶるはずなのに、正面からぶつかったことを心配したのか、それとも予想外の展開に興奮しているのか、まあそんなとこだろう。
とはいってもさすがにこのまま寄り切って行けるはずもなく、ケイラムは力任せに私の上手から背中越しにまわしをつかみに来る。
しかし私はその手がまわしに触れた瞬間、つかませないよう腰を引きながら素早く振って頭を下げた。
言っておくが私はバカじゃない。正々堂々の真剣勝負だから付き合いで組み合うなんてことがあるものか。勝ち目があるからこそ、この体勢を選んだんだと言うことを思い知らせてやる。
よりいっそう気合いが入った私はさらに力をこめ、今まさに次の手を繰り出そうとしていた。
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