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第五章:聖女は悪い子をめざします
44.聖女の驚愕(きょうがく)
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この国では『あとは若い二人で――』ではなく、会食前に二人きりにしてあげるのが見合いでの慣例とのことだ。
おかげでおなかが空いていると言うのに今はまだ二人っきりで庭を散歩しているところである。
「それで? なんでこんなことになってるわけ?」
「知らないよ。でも勘違いするなよ? 僕が頼んだわけじゃないからな? 会食だっておじいさまがどうしてもって聞かないから……」
「それはともかくいいお庭ね。これってバラなのかしら、やけに大きくない?」
「なんだ、ダリアを知らないのか? まあ子供だから仕方ないってことかね。それよりも、えっと――――」
たかが花の名前くらいで偉そうに、と言うより自宅だからなのかいつもより生意気に感じる。それにやけに周囲をやたら気にしてて落ち着かない様子だ。
まったく、人を呼びつけておいて料理の用意はこれからだなんてことなら、最初から断っても問題なかったじゃないのと思わなくもない。
それまでは庭を散歩して来いと追い払われるし、いまいちゲストの扱いが雑じゃないだろうか。それが慣習と言われてしまうと何も言い返せないが……
しかもそのホスト役を務めなきゃいけないはずのケイラムが、ゲストを無視して挙動不審ときたもんだ。
なんだか腹が立ってきた私は、きょろきょろとあたりを見回しているケイラムの横っ面でも張り倒してやろうかと少しだけ近寄る。
「ちょっと待った―― うん、誰もいない、大丈夫だな」
「はあ? アンタいったいどういうことなのよ。自分ちでなに警戒してるんだか知らないけどさ? こっちはわざわざ来てやったってのに、まともにもてなしもできないなんてひどくない?」
「おっと、怒らせてしまったかい、バンビーナ? ここだと上から丸見えだから、そこのベンチへ座ろうじゃないか。おっと、そんなに警戒しないで平気だからね?」
そう言ってケイラムはベンチに腰かけると、五頭身の身体をめいっぱいに伸ばしながら足を組んだ。どう見てもルックスと不釣り合いな所作なのに、なんとなく様になってるように見えるのが腹立たしい。
「ちょっと待って!? なんなのそのおかしなしぐさ…… なんだかやけに生意気で別人みたいだけどホントに同一人物!? アンタいったいなにものなのさ」
「なにものって随分ひどい言われようだな。なんてことはない、キミと同じ、どこにでもいる六歳児だってことくらい知っているだろう?」
「キミとか言っちゃって、なんかキモイんですけど? って言うか生意気を通り越してまるで…… えっ、待って? 今同じってとこ強調しなかった? まさかとは思うけどアンタもしかして――」
「フフフ、もしかして? 実はキミと同じ境遇かもしれないよ? いや、境遇と言うのは少し違うか。僕は召喚されたわけじゃないからね」
「ってことは―― アンタも向こうから来たってわけ!? しかもその喋り方だとあんま若くなさそうな…… それと人のことバンビ呼ばわりってなによ!」
「ん? そのままの意味だが? そうか、キミはどこの国から来たんだい? 僕はイタリア人だったんだ。バンビーナは女の子って意味だよ」
「イタリア!? そっか、別に日本からとは限らないもんね。なんか軽い感じがイタリアのイメージとピッタリ。ウチみたいに謙虚で勤勉な日本人を見習いなさいよ」
「アハハハ、これはまいったね。キミが投げ飛ばした相手を見下ろして勝ち誇る謙虚さと、授業中に居眠りする勤勉さを持ってるのは確かだったな。そうか日本人ね、僕も日本は好きさ。子供のころ初めて買ってもらったテレビはソニーだったし、車はトヨタだったんだぜ?」
「ちっ、なんかムカつく言い方…… でもウチもイタリアのブランドものいくつか持ってた気がする。まだJKだったからもらいものだけどね」
「ジェーケー!? それはなに?」
「はあ? こんな簡単な英語もわかんないなんてあきれちゃうわね。ジョシ・コーセーってことじゃないの―― ってこれ日本語だったわ…… だから十七歳のティーンだったってこと」
「オーォ、どちらにせよ若者じゃないか。僕は生前三十二歳だったのさ。だからこそ困ってるんだよ。わかるだろ?」
全然わからないけど、ケイラムがまさかのイタリア人だったとは驚きどころの騒ぎじゃない。
しかもオジサンだったと言うのがもう最高におかしくて、今すぐにでも大声で言いふらしたい気分だった。
おかげでおなかが空いていると言うのに今はまだ二人っきりで庭を散歩しているところである。
「それで? なんでこんなことになってるわけ?」
「知らないよ。でも勘違いするなよ? 僕が頼んだわけじゃないからな? 会食だっておじいさまがどうしてもって聞かないから……」
「それはともかくいいお庭ね。これってバラなのかしら、やけに大きくない?」
「なんだ、ダリアを知らないのか? まあ子供だから仕方ないってことかね。それよりも、えっと――――」
たかが花の名前くらいで偉そうに、と言うより自宅だからなのかいつもより生意気に感じる。それにやけに周囲をやたら気にしてて落ち着かない様子だ。
まったく、人を呼びつけておいて料理の用意はこれからだなんてことなら、最初から断っても問題なかったじゃないのと思わなくもない。
それまでは庭を散歩して来いと追い払われるし、いまいちゲストの扱いが雑じゃないだろうか。それが慣習と言われてしまうと何も言い返せないが……
しかもそのホスト役を務めなきゃいけないはずのケイラムが、ゲストを無視して挙動不審ときたもんだ。
なんだか腹が立ってきた私は、きょろきょろとあたりを見回しているケイラムの横っ面でも張り倒してやろうかと少しだけ近寄る。
「ちょっと待った―― うん、誰もいない、大丈夫だな」
「はあ? アンタいったいどういうことなのよ。自分ちでなに警戒してるんだか知らないけどさ? こっちはわざわざ来てやったってのに、まともにもてなしもできないなんてひどくない?」
「おっと、怒らせてしまったかい、バンビーナ? ここだと上から丸見えだから、そこのベンチへ座ろうじゃないか。おっと、そんなに警戒しないで平気だからね?」
そう言ってケイラムはベンチに腰かけると、五頭身の身体をめいっぱいに伸ばしながら足を組んだ。どう見てもルックスと不釣り合いな所作なのに、なんとなく様になってるように見えるのが腹立たしい。
「ちょっと待って!? なんなのそのおかしなしぐさ…… なんだかやけに生意気で別人みたいだけどホントに同一人物!? アンタいったいなにものなのさ」
「なにものって随分ひどい言われようだな。なんてことはない、キミと同じ、どこにでもいる六歳児だってことくらい知っているだろう?」
「キミとか言っちゃって、なんかキモイんですけど? って言うか生意気を通り越してまるで…… えっ、待って? 今同じってとこ強調しなかった? まさかとは思うけどアンタもしかして――」
「フフフ、もしかして? 実はキミと同じ境遇かもしれないよ? いや、境遇と言うのは少し違うか。僕は召喚されたわけじゃないからね」
「ってことは―― アンタも向こうから来たってわけ!? しかもその喋り方だとあんま若くなさそうな…… それと人のことバンビ呼ばわりってなによ!」
「ん? そのままの意味だが? そうか、キミはどこの国から来たんだい? 僕はイタリア人だったんだ。バンビーナは女の子って意味だよ」
「イタリア!? そっか、別に日本からとは限らないもんね。なんか軽い感じがイタリアのイメージとピッタリ。ウチみたいに謙虚で勤勉な日本人を見習いなさいよ」
「アハハハ、これはまいったね。キミが投げ飛ばした相手を見下ろして勝ち誇る謙虚さと、授業中に居眠りする勤勉さを持ってるのは確かだったな。そうか日本人ね、僕も日本は好きさ。子供のころ初めて買ってもらったテレビはソニーだったし、車はトヨタだったんだぜ?」
「ちっ、なんかムカつく言い方…… でもウチもイタリアのブランドものいくつか持ってた気がする。まだJKだったからもらいものだけどね」
「ジェーケー!? それはなに?」
「はあ? こんな簡単な英語もわかんないなんてあきれちゃうわね。ジョシ・コーセーってことじゃないの―― ってこれ日本語だったわ…… だから十七歳のティーンだったってこと」
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