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第五章:聖女は悪い子をめざします
47.聖女の失言
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会食の準備が整えられ、私たちは王宮へと連れ戻されホールへと案内された。どうやら来賓をもてなすにはバイキングのような立食が一般的なようである。
これだとテーブルマナーにそれほど気を使わなくて済むだろうし、多少風習の違う他国の重鎮もリラックスできるという理由があるそうだ。
かといって全員が立って食べるわけではなく、ホールには二か所のテーブル席が用意されている。私とルカ統括は全ての料理が揃うのを席について待っていた。
王族たちはもう一つのテーブルにいるので、話をするなら今がチャンス!
「ねえルカ統括? それで事前のあやしい懇談はどうなったの? まさかウチを売ったんじゃないでしょうね?」
「いつにも増して疑心暗鬼になっているようでございますね。このような状況では無理もありませんが…… ですがご安心ください。婚約に関してはアキナさまのお気持ちと年齢を考えて時期尚早であるとご納得いただきました」
「つまり養女に迎える話はそのままってことね。オッケー、予想してた通りだから気にしないで。ちゃんと作戦を考えてきたからダイジョブ!」
「まさか王族の誰か、いいえ、全員を精神操作するのではありませんよね? もし知れてしまったら大ごとになりますよ!?」
「ああ、それでも良かったかな。一番乗り気なのは王妃だって言ってたから一人だけあきらめさせればよさそうだもんね。でも違うから心配しないでいいってば。ウチに任せておきなっさーい」
「任せるもなにもアキナさまの問題ですから、わたくしはご意向に沿ってお手伝いするのみでございます。ですがくれぐれもお手やらかにお願いいたします。身分の上下はなくとも彼らは人生の先輩方ですからね」
「そうだね、お年寄りへの敬意を忘れちゃダメだもんね。つかさ、こっちの人たちって普通は白髪にならないわけ? いくつくらいだかわからないけど六十歳くらいにはなってるだろうに、髪の毛青々しすぎじゃん」
「さようでございますね。齢重ねて白髪になると言うのは神力を持つ黒い髪のものばかりですね。それでも八十を超えるほど長生きなご老人は、さすがに白いものが混じったり薄くなります」
「そっか、ハゲもいるんだね。まだ見たことないから知らなかったよ。前の世界には若くてハゲの人も結構いたんだよ? こっちだとそんなハゲのひといないのかー」
ルカ統括とそんな話をしているところへやってきた給仕さんから飲み物を受け取りながらふと見ると、見事なまでに磨き上げられた頭頂部が目に入ってしまった。
「んんっ、ハッ、ごほっ」
「あはは、聞こえちゃったかな。もう、ルカ統括ってば先に言ってくれたらよかったのに。なんか気まずくなっちゃいそう?」
「まったく…… 薄毛の方は普通におりますし、気にしてる場合もありますので、言葉選びにはお気を付けくださいませ。できれば自室以外では品格を大切にしていただきたく存じます」
「なるほど、やっぱりそういうことには気を使ったほうがいいってこと? 子供でも育ちが悪いって言われちゃうとか、親が恥かくとかあるわけかな?」
「さようでございます。この場合だとわたくしの教育がなっていないと思われるでしょうか。と言ってもアキナさまがこちらへ来てから一年程度、それほど深く考えずとも差支えございません。そう申しておかないと、おそらくこれから起こる出来事に耐えられそうにございませんし……」
「さすが腹黒のルカ統括だねぇ。なんとなく察しはついたってことか。もしそれでもあきらめてくれないようなら仕方ない。最後は正体を明かして無理やりあきらめさせるしかないかもね」
「ですがそれではアキナさまの身に危険が――」
「そんときは自分でなんとでもするよ。たとえばウチが女王に就任して力づくでなんでも決めちゃうとかどうかな?」
「なんと恐ろしいことを…… ですがそれも神の導きなのかもしれません」
「そう言えばさ、そうやって神力とか神の導きとか言う割りにはどこにも神様の像とか無いし、みんなで集まって祈りをささげたりもしないよね。いったいどんな神様なわけ?」
「どんなと言われましても一度も目にしたことがありませんのでわたくしにはわかりかねます。むしろ見たことのあるものが誰もおらず、それゆえそのお姿を模した像を作ることもできないと言うのが実情かと」
この答えに私はひっくり返りそうだった。そりゃ私も神様なんて見たことはないし、地球でも誰ひとり見たことが無かっただろうと考えている。
だからこそ想像を膨らませてきたのが人類だと思うのだ。もしかしてこの世界の人たちには欲だけでなく想像力も欠けているのだろうか。
見たことのない神様を信じているからこそ、神力なんて名前がついているのは間違いないのに、ここまで割り切った考え方には逆に感心してしまう。
だが感心している間にも用意は進み、いよいよ会食の時間がやってきてしまったのだった。
これだとテーブルマナーにそれほど気を使わなくて済むだろうし、多少風習の違う他国の重鎮もリラックスできるという理由があるそうだ。
かといって全員が立って食べるわけではなく、ホールには二か所のテーブル席が用意されている。私とルカ統括は全ての料理が揃うのを席について待っていた。
王族たちはもう一つのテーブルにいるので、話をするなら今がチャンス!
「ねえルカ統括? それで事前のあやしい懇談はどうなったの? まさかウチを売ったんじゃないでしょうね?」
「いつにも増して疑心暗鬼になっているようでございますね。このような状況では無理もありませんが…… ですがご安心ください。婚約に関してはアキナさまのお気持ちと年齢を考えて時期尚早であるとご納得いただきました」
「つまり養女に迎える話はそのままってことね。オッケー、予想してた通りだから気にしないで。ちゃんと作戦を考えてきたからダイジョブ!」
「まさか王族の誰か、いいえ、全員を精神操作するのではありませんよね? もし知れてしまったら大ごとになりますよ!?」
「ああ、それでも良かったかな。一番乗り気なのは王妃だって言ってたから一人だけあきらめさせればよさそうだもんね。でも違うから心配しないでいいってば。ウチに任せておきなっさーい」
「任せるもなにもアキナさまの問題ですから、わたくしはご意向に沿ってお手伝いするのみでございます。ですがくれぐれもお手やらかにお願いいたします。身分の上下はなくとも彼らは人生の先輩方ですからね」
「そうだね、お年寄りへの敬意を忘れちゃダメだもんね。つかさ、こっちの人たちって普通は白髪にならないわけ? いくつくらいだかわからないけど六十歳くらいにはなってるだろうに、髪の毛青々しすぎじゃん」
「さようでございますね。齢重ねて白髪になると言うのは神力を持つ黒い髪のものばかりですね。それでも八十を超えるほど長生きなご老人は、さすがに白いものが混じったり薄くなります」
「そっか、ハゲもいるんだね。まだ見たことないから知らなかったよ。前の世界には若くてハゲの人も結構いたんだよ? こっちだとそんなハゲのひといないのかー」
ルカ統括とそんな話をしているところへやってきた給仕さんから飲み物を受け取りながらふと見ると、見事なまでに磨き上げられた頭頂部が目に入ってしまった。
「んんっ、ハッ、ごほっ」
「あはは、聞こえちゃったかな。もう、ルカ統括ってば先に言ってくれたらよかったのに。なんか気まずくなっちゃいそう?」
「まったく…… 薄毛の方は普通におりますし、気にしてる場合もありますので、言葉選びにはお気を付けくださいませ。できれば自室以外では品格を大切にしていただきたく存じます」
「なるほど、やっぱりそういうことには気を使ったほうがいいってこと? 子供でも育ちが悪いって言われちゃうとか、親が恥かくとかあるわけかな?」
「さようでございます。この場合だとわたくしの教育がなっていないと思われるでしょうか。と言ってもアキナさまがこちらへ来てから一年程度、それほど深く考えずとも差支えございません。そう申しておかないと、おそらくこれから起こる出来事に耐えられそうにございませんし……」
「さすが腹黒のルカ統括だねぇ。なんとなく察しはついたってことか。もしそれでもあきらめてくれないようなら仕方ない。最後は正体を明かして無理やりあきらめさせるしかないかもね」
「ですがそれではアキナさまの身に危険が――」
「そんときは自分でなんとでもするよ。たとえばウチが女王に就任して力づくでなんでも決めちゃうとかどうかな?」
「なんと恐ろしいことを…… ですがそれも神の導きなのかもしれません」
「そう言えばさ、そうやって神力とか神の導きとか言う割りにはどこにも神様の像とか無いし、みんなで集まって祈りをささげたりもしないよね。いったいどんな神様なわけ?」
「どんなと言われましても一度も目にしたことがありませんのでわたくしにはわかりかねます。むしろ見たことのあるものが誰もおらず、それゆえそのお姿を模した像を作ることもできないと言うのが実情かと」
この答えに私はひっくり返りそうだった。そりゃ私も神様なんて見たことはないし、地球でも誰ひとり見たことが無かっただろうと考えている。
だからこそ想像を膨らませてきたのが人類だと思うのだ。もしかしてこの世界の人たちには欲だけでなく想像力も欠けているのだろうか。
見たことのない神様を信じているからこそ、神力なんて名前がついているのは間違いないのに、ここまで割り切った考え方には逆に感心してしまう。
だが感心している間にも用意は進み、いよいよ会食の時間がやってきてしまったのだった。
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