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第五章:聖女は悪い子をめざします
46.誘引する聖女
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中身はオジサンだからとか関係なく、六歳で婚約とか正気のさたじゃない。そんなことは大人になってからとか、せめて恋心が目覚めてからでも遅くないはずだ。
そう考えて私は提案したのだが――
「じゃあ会食の時にアンタはタイプじゃないからイヤだって断ってあげるよ。それなら婚約しないですむから万事解決っしょ。実際そうだから嘘じゃないし」
「なんかひどい言い方だな…… 軽くショックを受けるよ。でも結局は養女の話が残るだけじゃないか? どちらかと言うとそっちが本筋なんだしさ」
「そっか…… そうだ! アンタって今まで一度も反抗したことないくらいのいい子だって言ってたわよね?」
「もちろんさ。もともと僕は誰かさんと違って大人しいたちなんだからね。もちろん学業も優秀だし、将来の外交に備えて今から他国のことまで学んでいるんだぜ?」
「へえ、ちゃんとすべきことはしてるって感じ? 偉いじゃないの。オジサンだから新しい勉強は大変だったりしないの? もう頭が固くなってるとか言うじゃん」
「まったくひどい言い方だな…… 前々から感じてたんだけど、キミってもしかして悪い子なんじゃないか? ジャッポーネヤクザ? ゴクドー? ニンキョー?」
「失礼ね! 誰が―― えっと、マフィアって言うんだっけ? 違うに決まってるでしょ! せめて不良くらいにしておいてほしいわ」
「アーォ、カピースコ! 不良少女ならピッタリだな。ハーハッハッハッハー」
私は反射的にケイラムのつま先を踏んづけた。そんなケイラムは踏まれてうれしいのか大笑いしながら肩をすくめている。
悪い子ならそれで結構、こっちの世界へやってくる直前はいい子じゃなかったんだからどう思われようと気にならないし。
「不良少女でも悪い子でもなんでもいいわよ。ようは王様とか王子? アンタの親たちに嫌われるとか、少なくても面倒見るのは無理だと思わせればいいわけでしょ?」
「それはまあ確かにそうかもしれないが、おじいさまたちがそんな簡単にあきらめてくれるかなぁ。なんせおどろいちゃうくらい人がいいんだよ。まあテンカーの人たちは総じて人がいいけどね」
「それわかる! なんていうの、性善説? 地球人とはなんか根本的に違うって感じよね。そりゃ犯罪率は低くなるだろうし、戦争も起きないってモンだわ」
「おかげで格闘技は廃れてしまったらしいけどさ。でも二百年程度でそこまで変わるものかねぇ。それに個人的には欲に欠けるのが必ずしもいいとは思えないなぁ」
「なんでよ、平和でのんびりしてていいことじゃない。ウチはここの人たちや街は結構好きだけどな。他の街とかは知らないけど似たようなもんなんでしょ?」
「少なくとも近隣国含めて似たような感じらしいね。外交で国賓が来たことがあったけど、会食中も終始にこやかだったよ。でもさ、そのせいで科学をはじめとする様々なことが発展してないだろ?」
「ちゃんと生活できてるんだから科学とか別にいらなくない? ウチは学校で理系の授業がなくてサイコーに幸せだもん」
「いやいや、科学の発展がないと人類の進歩がないじゃないか。とてもテクノロジーの最先端を走っていた日本人の考えとは思えないね。ティーンの女の子なら流行のファッションやグルメにも興味があるよね? それらだって全部科学力がないと実現できないものばかりだよ?」
「そうかもしれないけど無いならないで困らないじゃん。確かに物資に乏しくて娯楽は少ないけど、みんな朗らかで楽しく暮らしてるんだからそれでいいかなって。自分でも意外なんだけど、ファッションって誰もこだわってないと興味無くなるね」
「言われてみればそうかもしれないけど、このまま大人になって死んでいくまでなんの刺激もないと思うと僕はつらいね。絶望とまでは言わないけど、やっぱり多少の刺激や生きがいは欲しいんだ」
どうもこの偽いい子ちゃんは日々の生活に飽きているように見える。そりゃ面白いことばかりではないけど、人生ってそんなもんじゃないんだろうか。
まあ私みたいに十七歳から五歳になったのと、三十二歳からゼロ歳になったのでは印象も違うんだろうけど、新たな人生をもう一度楽しめると前向きに考えたほうが健全な気がして食い下がった。
「じゃあどうするの? まさか王さまになったら他国に戦争を仕掛けるとか言いださないでよ? そんなこと言ったらウチが全力で止めるんだかね?」
「それはそれで映画みたいなドラマチックな展開で刺激的かもしれないね。幼馴染が片方の悪行を止めるなんて王道じゃないか」
「まったくもう…… そんなのが好きなら脚本でも書いて学校で演劇やったらいいじゃない。きっと喜ばれるし、相撲と一緒に中央広場でお披露目できるかもしれないよ? そうだ、それがいい!」
「いいってなにがさ、演劇をするのが?」
「違う違う、演技で会食をめちゃくちゃにすればいいってこと。そしたらウチのことなんて引き取りたくなくなるに決まってるっての。アンタの望む刺激が得られそうでちょっと楽しくなって来たでしょ?」
「まったく…… 今の今まで平和が一番とか戦争イヤだって言ってた正義感は何だったんだい? でも面白そうだから付き合おうじゃないか。これは初めてと言っていいくらいの刺激になりそうだな」
こうして私とケイラムは、どうやってこの後の会食を台無しにしようかとろくでもない相談を始めた。
そう考えて私は提案したのだが――
「じゃあ会食の時にアンタはタイプじゃないからイヤだって断ってあげるよ。それなら婚約しないですむから万事解決っしょ。実際そうだから嘘じゃないし」
「なんかひどい言い方だな…… 軽くショックを受けるよ。でも結局は養女の話が残るだけじゃないか? どちらかと言うとそっちが本筋なんだしさ」
「そっか…… そうだ! アンタって今まで一度も反抗したことないくらいのいい子だって言ってたわよね?」
「もちろんさ。もともと僕は誰かさんと違って大人しいたちなんだからね。もちろん学業も優秀だし、将来の外交に備えて今から他国のことまで学んでいるんだぜ?」
「へえ、ちゃんとすべきことはしてるって感じ? 偉いじゃないの。オジサンだから新しい勉強は大変だったりしないの? もう頭が固くなってるとか言うじゃん」
「まったくひどい言い方だな…… 前々から感じてたんだけど、キミってもしかして悪い子なんじゃないか? ジャッポーネヤクザ? ゴクドー? ニンキョー?」
「失礼ね! 誰が―― えっと、マフィアって言うんだっけ? 違うに決まってるでしょ! せめて不良くらいにしておいてほしいわ」
「アーォ、カピースコ! 不良少女ならピッタリだな。ハーハッハッハッハー」
私は反射的にケイラムのつま先を踏んづけた。そんなケイラムは踏まれてうれしいのか大笑いしながら肩をすくめている。
悪い子ならそれで結構、こっちの世界へやってくる直前はいい子じゃなかったんだからどう思われようと気にならないし。
「不良少女でも悪い子でもなんでもいいわよ。ようは王様とか王子? アンタの親たちに嫌われるとか、少なくても面倒見るのは無理だと思わせればいいわけでしょ?」
「それはまあ確かにそうかもしれないが、おじいさまたちがそんな簡単にあきらめてくれるかなぁ。なんせおどろいちゃうくらい人がいいんだよ。まあテンカーの人たちは総じて人がいいけどね」
「それわかる! なんていうの、性善説? 地球人とはなんか根本的に違うって感じよね。そりゃ犯罪率は低くなるだろうし、戦争も起きないってモンだわ」
「おかげで格闘技は廃れてしまったらしいけどさ。でも二百年程度でそこまで変わるものかねぇ。それに個人的には欲に欠けるのが必ずしもいいとは思えないなぁ」
「なんでよ、平和でのんびりしてていいことじゃない。ウチはここの人たちや街は結構好きだけどな。他の街とかは知らないけど似たようなもんなんでしょ?」
「少なくとも近隣国含めて似たような感じらしいね。外交で国賓が来たことがあったけど、会食中も終始にこやかだったよ。でもさ、そのせいで科学をはじめとする様々なことが発展してないだろ?」
「ちゃんと生活できてるんだから科学とか別にいらなくない? ウチは学校で理系の授業がなくてサイコーに幸せだもん」
「いやいや、科学の発展がないと人類の進歩がないじゃないか。とてもテクノロジーの最先端を走っていた日本人の考えとは思えないね。ティーンの女の子なら流行のファッションやグルメにも興味があるよね? それらだって全部科学力がないと実現できないものばかりだよ?」
「そうかもしれないけど無いならないで困らないじゃん。確かに物資に乏しくて娯楽は少ないけど、みんな朗らかで楽しく暮らしてるんだからそれでいいかなって。自分でも意外なんだけど、ファッションって誰もこだわってないと興味無くなるね」
「言われてみればそうかもしれないけど、このまま大人になって死んでいくまでなんの刺激もないと思うと僕はつらいね。絶望とまでは言わないけど、やっぱり多少の刺激や生きがいは欲しいんだ」
どうもこの偽いい子ちゃんは日々の生活に飽きているように見える。そりゃ面白いことばかりではないけど、人生ってそんなもんじゃないんだろうか。
まあ私みたいに十七歳から五歳になったのと、三十二歳からゼロ歳になったのでは印象も違うんだろうけど、新たな人生をもう一度楽しめると前向きに考えたほうが健全な気がして食い下がった。
「じゃあどうするの? まさか王さまになったら他国に戦争を仕掛けるとか言いださないでよ? そんなこと言ったらウチが全力で止めるんだかね?」
「それはそれで映画みたいなドラマチックな展開で刺激的かもしれないね。幼馴染が片方の悪行を止めるなんて王道じゃないか」
「まったくもう…… そんなのが好きなら脚本でも書いて学校で演劇やったらいいじゃない。きっと喜ばれるし、相撲と一緒に中央広場でお披露目できるかもしれないよ? そうだ、それがいい!」
「いいってなにがさ、演劇をするのが?」
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「まったく…… 今の今まで平和が一番とか戦争イヤだって言ってた正義感は何だったんだい? でも面白そうだから付き合おうじゃないか。これは初めてと言っていいくらいの刺激になりそうだな」
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