聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
46 / 53
第五章:聖女は悪い子をめざします

46.誘引する聖女

しおりを挟む
 中身はオジサンだからとか関係なく、六歳で婚約とか正気のさたじゃない。そんなことは大人になってからとか、せめて恋心が目覚めてからでも遅くないはずだ。

 そう考えて私は提案したのだが――

「じゃあ会食の時にアンタはタイプじゃないからイヤだって断ってあげるよ。それなら婚約しないですむから万事ばんじ解決っしょ。実際そうだから嘘じゃないし」

「なんかひどい言い方だな…… 軽くショックを受けるよ。でも結局は養女の話が残るだけじゃないか? どちらかと言うとそっちが本筋なんだしさ」

「そっか…… そうだ! アンタって今まで一度も反抗したことないくらいのいい子だって言ってたわよね?」

「もちろんさ。もともと僕は誰かさんと違って大人しいたちなんだからね。もちろん学業も優秀ゆうしゅうだし、将来の外交に備えて今から他国のことまで学んでいるんだぜ?」

「へえ、ちゃんとすべきことはしてるって感じ? 偉いじゃないの。オジサンだから新しい勉強は大変だったりしないの? もう頭が固くなってるとか言うじゃん」

「まったくひどい言い方だな…… 前々から感じてたんだけど、キミってもしかして悪い子なんじゃないか? ジャッポーネヤクザ? ゴクドー? ニンキョー?」

「失礼ね! 誰が―― えっと、マフィアって言うんだっけ? 違うに決まってるでしょ! せめて不良くらいにしておいてほしいわ」

「アーォ、カピースコなるほど! 不良少女ならピッタリだな。ハーハッハッハッハー」

 私は反射的にケイラムのつま先をんづけた。そんなケイラムは踏まれてうれしいのか大笑いしながら肩をすくめている。

 悪い子ならそれで結構、こっちの世界へやってくる直前はいい子じゃなかったんだからどう思われようと気にならないし。

「不良少女でも悪い子でもなんでもいいわよ。ようは王様とか王子? アンタの親たちに嫌われるとか、少なくても面倒見るのは無理だと思わせればいいわけでしょ?」

「それはまあ確かにそうかもしれないが、おじいさまたちがそんな簡単にあきらめてくれるかなぁ。なんせおどろいちゃうくらい人がいいんだよ。まあテンカーの人たちは総じて人がいいけどね」

「それわかる! なんていうの、性善説? 地球人とはなんか根本的に違うって感じよね。そりゃ犯罪率は低くなるだろうし、戦争も起きないってモンだわ」

「おかげで格闘技はすたれてしまったらしいけどさ。でも二百年程度でそこまで変わるものかねぇ。それに個人的には欲に欠けるのが必ずしもいいとは思えないなぁ」

「なんでよ、平和でのんびりしてていいことじゃない。ウチはここの人たちや街は結構好きだけどな。他の街とかは知らないけど似たようなもんなんでしょ?」

「少なくとも近隣きんりん国含めて似たような感じらしいね。外交で国賓こくひんが来たことがあったけど、会食中も終始にこやかだったよ。でもさ、そのせいで科学をはじめとする様々なことが発展はってんしてないだろ?」

「ちゃんと生活できてるんだから科学とか別にいらなくない? ウチは学校で理系の授業がなくてサイコーに幸せだもん」

「いやいや、科学の発展がないと人類の進歩がないじゃないか。とてもテクノロジーの最先端を走っていた日本人の考えとは思えないね。ティーンの女の子なら流行のファッションやグルメにも興味きょうみがあるよね? それらだって全部科学力がないと実現できないものばかりだよ?」

「そうかもしれないけど無いならないで困らないじゃん。確かに物資に乏しくて娯楽ごらくは少ないけど、みんなほがらかで楽しく暮らしてるんだからそれでいいかなって。自分でも意外なんだけど、ファッションって誰もこだわってないと興味無くなるね」

「言われてみればそうかもしれないけど、このまま大人になって死んでいくまでなんの刺激しげきもないと思うと僕はつらいね。絶望ぜつぼうとまでは言わないけど、やっぱり多少の刺激や生きがいは欲しいんだ」

 どうもこの偽いい子ちゃんは日々の生活に飽きているように見える。そりゃ面白いことばかりではないけど、人生ってそんなもんじゃないんだろうか。

 まあ私みたいに十七歳から五歳になったのと、三十二歳からゼロ歳になったのでは印象も違うんだろうけど、新たな人生をもう一度楽しめると前向きに考えたほうが健全な気がして食い下がった。

「じゃあどうするの? まさか王さまになったら他国に戦争を仕掛けるとか言いださないでよ? そんなこと言ったらウチが全力で止めるんだかね?」

「それはそれで映画みたいなドラマチックな展開で刺激的かもしれないね。幼馴染が片方の悪行を止めるなんて王道じゃないか」

「まったくもう…… そんなのが好きなら脚本でも書いて学校で演劇やったらいいじゃない。きっと喜ばれるし、相撲と一緒に中央広場でお披露目できるかもしれないよ? そうだ、それがいい!」

「いいってなにがさ、演劇をするのが?」

「違う違う、演技で会食をめちゃくちゃにすればいいってこと。そしたらウチのことなんて引き取りたくなくなるに決まってるっての。アンタの望む刺激が得られそうでちょっと楽しくなって来たでしょ?」

「まったく…… 今の今まで平和が一番とか戦争イヤだって言ってた正義感は何だったんだい? でも面白そうだから付き合おうじゃないか。これは初めてと言っていいくらいの刺激になりそうだな」

 こうして私とケイラムは、どうやってこの後の会食を台無しにしようかとろくでもない相談を始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...