聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第二章:聖女はとうとう聖女になる

10.聖女の転機

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 いつもと変わらない日常が過ぎていったある日、朝食を取った私はリヤンの膝の上でうとうとしていた。眠気と言う本能はプライドに勝ると言ったところか。

 そんなゆるい時間が流れているところへ突然フロラが飛び込んできたので、私は驚いてビクりとしながら飛び起きてしまった。

「アキナさま! 大変タイヘンたいへんなの! とうとう来るんだって!」

「ちょっとフロラ、うるさくしないでよ。アキナさまは今お昼寝するところだったんだからね?」

「これが静かになんてしてられますかっての。リヤンだって聞いたら飛び上がって驚いちゃうんだからさ!」

 全く要点がつかめないフロラの叫びだったけど、何やら大事を知らせに来たことくらいはわかる。しかしそれを彼女の口から聞くことはなかった。

「コホン―― フロラ? 盗み聞きとはお行儀が悪いですね。あなたとは後ほど個別にお話をいたしましょう。それで聖女さま、今お時間ございますでしょうか?」

「ああ統括とうかつぅ? おかげさまで何もすることが無くて暇してますから時間なんていくらでもありますよぉ。なんなら一晩中でもいいですけどねぇ」

 いくら何を聞いても答えてくれないルカ統括に愛想を尽かせた私は完全にやさぐれており、今となっては彼女の言葉になんの期待も持っていない。

「実は明日の明け方あたりから三月さんげつの日が数日続くことが判明いたしました。つきましては聖女さまの属性判別の儀をり行いたく存じます。ただ朝が相当早いですので無理はなさらなくても大丈夫です。今回の三月の日は数日続く見込みですから」

「ならなんでそんな朝早くから連れ出そうとしているわけ? きっとまたなにか秘密のたくらみがあるんでしょ? ウチ知ってるよ、統括って大事なとこはなーんにも話してくれないんだもん」

「これはどういう…… まさか何も伝わっていないなどということは……? 誤解ごかいまねいているのであればこちらの不手際、大変申し訳ございません。きちんと説明するよう申し伝えていたはずなのですが……」

 そう言ってからルカはリヤンへ目をやった。すると不自然なくらい素早く顔をそむける様子が目に入る。これはなにかおかしい?

「物事にはなんでも順序がございます。聖女さまに神力かみちから行使こうし方法をご説明し学んでいただくためには、その力を確実に自認じにんした上でその身にたくわえておかなければなりません。これは聖女さまに限ったことではないのです」

「ってことは? 結局何がいいたいわけ?」

「ですので次の三月の日に属性判定を行い、予想されている通り光属性であったなら天からの神力をなるべく多く受けていただこうと考えておりました。ここまではリヤンへ説明しましたよね? 聖女さまへお伝えするようにと添えて」

「え、えっと…… それいつでしたっけ? いや、覚えてないわけじゃありません。今はしっかりと覚えてますよ? でもなんというか、ええっと――――」

「もうふた月は前のこと、今さら叱っても仕方ありません。わたくしが自分でお伝えすれば良かっただけのこと。ただ、神力について学んだものであれば常識ですので、まさかお伝えしていないとは思ってもいませんでした」

 そんなやり取りを聞いているうちに頭がはっきりとさえてきた私は、リヤンの膝から滑り降りた。それらがすべて終わればようやく自由が手に入ると言うことなのだからじっとしてなんていられるはずがない。

「じゃあそれがわかれば外へ出てもいいのね!? 街へ遊びにも行かれるのね?」

「即、と言うわけにはいきませんが、大きく前進とは言えるでしょう。ただしこれはあくまで光属性であった場合に限ります。しかし現在ほかの属性ではないことまでわかっておりますので、未知の属性が存在しなければほぼ間違いなく光属性でしょう」

「でもお日様なんて毎日出てるでしょ? まあ雨の日もあるけど太陽自体は登ってるわけだし? なんで光属性なのにいつもの昼間じゃダメなわけ?」

召喚しょうかんの儀を行う条件が、天に月が三つ登った時と言うのはすでにご説明した通りです。その月はそれぞれ赤の月、青の月、緑の月と呼ばれており、それぞれの色に輝いております」

 ルカ統括は神力に関することを説明し始めるとどうも周囲が見えなくなると常々思っている。そしてこういう時はたいてい話が長い。

「この三つの月すべてが天に上ったときのみ白く輝く夜となり、神力を持つ者に力をたくわえてくださるのです。聖女さまにおいでいただきました祈祷場きとうじょうは、その光を無駄なく集めるために建てられました」

「ってことは? ウチがきたあの場所で白い光を受ける必要があるってことだったわけ? なんとなくわかったけど、それじゃウチの神力は三月の日にしか使えないってこと?」

「その仕組みは未解明ではありますが、一度力を蓄えればしばらくは継続的に行使こうし可能となるのが一般的でございます。それに聖女さまの真価は神力の行使ではなく、普通の陽の光を神力を持つ光へと変換しながら大地へ流す御力でございますから」

「えっ? それってもしかして今現在も効いてるわけ? ウチ何もしないでゴロゴロしてるけど、ちゃんと役にたってんの?」

「いいえ、残念ながら覚醒していない今はまだかと。おそらく召喚の際に蓄えられた神力は、直後の騒ぎですべて放出されてしまったと考えられます。その御力みちから享受きょうじゅしてしまいまして誠に恐縮でございます」

 ルカはそう言って、自分の肩にかかるつやつやの黒髪をなでた。
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