聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第一章:悪い子から聖女へ

9.聖女の直観

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 この違和感の正体はなんだろう。セナタの話自体には特におかしな点はない。でもなにかがおかしいから引っかかっているはずだ。

「なるほど、そういうわけだったのね。言われてみれば確かにアナタもリヤンも優秀だと思うけどね? でもフロラが優秀かどうかは疑問を感じる……」

「フロラは神力かみちからが強いほうなので、広い範囲の浄化ができるんです。だから以前は養老院の担当でした。このテンカーには身寄りがなく一人になってしまったお年寄りを集めてお世話をする場所があるんです。ほかの国にはないらしいですけどね」

「この国ってどちらかと言うと共産国家だもんね。全体主義と言うか福祉ふくしが充実してると言うか。なのに王様がいるんだから意味わかんない」

「難しいことはよくわかりませんが王様は大昔の名残だそうです。今は別に偉いわけじゃないけどほかの国には王様がいますから、外交上そういう立場の人も必要になると聞いてます。実際に国を運営してるのはこの水の離宮をはじめとする属性の統括と神官長のような立場の方々ですからね」

「まさかそういう場にウチも連れて行かれるんじゃないよねぇ。まあこんな姿だしそれはないか。セナタたちは他の国へ行ったことあるの?」

「とんでもない。歩いて行かれるような距離ではありませんし、道中は平坦でもなく猛獣もいてとっても危険なんです。私たちが気軽に出かけられるような場所ではありませんね」

「じゃあどちらかと言うとそんなに交流はなく、いさかいもないって感じかな。戦争とか嫌だし平和ならそれが一番だもんね。そんな平和なら自由に出歩くのだって許してくれればいいのに」

「それとこれとは話が別ですよ? それにアキナさまが街へ出たとしてもそれほど楽しめるとも思えません。演劇や演奏会があるときや、お祭りで大道芸やゲームのお店が並ぶ時なら別ですけどね」

 そう言われてみると、いつも学校をさぼって繁華街はんかがいをウロウロしてたけど、楽しいからとか何か目的があるなんてことはなかった。

 ただただ暇つぶし程度の行動だったし、なにかにいきどおっているような若者たち、みたいな思想を持っているわけでもなかった。

 グループの中にはお仕着しきせがましい親への反骨心はんこつしんだとか社会への不満とかそんな大層たいそうな理由をつけてた子もいた。

 けれど、私の場合は不幸な身の上をなげいてふさぎ込む代わりに、大人や社会へ反抗していたように思える。

 その結果が早死にに繋がったのだから無駄なことをしていたと言うほかない。もちろんカラオケに行ったりプリ撮ったりして楽しいこともあった。でもそれは真っ当な生活をしててもできたことだ。

 それかいっそのこと引きこもりになっていたらどうだっただろう。幸いそれなりの生活基盤きばんをパパが築いていたから、すぐには生活に困らないくらいの資産が残されていたはずだ。きっと働かなくてもしばらくは生きていかれただろう。

 あとは叔父さんの世話になりつつ適当な歳で結婚でもして、無気力に生きていくなんて道もあったに違いない。それが良かったかどうかは置いといて。

 でも結果としてそうはならなかったし、こうして第二の人生を得ることもできた。

『ん? 第二の人生? 本当にそうなのか? 今は死んだと見せかけて死んでなかっただけで、最初の人生の続きじゃない?』

 私はあれこれ考えているうちに、さっき浮かんできた違和感の正体がうっすらとわかってきたように思えた。

 このことについてはルカ統括に聞いてみないといけない。まあその真相を知ったからと言って、今の引きこもり生活は変わらないのだけど。


「どうしたのですか? なにやら難しそうなお顔をなさって。また考えごとですか?」

「一つ聞きたいんだけど、聖女の世話係を選んだって言ったでしょ? それは当然あの当日じゃなくて事前にってことよね?」

「もちろんそうですよ? お世話の練習や言葉遣いなどを学んだりする時間も必要でしたからね。私は特に困りませんでしたが、ほかの二人は言葉遣いの講師にいつも絞られて大変そうでした」

「その練習や教育って、もしかして赤ちゃんや幼児の扱いに対しての訓練も含まれてたんでしょ! まるで小さい子が召喚されるとわかってたみたいに」

「えっ、いや、そういうわけでは…… 今まで気にもしませんでしたが、言われてみれば私たちよりも年下であることはわかっていたのかもしれません。だから妹をもつ神官見習いから選んだってことになりますよね?」

「でしょうね。やっぱりルカ統括はなにか隠してるんだわ。絶対に聞き出してやるんだから!」

 私はなんだか妙な使命感に燃えていた。どんなことでも秘密にされるのは気に入らない。しかもそれが半年の間にたくさん積みあがっているのだから、もうとっくにガマンの限界だったのだ。

 なんといっても気晴らしの方法がろくにないことも影響えいきょうしている。確かにこんな幼女が街をぶらついても楽しくはないだろう。しかもすぐに疲れて抱っこされはずかしめを受けてしまうのも目に見えている。

 それでもやっぱり自由が欲しい。まあ五歳児を一人で自由にさせる親や保護者はあんまりいないだろうけど……

「それともう一つ! 神力の使い方を教えてよ。別にウチが使うって意味じゃなくて、セナタはどうやって覚えたのか、初めて使った時はどうだったかとかそういうことでいいから」

「いえ、それは私からはお教えできません。これは決まりなのです。むやみに教えあうことで事故が起こることもあったようなので、統括たちも慎重になっているんだと思います」

「でももう半年もたってるじゃないの。いつまでたっても教えてもらえないからいつまでもこの部屋だけで生きていかないといけないんだよ? ウチそんなの耐えられない!」

「ですが小さな子は部屋の中で過ごすのが当たり前だと思うのですが…… いえ、決してアキナさまが元は私たちくらいの歳だったことを疑っているわけではございません。しかし街に出れば危ないこともございます。施設しせつの造りなどはその…… 幼児向けとは言えませんので……」

 セナタは物言いは丁寧だけど言うべきことははっきりと言ってくる。もちろんそれは悪いことではない。

 でも今の私にとってはごく身近な誰かが味方ではないと感じるくらいのキツイ言われようである。

 それでも正論なのは理解できる程度の冷静さは残っており、これ以上は無理を言うことなく、がっくりとうなだれるにとどめるのだった。



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