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第二章:聖女はとうとう聖女になる
12.聖女の御力
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これが神力なのか。今なら何でもできそうで、当然脱走だって簡単にできるだろう。だけどまだしばらくは白い光の夜が続くらしいので、なるべく多くの神力を蓄えておきたい。
蓄えた神力がどれくらいの間持つのか、なにかをしてもしなくても日々減って行くのかもわからない。
でも得られた光属性の力はものすごい効果を持つことだけは間違いないと感覚的にわかる。使い方を間違えればそれこそこの国が亡ぶことだってあるだろう。
五百年前に突然現れたミツという男性も、この光の神力を使ったんだろうか。ルカ統括の話では、彼がこのテンカーの礎を築いたのだと言う。
つまり、現代の地球で言うところの、共産主義と天皇制をあわせたような仕組みを作ったのが彼ということか?
テンカーでは国が仕事を選び従事させる。かといって強制ではないので提示されたいくつかから選べるし、数年後には転職も可能だ。
どんな仕事をしても収入は大差ない、と言うより生活に必要な食料品や消耗品はほぼ配給で賄われる。
そして王様はただの象徴で外交時に接待をするのが主な仕事らしい。政治的な権限はなく、普段は自由に暮らしていて街をぶらぶらしていることもあると聞かされて驚いてしまった。
国の実権は神力を持つ機関のトップが集まった内閣のような神属議会、監視機関の役割を持つ長老議会、それに各街の有力者が集まる民衆会の三つで決めているとの説明を受けた。
そしてルカ統括はこの運営の先行きに少々不安を感じているようだ。
「つまり? 今は民衆会の力が強くなりすぎていて自由な商取引の実現を望む声が大きくなってきたと。だからウチを転生召喚して赤んぼから育てて自由に操ろうとしたわけね。ちょっと腹黒すぎない?」
「い、いえ、わたくしはあくまで国のためを思っただけ。国の将来を案じて思考をめぐらせただけなのです。決して聖女さまをだますような真似をしたつもりでは――」
「でも企んでたのは事実でしょ? ウチにはなんでもわかっちゃうんだからさ。もちろん強制的に話してもらうこともできそうだけどそんなことはしない。それに別に怒ってるわけじゃないのよね。ルカ統括のキモチもわからんくないし」
「ご理解いただきありがたく存じます。ですが本当にわたくしが若返らせたわけではないのです。ウソをついていないことは明白でございますよね?」
「ホントだ。ってことはやっぱりただのアクシデントなのかな。まあ召喚とかいうのがすでに不思議すぎるから、ほかに何があってもおかしくないかな。でも想定通りの赤ちゃんじゃなかったから思い通りにならなそうでがっかりしたでしょ」
「多少年齢が高くとも別の世界からやってきたことはわかっておりましたので、こちらの世界を学んでいく段階で思想を植えつけられると考えておりました。しかしだますと言うわけではなく、あくまで国の安定を崩さないための考えでございます」
「うんうん、わかってるって。急な変革があったら一般市民は戸惑っちゃうもんね。でも自分と別の思想を持ってる人たちを無理やり洗脳するのはよくないと思う。きちんと話し合えば変革するにしても緩やかにできるだろうし、そういうのはもっと若い人たちが考えるんじゃないかな」
「さよう、で…… ございますね…… わたくしの考えが浅はかでした。焦りもあったのだと思います。大変ご無礼を働き申し訳ございませんでした。どんな罰でも受け入れる所存、どうぞ何なりとお申し付けくださいませ」
「だからウチは怒ってないってば。今みたいな軟禁生活が続くのは嫌だけど、自由にしていられるならルカ統括の思うように働いてもいいよ? 洗脳はダメだけどね」
光属性の神力に目覚めた私は、その力の一端をこの場で行使していた。光属性の神力とは、驚くべきことに相手の精神へ働きかけるものだった。
はっきりと心が読めるわけではないが、相手が話していることがホントかウソかはすぐわかる。
質問をすれば必ず答えさせることもできるし、なんなら精神をのっとって行動を操ることもできてしまう。
対面さえすれば誰でも思い通りにできてしまうなんて、とても怖い力だし、私ならそんな人にはきっと近寄らないだろう。
つまり―――― この力を知った人は私から離れていくのでは…… そう思ったのだが、どうやら取り越し苦労だったらしい。
「どうしたんですか? お二人ともそんなに難しい顔をして。アキナさまって今日はこのまま祈祷場でお休みになられるのですよね? 私、ひとっ走りお布団を用意してまいりますね。ふふふ大丈夫、一緒に寝てあげますから怖くないですよー」
リヤンは今の話を全く聞いていなかったようなそぶりで走り去った。どうやら彼女はとことん能天気なようで、私はなんだか救われた気分になった。
あとに残されたのは私とルカ統括だけだ。リヤンたち三人のうち常に一人は私についているのが決まりだったから、ルカ統括と二人きりになったのは初めてである。
なんとなく緊張した空気が流れたが、先に口を開いたのはルカだった。
「一つお聞かせ願えますでしょうか。聖女さまはこの先どうなされるおつもりでしょうか? すでにご理解いただいていると思いますが、その御力を用いれば国を動かすこともたやすいでしょう。もっと豊かな生活を望んだり、国を大きくしたりも可能……」
「まさかウチが民衆会の味方するって? それとも戦争始めるとか考えてる? ないない、絶対にないよ。今の生活には不満があるけど、それは部屋から出してもらえないからだもん。自由に出歩ければ他には特に望まないと思うよ?」
「そのお言葉を聞いて安心いたしました。実は二百年ほど前まではテンカーも自由経済の国だったのです。ですが当時は権力を持っていた王族が周辺国を取り込もうと戦争を始めました。その結果、国は広がりましたが貧富の差が大きくなり、あるとき一揆が起こったのです」
「あれ? 国の仕組みはミツが作ったんじゃないの? ウチはてっきり最初からこんな感じだったのかと思ってたよ」
「いえいえ、ミツさまはこの首都アケツが小さな村だったころに現れたお方。その後は戦争と対話を繰り返し、周辺の集落をまとめて町としたり、物流を整備したりしてこの国、テンカーを興したのです」
どうやら彼は何らかの方法でこちらへやってきて、それでもまだ戦をしていたようだ。なるほどやっぱり野心家だったのかと、私は一人うなずいていた。
蓄えた神力がどれくらいの間持つのか、なにかをしてもしなくても日々減って行くのかもわからない。
でも得られた光属性の力はものすごい効果を持つことだけは間違いないと感覚的にわかる。使い方を間違えればそれこそこの国が亡ぶことだってあるだろう。
五百年前に突然現れたミツという男性も、この光の神力を使ったんだろうか。ルカ統括の話では、彼がこのテンカーの礎を築いたのだと言う。
つまり、現代の地球で言うところの、共産主義と天皇制をあわせたような仕組みを作ったのが彼ということか?
テンカーでは国が仕事を選び従事させる。かといって強制ではないので提示されたいくつかから選べるし、数年後には転職も可能だ。
どんな仕事をしても収入は大差ない、と言うより生活に必要な食料品や消耗品はほぼ配給で賄われる。
そして王様はただの象徴で外交時に接待をするのが主な仕事らしい。政治的な権限はなく、普段は自由に暮らしていて街をぶらぶらしていることもあると聞かされて驚いてしまった。
国の実権は神力を持つ機関のトップが集まった内閣のような神属議会、監視機関の役割を持つ長老議会、それに各街の有力者が集まる民衆会の三つで決めているとの説明を受けた。
そしてルカ統括はこの運営の先行きに少々不安を感じているようだ。
「つまり? 今は民衆会の力が強くなりすぎていて自由な商取引の実現を望む声が大きくなってきたと。だからウチを転生召喚して赤んぼから育てて自由に操ろうとしたわけね。ちょっと腹黒すぎない?」
「い、いえ、わたくしはあくまで国のためを思っただけ。国の将来を案じて思考をめぐらせただけなのです。決して聖女さまをだますような真似をしたつもりでは――」
「でも企んでたのは事実でしょ? ウチにはなんでもわかっちゃうんだからさ。もちろん強制的に話してもらうこともできそうだけどそんなことはしない。それに別に怒ってるわけじゃないのよね。ルカ統括のキモチもわからんくないし」
「ご理解いただきありがたく存じます。ですが本当にわたくしが若返らせたわけではないのです。ウソをついていないことは明白でございますよね?」
「ホントだ。ってことはやっぱりただのアクシデントなのかな。まあ召喚とかいうのがすでに不思議すぎるから、ほかに何があってもおかしくないかな。でも想定通りの赤ちゃんじゃなかったから思い通りにならなそうでがっかりしたでしょ」
「多少年齢が高くとも別の世界からやってきたことはわかっておりましたので、こちらの世界を学んでいく段階で思想を植えつけられると考えておりました。しかしだますと言うわけではなく、あくまで国の安定を崩さないための考えでございます」
「うんうん、わかってるって。急な変革があったら一般市民は戸惑っちゃうもんね。でも自分と別の思想を持ってる人たちを無理やり洗脳するのはよくないと思う。きちんと話し合えば変革するにしても緩やかにできるだろうし、そういうのはもっと若い人たちが考えるんじゃないかな」
「さよう、で…… ございますね…… わたくしの考えが浅はかでした。焦りもあったのだと思います。大変ご無礼を働き申し訳ございませんでした。どんな罰でも受け入れる所存、どうぞ何なりとお申し付けくださいませ」
「だからウチは怒ってないってば。今みたいな軟禁生活が続くのは嫌だけど、自由にしていられるならルカ統括の思うように働いてもいいよ? 洗脳はダメだけどね」
光属性の神力に目覚めた私は、その力の一端をこの場で行使していた。光属性の神力とは、驚くべきことに相手の精神へ働きかけるものだった。
はっきりと心が読めるわけではないが、相手が話していることがホントかウソかはすぐわかる。
質問をすれば必ず答えさせることもできるし、なんなら精神をのっとって行動を操ることもできてしまう。
対面さえすれば誰でも思い通りにできてしまうなんて、とても怖い力だし、私ならそんな人にはきっと近寄らないだろう。
つまり―――― この力を知った人は私から離れていくのでは…… そう思ったのだが、どうやら取り越し苦労だったらしい。
「どうしたんですか? お二人ともそんなに難しい顔をして。アキナさまって今日はこのまま祈祷場でお休みになられるのですよね? 私、ひとっ走りお布団を用意してまいりますね。ふふふ大丈夫、一緒に寝てあげますから怖くないですよー」
リヤンは今の話を全く聞いていなかったようなそぶりで走り去った。どうやら彼女はとことん能天気なようで、私はなんだか救われた気分になった。
あとに残されたのは私とルカ統括だけだ。リヤンたち三人のうち常に一人は私についているのが決まりだったから、ルカ統括と二人きりになったのは初めてである。
なんとなく緊張した空気が流れたが、先に口を開いたのはルカだった。
「一つお聞かせ願えますでしょうか。聖女さまはこの先どうなされるおつもりでしょうか? すでにご理解いただいていると思いますが、その御力を用いれば国を動かすこともたやすいでしょう。もっと豊かな生活を望んだり、国を大きくしたりも可能……」
「まさかウチが民衆会の味方するって? それとも戦争始めるとか考えてる? ないない、絶対にないよ。今の生活には不満があるけど、それは部屋から出してもらえないからだもん。自由に出歩ければ他には特に望まないと思うよ?」
「そのお言葉を聞いて安心いたしました。実は二百年ほど前まではテンカーも自由経済の国だったのです。ですが当時は権力を持っていた王族が周辺国を取り込もうと戦争を始めました。その結果、国は広がりましたが貧富の差が大きくなり、あるとき一揆が起こったのです」
「あれ? 国の仕組みはミツが作ったんじゃないの? ウチはてっきり最初からこんな感じだったのかと思ってたよ」
「いえいえ、ミツさまはこの首都アケツが小さな村だったころに現れたお方。その後は戦争と対話を繰り返し、周辺の集落をまとめて町としたり、物流を整備したりしてこの国、テンカーを興したのです」
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