聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
13 / 53
第二章:聖女はとうとう聖女になる

13.聖女の停滞

しおりを挟む
 ようやく自由を得たと思ったのだが、とりあえず離宮の中だけという制限をつけられてしまった。これは側仕えの三名だけでは護衛ごえいしきれないから人選が終わるまでと説得され納得した結果である。

 なんといってもここは首都アケツ、街中へ出れば人通りもそれなりに多いらしいから迷子になっても困る。それに想像していたような繁華街は存在せず、目的もなく街をぶらつくなんて習慣もないと言われてしまった。

「じゃあいったい何を楽しみに生きてるってのよ。みんな休みの日は何して過ごしてるの? まさか仕事以外は家でゴロゴロしてるなんてことないでしょ?」

「フロラは実家へ帰って母さんと一緒に料理したり、妹と花壇の手入れしたりで結構忙しいよ? 休みなんてあっという間に終わっちゃうくらいだもん。他の子たちもあんまり変わらないんじゃないかなぁ」

「買い物とか行かないの? 服とかアクセとか、スイーツでもいいけどなにかしらあるでしょ? 仕事と家の往復なんてさみしすぎるよ」

「そうかな? 服は母さんが作ってくれるけど普段はこの制服だけだし、アクセサリーは神力の効力を阻害そがいするからつけないね。それでスイーツってなに?」

「ああ、スイーツって言うのは甘い系のお菓子ってこと。というかそれは毎日何回も食べてるじゃないの! それにしてもアクセがダメだなんて泣けてくるよ。ウチはブレスとかリング、それにピアスをいっぱいつけてたんだもん」

「アキナさまはつけても平気じゃない? 普段、神力使って仕事するるわけじゃないでしょ? でも金属じゃなくてこういう石なら身に着けてもいいんだよ?」

 そう言いながらフロラは胸元から指先よりも大きな水晶か何かを取り出した。透明感がある水色のきれいな石には穴があけてあり、革ひもを通して首からかけられるようにしてある。これはこれでパワーストーンっぽいおしゃれアイテムだ。

「金属はダメなのね。そのネックレスはどこで売ってるの? その前にお金がないから買えないか…… ウチも仕事しないと自由時間だけあっても仕方ないよねぇ」

「神力遣いにとって金属製の何かは害しかないんだよ? 力が拡散されてうまく使えなくなっちゃうの。だから食器とかも木や陶器ばかりでしょ? だからこういうきれいな石を拾ってきて自分で作るってわけ」

「なるほど! その辺で拾ったりできるんだね。ウチも欲しいよ。外出許可が下りたら案内してよね」

「きっとそういうと思ったけど、護衛の人がいないとたぶんムリだよ。アタシはまだ自宅にいるとき父さんと一緒に行ったんだけど、イノシシとかカモシカとかが出るし、時にはクマも出るから危ないんだよね」

「そっかあ、それも考えて人選を進めてくれてるのかな? ルカ統括は考えてることを全部言ってくれないからいまいち信用できないんだよねぇ。離宮の中ではなにか面白いことないの?」

「うーんそうだなぁ、炊事場へ行ってつまみ食いしたり、馬小屋へ行ってエサをあげたりとか? アタシはやらないけど、裁縫や編み物をやる子もいるよ。将来のためにはできたほうがいいからってね」

「なんか微妙だけど、ほかにやることもないしせっかく出歩いてもいいって言われてるんだから少し探検に行こうかな。つまみ食いするほど飢えてないからまずは馬小屋へ行ってみたい! フロラがついてきてくれるんでしょ?」

「もちろん一緒に行くよ。でももうすぐおやつの時間だから食べてからがいいんじゃないかな? もうすぐリヤンが持ってくると思うから三人で行こうよ。セナタはお休みだから残念だけどー」

 そう言っていやらしく笑うフロラは、どうもセナタをライバル視しているようだし、セナタはセナタでフロラの態度をなおそうといつも口うるさい。仲はいいけどお互いにちょっかい出したくて仕方ないって感じだ。

 それにしてもこの国はどうなってるんだろうか。朝九時に朝食が終わってからは三時間おきにおやつの時間がやってくる。昼食の習慣はなくて夕方六時になると夕食、そして九時にはその日最後のお茶が用意される。

「なんでそんなにおやつばかり食べるの? おなかがすくならお昼ご飯を食べればいいのにさ。それでよく太らないよねぇ」

「神力を使うのに体力を使うからね。甘いものは欠かせないってこと。太ってる余裕なんてないよ。統括なんてガリガリになっちゃって髪の毛まで真っ白になるくらいカスカスでしょ? 今は黒くなってるけどきっとまた白くなっちゃうんだろうなぁ」

「じゃあアタシもあんな感じになっちゃうのかな。どうやらいるだけで神力を地面へ流してるみたいだからさ。それとも聖女は特別で除外されてるかなぁ」

「アキナさまってもともと髪の毛が黒くないもんね。なんでそんなに茶色っぽいのかな。普通の人にもそんな色の人は見たことないよ。街へ出たらほとんどが赤とか青とかだから目立っちゃうね。ちなみにうちの妹も青い髪だよ」

「ええっ!? 神官以外はそんな派手派手なわけ? それって神力を持ってるほかの属性の人たちも?」

「神力を持ってる人はほとんどが黒髪だね。統括みたいに激務な人は白髪交じりだけど、あそこまで真っ白な人はあんまりいないよ」

「じゃあ神官長も相当な激務げきむなのかなぁ。そういえば男性なのに水属性なの?」

「ううん、神官長はお歳なだけ。もう八十歳くらいだったかな。そんで地属性だしね。ウチらのとこには地属性の代表として来ているんだよ? 事務仕事のためにって。調理長は火属性から来てて警備隊長は鉄属性のおじさんだよ」

「じゃあ水属性の偉い人もほかの属性の施設で働いてるってこと? そういえば各属性の偉い人で長老議会が運営されてるって言ってたな。もしかしてそのこと?」

「そうそう、いろいろ考えた結果、いろんなとこから代表者を出して話し合おうってことになったって歴史の授業で習った。アタシは結構寝てたけど……」

「街には学校もあるの? それともこの離宮の中で? ウチは勉強自体嫌いじゃないからさ。この国のことを学べる場所があるならうれしいかも」

「勉強が好きなんてセナタみたいで変わってるね…… 街の学校は五歳から十二歳まで通うんだよ? そんで神力がある子はそれぞれの施設へ行くか家に残るかを選ぶの。持ってない子たちは三年間は職業訓練学校へ行って仕事を選ぶって感じだね」

「なるほどねぇ。なんかあんまり毎日楽しくなさそうだけど気のせい? 十二歳でもう将来のレールが敷かれちゃうとか考えたくないなぁ」

「うーん、あんまり深く考えたことないけど、友達と遊んだり家族と過ごしたりするのは楽しいよ? アタシは将来統括、はムリでもそこそこの幹部にはなりたいと思ってるから頑張ってるの。リヤンはね――」

「ちょっと! なに勝手に私の名前出してんのよ! おやつ持ってきたって声かけてるんだから扉開けてくれてもいいじゃないの。フロラったらおしゃべりに夢中になるとなにも聞こえなくなるんだから困っちゃうよねぇ」

 背後からの声にあわてて振り返ると、大きなお盆を持って扉へもたれかかっているリヤンが不満そうに立っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...