聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第二章:聖女はとうとう聖女になる

16.聖女の逃亡劇

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 客観的に見なくても私の走りは決して速いとは言えない。その証拠にリヤンもセナタもニコニコしながら余裕の早歩きで真横をついて来る。これは明らかにバカにされてるとしか思えない……

「もう! こんなんじゃ追いつかれちゃうでしょ! もっと早く走ってよね!」

「そしたらアキナさ、アキナが置いてきぼりになってしまいますよ? いっそのこと抱っこしちゃいますか? でもいくら逃げてたって髪の色ですぐ見つかっちゃうと思いますけどねぇ」

 セナタの言うことはもっともで、確かに街中では黒い髪は目立つ。そしてそれ以上に私の茶色い髪はもっと目立っているような気がしてはいた。

 なんといってもその辺に歩いている人の髪色は、ほぼ真っ赤か真っ青だ。そんなのアニメのキャラクター以外では見ることのないヘアカラーである。

 ド派手はでな向こうが当たり前で、地味なこちらが目立つのはやっぱり納得がいかないがそれが事実なんだから仕方ない。

 たまに別の色がいたとしても緑とか紫で、ほかは多少色の濃さが違う程度か。どうやら神力が潜在的にあると、使えない人でも髪色が暗くなるらしい。

「じゃあウチたちの髪の色を変えればいいんじゃないの? ようは周りと同じならいいわけでしょ? それなら簡単にできそう。だからとにかく急いでよ!」

「では―― 失礼しますね。あとで怒らないで下さいよ?」

 セナタはそういって私の腰に手を回し、ひょいっと小脇に抱えて走り出した。その後ろから大笑いしながらリヤンも追いかけてくるが、その笑いがどういう意味なのかは後ほど追及が必要だろう。

 こうして逃亡速度を上げた私たちは、大人では入りにくそうなせまい家の間や荷物置き場の隙間などを縫うように進んでいった。

「ええっと、そうだよね。やっぱりできそうな気がしてたんだー うんうん、なるほどね。できるかどうかはまず考えてみればいいってことか。わかったよ!」

「アキナさま? いったい誰と話しているんですか? まさか神様とか言い出さないで下さいよ?」

「ああ、一応独り言なのかな。こういうこと出来ないかなーって頭の中で考えるともう一人のウチが教えてくれるみたいなんだけど、これって神力使える人はみんな同じじゃないんだ?」

「ちょっと聞いたことないですねぇ。普通は発現はつげんしたときに何か一つ使えるようになってて、そのあとの勉強や修行でまた発現するって感じだと思います。統括は七つか八つの能力を持っているらしいですよ?」

「欲張りなんだねぇ。だから髪の毛が白くなっちゃったってこと? セナタはいくつ使えるの? 一つは浄化なんでしょ?」

「私は浄化と氷結化ひょうけつかだけですね…… でもきっとあと数年もしたらもう一つくらいは覚えられるはず、だといいなぁ。ちなみにフロラは浄化と氷結化が使えて、不完全ですけど霧化きりかも使える天才なんですよ?」

「そではすごい、んだよね? ねえねえ、リヤンは一番年上だし三つくらいは使えるんでしょ?」

「アキナさま、それわかってて言ってない? 前にがんばってるのに浄化しか使えないってグチったじゃないですか。でも浄化の速さは見習いの中では一番ですから!」

「あっ、忘れてた。でも取り柄があるんだから十分だってば。だからウチのお世話役に抜擢ばってきされたんでしょ? それだけでも良かったじゃない」

 そんな話をしている間に私は光属性能力の一つ、屈折くっせつの術を使って三人の髪色の見え方を一瞬で変えてしまった。

 とりあえず目立たないように真っ赤な髪にしてみたが、やっぱりこれが目立たない色だなんてぶっちゃけありえない。

「ええっ!? アキナさまの髪が赤くなってる!? えっ、リヤンも!? と言うことはもしかして私も!?」

「なってるなってる! すごい! これアキナさまがやったの? どうやって!?」

「原理を話すと長くなるけど、ようは周りから赤く見えるように見え方を変えたってわけ。なんなら姿を消すなんてこともできるはず。それと話し方が戻ってるから注意してよ?」

「これならパッと見でばれることなさそうだね。あの護衛の人たちとは今日初めて会ったんだし、見つけるのは簡単じゃないだろうなぁ。後で統括たちに叱られちゃうかもしれないから同情するけど……」

「悪いのはウチなんだから平気でしょ。いざとなったらちゃんと許してもらえるようなんとかするってば。それより目的地はまだなの? いい加減疲れてきたわ」

「ふふ、抱えられてるのも楽じゃないんですね。そろそろ背中に移りますか?」

「なんでそこで歩くかって言わないのよ…… もうすぐならこのままでいいけどさ」

「もうつきますよ、セナタも来たことあるよね? 実家の方面からすると多分ここじゃないとは思うけど。私の実家はここからしばらく進んだ街の北端ほくたんに近いとこなんでここが最寄もよりなのよね」

 そう言って大き目の建物の前で立ち止まると、そこはなんとも立派で和風な建物だった。屋根は植物の皮か何かを重ねたような変わった造りでかわら屋根ではないが、左右対称の三角屋根はここに来るまで一軒もなかったと思う。

 そして屋根の片側からはえんとつが飛び出していて煙が立ちのぼっており、建物わきからはもれ出る蒸気じょうきが見えている。

 ここはもしかして――

「それじゃアキナ、セナタ、入りましょ」

 そういうとリヤンは先頭を切ってのれん・・・をくぐった。
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