聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第二章:聖女はとうとう聖女になる

17.まったり聖女

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 まさかもいいところである。なんといってもこっちの世界へやってきてからは必要性を感じなかったこともあって存在自体を忘れていたからだ。

「はああぁ、しみるぅ、生き返るぅ。まさかこんな場所があるなんて驚き。離宮にも作ればいいのにねぇ」

「水の離宮ですから水は聖なるもので無駄遣いは許されないのと、浄化があるので必要ないんですよ」

「確かに必要ないのはわかる。ウチも今まで全く忘れてたもん。元の世界では毎日入るのが当たり前だったからありがたみを感じることなんてなかったけどさ。こうして久しぶりにつかってみるといいもんだなぁって思うよ」

「ね? さすがに護衛の男性連れじゃ無理だったでしょ? でも大丈夫かなぁ、今頃大騒ぎになってたりしてね」

「ダイジョブダイジョブ、何かあったらウチが責任取るって言ったでしょ」

「でもどうやって責任取るんですか? アキナ、も、リヤンも楽観的過ぎて心配になってきますよ…… 私は多分相当怒られるだろうなって覚悟かくごはしてますけど……」

「セナタは心配性、って言うよりマジメなのかな。リヤンが不マジメなだけかもしれないけどね」

「そんなこと言って! 逃げようって言い出したのはアキナでしょ? 私はいいとこあるけど女だけじゃないと行きづらいって言っただけだし」

 それにしても街中に公衆浴場があるとは思ってもいなかった。こっちへやってきてから初めてのお風呂だけに感動もひとしおである。

 水の神官たちの集まる施設である離宮には、常に浄化がかかっており清潔に保たれている。それだけでなく、朝から晩まで三時間おきにやってくる食事とおやつの時間には、リヤンたちによる浄化術がほどこされ全身くまなく清潔に保たれていた。

 それはまるでシャワーを浴びているかのように、老廃物を含めた汚れがすーっと流されていくような感覚がある。自分で使えたらもっと便利だろうが、光属性にそのような力はなさそうで残念。

 こちらの世界でもお風呂は一日の終わりに近い時間に入ることが一般的らしく、まだ日中の今はガラガラで貸切状態だ。しかも今日は特別にタダで入らせてもらっているのもなんだかうれしい。

 まあその代わりとして、正体を知られているリヤンとセナタがお風呂屋のおばさんがやるはずの浄化を肩代わりしたのだが。そのため貴重な配給券を使わないで済んだと言うわけである。

 この配給の仕組みは単純で、要はお金と同じだ。働いている人には決まった数がじられている配給手帳がもらえ、買い物や各種サービスを受ける際に決まった点数を渡すだけ。

 つまり通貨の単位などと言うものはなく、一点二点みたいな数え方になる。売り上げは別の場所で使えず、最終的に民衆会が運営する取引組合で回収するようだ。循環じゅんかんさせないところが通貨と一番違うところかもしれない。

 ちなみに公衆浴場での回収が少ないと、近隣住民が不衛生ふえいせいになっていると判断され、これまた民衆会の下部組織である保険組合の調査が入り、時には当該地区に衛生指導が行われる。

 万一感染症や疫病の気配でもあろうものなら、さらに神属しんぞく議会によって地域浄化じょうかが手配されることもあると言う。

 そうなると水の神官たちは大忙しで大迷惑だといつも不満がすごいらしい。

「でもそのおかげで街が清潔に保たれてるんだし、病気も少ないんだわ。だから忙しいのは大変だけど、誇りに思っていいと思う。そっか、みんなそうやって助け合って生きてるんだね」

「まあね。他にも大き目の建物は地の神道師しんとうしが建築を手伝うし、食器や農機具とかも火の騎士と鉄の錬金師が協力して作って配布してたりとか、神力を持ってる人たちのほうが忙しいってくらいには働いてるね」

「うんうん、子供のころはあんまり考えてなくて偉い人だと思ってましたけど、自分がその立場に近づくに従って、もしかしてこれ大変すぎるのでは? って思うようになってきました」

「偉い! 二人だけじゃないけどみんな偉いからウチがほめてあげる。いい子いい子だよ。よし決めた! ウチもなにか人の役に立てることをやる!」

「ちょっとアキナさま? あまりにも唐突ではありませんか? 大体何をすると言うんです? 差し出がましいようですが、そのお姿ではなかなか……」

「なによ、子供だから何もできないって言うわけ? ウチには光の神力があるんだからなにかしらできるはず!」

「どうせ思いつきだから、なんて無粋ぶすいは言いませんが、何をするのかはしっかりと考えてからにしてくださいね? 事前にちゃんと相談するんですよ?」

「そうやって子ども扱いしないで! 手始めに、そうね―――― 普段から楽しめる何かを考えようかな。アケツの街中ってなんか雰囲気暗いし、これじゃとても首都だなんて言えないでしょ」

「そんなことないと思うけどなぁ。そりゃ毎日大道芸でもやってれば楽しいだろうけど、色々な国を回っているらしいからいいとこ年に一回だよ? 街の劇団が演劇や演奏会を月に一度くらい開くけど、だいたい一年くらいは同じ演目えんもくだからすぐきちゃうんだよね」

「ほらセナタ聞いた? リヤンだって楽しみが増えるほうがいいって言ってるじゃないの。実はアンタだってそう思うんでしょ?」

「いや、私は…… きっとよからぬことを思いついて、なし崩し的に手伝わされるんじゃないかとビクビクしてるだけです!」

「あぁ、それね…… いかにもありそう」

「二人ともそうやってウチのこと疑うわけ? ちゃんと危なくないようにやるからダイジョブだってば! もっと聖女のことを信じなさいって」


「誰を信じなさい、なのですか? まさか脱走した子供の言うことではございませんよね?」

 湯につかりながら興奮こうふんして話し込んでいた私たちの前に、いつの間にか白いローブの女性が立っていた。

 もちろんそれが、鬼の形相をしたルカ統括だったことは言うまでもない……
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