2 / 158
新学期といえば転校生
しおりを挟む
話は二週間ほど前、始業式の日に遡る。
僕達が高校生になり一年間過ごした後に訪れた二度目の春。早々に学校を辞めてしまったヤツもいたが、残った全員が無事に二年生になった。
今日は始業式なので校長の話や新しい教科書の受け取りくらいしかやることが無い。そのため、放課後には野球部の勧誘についての相談を部員とすることになっていた。
三年生は春の大会が散々な結果で終わり、後は夏に向けての猛特訓と受験や就職、そもそも一番大切な卒業に向けての追い込みもあるため勧誘にはノータッチだ。
体育館から戻ってきてクラス全員がそろった後に担任が入って来た。教壇に立った教師らしからぬ美人は、去年と同じ岡田真弓先生で野球部の顧問でもある。学生時代はソフトボールで鳴らしたらしい。
そしてその後ろから、うちの学校とは別の制服を着た女子生徒がうつむき加減でついてきている。
クラスの何人かが転校生だ、とか、どこの制服だろう、などとざわついている。
「はーい、みんな静かにして。 今日からこのクラスの一員となる生徒を紹介します。
では自己紹介してね」
「はい」
その女子生徒はゆっくりと静かに返事をした。勧誘の文言を考えていた僕も思わずかたずをのみ、期待と緊張感の混じった空気が教室を包む。
黒板に自分の名前を漢字で書き、そして振り向いてから教室内を舐めるような視線でゆっくりと見渡してから口を開いた。
「蓮根咲です。
みなさん、どうぞよろしく」
なぜかわからないが妙な迫力というのか緊張感というのか、あまり感じたことの無い雰囲気だ。例えるならキャッチャーとサインが決まらず息が合わないような、そんな感じか。
真っ黒な髪は光が反射するほどツヤツヤで、大きな瞳には何か吸い込まれそうな迫力があった。整った顔立ち、すらっとしてシャンとした立ち姿は人を簡単に寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
その姿は、女子が苦手な僕でさえ思わず視線を囚われてしまう。
「それでは蓮根さん、とりあえず一番後ろになってしまうけど空いている席があるからそこへ座ってちょうだい。
明日のホームルームと一限目に席替えと委員決めやるわね」
そこで誰かが手を上げて確認した。
「明日は授業無いんですかー?」
「授業は無いわね。
でも二限目からは入学式の準備と各委員会があるわよ。
お昼までなので部活の無い生徒以外はお弁当は不要ってことになるかしら」
「了解でーす」
他の生徒がまた手を上げて発言した。
「席替えはしないでこのままでもいいんじゃないですか?」
「そうだよ、今時男女並べるとかナンセンスだよ、真弓ちゃん」
「俺ももう机にいろいろ入れちゃったよー」
「この席に飽きたら学級委員にでも言って席替えしたらいいんじゃない?」
何人かがわいわいと勝手な事を言っている。
「あらそう? 蓮根さん、あの一番後ろの席で構わないかしら?」
一瞬の間の後、蓮根咲は答えた。
「ええ、問題ありません」
うちの学校は基本的には三年間同じクラスで同じ担任だし、そもそも学業レベルが大したことないということもあるからか、教師と生徒がやたら親しげに話していることがある。
僕はどうも年上の人に馴れ馴れしくするのは苦手なので、教師にはなるべくきちんと話すようにしている。しかし全員にそれを望むのは無理と言うものだ。
結局席替えはなく一年生の終わりと同じ配置になった。たしかこの席に決まったのは全員の希望と取り合いじゃんけんだったか。そのため不満も少ないのだろう。
席替えがなかったことに僕は少し喜んでいた。グラウンドの見える窓際の席は気に入っていたから、というのが今までは最大の理由だった。
蓮根咲が僕の席へ近づいてくる。空いているのが窓際一番後ろの席なので当たり前のことだ。そして僕の席はそのひとつ前である。だからと言って特別ななにかがあるわけではないが、それでも僕はこの席で良かったと感じていたのだった。
周囲の視線を気にせずスタスタと歩いてきた咲、僕の視線はいつの間にか彼女の一歩一歩を追っていた。しかし、じっと見ているのがばれてしまうのは嫌なので、目が合う前に手元のノートへ視線を移した。
僕の横を蓮根咲が通る瞬間には緊張が最高潮に達していたように感じる。今まで意識したことのないような感情、それは自分でも驚いたが、咲を一目見た瞬間から僕は心を奪われたようなのだ。
その証拠に、周囲に聞こえるんじゃないかと思うくらいに心臓の鼓動が大きくなり、顔面は平熱とは思えないほどに熱くなっている。
そこで、僕は初めての恋をしたのだと悟った。
僕達が高校生になり一年間過ごした後に訪れた二度目の春。早々に学校を辞めてしまったヤツもいたが、残った全員が無事に二年生になった。
今日は始業式なので校長の話や新しい教科書の受け取りくらいしかやることが無い。そのため、放課後には野球部の勧誘についての相談を部員とすることになっていた。
三年生は春の大会が散々な結果で終わり、後は夏に向けての猛特訓と受験や就職、そもそも一番大切な卒業に向けての追い込みもあるため勧誘にはノータッチだ。
体育館から戻ってきてクラス全員がそろった後に担任が入って来た。教壇に立った教師らしからぬ美人は、去年と同じ岡田真弓先生で野球部の顧問でもある。学生時代はソフトボールで鳴らしたらしい。
そしてその後ろから、うちの学校とは別の制服を着た女子生徒がうつむき加減でついてきている。
クラスの何人かが転校生だ、とか、どこの制服だろう、などとざわついている。
「はーい、みんな静かにして。 今日からこのクラスの一員となる生徒を紹介します。
では自己紹介してね」
「はい」
その女子生徒はゆっくりと静かに返事をした。勧誘の文言を考えていた僕も思わずかたずをのみ、期待と緊張感の混じった空気が教室を包む。
黒板に自分の名前を漢字で書き、そして振り向いてから教室内を舐めるような視線でゆっくりと見渡してから口を開いた。
「蓮根咲です。
みなさん、どうぞよろしく」
なぜかわからないが妙な迫力というのか緊張感というのか、あまり感じたことの無い雰囲気だ。例えるならキャッチャーとサインが決まらず息が合わないような、そんな感じか。
真っ黒な髪は光が反射するほどツヤツヤで、大きな瞳には何か吸い込まれそうな迫力があった。整った顔立ち、すらっとしてシャンとした立ち姿は人を簡単に寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
その姿は、女子が苦手な僕でさえ思わず視線を囚われてしまう。
「それでは蓮根さん、とりあえず一番後ろになってしまうけど空いている席があるからそこへ座ってちょうだい。
明日のホームルームと一限目に席替えと委員決めやるわね」
そこで誰かが手を上げて確認した。
「明日は授業無いんですかー?」
「授業は無いわね。
でも二限目からは入学式の準備と各委員会があるわよ。
お昼までなので部活の無い生徒以外はお弁当は不要ってことになるかしら」
「了解でーす」
他の生徒がまた手を上げて発言した。
「席替えはしないでこのままでもいいんじゃないですか?」
「そうだよ、今時男女並べるとかナンセンスだよ、真弓ちゃん」
「俺ももう机にいろいろ入れちゃったよー」
「この席に飽きたら学級委員にでも言って席替えしたらいいんじゃない?」
何人かがわいわいと勝手な事を言っている。
「あらそう? 蓮根さん、あの一番後ろの席で構わないかしら?」
一瞬の間の後、蓮根咲は答えた。
「ええ、問題ありません」
うちの学校は基本的には三年間同じクラスで同じ担任だし、そもそも学業レベルが大したことないということもあるからか、教師と生徒がやたら親しげに話していることがある。
僕はどうも年上の人に馴れ馴れしくするのは苦手なので、教師にはなるべくきちんと話すようにしている。しかし全員にそれを望むのは無理と言うものだ。
結局席替えはなく一年生の終わりと同じ配置になった。たしかこの席に決まったのは全員の希望と取り合いじゃんけんだったか。そのため不満も少ないのだろう。
席替えがなかったことに僕は少し喜んでいた。グラウンドの見える窓際の席は気に入っていたから、というのが今までは最大の理由だった。
蓮根咲が僕の席へ近づいてくる。空いているのが窓際一番後ろの席なので当たり前のことだ。そして僕の席はそのひとつ前である。だからと言って特別ななにかがあるわけではないが、それでも僕はこの席で良かったと感じていたのだった。
周囲の視線を気にせずスタスタと歩いてきた咲、僕の視線はいつの間にか彼女の一歩一歩を追っていた。しかし、じっと見ているのがばれてしまうのは嫌なので、目が合う前に手元のノートへ視線を移した。
僕の横を蓮根咲が通る瞬間には緊張が最高潮に達していたように感じる。今まで意識したことのないような感情、それは自分でも驚いたが、咲を一目見た瞬間から僕は心を奪われたようなのだ。
その証拠に、周囲に聞こえるんじゃないかと思うくらいに心臓の鼓動が大きくなり、顔面は平熱とは思えないほどに熱くなっている。
そこで、僕は初めての恋をしたのだと悟った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる