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第1章

第16話、ギルド特典

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 冒険者ギルドを出る前に、ルルカから色々と教えて貰っていた。

 まず冒険者ランクについてだけど、ランクはEから始まり功績が認められればランクがDCBAと順に上がっていく。
 功績とはぶっちゃけ、ギルド掲示板に貼られた依頼をこなし中間手数料を取っているギルドに対し、多くの利益、お金を落とす事だ。
 また依頼条件にランクが指定される事が殆どなので、ランクが上がればそれだけ稼ぎの良い依頼を受けれるようになるわけ。
 ちなみにAランクの上に位置するのがSランクで、現在このランクの者は勇者様を含む五名しかいないと噂されている。

 次に冒険者ギルドに所属すると、不測の事態に見舞われた時に救援隊が組織される。
 そのためダンジョンに潜る際は、ダンジョンのどこらへんに行くのかと帰還予定日を設定して出るのが決まりである。

 またギルド特典として、格安で物を譲って貰う事が出来るようにもなる。
 その中の一つで一番お世話になるのがお弁当・・・だ。
 朝の七時から整理札が配られ、七時半から500ルガでおにぎりや玉子焼き、鳥の唐揚げと言った様々なオカズが詰め込まれたお弁当の販売が行われる。
 大の大人がお腹いっぱいになれる量があるらしく、それが500ルガで手に入るので毎日多くの冒険者が並ぶらしい。

 次に施設だが、これはランクがB以上の人で、かつ依頼を受注中、もしくはその日に完了させた人限定で、ギルドの二階にある部屋をタダで利用が出来るサービスがある。
 泊まるのは早い者勝ちなのだけど、退出時にきちんと掃除をしないといけないきまりで、これを怠ると一年間どの街のギルドでもこの制度を利用できなくなる。

 またダンジョンで手に入れたアイテムや鉱物については、直接ショップで値段交渉するより安い事が多いらしいのだけど、二階で買い取りなんてのもおこなわれている。
 これは面倒くさがりな冒険者や高ランクの一部の冒険者が利用するらしい。
 ちなみに場所代を払えば、どのランクの冒険者でもギルド前に露店を開き商売をする事も出来るそうだ。

 そして最後が支給品である。
 ギルドカードが最初の支給品になり、他の冒険者からの差し入れがあったりすれば、その都度その旨を記した紙が掲示板に張り出される。
 差し入れを貰うのは基本タダらしい。
 また水筒の無料貸し出しや、前借りでお金を借りる事も出来るとか。

 そして驚くなかれ、支給品の中には魔法・・もある。
 ギルドとしても冒険者、働く人が減るのは困るとの事で、初歩的ではあるけど回復魔法を希望者に無料で教えているのだ。

 その教えて貰える二つの回復魔法の内の一つが『癒しの手ハンドパワー』。
 呪文を唱え終わると手が光に包まれ、その手で傷口や痛みがある箇所に直接触れる事により治癒を行う。
 初歩的だけあって、深い傷には長時間触れていないといけないし、また魔力は毎分9も使う。
 ちなみに魔力総量は、一般人でも30~50あるらしく、魔法の修行を行えば100を超える事も容易いらしい。

 そしてもう一つの魔法が、回復の水を出現させるテクニカル回復魔法である『ベ・イヴベェ』である。
 テクニカルと付いているだけあって、使いこなすのはかなり難しい部類に入る。
 消費魔力が2と言うのは素晴らしいのだけど、回復力を決めるのが術者の優しさ・・・で、この優しさレベル、普通に親切な人クラスでも擦り傷を治すのが限界らしい。
 ちなみにルルカが作り出した球体だと、その中に怪我した箇所を入れて貰えれば短時間で骨折ぐらいを治せるらしい。ただ球体を保つのが大変らしく、気をぬくとものの数秒で形が壊れて消えてしまうそうだ。
 またこのテクニカル回復魔法、世間では違う世界の魔法と言う噂があり、そのため魔力だけでなく優しさも必要であったり、回復量が極端に少ないのではと言われている。

 そしてこれらの情報は、本当なら冒険者ギルドに入会した時、受付嬢さんからその場で教えて貰えていないとおかしい話だそうだ。

 受付嬢さん、テンパってたみたいだけど、やっぱりこれはあんまりだと思います。

 それとこれらの情報、ルルカが思いだしながら教えてくれていたため、ここまで教えて貰うのに結構な時間を費やしていた。
 そこでダンジョンについての情報は、明日悪鬼要塞へ向かう道中で説明、と言う事になった。

 そうして俺と真琴、そしてルルカの三人は冒険者ギルドを後にした。
 太陽の傾きからして、午後の三時か四時くらいかな?

「こっちです」

 ちなみにルルカに安くておすすめの宿がないか聞いたところ、家の近所にオススメな所があるという事で案内してくれる流れになっている。

 この子、流石ソウルリストの中に天使が入っているだけあって、一緒にいる時間が長くなればなるほどに、とてもいい子だという事がわかってきた。
 これはダンジョン探索が終わった時、仮にドロップアイテムがあれば山分けするのはもちろん、色をつけてお礼をしないとだね。

 道を進む中、ふと隣を歩く真琴を見ると、楽しそうに鼻歌を歌っていたりする。

「ねぇねぇ、真琴は今から行く宿に求める条件とかあったりするの? 」

「うーんそうだね、浴場が宿内にあると言うのはポイント高いんだけど、実際に使う部屋がある程度清潔に保たれてないとちょっときついかな。
 ま、最悪ホウキとチリトリがあれば問題ないけどね」

「その時は、俺の部屋も頼もうかな」

 掃除をするのは嫌いじゃないけど、恋人になったわけだし少しじゃれ合う感じで冗談ぽく言ってみたのだけど、真琴が信じられない事でも聞いたかのようなびっくりとした表情になり立ち止まった。
 しかしすぐに我に返ったのか歩みを再開させると、腕を組んで俯きながらフムフムと鼻を鳴らした後に、こちらを向く。

「ユウト、ボクたちは少ない元手で一か月ほど暮らさないといけない。
 そしてどこの世界にいても変わらず大切なものはある。
 それは衣食住なんだけど、食事は食べないと生きてはいけない。だから節約、カットすることは出来ない事は容易に想像する事が出来るかな? 」

「あぁ、うん」

 いきなりなんの話なのかな?

「そしたら衣と住で節約しないといけなくなるわけだけど、冒険者たるものダンジョンに潜って稼ぐわけだから、武器や防具は自身の命を守る最後の砦になるわけだ。
 まぁボクは素手でもかなり強いと思うから今のところ武器はなくてもいいし、キミには指一本触れさせないようにもするから防具も必要ないのかもしれない。
 でもね、ボクらのこの通学シューズだけは早急に適した物へと変えるべきだと思うんだ」

「たしかに街に向かう途中、石ころを踏んだ時は靴を履いてても痛かったし、これから長時間悪路を歩くと考えるとこの靴では心もとないね」

「そうだよね! だから靴の購入は結構優先順位が高い買い物となるわけだ」

「買うとしたらやっぱり登山用のブーツみたいのになるのかな」

「そうだね、冒険者ギルドにいた冒険者たちは、みんなブーツを愛用していたからね」

「靴ってどれくらいの値段なんだろうね? 」

「安く手に入れられればいいんだけど、これは二つ分揃えないといけないからね」

「げ、そうだった」

 そこで真琴が一度咳払いをした。
 そこで改まって真琴を見てみると、その瞳から決意みたいなものがビシビシと伝わってきた。
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