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第1章
第37話、美しき蒼の審判
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真琴の身体が燃えるような真っ赤に染まる。
その周囲の空間も陽炎のように揺らめき始める。
代わって少女を取り囲む空間は、次々に生み出される円錐型の刃で埋め尽くされていっている。
そこで真琴の姿が消えた!
いや、いつの間にか上空まで飛び上がっていた!
それを迎え撃つ準備をしているのか、闇の刃は全てが意思を持ったかのようして少女の周りを複雑に飛び交い始める。
しかし真琴は躊躇する事なく、何もない空間を足場のようにして蹴り上げると、刃の群れの中へ突き進む!
それは一筋の光が闇を払うかのようにして、そこにある刃をごっそりと消失させていき、その先にいる少女への道を作りあげていく。
しかし少女の眼前には、見るからに分厚い蜘蛛の巣型の障壁が展開。
そして轟音!
真琴の蹴りと少女が作る障壁が衝突した。
それはまるで世界そのものが自由落下を始め地面に衝突をしたかのような衝撃で、身体を芯から揺さぶった。
またその影響なのか、少女が作り出した空間そのものに亀裂が生じる。
それは刹那の間で広がり、その亀裂に重なる部分は惑星や恒星でも分け隔てなく破壊し、ついには崩壊を始め分解するものや光を強め爆発をするものと様々な様相を見せ始めた。
そして次の光景を目の当たりにして、俺は思わず息が詰まりそうになる。
攻撃の負荷に耐えられなかったのか、真琴の脚の所々から大量の血が吹き出し始めたのだ。
また時間の経過がゆっくりに感じられる錯覚の中で、真琴の服のあちこちが血に染まっている事にも気づく。
好きな子の痛々しい、見ていられない姿。
その光景を目の当たりにした俺の脳裏に、よぎってしまう。
——真琴の死が。
早鐘を打つ鼓動。
寒気でガタガタと震えてしまう身体に、目の前がチカチカしだす。
そんな中、歯を食いしばる真琴が気力を振り絞り少女の前から跳躍、また姿が忽然と消えた!
このままだと——
このままだと真琴が本当に死んでしまう!
でも俺は無力だ。
——そんな事で諦めるのか?
真琴が苦しんでいるのに、何もしないのか?
何もしないんじゃない、出来ないんだ。
出来ない? 本当に何も出来ないのか!?
このままでいいのか?
そんなのいやだ!
いやだ、いやだいやだいやだ!
真琴が傷つく姿なんてこれ以上見たくない!
俺は、真琴を失いたくない!
俺が真琴を守る!
そう、誰でもないこの俺が、真琴を守ってあげるんだー!!
その内から溢れる心の叫びにのり、波動が現れた。
その波動は俺を中心に、一瞬にして全方位へと広がりをみせ、その波動に触れた星々が不思議な光景をみせ始める。
真っ二つに分かれてしまっていた恒星は、裂かれたところから夥しい数の電流のよう物が走るのが見えたかと思うと、引かれ合い一つの塊へと戻る。
またすでに爆発をし粉々に吹き飛んでいた惑星は、飛び散った塵が渦巻くようにして集まってきたかと思うと、思いっきり押し固められたかのようにして形を成していき新たな惑星へと生まれ変わった。
そして頭部から流れ出る真っ赤な血液で顔半分を濡らす真琴が、遥か上空にいる事を直感で察知。
真琴もその波動をその身で受けると、ズタボロになっていた脚をはじめとした全ての傷が一瞬にして完治した事が伝わってきた。
もしかしてこの力は、俺が出したのだろうか?
いやでも、なんか俺は封印をされているって話だし?
そこで空間の違和感を感じとる。
群れからはぐれた闇ツララの一本が、空間を切り裂き一直線に俺へ目掛けて突き進んで来ていたのだ。
こっ、このままだと俺の胸に突き刺さる!
とそこで棒立ちになってしまっていた俺の左腕が、突然俺の意思とは関係なく闇ツララへ向け上がる。
そして左手の甲のあたり、バングルから、緑色のツタが飛び出る。
『ガシャンッ! 』
ガラスが砕け散るような高音。
これはセンジュ操るツタが正確に闇ツララの中心を捉え突き刺さる事により、一撃で破壊したのだ。
とそこで溢れる程の殺気を撒き散らし始めた真琴が、また忽然と姿を消した!
頭がパニクる中、しかし次に起こった事により思考が完全に停止をし、見入ってしまう。
それは崩壊と再生を行った宇宙が、いつの間にか水に浸かってしまったかのように青色に染まっていたのだ。
星も宇宙空間も、そして俺たち全ても。
また青色に染まると同時に止まっていた。
修復へと向かう星も、それを取り巻く衛星も、横切る流星も、肥大化がおさまっていた恒星の輝きも。
そして少女の障壁を破壊した真琴がゼロ距離掌底打ちを放とうとし、少女は腰に手を当てながらもその凄い眼力だけで真琴を射殺そうとしていた瞬間が、まるで撮られた写真の中に閉じ込められてしまっているかのようにして、ピタリと止まっていた。
そしてその二人の間の空間、傍には、一人の女性が存在していた。
「あなた方の本気同士の衝突は、近隣の星々の配置を狂わすだけではなく、巡り巡ってこちらの宇宙そのものを混沌に陥れるほどの力がありますから」
その女性は、濃淡がはっきりと分かれたエレガントな作りの蒼いロングドレスに身を包んでいた。
しかしそのドレスは大胆にも全面にあるはずの生地部分が数本の紐になっているため胸元が強調され、また黒タイツが透けているためおへそがほぼ丸見え状態。曲線美を誇るスラリとした脇腹から背中にかけての生地も消失しているため、形が良く柔らかそうなヒップラインに目がいってしまう。
そしてそのお尻を包み込むのは黒の際どい下着なんだけど、ドレスの股間部分も生地が無いため丸見え。そんな目のやり場に困る下着から伸びる絶妙な肉付きでロングドレスからチラチラと覗かせる長い脚は、青紫色のタイツと黒のハイヒールでさらに長いものとして見えた。
そしてこんな大胆な服装を着こなしているのは、童顔が少し入ったおとなしそうな印象の二十歳前後のお姉さんで、その涼しげな瞳が隠れるほどの長い前髪を右に寄せているため、綺麗なおでこがチラリと見える。
さらに出来る社長秘書とかがしてそうな黒縁で長方形の眼鏡と、オマケで首元にチョーカーまで付けたフル装備仕様でもある。
はっきし言って、こんな恰好をしている人は世界中を探しても、日本の特殊なお店か大規模なコミケに参加している人ぐらいであろう。
ただ単にキャラクターのコピーをしたのではなく、独創的な方面に突き進んだから行き着きましたと言う、ある種の複合フェチの完成系でもあるように感じる。
しかしそんな目のやり場に困る女性が、なぜか突然この場に現れたのだ?
そこで青の空間はそのままで、宇宙空間が元のダンジョンに戻り身体の自由が戻る。
そこで開口一番、少女が叫ぶ。
「なっ、あんたがなぜここに! 」
「……七番目」
続いて真琴が呟くように言った
七番目?
というか、あの少女のみならず、真琴もあの女性の事を知ってるっぽい?
そこで謎の女性が眼鏡をクイっと上へ持ち上げた。
「五条橋真琴さん、アズゥリュ=デウミュナ=ダークネスさん、お二方共やりすぎです。
ペナルティーを与えますのでご了承ください」
突如空間に巨大な球体が現れた。
その球体は何語かわからないけど、文字みたいな記号みたいなワードの羅列がその中で多く渦巻いている。
そして帯となったそれらの文字が、何本も球体から飛び出した。
帯はそれを迎え撃とうとする真琴とこの場から逃げ出そうとする少女をそれぞれ捕らえ、巻き付き、最終的には雁字搦めにして動けなくする。
「真琴!? 」
身動きが出来ずに床に転ばる真琴に向かい、回復魔法の詠唱を行いながら駆ける。
すると行く手を遮るようにして、ドレスを着た女性が俺と真琴の間にふわりと舞い降りた。
「ユウト様、私はヴィクトリア=ロイゼテスと申します。以後お見知り置きを」
身構える俺に対して、女性はそう名乗るとほんの一瞬だけ微笑んだように見えた。
しかしこの人、なぜ俺の名前を!
それより、真琴が!
俺はヴィクトリアと名乗った女性を睨みつける。
「あなたは真琴になにをしたのですか!?
今すぐそこをどいて下さい! 」
「わかりました、ただし退くのは説明をさせて頂いた後とさせて頂きます」
「……えっ? 」
退いてくれて、説明、をしてくれる?
「まず安心してください、彼女はすぐに死んだりはしません」
「すぐにって、時間が経てば死んじゃうって事なんですか? 」
「ええ、この状態ですとあと六時間五分二十三秒後には魂の強度を超えた断罪の縛りが、彼女の魂を食いつぶしてしまうでしょう」
「なんだって! ……その、どうすれば助かるのですか? 」
「簡単です。ユウト様が使われようとしていた回復魔法を使えば良いだけです。
さすれば縛りの蓄積がゼロになります。
また蓄積がたまりこのように動けなくなるまでには168時間の猶予があります。
それまでに回復魔法で蓄積を減らせば、今までとなんら変わらない生活がおくれるでしょう」
この人、ヴィクトリアさんはなんでこんな事をわざわざ俺に説明するんだ?
「あなたはなぜそれを?
……いや、以前の俺にあった事があるのですか? 」
するとヴィクトリアさんが今度ははっきりとした笑みを浮かべる。
「いいえ、ありません」
そして道を開けてくれた。
ヴィクトリアさんは大丈夫だと言ったけど、真琴は常時身体中から血を噴き出していた。
急がないと!
回復魔法だけじゃなくて、輸血も必要かもしれないのだから!
でも輸血……ってどうやってすればいいんだ?
とっ、とにかく回復だ!
バケツをひっくり返したぐらいの勢いで白濁液を真琴にかけていく。
そして塗りこみながらも呪文の詠唱をして、すぐに発動してはまた詠唱、というサイクルを何度も何度も行った。
あれ? 真琴の肌が、小麦色になってる箇所がある!
するとそれに気づくのを待っていたみたいなタイミングで、後ろからヴィクトリアさんの声が掛かる。
「ユウト様と同じように、細胞レベルでの縛りがおこなわれました。
ただしユウト様のような完全版ではないため、その範囲も狭く、身体を中心に四肢の少し先までしかなく、また回復をすれば肌の色が戻る劣化版となります」
たしかに首と二の腕、そして太ももの半分から身体側が小麦色に染まっている。
って事は、真琴の身体の方も小麦色って事だよね?
チラリと見えている鎖骨部分も綺麗な小麦色に焼けたみたいになっているし。
とっ、とにかく回復だ!
そしてヌリヌリをしていると、真琴の肌の色が白へと戻り、それから少しして吸収もおさまるとヌルヌルになった。
ヴィクトリアさんの言った通りか。
それよりあとの問題は輸血だ。
俺と真琴は同じ血液型だから、病院のような施設に行けば助かる可能性がある!
「そんなにそわそわされて、どうされたのですか? 」
ヴィクトリアさんが不思議そうにこちらを見ている。
そうだ! ヴィクトリアさんも女神様っぽいから、輸血に関する事でなにか有用な情報を教えてくれるかも!
「ヴィクトリアさん、この世界に俺の血を真琴にあげれる方法とかありますか? 」
「血をあげる、ですか? 」
「はい、真琴は沢山の血を流してしまっているから」
「今の時代の地球ではそのような事をしているのでしたね。
……血液とは一人一人で異なる指紋のようなもので、例え型が同じでも、極力他人の血を入れる事は避けたほうが良いかと思われますが」
「……そうなんですか」
「ただしその回復魔法は血液が足りないのであれば浸透して血液の代わりにもなりますから、血液不足はもう心配しなくて大丈夫ですよ? 」
「そっ、そうなんですね! 」
そう言えばセンジュも血液の代わりに白濁液を飲んでいるんだった!
兎に角凄いぞテクニカル回復魔法、ベ・イヴベェ!
その周囲の空間も陽炎のように揺らめき始める。
代わって少女を取り囲む空間は、次々に生み出される円錐型の刃で埋め尽くされていっている。
そこで真琴の姿が消えた!
いや、いつの間にか上空まで飛び上がっていた!
それを迎え撃つ準備をしているのか、闇の刃は全てが意思を持ったかのようして少女の周りを複雑に飛び交い始める。
しかし真琴は躊躇する事なく、何もない空間を足場のようにして蹴り上げると、刃の群れの中へ突き進む!
それは一筋の光が闇を払うかのようにして、そこにある刃をごっそりと消失させていき、その先にいる少女への道を作りあげていく。
しかし少女の眼前には、見るからに分厚い蜘蛛の巣型の障壁が展開。
そして轟音!
真琴の蹴りと少女が作る障壁が衝突した。
それはまるで世界そのものが自由落下を始め地面に衝突をしたかのような衝撃で、身体を芯から揺さぶった。
またその影響なのか、少女が作り出した空間そのものに亀裂が生じる。
それは刹那の間で広がり、その亀裂に重なる部分は惑星や恒星でも分け隔てなく破壊し、ついには崩壊を始め分解するものや光を強め爆発をするものと様々な様相を見せ始めた。
そして次の光景を目の当たりにして、俺は思わず息が詰まりそうになる。
攻撃の負荷に耐えられなかったのか、真琴の脚の所々から大量の血が吹き出し始めたのだ。
また時間の経過がゆっくりに感じられる錯覚の中で、真琴の服のあちこちが血に染まっている事にも気づく。
好きな子の痛々しい、見ていられない姿。
その光景を目の当たりにした俺の脳裏に、よぎってしまう。
——真琴の死が。
早鐘を打つ鼓動。
寒気でガタガタと震えてしまう身体に、目の前がチカチカしだす。
そんな中、歯を食いしばる真琴が気力を振り絞り少女の前から跳躍、また姿が忽然と消えた!
このままだと——
このままだと真琴が本当に死んでしまう!
でも俺は無力だ。
——そんな事で諦めるのか?
真琴が苦しんでいるのに、何もしないのか?
何もしないんじゃない、出来ないんだ。
出来ない? 本当に何も出来ないのか!?
このままでいいのか?
そんなのいやだ!
いやだ、いやだいやだいやだ!
真琴が傷つく姿なんてこれ以上見たくない!
俺は、真琴を失いたくない!
俺が真琴を守る!
そう、誰でもないこの俺が、真琴を守ってあげるんだー!!
その内から溢れる心の叫びにのり、波動が現れた。
その波動は俺を中心に、一瞬にして全方位へと広がりをみせ、その波動に触れた星々が不思議な光景をみせ始める。
真っ二つに分かれてしまっていた恒星は、裂かれたところから夥しい数の電流のよう物が走るのが見えたかと思うと、引かれ合い一つの塊へと戻る。
またすでに爆発をし粉々に吹き飛んでいた惑星は、飛び散った塵が渦巻くようにして集まってきたかと思うと、思いっきり押し固められたかのようにして形を成していき新たな惑星へと生まれ変わった。
そして頭部から流れ出る真っ赤な血液で顔半分を濡らす真琴が、遥か上空にいる事を直感で察知。
真琴もその波動をその身で受けると、ズタボロになっていた脚をはじめとした全ての傷が一瞬にして完治した事が伝わってきた。
もしかしてこの力は、俺が出したのだろうか?
いやでも、なんか俺は封印をされているって話だし?
そこで空間の違和感を感じとる。
群れからはぐれた闇ツララの一本が、空間を切り裂き一直線に俺へ目掛けて突き進んで来ていたのだ。
こっ、このままだと俺の胸に突き刺さる!
とそこで棒立ちになってしまっていた俺の左腕が、突然俺の意思とは関係なく闇ツララへ向け上がる。
そして左手の甲のあたり、バングルから、緑色のツタが飛び出る。
『ガシャンッ! 』
ガラスが砕け散るような高音。
これはセンジュ操るツタが正確に闇ツララの中心を捉え突き刺さる事により、一撃で破壊したのだ。
とそこで溢れる程の殺気を撒き散らし始めた真琴が、また忽然と姿を消した!
頭がパニクる中、しかし次に起こった事により思考が完全に停止をし、見入ってしまう。
それは崩壊と再生を行った宇宙が、いつの間にか水に浸かってしまったかのように青色に染まっていたのだ。
星も宇宙空間も、そして俺たち全ても。
また青色に染まると同時に止まっていた。
修復へと向かう星も、それを取り巻く衛星も、横切る流星も、肥大化がおさまっていた恒星の輝きも。
そして少女の障壁を破壊した真琴がゼロ距離掌底打ちを放とうとし、少女は腰に手を当てながらもその凄い眼力だけで真琴を射殺そうとしていた瞬間が、まるで撮られた写真の中に閉じ込められてしまっているかのようにして、ピタリと止まっていた。
そしてその二人の間の空間、傍には、一人の女性が存在していた。
「あなた方の本気同士の衝突は、近隣の星々の配置を狂わすだけではなく、巡り巡ってこちらの宇宙そのものを混沌に陥れるほどの力がありますから」
その女性は、濃淡がはっきりと分かれたエレガントな作りの蒼いロングドレスに身を包んでいた。
しかしそのドレスは大胆にも全面にあるはずの生地部分が数本の紐になっているため胸元が強調され、また黒タイツが透けているためおへそがほぼ丸見え状態。曲線美を誇るスラリとした脇腹から背中にかけての生地も消失しているため、形が良く柔らかそうなヒップラインに目がいってしまう。
そしてそのお尻を包み込むのは黒の際どい下着なんだけど、ドレスの股間部分も生地が無いため丸見え。そんな目のやり場に困る下着から伸びる絶妙な肉付きでロングドレスからチラチラと覗かせる長い脚は、青紫色のタイツと黒のハイヒールでさらに長いものとして見えた。
そしてこんな大胆な服装を着こなしているのは、童顔が少し入ったおとなしそうな印象の二十歳前後のお姉さんで、その涼しげな瞳が隠れるほどの長い前髪を右に寄せているため、綺麗なおでこがチラリと見える。
さらに出来る社長秘書とかがしてそうな黒縁で長方形の眼鏡と、オマケで首元にチョーカーまで付けたフル装備仕様でもある。
はっきし言って、こんな恰好をしている人は世界中を探しても、日本の特殊なお店か大規模なコミケに参加している人ぐらいであろう。
ただ単にキャラクターのコピーをしたのではなく、独創的な方面に突き進んだから行き着きましたと言う、ある種の複合フェチの完成系でもあるように感じる。
しかしそんな目のやり場に困る女性が、なぜか突然この場に現れたのだ?
そこで青の空間はそのままで、宇宙空間が元のダンジョンに戻り身体の自由が戻る。
そこで開口一番、少女が叫ぶ。
「なっ、あんたがなぜここに! 」
「……七番目」
続いて真琴が呟くように言った
七番目?
というか、あの少女のみならず、真琴もあの女性の事を知ってるっぽい?
そこで謎の女性が眼鏡をクイっと上へ持ち上げた。
「五条橋真琴さん、アズゥリュ=デウミュナ=ダークネスさん、お二方共やりすぎです。
ペナルティーを与えますのでご了承ください」
突如空間に巨大な球体が現れた。
その球体は何語かわからないけど、文字みたいな記号みたいなワードの羅列がその中で多く渦巻いている。
そして帯となったそれらの文字が、何本も球体から飛び出した。
帯はそれを迎え撃とうとする真琴とこの場から逃げ出そうとする少女をそれぞれ捕らえ、巻き付き、最終的には雁字搦めにして動けなくする。
「真琴!? 」
身動きが出来ずに床に転ばる真琴に向かい、回復魔法の詠唱を行いながら駆ける。
すると行く手を遮るようにして、ドレスを着た女性が俺と真琴の間にふわりと舞い降りた。
「ユウト様、私はヴィクトリア=ロイゼテスと申します。以後お見知り置きを」
身構える俺に対して、女性はそう名乗るとほんの一瞬だけ微笑んだように見えた。
しかしこの人、なぜ俺の名前を!
それより、真琴が!
俺はヴィクトリアと名乗った女性を睨みつける。
「あなたは真琴になにをしたのですか!?
今すぐそこをどいて下さい! 」
「わかりました、ただし退くのは説明をさせて頂いた後とさせて頂きます」
「……えっ? 」
退いてくれて、説明、をしてくれる?
「まず安心してください、彼女はすぐに死んだりはしません」
「すぐにって、時間が経てば死んじゃうって事なんですか? 」
「ええ、この状態ですとあと六時間五分二十三秒後には魂の強度を超えた断罪の縛りが、彼女の魂を食いつぶしてしまうでしょう」
「なんだって! ……その、どうすれば助かるのですか? 」
「簡単です。ユウト様が使われようとしていた回復魔法を使えば良いだけです。
さすれば縛りの蓄積がゼロになります。
また蓄積がたまりこのように動けなくなるまでには168時間の猶予があります。
それまでに回復魔法で蓄積を減らせば、今までとなんら変わらない生活がおくれるでしょう」
この人、ヴィクトリアさんはなんでこんな事をわざわざ俺に説明するんだ?
「あなたはなぜそれを?
……いや、以前の俺にあった事があるのですか? 」
するとヴィクトリアさんが今度ははっきりとした笑みを浮かべる。
「いいえ、ありません」
そして道を開けてくれた。
ヴィクトリアさんは大丈夫だと言ったけど、真琴は常時身体中から血を噴き出していた。
急がないと!
回復魔法だけじゃなくて、輸血も必要かもしれないのだから!
でも輸血……ってどうやってすればいいんだ?
とっ、とにかく回復だ!
バケツをひっくり返したぐらいの勢いで白濁液を真琴にかけていく。
そして塗りこみながらも呪文の詠唱をして、すぐに発動してはまた詠唱、というサイクルを何度も何度も行った。
あれ? 真琴の肌が、小麦色になってる箇所がある!
するとそれに気づくのを待っていたみたいなタイミングで、後ろからヴィクトリアさんの声が掛かる。
「ユウト様と同じように、細胞レベルでの縛りがおこなわれました。
ただしユウト様のような完全版ではないため、その範囲も狭く、身体を中心に四肢の少し先までしかなく、また回復をすれば肌の色が戻る劣化版となります」
たしかに首と二の腕、そして太ももの半分から身体側が小麦色に染まっている。
って事は、真琴の身体の方も小麦色って事だよね?
チラリと見えている鎖骨部分も綺麗な小麦色に焼けたみたいになっているし。
とっ、とにかく回復だ!
そしてヌリヌリをしていると、真琴の肌の色が白へと戻り、それから少しして吸収もおさまるとヌルヌルになった。
ヴィクトリアさんの言った通りか。
それよりあとの問題は輸血だ。
俺と真琴は同じ血液型だから、病院のような施設に行けば助かる可能性がある!
「そんなにそわそわされて、どうされたのですか? 」
ヴィクトリアさんが不思議そうにこちらを見ている。
そうだ! ヴィクトリアさんも女神様っぽいから、輸血に関する事でなにか有用な情報を教えてくれるかも!
「ヴィクトリアさん、この世界に俺の血を真琴にあげれる方法とかありますか? 」
「血をあげる、ですか? 」
「はい、真琴は沢山の血を流してしまっているから」
「今の時代の地球ではそのような事をしているのでしたね。
……血液とは一人一人で異なる指紋のようなもので、例え型が同じでも、極力他人の血を入れる事は避けたほうが良いかと思われますが」
「……そうなんですか」
「ただしその回復魔法は血液が足りないのであれば浸透して血液の代わりにもなりますから、血液不足はもう心配しなくて大丈夫ですよ? 」
「そっ、そうなんですね! 」
そう言えばセンジュも血液の代わりに白濁液を飲んでいるんだった!
兎に角凄いぞテクニカル回復魔法、ベ・イヴベェ!
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