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3話 初めてだったらすみません
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まさかの返答に、透はびっくりした。聞き間違いかと思ったが、顔を赤らめているグレイドを見て、透は自分の額に手を当てて少し考えた。そして、人命救助のためだと自分に言い聞かせ、意を決した。
(これは人命救助だ……よし)
透は解毒剤を持ってベッドの端に座った。グレイドは目を閉じようとしないので、透は少し照れながらお願いする。
「……グレイドさん、目を閉じてください」
グレイドは透の言葉に静かに従った。目を閉じた彼の美しい顔を、透はゆっくりと眺めた。高く通った鼻筋、長く豊かな睫毛、そして今は熱で上気した頬。こんなにも完璧な容姿の人がいるのだと、改めて感心する。
透はドキドキと早まる心臓の音を無視して、解毒剤を口に含んだ。そして、震える手でそっとグレイドの顔に触れ、唇を優しく押し付けた。
透が口移しでゆっくりと薬を飲ませていると、突然、グレイドに腕を強く引かれた。バランスを崩した透は、そのままベッドに押し倒される。透はわけが分からず、グレイドを見つめていると、彼の唇が透の唇を塞いだ。
「……?! んんっ……!」
唇を吸われ、口の中に舌が入ってくる。くちゅくちゅと水音が透の耳に響いた。息がうまくできなくて、透の頭は真っ白になる。
(突然、どうしたんだ……!?)
透の心臓が激しく脈打ち、身体が徐々に熱くなっていく。我に返った透は、グレイドを押し退けて抵抗しようとしたが、さらに強く抱きしめられ、深く口づけられてしまった。
「……グレイド、さ……んっ」
薬は苦いはずなのに、なぜこんなに甘く感じるのだろうか。これは毒のせいなのだろうか。透はぼんやりと考えながら、抵抗するのをやめ、されるがままに身を任せた。
やがて、グレイドの唇がゆっくりと離れていく。唇が解放された途端、透は深く息を吸い込んだ。
「はぁ……グレイドさん?」
透が声をかけると、グレイドは力なくベッドに倒れ込み、静かな寝息を立て始めた。どうやら眠ってしまったようだ。
透はほっと胸をなで下ろし、まだ熱が冷めない身体と、密かに反応している下半身に気づき、恥ずかしさでうつむいた。
「あんなキスされたら、誰だってこうなるだろ……」
しばらくして、透がグレイドの顔を見ると、彼の唇が濡れて、てかてかと光っているのが目に入った。先ほどのキスを思い出して顔が熱くなる。透は慌てて指でその唇を拭おうとした。
グレイドの唇をそっとなぞりながら、ふと、これが自分のファーストキスだったと思い出した。
(グレイドさんも、これが初めてなんだろうか?浮いた話、聞いたことないけど……)
「……僕が初めてだったら、すみません」
透はグレイドのことを尊敬しているから、キスも嫌ではなかった。でも、グレイドは後で思い出して不快に感じるかもしれない。そう考えると、透の心は沈んでいった。
「……透?」
「……!」
落ち込んでいると、グレイドの声がして、透は心臓が飛び跳ねるほど驚いた。ゆっくりと顔を向けると、グレイドが頭を抑えながら眉をひそめている。透は少し気まずく感じながらも、彼の容態を尋ねた。
「グレイドさん、気分はどうですか?」
「だいぶ楽になった。……俺は、気を失ったのか?」
「はい。さっきのことは、不快かもしれませんが……」
透がそう言うと、グレイドは首を傾げた。
「……? さっきのこととは、一体なんだ?」
その言葉に、透は言葉を失った。グレイドは、あのキスのことを覚えていないのだろうか?透は内心、複雑な気持ちになった。
「……たいしたことでは、ないです。忘れた方がいいです」
透にそう言われて、不思議に思いながらもグレイドはうなずいた。そして無意識に自分の唇を指で触れる。
透はほっと胸をなでおろすと同時に、得体の知れない寂しさが胸に広がっていくのを感じた。
「怪我が治るまで、ここで安静にしてください」
「……分かった」
透はぎこちない微笑みを浮かべ、気分転換をするように昼食の準備を始めた。
(これは人命救助だ……よし)
透は解毒剤を持ってベッドの端に座った。グレイドは目を閉じようとしないので、透は少し照れながらお願いする。
「……グレイドさん、目を閉じてください」
グレイドは透の言葉に静かに従った。目を閉じた彼の美しい顔を、透はゆっくりと眺めた。高く通った鼻筋、長く豊かな睫毛、そして今は熱で上気した頬。こんなにも完璧な容姿の人がいるのだと、改めて感心する。
透はドキドキと早まる心臓の音を無視して、解毒剤を口に含んだ。そして、震える手でそっとグレイドの顔に触れ、唇を優しく押し付けた。
透が口移しでゆっくりと薬を飲ませていると、突然、グレイドに腕を強く引かれた。バランスを崩した透は、そのままベッドに押し倒される。透はわけが分からず、グレイドを見つめていると、彼の唇が透の唇を塞いだ。
「……?! んんっ……!」
唇を吸われ、口の中に舌が入ってくる。くちゅくちゅと水音が透の耳に響いた。息がうまくできなくて、透の頭は真っ白になる。
(突然、どうしたんだ……!?)
透の心臓が激しく脈打ち、身体が徐々に熱くなっていく。我に返った透は、グレイドを押し退けて抵抗しようとしたが、さらに強く抱きしめられ、深く口づけられてしまった。
「……グレイド、さ……んっ」
薬は苦いはずなのに、なぜこんなに甘く感じるのだろうか。これは毒のせいなのだろうか。透はぼんやりと考えながら、抵抗するのをやめ、されるがままに身を任せた。
やがて、グレイドの唇がゆっくりと離れていく。唇が解放された途端、透は深く息を吸い込んだ。
「はぁ……グレイドさん?」
透が声をかけると、グレイドは力なくベッドに倒れ込み、静かな寝息を立て始めた。どうやら眠ってしまったようだ。
透はほっと胸をなで下ろし、まだ熱が冷めない身体と、密かに反応している下半身に気づき、恥ずかしさでうつむいた。
「あんなキスされたら、誰だってこうなるだろ……」
しばらくして、透がグレイドの顔を見ると、彼の唇が濡れて、てかてかと光っているのが目に入った。先ほどのキスを思い出して顔が熱くなる。透は慌てて指でその唇を拭おうとした。
グレイドの唇をそっとなぞりながら、ふと、これが自分のファーストキスだったと思い出した。
(グレイドさんも、これが初めてなんだろうか?浮いた話、聞いたことないけど……)
「……僕が初めてだったら、すみません」
透はグレイドのことを尊敬しているから、キスも嫌ではなかった。でも、グレイドは後で思い出して不快に感じるかもしれない。そう考えると、透の心は沈んでいった。
「……透?」
「……!」
落ち込んでいると、グレイドの声がして、透は心臓が飛び跳ねるほど驚いた。ゆっくりと顔を向けると、グレイドが頭を抑えながら眉をひそめている。透は少し気まずく感じながらも、彼の容態を尋ねた。
「グレイドさん、気分はどうですか?」
「だいぶ楽になった。……俺は、気を失ったのか?」
「はい。さっきのことは、不快かもしれませんが……」
透がそう言うと、グレイドは首を傾げた。
「……? さっきのこととは、一体なんだ?」
その言葉に、透は言葉を失った。グレイドは、あのキスのことを覚えていないのだろうか?透は内心、複雑な気持ちになった。
「……たいしたことでは、ないです。忘れた方がいいです」
透にそう言われて、不思議に思いながらもグレイドはうなずいた。そして無意識に自分の唇を指で触れる。
透はほっと胸をなでおろすと同時に、得体の知れない寂しさが胸に広がっていくのを感じた。
「怪我が治るまで、ここで安静にしてください」
「……分かった」
透はぎこちない微笑みを浮かべ、気分転換をするように昼食の準備を始めた。
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