29 / 37
29話 甘いな ※
しおりを挟む最初は触れ合うだけのキスだった。しかし、唇が重なるたびに熱がこもり、それは次第に互いを求めるように深くなっていった。
「……んっ……」
透の胸は激しくドキドキと鳴り響き、乱れる呼吸はグレイドの口づけに吸い込まれていく。彼の逞しい腕にしっかりと支えられながら、透は濃厚なキスに溺れていた。
だが、二人の情熱的なキスを目の前で見ていた竜の青年は、それでもなお、納得できなさそうに口を開いた。
「……何をしているんだ? 恋人だと言うなら、交尾を見せてみろ」
その言葉に、透の顔は真っ赤になった。キスだけでは通用しないらしい。
(そんな……どうすればいいんだ……!)
透が心の中で半ば泣きそうになっていると、グレイドの大きな手に身体を抱き上げられた。透の足が床から離れ、宙に浮く。
「え?……グレイドさん!?」
驚く透を強く抱え、グレイドは真っ直ぐ洞窟の奥に置かれた深紅のベッドの方へ歩き出した。彼の瞳には一切の迷いがない。
「……恋人のフリをするんだろう? 俺に任せろ」
そう囁き、透の頬にそっと口づける。低く落ち着いた声は不思議な安心感を与えながらも、透の胸の鼓動を一層かき乱した。
グレイドはベッドに透を降ろすと、ためらうことなく、そして素早く自身の騎士団の制服を脱ぎ始める。瞬く間に露わになった鍛え抜かれた体躯。透はその熱を間近に感じてめまいがした。
「あ、あの……」
断ろうと口を開くものの、自分から恋人のフリをしてほしいと提案した手前、言葉が続かない。指先が無意識にシーツを掴み、逃げ場のない気恥ずかしさが全身を包んだ。
グレイドの長い指が透の髪を優しく梳かし、次に首筋をなぞる。ゆっくりと身体を撫でられるその刺激に、透は思わずかすかに声を漏らした。
「……んっ」
すぐ近くでそれを聞いたグレイドの目が細められた。その視線は、熱を帯びて透の全身を焼き付けるようだ。
グレイドは透に夢中になり、洞窟の中にいる竜の青年の存在を忘れそうになった。だが、ハッとしたように振り返り、ベッドの天蓋のカーテンを勢いよく下ろした。薄い布で、外からは二人の姿がぼんやりとしか見えなくなる。
「……透を見ることは許されない」
低く、決意に満ちた声でグレイドは呟いた。それは演技ではなく本心だった。本来であれば、透の声も身体も、他の誰にも見せたくなかったのだ。
優雅に椅子に座っていた赤髪の青年は、視界を遮られ、不満げに鼻を鳴らした。
「……仕方ない。だが、音だけでも十分だ」
その言葉を聞いた透は、羞恥と緊張で全身を震わせた。
グレイドの手が透のベルトを緩め、白い肌をあらわにしていく。服がするりと滑り落ちるたび、洞窟の冷たい空気に素肌が触れ、透は小さく身を縮め、熱を帯びた吐息を漏らした。
「寒くないか?」
「大丈夫です……」
そのとき、近くに置かれていた透のバッグの中から薬瓶が見えた。グレイドはちらりと目に入ったそれを手に取り、栓を開けた。ふわりと、周囲の空気を一変させるような甘く柔らかな香りが広がる。
「……透、この薬はなんだ?」
低い声が耳元に落ちてきて、透は照れくさそうに視線を逸らしながら、か細い声で答えた。
「……グレイドさんが、飲みやすいように、甘い味がする万能薬を作ってみたんです」
頬を染めながらも、自分のために用意したのだと伝える姿に、グレイドの胸の奥が強く揺さぶられた。
(……俺のために、作ってくれたのか……)
薬瓶を傾けると、とろりとした半透明な液体がグレイドの指先を濡らした。甘い香りとともに、滑らかに伸びていく。
「……それなら、使わないとな」
「……?」
そう呟き、グレイドはその液を透の下腹部にひと筋垂らした。冷たさに透は小さく身を震わせる。だがすぐにグレイドの熱い舌が塗り広げるようにそれを舐め、透の敏感なところをゆっくりと愛撫した。
「あっ!……グレイド、さん……!」
「透、大丈夫だから……力を抜いてくれ」
恥ずかしさと、舌の感触とグレイドの体温が合わさった甘い痺れに、透は声が抑えられなくなった。グレイドは透の反応を確かめるように視線を向け、さらに舌先を這わせた。濡れた透の白い肌は、熱を帯びて光って見える。
「や……あぁ……っ」
「……甘いな」
彼はその様子に満足げに唇をなめると、自らの熱を帯びた肉茎にも液体をかける。そして、透の両足を抱きしめ、太ももの間にゆっくりと自身を押し当てた。
76
あなたにおすすめの小説
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
2026/01/09 加筆修正終了
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる