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55話 五十路、愛される。
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「えーと……どうしましょうか」
私は、執事喫茶【GARDEN】の執事、白銀。
今、非常に困っています。
私の胸に飛び込んできたお二人を抱きしめ返したのですが、お二人が離れてくれません。
「あのー、南さん」
「もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、あと、さっきまで詩織って呼んでくれてたから、詩織って呼んで」
ああー、あれは、横河がそう叫んでいたのでついそう言ってしまっただけで他意はないのですが……。
「えーと、小鳥さん?」
「ごめんね、拓さんごめんね、いっぱいいっぱい迷惑かけちゃったね、ごめんね」
こちらはずっと子供のように泣きじゃくっており私の声がほとんど聞こえていないようです。
どうしましょう。
皆さんがこちらを見ています。
微笑ましく見ていらっしゃる方もいますが、何名かすごく睨んでいらっしゃる方もいます。
それもそうでしょう。こんなジジイが女の子を抱きしめてセクハラですよね。
申し訳ない。
まあ、小鳥さんは実は年上なのですが。
どうしようかと途方に暮れていると、入り口から声が。
「あっはっはっは! 白銀」
見れば、千金楽さんがこちらを見て笑っています。
助けてください!
「そちらのお嬢様二人にいやらしい事するつもりですか? 隅におけませんねえ」
千金楽さんんんんんん!
あの人は本当に! 本当にもう!
ですが、その声にパッと反応した二人が慌てて離れます。
「あ、その、そういうのは二人きりの時に」
「ええー、どうしよう……まだ、心の準備が……」
お二人がごにょごにょ言ってましたがジジイなので聞こえませんでした。
それに、それより、あの人を嗜めなければ!
「千金楽! このお二人にそんな事するわけないでしょう。やめてください」
「はいはい、それは失礼いたしました。では、終わりましたか?」
「一先ずは。そちらは?」
冗談はさておき。千金楽の顔や服は結構ボロボロでした。
「終わった。終わりました。でも、これからです」
「はい」
千金楽は、前を向いて呟きます。私も、前を向かねば。
「あ、あのー、オーナー。結局、オーナーがオーナーを辞めるってのは本当なんですか?」
緋田が真っ赤な顔を両手で挟んで呟いている南さんに向かって恐る恐る尋ねます。
「ひゃわ!? あ、え、あー、うん。その通りです。私はオーナーを辞めます。それは本当です。今後は、千金楽をオーナー、藍水が支配人、黒鶴が執事長、赤が副執事長として運営していきます。これについては、千金楽、黒鶴、藍水、赤そして、キッチンの杉とは話して決まっていることです」
「ええぇええええええ!?」
緋田が驚きの声をあげます。
私も知りませんでした。ただ、千金楽や藍水を知る身としては納得の人選です。
並んでいた千金楽が一歩前に出ます。
「皆さま。また後日公式にご報告させていただきますが、先ほど南元オーナーから話があった通り、私、千金楽がオーナーとなります。ですが、運営に関しては新しい形が既に出来ておりまして、私自身もお嬢様達のお相手をさせて頂き、生の声を頂きたいという気持ちもある為、執事も続けさせていただきたいと思っております。そして、【GARDEN】を最高の空間にすべく尽力していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」
拍手が溢れます。
千金楽が執事も続けると聞き、ほっとします。
まだまだこの人から学ぶことはありますから。
【GARDEN】の事は解決しました。
でも、もう一つ解決しなければならないことが。
「小鳥さんは、カルムを?」
私は、隅で小さく拍手していた小鳥さんに話しかけます。
「うん。もう一回。頑張ってみる。なくなって気付いたから。あそこはわたしにとってとても大切な場所なんだって。だから、また、やってみる……!」
「小鳥さん……あの」
私は開きかけた口を閉じます。辞めた身で何を言うつもりなのか。
「白銀、他の『執事喫茶』との掛け持ちはNGだぞ。あとはまあ、おじいちゃんだし、これからはちょっと休み多めにいれてやるよ、この新オーナーが決めた」
この人はまったくもう。
私は、千金楽に深々と礼をし、小鳥さんに向き合います。
「小鳥さん、今まで通りとは行きませんが、私にも力にならせて下さらないでしょうか。もう一度」
「拓さん……いいの?」
「新オーナーが休みを多めに下さるようなので」
私が微笑むと、小鳥さんは涙をボロボロ零しながら、私に抱きついてきました。
千金楽がにやにやしてるので、ハンズアップした状態で睨んでやりました。
「ということは、カルムのロマグレ様も復活!?」
「嬉しいね、結」
がやがやと喜んでくださる声が聞こえます。
カルムの常連さんたちにもお世話になりましたからね。恩をしっかり返さないと。
「う~……ありがとお、拓さん……でも、結局、詩織の思惑通りになっちゃった」
「南さん?」
漸く私から離れてくれた小鳥さんの言葉に首を傾げます。どういうことでしょう?
「皆さん、千金楽達による新しい【GARDEN】宜しくお願い致します。そして、私からもお願いが」
そう思っていると、南さんが、微笑みながら千金楽の横に並びます。
「私、南詩織は、喫茶カルムのスタッフとして働きますので、どうぞご贔屓に!」
「は?」
「「「「「「「「「「はああああああああああ!?」」」」」」」」」」
小鳥さん以外の皆さんが驚いています。
勿論、私もです。
「ど、ど、どういうことですか? オーナー!?」
「元オーナーね、現オーナー千金楽君。あちらにいる小野賀小鳥さんとお話していたの、もし、再び小鳥さんがお店をすることになったら、私も手伝わせてって」
「……あ、あんた。ここまで読んで……!」
「なんのことかしら? それより、小鳥さん、私、白銀の喫茶カルム、繁盛してみせますので、よろしくお願いしますね。【GARDEN】さん☆」
南さんが挑発的に微笑むと、千金楽さんが珍しく一本取られたような顔をしています。
ああ、そういえば、南さんを見て思い出しました。
「南さん、これを……」
先程、横河に襲われかけた時に何かを落とされて拾っていたのでした。
それは、ラミネート加工されたカードのような……
「あ、さっき、落としちゃってたんだ……ありがと、福家さん。それ、私のお守りなの……」
それは、白い薔薇の折り紙がラミネートされたものでした。
もしかして……
「あなたが私にくれたプレゼント……すっかり色あせて白くなっちゃった」
そう言いながら、南さんは手を伸ばします。
私が渡そうとすると、
「知ってる? 白い薔薇の花言葉は」
「純潔、ですかね……?」
「うん、でもね。『相思相愛』とか『約束』『誓い』っていう意味もあるんだよ?」
「え?」
南さんは、私の手から薔薇のカードを受け取ると、ぎゅっと胸元に引き寄せて、俯き、そして、私を見上げます。
一瞬目がったかと思うと、今度は周りを見渡しながら口を開きます。
「私は、ここのオーナーを辞めたし! だから、もういいよね! みんなとイーブンだよね! だからこれからは、勝負ね!」
思いっきり大きな笑顔を見せニカッと笑う南さんはとても魅力的で美しくて……
「え? もしかして、詩織……」
「そうきたか……」
「いいでしょう、受けて立ちます」
「え? え? え?」
「詩織さん……やるなあ……!」
「マジ……?」
「うふふ……詩織も、面白いなあ」
皆さんが口々に何か仰っているのを呆気にとられながら見ていると、
「白銀!」
私は思わず南さんの方を振り向きます。
いつもクールで格好の良いと思っていた南さんが。
実は、子供っぽくて、エネルギッシュで、無鉄砲な南さんが叫んでいます。
いつも通り美しい黒髪ロングでハリウッド女優なんかも顔負けのプロポーションの身体に優しいクリーム色のスーツを着た美しい女性が、少し泣きそうな目で、大きな勝気そうな瞳を輝かせて、こちらを見ていました。
「私は貴方が大好き! 異性として!」
いやですね、年のせいか耳が遠いもので。
とは言えません。それほどまでに大きくはっきりと、そして、私を見て言って下さったのですから。
ですが、信じられません。
南さんが、私を?
本当に?
いつからか私にとって、恋愛は見守るものになっていました。
物語の世界のもののような。
こんなジジイには縁がないものだと。
そうでは、ないのでしょうか……?
「多分、今までそんな目で見てこなかったと思う。でも、これからは一人の女性として、貴方が好きな女として、私を……見てほしい!」
真っ直ぐな目で、そして、真っ赤な顔で南さんが言葉を必死に紡いでくださっています。
錆びた歯車がガタガタと必死で回り始めるような感覚が、時間が再び動き始めたような感覚が、私を襲います。
「でもね。直ぐに結論を出さないでいいの! もう少し私をちゃんと見て欲しい! そして、貴方が好きな人が沢山居ることを知って欲しい。そして、出来れば、その中から私を選んで欲しい! ……昨日、約束したよね? 出来る事ならなんでもするって、だから、ちゃんと私を、私達を、見て。それだけ!」
そう言うと南さんはあの綺麗な黒髪を振り乱しながら駆けて行ってしまいました。
周りの人たちも呆気に取られています。
これは、私が何かを言うべきでしょうね。
「えー、では……営業に戻りましょう。時間も近づいてますし」
「「「「「「「「「「ええぇええええええ!?」」」」」」」」」」
皆さんが驚いていらっしゃいます。でも、先程の時間は、色々と関係者が来ていましたが、もうそろそろ一般の方のこられる時間になってしまいますので。
「マジで、そんな事言います!?」
「はっはっは! 流石、白銀!」
「ふふ……そうですね。白銀の言う通りです。皆さん、【GARDEN】は通常営業いたします。『いつも通り』お嬢様お坊ちゃんをお出迎え出来るのは、皆様のお陰です。誠にありがとうございます。そして、これからも、皆様のお帰りをお待ちしております」
黒鶴さんがまとめてご挨拶して下さり、それぞれが動き始めます。
一旦は、皆でご協力くださったお嬢様達をお見送りです。
「し、白銀さん!」
「朝日お嬢様、ありがとうございました。お嬢様のお陰です」
「い、いえ! あの!」
「はい?」
「いえ! また来ますから! 私、もっときれいになってまた来ますから!」
「はい。お待ちしておりますよ」
どんどんと美しくなる朝日お嬢様に思わず頬が緩みます。
「白銀」
「はい、なんでしょう真昼お嬢様」
「……良かったら、また踊って」
「勿論」
「そ。なら、いいわ」
朝日嬢様に付き添っていらっしゃった真昼お嬢様が素っ気なくお話して去って行かれます。
でも、少し足取りは楽しそうなステップだったのは気のせいでしょうか。
「白銀さん!」
「結お嬢様」
「カルムにも【GARDEN】にも行きますし、何か困ったことあれば、お、おうちにだって行きますから!」
「ありがとうございます。でも、ウチご存じでしたっけ?」
「あ……」
「まあ、よければ、結にもあたしにも教えてください。一緒に鍋とかしましょう」
結お嬢様が勢いよくこちらに来たのを追いかけて来たのか明美お嬢様が答えてくれます。
「そう、ですね。いいですね。よければ、お越しください。また、カルムででもお話ししましょう。それと、明美お嬢様、明羅お坊ちゃんも含め、ありがとうございました」
「いいんです。兄貴も入れたら、本当に白銀に返しきれない程の恩があたし達にはあるんで。だから、返させてください」
「ありがとうございます」
何鍋がいいかと気の早い結お嬢様をせっつきながら明美お嬢様達が去って行きます。
「白銀さん、好きです」
「はい、私もですよ。凛花お嬢様」
「~~~! そういうん、じゃ、ないんですけど……! でも、しあわせ」
孫のようにかわいい凛花お嬢様が好きだと言ってくれて嬉しいです。
ですが、先ほどの件もあり、勘違いしてしまいそうなので、時と場所を選ぶように気を付けて頂かないと、まだ彼女は若いんですから。
「やはり、シチュエーションが……もっと、二人きりでロマンチックに……」
「りんちゃん、あとでお話ししましょうね」
「寛子お嬢様も、ありがとうございました」
「いえ、力になれたのならよかったです。……あの、私も」
「え?」
「社長」
「いえ、あの、また、いつかお食事にでも行きましょう。いいお店知ってるので是非、二人で」
「ええ、もし機会があれば」
「あ……はい! 是非!」
寛子お嬢様が顔を真っ赤にし去って行くと、それを追うように凛花お嬢様が去って行かれました。
「あの、白銀……」
「カミュお嬢様、レカお嬢様」
「あの、ウチのお兄ちゃんが……」
「カミュお嬢様……今度は是非お兄様が良ければ、一緒にお越しください。一度ちゃんと向き合ってみましょう」
「う、うん! ありがと! ウチ、白銀だいすき!」
「はは、ありがとうございます。レカお嬢様もお気をつけて」
「あ、はい……あの、かっこよかったです。白銀」
「ありがとうございます」
私にしがみ付いて離れようとしないカミュお嬢様をレカお嬢様が引っ張っていかれます。
「拓さ……白銀」
「小鳥お嬢様……」
「ごめんね、そして、これからもお願いね」
「はい、お任せください」
「それと、わたしも! がんばるからね! いっぱいいっぱい!」
「???? はい、がんばりましょう」
「あー……うー……うん、じゃあ、また、連絡するから!」
挙動不審な小鳥さんを笑いながらカルムの常連の皆様が去って行かれます。
また、あの素敵な場所が戻ってくることでしょう。
「白銀、おつかれ」
「未夜お嬢様、ありがとうございました」
「白銀、モテ期来たね」
「そう、なんで、しょうか?」
確かに、南さんから告白めいたものはされましたが……。
「まだ、多分、白銀の中で自身がそっち方面で出来てないから。でもね、白銀。白銀はかっこいいよ。だから、ちゃんと自分を信じてあげて。そして、あなたが好きな人を信じてあげて」
「……はい。かしこまりました」
「これから、大変だよ。覚悟しといてね」
「覚悟って、え?」
にやりと未夜お嬢様は笑うとそのまま去って行ってしまいました。
そして、お嬢様お坊ちゃんが去り、【GARDEN】には執事達が。
千金楽さんがみんなに呼びかけます。
「みんな! 本当におつかれ! でも、まだ今日はこれからだ! そして、これからも一緒にこの【GARDEN】を素敵な場所にしていこう!」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
皆、誇らしげに胸を張り、大きな返事をしたことで、千金楽さんは満足そうに笑います。
「では、皆さん、このあとも誠心誠意お嬢様お坊ちゃんの為に頑張りましょう」
「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」
黒鶴さんの号令で自分の仕事に戻ります。
「千金楽さんは、一度治療した方がいいのでは? 顔ちょっと腫れてますよ」
「そうだな、ちょっと冷やしてくる。……白銀は行かなくていいのか?」
「え? 私ですか?」
「顔、赤いぞ。南さんの告白で照れてる?」
「千金楽さん!」
千金楽さんが、慌てて去って行きます。
そして、皆さんがにやにやしながらこちらを見ています。
それに、何やら入口の方も見てますね。
「あ、あのー」
見れば、南さんが物陰からこちらに声をかけています。
「鞄を忘れてしまっていてー」
恥ずかしそうにそう言う南さんに思わず頬が緩み、かわいいと胸が高鳴ります。
胸が……。
年甲斐もなく、と言われるかもしれません。
でも、私は、まだ、恋が出来るのかもしれません。
勿論、こんなジジイですから、すぐに呆れられるかもしれませんが。
私は、南さんの鞄を回収し、そして、机に差してあった生花を一本抜いて南さんの元へ向かいます。
南さんは恥ずかしそうにもじもじしながら、私を待ってくれています。
その姿が愛らしく……
「お嬢様、鞄を。それと、これを……」
「これは……ルドベキア……」
「ええ、花言葉は」
「『あなたを見つめる』……」
「まだ、自分の気持ちが分からない上に、もうかれ果てたジジイなので……ですが、一度向き合いますから、お待ちいただけますか?」
「……勿論、この立場に立てただけでも私は嬉しいから。そして、私、頑張りますから。覚悟しておいてくださいね。じゃ、じゃあ! また!」
再び南さんは、石鹸のような香りを残しながら走り去っていきます。
「南お嬢様!」
遠くで振り返った詩織お嬢様に、今言うべきことは一つだけ。
「お嬢様のお帰りを、白銀、心よりお待ちしております」
私は、執事喫茶【GARDEN】の執事、白銀。
今、非常に困っています。
私の胸に飛び込んできたお二人を抱きしめ返したのですが、お二人が離れてくれません。
「あのー、南さん」
「もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、あと、さっきまで詩織って呼んでくれてたから、詩織って呼んで」
ああー、あれは、横河がそう叫んでいたのでついそう言ってしまっただけで他意はないのですが……。
「えーと、小鳥さん?」
「ごめんね、拓さんごめんね、いっぱいいっぱい迷惑かけちゃったね、ごめんね」
こちらはずっと子供のように泣きじゃくっており私の声がほとんど聞こえていないようです。
どうしましょう。
皆さんがこちらを見ています。
微笑ましく見ていらっしゃる方もいますが、何名かすごく睨んでいらっしゃる方もいます。
それもそうでしょう。こんなジジイが女の子を抱きしめてセクハラですよね。
申し訳ない。
まあ、小鳥さんは実は年上なのですが。
どうしようかと途方に暮れていると、入り口から声が。
「あっはっはっは! 白銀」
見れば、千金楽さんがこちらを見て笑っています。
助けてください!
「そちらのお嬢様二人にいやらしい事するつもりですか? 隅におけませんねえ」
千金楽さんんんんんん!
あの人は本当に! 本当にもう!
ですが、その声にパッと反応した二人が慌てて離れます。
「あ、その、そういうのは二人きりの時に」
「ええー、どうしよう……まだ、心の準備が……」
お二人がごにょごにょ言ってましたがジジイなので聞こえませんでした。
それに、それより、あの人を嗜めなければ!
「千金楽! このお二人にそんな事するわけないでしょう。やめてください」
「はいはい、それは失礼いたしました。では、終わりましたか?」
「一先ずは。そちらは?」
冗談はさておき。千金楽の顔や服は結構ボロボロでした。
「終わった。終わりました。でも、これからです」
「はい」
千金楽は、前を向いて呟きます。私も、前を向かねば。
「あ、あのー、オーナー。結局、オーナーがオーナーを辞めるってのは本当なんですか?」
緋田が真っ赤な顔を両手で挟んで呟いている南さんに向かって恐る恐る尋ねます。
「ひゃわ!? あ、え、あー、うん。その通りです。私はオーナーを辞めます。それは本当です。今後は、千金楽をオーナー、藍水が支配人、黒鶴が執事長、赤が副執事長として運営していきます。これについては、千金楽、黒鶴、藍水、赤そして、キッチンの杉とは話して決まっていることです」
「ええぇええええええ!?」
緋田が驚きの声をあげます。
私も知りませんでした。ただ、千金楽や藍水を知る身としては納得の人選です。
並んでいた千金楽が一歩前に出ます。
「皆さま。また後日公式にご報告させていただきますが、先ほど南元オーナーから話があった通り、私、千金楽がオーナーとなります。ですが、運営に関しては新しい形が既に出来ておりまして、私自身もお嬢様達のお相手をさせて頂き、生の声を頂きたいという気持ちもある為、執事も続けさせていただきたいと思っております。そして、【GARDEN】を最高の空間にすべく尽力していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」
拍手が溢れます。
千金楽が執事も続けると聞き、ほっとします。
まだまだこの人から学ぶことはありますから。
【GARDEN】の事は解決しました。
でも、もう一つ解決しなければならないことが。
「小鳥さんは、カルムを?」
私は、隅で小さく拍手していた小鳥さんに話しかけます。
「うん。もう一回。頑張ってみる。なくなって気付いたから。あそこはわたしにとってとても大切な場所なんだって。だから、また、やってみる……!」
「小鳥さん……あの」
私は開きかけた口を閉じます。辞めた身で何を言うつもりなのか。
「白銀、他の『執事喫茶』との掛け持ちはNGだぞ。あとはまあ、おじいちゃんだし、これからはちょっと休み多めにいれてやるよ、この新オーナーが決めた」
この人はまったくもう。
私は、千金楽に深々と礼をし、小鳥さんに向き合います。
「小鳥さん、今まで通りとは行きませんが、私にも力にならせて下さらないでしょうか。もう一度」
「拓さん……いいの?」
「新オーナーが休みを多めに下さるようなので」
私が微笑むと、小鳥さんは涙をボロボロ零しながら、私に抱きついてきました。
千金楽がにやにやしてるので、ハンズアップした状態で睨んでやりました。
「ということは、カルムのロマグレ様も復活!?」
「嬉しいね、結」
がやがやと喜んでくださる声が聞こえます。
カルムの常連さんたちにもお世話になりましたからね。恩をしっかり返さないと。
「う~……ありがとお、拓さん……でも、結局、詩織の思惑通りになっちゃった」
「南さん?」
漸く私から離れてくれた小鳥さんの言葉に首を傾げます。どういうことでしょう?
「皆さん、千金楽達による新しい【GARDEN】宜しくお願い致します。そして、私からもお願いが」
そう思っていると、南さんが、微笑みながら千金楽の横に並びます。
「私、南詩織は、喫茶カルムのスタッフとして働きますので、どうぞご贔屓に!」
「は?」
「「「「「「「「「「はああああああああああ!?」」」」」」」」」」
小鳥さん以外の皆さんが驚いています。
勿論、私もです。
「ど、ど、どういうことですか? オーナー!?」
「元オーナーね、現オーナー千金楽君。あちらにいる小野賀小鳥さんとお話していたの、もし、再び小鳥さんがお店をすることになったら、私も手伝わせてって」
「……あ、あんた。ここまで読んで……!」
「なんのことかしら? それより、小鳥さん、私、白銀の喫茶カルム、繁盛してみせますので、よろしくお願いしますね。【GARDEN】さん☆」
南さんが挑発的に微笑むと、千金楽さんが珍しく一本取られたような顔をしています。
ああ、そういえば、南さんを見て思い出しました。
「南さん、これを……」
先程、横河に襲われかけた時に何かを落とされて拾っていたのでした。
それは、ラミネート加工されたカードのような……
「あ、さっき、落としちゃってたんだ……ありがと、福家さん。それ、私のお守りなの……」
それは、白い薔薇の折り紙がラミネートされたものでした。
もしかして……
「あなたが私にくれたプレゼント……すっかり色あせて白くなっちゃった」
そう言いながら、南さんは手を伸ばします。
私が渡そうとすると、
「知ってる? 白い薔薇の花言葉は」
「純潔、ですかね……?」
「うん、でもね。『相思相愛』とか『約束』『誓い』っていう意味もあるんだよ?」
「え?」
南さんは、私の手から薔薇のカードを受け取ると、ぎゅっと胸元に引き寄せて、俯き、そして、私を見上げます。
一瞬目がったかと思うと、今度は周りを見渡しながら口を開きます。
「私は、ここのオーナーを辞めたし! だから、もういいよね! みんなとイーブンだよね! だからこれからは、勝負ね!」
思いっきり大きな笑顔を見せニカッと笑う南さんはとても魅力的で美しくて……
「え? もしかして、詩織……」
「そうきたか……」
「いいでしょう、受けて立ちます」
「え? え? え?」
「詩織さん……やるなあ……!」
「マジ……?」
「うふふ……詩織も、面白いなあ」
皆さんが口々に何か仰っているのを呆気にとられながら見ていると、
「白銀!」
私は思わず南さんの方を振り向きます。
いつもクールで格好の良いと思っていた南さんが。
実は、子供っぽくて、エネルギッシュで、無鉄砲な南さんが叫んでいます。
いつも通り美しい黒髪ロングでハリウッド女優なんかも顔負けのプロポーションの身体に優しいクリーム色のスーツを着た美しい女性が、少し泣きそうな目で、大きな勝気そうな瞳を輝かせて、こちらを見ていました。
「私は貴方が大好き! 異性として!」
いやですね、年のせいか耳が遠いもので。
とは言えません。それほどまでに大きくはっきりと、そして、私を見て言って下さったのですから。
ですが、信じられません。
南さんが、私を?
本当に?
いつからか私にとって、恋愛は見守るものになっていました。
物語の世界のもののような。
こんなジジイには縁がないものだと。
そうでは、ないのでしょうか……?
「多分、今までそんな目で見てこなかったと思う。でも、これからは一人の女性として、貴方が好きな女として、私を……見てほしい!」
真っ直ぐな目で、そして、真っ赤な顔で南さんが言葉を必死に紡いでくださっています。
錆びた歯車がガタガタと必死で回り始めるような感覚が、時間が再び動き始めたような感覚が、私を襲います。
「でもね。直ぐに結論を出さないでいいの! もう少し私をちゃんと見て欲しい! そして、貴方が好きな人が沢山居ることを知って欲しい。そして、出来れば、その中から私を選んで欲しい! ……昨日、約束したよね? 出来る事ならなんでもするって、だから、ちゃんと私を、私達を、見て。それだけ!」
そう言うと南さんはあの綺麗な黒髪を振り乱しながら駆けて行ってしまいました。
周りの人たちも呆気に取られています。
これは、私が何かを言うべきでしょうね。
「えー、では……営業に戻りましょう。時間も近づいてますし」
「「「「「「「「「「ええぇええええええ!?」」」」」」」」」」
皆さんが驚いていらっしゃいます。でも、先程の時間は、色々と関係者が来ていましたが、もうそろそろ一般の方のこられる時間になってしまいますので。
「マジで、そんな事言います!?」
「はっはっは! 流石、白銀!」
「ふふ……そうですね。白銀の言う通りです。皆さん、【GARDEN】は通常営業いたします。『いつも通り』お嬢様お坊ちゃんをお出迎え出来るのは、皆様のお陰です。誠にありがとうございます。そして、これからも、皆様のお帰りをお待ちしております」
黒鶴さんがまとめてご挨拶して下さり、それぞれが動き始めます。
一旦は、皆でご協力くださったお嬢様達をお見送りです。
「し、白銀さん!」
「朝日お嬢様、ありがとうございました。お嬢様のお陰です」
「い、いえ! あの!」
「はい?」
「いえ! また来ますから! 私、もっときれいになってまた来ますから!」
「はい。お待ちしておりますよ」
どんどんと美しくなる朝日お嬢様に思わず頬が緩みます。
「白銀」
「はい、なんでしょう真昼お嬢様」
「……良かったら、また踊って」
「勿論」
「そ。なら、いいわ」
朝日嬢様に付き添っていらっしゃった真昼お嬢様が素っ気なくお話して去って行かれます。
でも、少し足取りは楽しそうなステップだったのは気のせいでしょうか。
「白銀さん!」
「結お嬢様」
「カルムにも【GARDEN】にも行きますし、何か困ったことあれば、お、おうちにだって行きますから!」
「ありがとうございます。でも、ウチご存じでしたっけ?」
「あ……」
「まあ、よければ、結にもあたしにも教えてください。一緒に鍋とかしましょう」
結お嬢様が勢いよくこちらに来たのを追いかけて来たのか明美お嬢様が答えてくれます。
「そう、ですね。いいですね。よければ、お越しください。また、カルムででもお話ししましょう。それと、明美お嬢様、明羅お坊ちゃんも含め、ありがとうございました」
「いいんです。兄貴も入れたら、本当に白銀に返しきれない程の恩があたし達にはあるんで。だから、返させてください」
「ありがとうございます」
何鍋がいいかと気の早い結お嬢様をせっつきながら明美お嬢様達が去って行きます。
「白銀さん、好きです」
「はい、私もですよ。凛花お嬢様」
「~~~! そういうん、じゃ、ないんですけど……! でも、しあわせ」
孫のようにかわいい凛花お嬢様が好きだと言ってくれて嬉しいです。
ですが、先ほどの件もあり、勘違いしてしまいそうなので、時と場所を選ぶように気を付けて頂かないと、まだ彼女は若いんですから。
「やはり、シチュエーションが……もっと、二人きりでロマンチックに……」
「りんちゃん、あとでお話ししましょうね」
「寛子お嬢様も、ありがとうございました」
「いえ、力になれたのならよかったです。……あの、私も」
「え?」
「社長」
「いえ、あの、また、いつかお食事にでも行きましょう。いいお店知ってるので是非、二人で」
「ええ、もし機会があれば」
「あ……はい! 是非!」
寛子お嬢様が顔を真っ赤にし去って行くと、それを追うように凛花お嬢様が去って行かれました。
「あの、白銀……」
「カミュお嬢様、レカお嬢様」
「あの、ウチのお兄ちゃんが……」
「カミュお嬢様……今度は是非お兄様が良ければ、一緒にお越しください。一度ちゃんと向き合ってみましょう」
「う、うん! ありがと! ウチ、白銀だいすき!」
「はは、ありがとうございます。レカお嬢様もお気をつけて」
「あ、はい……あの、かっこよかったです。白銀」
「ありがとうございます」
私にしがみ付いて離れようとしないカミュお嬢様をレカお嬢様が引っ張っていかれます。
「拓さ……白銀」
「小鳥お嬢様……」
「ごめんね、そして、これからもお願いね」
「はい、お任せください」
「それと、わたしも! がんばるからね! いっぱいいっぱい!」
「???? はい、がんばりましょう」
「あー……うー……うん、じゃあ、また、連絡するから!」
挙動不審な小鳥さんを笑いながらカルムの常連の皆様が去って行かれます。
また、あの素敵な場所が戻ってくることでしょう。
「白銀、おつかれ」
「未夜お嬢様、ありがとうございました」
「白銀、モテ期来たね」
「そう、なんで、しょうか?」
確かに、南さんから告白めいたものはされましたが……。
「まだ、多分、白銀の中で自身がそっち方面で出来てないから。でもね、白銀。白銀はかっこいいよ。だから、ちゃんと自分を信じてあげて。そして、あなたが好きな人を信じてあげて」
「……はい。かしこまりました」
「これから、大変だよ。覚悟しといてね」
「覚悟って、え?」
にやりと未夜お嬢様は笑うとそのまま去って行ってしまいました。
そして、お嬢様お坊ちゃんが去り、【GARDEN】には執事達が。
千金楽さんがみんなに呼びかけます。
「みんな! 本当におつかれ! でも、まだ今日はこれからだ! そして、これからも一緒にこの【GARDEN】を素敵な場所にしていこう!」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
皆、誇らしげに胸を張り、大きな返事をしたことで、千金楽さんは満足そうに笑います。
「では、皆さん、このあとも誠心誠意お嬢様お坊ちゃんの為に頑張りましょう」
「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」
黒鶴さんの号令で自分の仕事に戻ります。
「千金楽さんは、一度治療した方がいいのでは? 顔ちょっと腫れてますよ」
「そうだな、ちょっと冷やしてくる。……白銀は行かなくていいのか?」
「え? 私ですか?」
「顔、赤いぞ。南さんの告白で照れてる?」
「千金楽さん!」
千金楽さんが、慌てて去って行きます。
そして、皆さんがにやにやしながらこちらを見ています。
それに、何やら入口の方も見てますね。
「あ、あのー」
見れば、南さんが物陰からこちらに声をかけています。
「鞄を忘れてしまっていてー」
恥ずかしそうにそう言う南さんに思わず頬が緩み、かわいいと胸が高鳴ります。
胸が……。
年甲斐もなく、と言われるかもしれません。
でも、私は、まだ、恋が出来るのかもしれません。
勿論、こんなジジイですから、すぐに呆れられるかもしれませんが。
私は、南さんの鞄を回収し、そして、机に差してあった生花を一本抜いて南さんの元へ向かいます。
南さんは恥ずかしそうにもじもじしながら、私を待ってくれています。
その姿が愛らしく……
「お嬢様、鞄を。それと、これを……」
「これは……ルドベキア……」
「ええ、花言葉は」
「『あなたを見つめる』……」
「まだ、自分の気持ちが分からない上に、もうかれ果てたジジイなので……ですが、一度向き合いますから、お待ちいただけますか?」
「……勿論、この立場に立てただけでも私は嬉しいから。そして、私、頑張りますから。覚悟しておいてくださいね。じゃ、じゃあ! また!」
再び南さんは、石鹸のような香りを残しながら走り去っていきます。
「南お嬢様!」
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「お嬢様のお帰りを、白銀、心よりお待ちしております」
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