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蒼のマンションに帰り着く。
部屋に入った瞬間に崩れ落ちた。
「カナ!?」
蒼に抱き止められる。
「わりぃ……力抜けた……」
案外平気だなって思っていたのに、こんなに気を張っていたのか……。
自分でも気づいていなかった。
「ごめんね。誕生日だからって、久しぶりなのに連れ回しすぎたね……」
また大型犬·蒼が出た。
耳も尻尾も垂れ下がっている。
「大丈夫!楽しかったよ、マジで」
俺は抱かれたまま蒼の背中をポンポンと叩く。
「誕生日なんてさ、あんま関係ないって感じだったのに、今年の誕生日のことは一生忘れない。……マジでありがと」
蒼が本当に嬉しそうに笑う。
あ~、カッコいいな、こいつ。
蒼はずっとカッコいい。
……ずっと。
「今まではご家族に譲ってたけど、これからは毎年祝わせて。一生」
「重いわ」
頭にチョップした。
二人ともラフな部屋着に着替え、届いたピザとビールで乾杯する。
久しぶりのアルコールだ。
特に見るわけでもないテレビをつける。
「今日、女の子たちにキャーキャー言われてる蒼を見てさー、すげーモデルなんだーって思ったよ。オシャレ雑誌とか見ないから、実感なかったんだよなぁ……テレビに出てくれたら俺レベルでも分かるんだけどなー」
「あー、それならモデルじゃなくて俳優とかになれば良かったかな?そんな話もあったけど、これ以上忙しくなるのも嫌だから断ってたんだよねー」
「贅沢者めー!」
取り留めもない会話。
ビールがすすむ。
……酔っぱらう前に言わないとな。
言いづらい……でも……楽しい時間だからこそ、未来の話をしたい。
「蒼……ずっと考えてたんだけどさ、俺、この部屋出て一人暮らしする。お前に世話にならないと生きていけない俺のままでいたくない。もっと一人で進みたいんだ」
「……いいよ」
「えぇっ!?」
思わず、大きな声出た。
「本当に、いいのか?本当に?」
「何で自分で言い出したのにそんな確認するの」
いや、絶対にごねられると思ってた。
説得に相当時間がかかると覚悟してた。
こんなにあっさり……拍子抜けした。
同時に、蒼にとって二人で暮らしてたことはたいしたことなかったんだな、と思う。
簡単に解消できるぐらいの……少しくらいは動揺してもらえるかと思ってた。
……そもそも人助けだしな……優しい蒼が幼馴染みを見捨てられなかっただけの……
もしかして、本当はもっと早く出ていってもらいたかったのかな?
彼女も連れ込んだことないし、俺の世話ばかりで負担しか……
駄目だ!
また昔の俺が顔を出しそうになる。
「なんとなく、そんな気がしてたんだ。今日、言われるかなって」
「そ、か……」
「……条件がある」
「へ?」
条件って、何が?
何の条件?
「気持ち良く、カナを送り出す条件」
「おぅ?」
それは、条件をのめないとどうなる?
反対されるってこと?
気持ち良くではないけど、認めてくれるってこと?
ちょっと、予想外の展開についていけない。
「一、引っ越し先は相談すること。セキュリティとか心配だからね」
うん。それは俺もそうしようと思ってた。
「分かった」
「二、ヒートが不安定なうちは外出する時は連絡して欲しい」
うん。
過保護な気はするが、何かあった時のためにも知っておいてもらった方がいい。
「分かった」
「三、新しい部屋の合鍵が欲しい」
「ん?」
「連絡が取れなくなった時とかのために。本当はご両親が持っておくのがいいと思うけど、遠いから……」
う、ん。
合鍵……って彼女とかに渡すんじゃあ?
いや、いないけど。
あ、緊急用ってことか。
それなら蒼に渡しておいた方がいいな。
不摂生で倒れる……なくはない。
「分かった」
「四、朝、モーニングコールしたい」
「んん?」
「朝一番最初に聞くのはカナの声がいいし、カナにも僕の声を聞いて欲しい」
「いや、俺はずっと家だし関係ないけど、お前は大学とかモデルの仕事でバラバラだろ?わざわざそんな…」
「したいから」
「いや、まぁ、別に俺はいいけど……」
謎な条件出してきたな……。
「最後に五」
まだあったのかよ!
「ヒートの時は側にいたい」
「ダメ」
即答だ。
……そのために、部屋を出ると言っても過言ではないのに。
「なんで?」
「最初の時は……ごめん。お前を利用した。でも、それからもお前は俺に気を使ってくれるけど、それじゃダメだろ。……一人で乗り越えなきゃ」
「なんで?」
「なんでって……」
「好きな相手がヒートで苦しでるのに、何もしちゃいけないのはなんで?」
「お前なぁ……」
だんだん、イライラしてきた。
誰が誰を好きだって?
笑わせんな!!
……ここまで楽しく過ごしてきた誕生日を嫌な感じで終わらせたくない。
ぐっと堪える。
「とにかく!最後の条件以外は分かった。ダメでも俺は出ていく」
「……分かった。また引っ越し先とか相談しよう」
ほっとした。
「奏」
無意識に閉じていた目を開ける。
今、奏って……いつもカナ、なのに…
「俺の番になって」
「なっ……」
真剣な蒼の顔。
冗談でこんなこと言わない。
そんなこと、分かってる。
俺はこんな優しさはいらない。
「……なるわけねぇだろ」
ぐっと拳を握りしめる。
「お前には俺じゃない」
蒼がふーっとため息をつく。
「好きだよ。愛してる。信じてもらえるまでいい続けるよ」
違う。
俺みたいなΩ、誰も番になんて望まない。
不安定なヒートに苦しんで、日常もまともに送れない可哀想な俺。
そんな俺を優しいお前が救ってくれようとしている。
優しい嘘。
もう、いいんだ。
お前を、解放してやりたい。
部屋に入った瞬間に崩れ落ちた。
「カナ!?」
蒼に抱き止められる。
「わりぃ……力抜けた……」
案外平気だなって思っていたのに、こんなに気を張っていたのか……。
自分でも気づいていなかった。
「ごめんね。誕生日だからって、久しぶりなのに連れ回しすぎたね……」
また大型犬·蒼が出た。
耳も尻尾も垂れ下がっている。
「大丈夫!楽しかったよ、マジで」
俺は抱かれたまま蒼の背中をポンポンと叩く。
「誕生日なんてさ、あんま関係ないって感じだったのに、今年の誕生日のことは一生忘れない。……マジでありがと」
蒼が本当に嬉しそうに笑う。
あ~、カッコいいな、こいつ。
蒼はずっとカッコいい。
……ずっと。
「今まではご家族に譲ってたけど、これからは毎年祝わせて。一生」
「重いわ」
頭にチョップした。
二人ともラフな部屋着に着替え、届いたピザとビールで乾杯する。
久しぶりのアルコールだ。
特に見るわけでもないテレビをつける。
「今日、女の子たちにキャーキャー言われてる蒼を見てさー、すげーモデルなんだーって思ったよ。オシャレ雑誌とか見ないから、実感なかったんだよなぁ……テレビに出てくれたら俺レベルでも分かるんだけどなー」
「あー、それならモデルじゃなくて俳優とかになれば良かったかな?そんな話もあったけど、これ以上忙しくなるのも嫌だから断ってたんだよねー」
「贅沢者めー!」
取り留めもない会話。
ビールがすすむ。
……酔っぱらう前に言わないとな。
言いづらい……でも……楽しい時間だからこそ、未来の話をしたい。
「蒼……ずっと考えてたんだけどさ、俺、この部屋出て一人暮らしする。お前に世話にならないと生きていけない俺のままでいたくない。もっと一人で進みたいんだ」
「……いいよ」
「えぇっ!?」
思わず、大きな声出た。
「本当に、いいのか?本当に?」
「何で自分で言い出したのにそんな確認するの」
いや、絶対にごねられると思ってた。
説得に相当時間がかかると覚悟してた。
こんなにあっさり……拍子抜けした。
同時に、蒼にとって二人で暮らしてたことはたいしたことなかったんだな、と思う。
簡単に解消できるぐらいの……少しくらいは動揺してもらえるかと思ってた。
……そもそも人助けだしな……優しい蒼が幼馴染みを見捨てられなかっただけの……
もしかして、本当はもっと早く出ていってもらいたかったのかな?
彼女も連れ込んだことないし、俺の世話ばかりで負担しか……
駄目だ!
また昔の俺が顔を出しそうになる。
「なんとなく、そんな気がしてたんだ。今日、言われるかなって」
「そ、か……」
「……条件がある」
「へ?」
条件って、何が?
何の条件?
「気持ち良く、カナを送り出す条件」
「おぅ?」
それは、条件をのめないとどうなる?
反対されるってこと?
気持ち良くではないけど、認めてくれるってこと?
ちょっと、予想外の展開についていけない。
「一、引っ越し先は相談すること。セキュリティとか心配だからね」
うん。それは俺もそうしようと思ってた。
「分かった」
「二、ヒートが不安定なうちは外出する時は連絡して欲しい」
うん。
過保護な気はするが、何かあった時のためにも知っておいてもらった方がいい。
「分かった」
「三、新しい部屋の合鍵が欲しい」
「ん?」
「連絡が取れなくなった時とかのために。本当はご両親が持っておくのがいいと思うけど、遠いから……」
う、ん。
合鍵……って彼女とかに渡すんじゃあ?
いや、いないけど。
あ、緊急用ってことか。
それなら蒼に渡しておいた方がいいな。
不摂生で倒れる……なくはない。
「分かった」
「四、朝、モーニングコールしたい」
「んん?」
「朝一番最初に聞くのはカナの声がいいし、カナにも僕の声を聞いて欲しい」
「いや、俺はずっと家だし関係ないけど、お前は大学とかモデルの仕事でバラバラだろ?わざわざそんな…」
「したいから」
「いや、まぁ、別に俺はいいけど……」
謎な条件出してきたな……。
「最後に五」
まだあったのかよ!
「ヒートの時は側にいたい」
「ダメ」
即答だ。
……そのために、部屋を出ると言っても過言ではないのに。
「なんで?」
「最初の時は……ごめん。お前を利用した。でも、それからもお前は俺に気を使ってくれるけど、それじゃダメだろ。……一人で乗り越えなきゃ」
「なんで?」
「なんでって……」
「好きな相手がヒートで苦しでるのに、何もしちゃいけないのはなんで?」
「お前なぁ……」
だんだん、イライラしてきた。
誰が誰を好きだって?
笑わせんな!!
……ここまで楽しく過ごしてきた誕生日を嫌な感じで終わらせたくない。
ぐっと堪える。
「とにかく!最後の条件以外は分かった。ダメでも俺は出ていく」
「……分かった。また引っ越し先とか相談しよう」
ほっとした。
「奏」
無意識に閉じていた目を開ける。
今、奏って……いつもカナ、なのに…
「俺の番になって」
「なっ……」
真剣な蒼の顔。
冗談でこんなこと言わない。
そんなこと、分かってる。
俺はこんな優しさはいらない。
「……なるわけねぇだろ」
ぐっと拳を握りしめる。
「お前には俺じゃない」
蒼がふーっとため息をつく。
「好きだよ。愛してる。信じてもらえるまでいい続けるよ」
違う。
俺みたいなΩ、誰も番になんて望まない。
不安定なヒートに苦しんで、日常もまともに送れない可哀想な俺。
そんな俺を優しいお前が救ってくれようとしている。
優しい嘘。
もう、いいんだ。
お前を、解放してやりたい。
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