前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

文字の大きさ
68 / 146

下等生物~テオドール視点~

しおりを挟む
国政の視察も終わった。
結局僕は視察に付いて回っただけで、ムダに一日を費やした気分だった。

「どう?この寄宿学校は他に比べて劣っている所があった?」
「いや、問題ない」
フォルクス様、顔色があまり良くない。
多忙なのだろうか?
まぁ、この国の宰相閣下だ……多忙なのは当たり前か。

「フォルクス、お前、市政まで目が行き届いているのか?平民の暴動が起こった地があると聞く。お前の政策の不満のためだろう。だからこそ私は以前から……」
フォルクス様に対する不敬な言葉の数々。
やっかみだ。
見苦しい。

「あの、僕はもう授業に戻ってもいいですか?」
「あなた達の授業も後で視察する予定よ。テオドールの同行視察はもうおしまい。あとは、それまでお父上とお話でもしたら?当分はお会いできないでしょ」
シュラ先生は興味ありません、といった表情でこちらを見る。

正直、僕もどうでもいい。
ロレーヌに早く帰って欲しい。
父を見ると、気難しい顔をしている。
何だ?またシュラ先生かフォルクス様に言いがかりをつけるのだろうか。

「シュラ、あの庭園にいた平民は?」

僕を含めた三人は意外そうな顔をする。
父が平民に興味を持つなんて、今まで皆無だった。
完全な貴族主義……いや、利己主義なだけか。
自分にしか興味がない。
息子の僕すら、愛を傾ける存在としてではなく、自分がなし得なかったことを実現させるために作ったんだから。

「……あの子がテオドールの学友よ。毒は、本来はあの子を狙ったと思われるわ。もちろん、あの子に非はない」
「あの下等生物にテオドールが悪影響を受けている!テオドールが反抗的になったのはすべてアレのせいだろう!」
「ルカのことを悪く言うのはやめて下さい!」

自分のことはいくらでもなじればいい。
ルカのことだけは、許せない。

「また、父にそのような態度を……。テオドール、どうしてしまったんだ?お前はそんな子ではなかった。ここに来てから突然変わってしまった!」
父が大袈裟に嘆く。
……心が、冷えるばかりだ。

「……ここに親子喧嘩を見に来た訳ではない。失礼する」
フォルクス様はこめかみを押さえながら、執務室を出られた。

「僕は確かに変わった。ルカに出会って、諦めていた自分の人生を自分の意思で切り開いていこうと思ったんです。僕は魔法を極め、士長となり、国の中央で実権を握りたいと思ったことなどない。それは僕の夢ではなく父上の夢の残骸です!」
「テオドール……」
「……でも、ロレーヌは好きです。民も地も守りたいと思っている。そう、思っていると気づかせてくれたんです。それではダメですか?力をつけ、よりロレーヌを富ませるために……」
「黙れっ!」

父の憤怒の表情は久しぶりに見た。
小さい時にもう魔法量を増やすのは嫌だと訴えた時以来か。
あの時は激しく折檻され、意識を失いかけた時に虚ろな目で見上げた父が、人ではないように映った。

それ以来、僕は恐怖のあまり自ら進んで人形に成り下がった。

……でも、今は違う。

「ロレーヌを守りたい?そんな価値のないことをしてどうする!お前は大人しく言われたことをやっておけばいいのだ!あの平民こそ、お前にとって毒だ。そんなモノ、この父が……」
「ルカに何かするなら、父上でも許しません。ルカは作られた僕と違って、天賦の才がある。この国にとって、必要なのは僕よりもルカだ。僕に言わせれば、父上の方がルカよりもよほど下等生物ですよ。……失礼します」

もう、顔を見ることもなく一礼し執務室を退室した。

はぁ……報復、されるんだろうな。
プライドの塊のような父が、ここまで言われて黙っているはずがない。
ルカに害が及ばないように……それだけだ。


中庭を抜けようと歩いていると、ベンチに一人、ルカが座って項垂れている。
どうしたんだろう?
僕は静かにその側まで歩き、そっとその隣に腰かけた。
ルカが気付き、僕の存在を確認する。

「どうしたの?こんな所で」
「テオ。父さんとはもういいのか?」
「あぁ、授業の様子は後で見に来るみたいだけどね。フォルクス様に対する態度が見てられなくて……自分の父親の矮小さが嫌になるよね」

ルカについて言っていたことは伝えない。
僕のことで、ルカを煩わせたくない。

僕はふと、空を見上げる。
あぁ、空なんてこうやって見たことあったかな?
そんな余裕すらない毎日を送っていた。

「もう、家なんか出ようかな……」

ふと、口に出してしまった。
ルカは驚いた表情で僕を見ている。

「テオ、何かあったのか?」
心配そうに僕の顔を覗き込み、見つめる瞳。
真っ黒なその瞳に自分の顔が映っている。
情けない顔。

でも、家の鏡に映っていた死んだ瞳の人形よりも、ずっとこの情けない顔の僕が好きだ。

僕の返事を促すように、ルカが僕の手をそっと握る。
暖かい手。
僕に寄り添おうとしてくれている。

ルカが、好きだ。
想いが溢れる。

僕は思わず、ルカに口付けた。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?

銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。 王命を知られる訳にもいかず… 王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる? ※[小説家になろう]様にも掲載しています。

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

処理中です...