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妨害方法
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どうすればいい。
考えてる時間がない。
シュルツが何魔法の詠唱をしているか分からないが、絶対にテオを狙っている。
その隣にいるバーンも無事では済まない……そんな規模の魔法を放ってくるはずだ。
俺も対抗して魔法を放つか?
でも、キレてるシュルツが防護できずに傷を負うのは嫌だ。
そもそも、俺の魔法が制御できずに皆を危険にさらすかもしれない。
魔法は使えない。
木剣での攻撃もダメだ。
今ならシュルツの身体に打ち込めるかもしれないが、きっとシュルツは詠唱を止めない。
詠唱を止めされるほどの打撃を与えることは……俺には無理だ。
傷つけたくない。
シュルツもテオもバーンも、みんな俺にとっては大切なんだ。
誰かを守るために誰かを傷つけることは出来ない。
なら、どうする……シュルツの詠唱を妨害する何か……。
そうだ!
……でも。
いや、考えている間に、詠唱を終えるかもしれない。
俺は心の中でシュルツに謝りつつ、素早く近づく。
「やめろ!意図的に傷つけた訳じゃない!」
一応、シュルツに声をかけたがもちろんキレてるシュルツはこちらを見ようとさえしない。
もう、時間がない!
ごめん、シュルツ!
俺はシュルツに近付くと、その首に自分の左手を回しぐっと力を入れる。
そのまま、下へ傾け、詠唱をしている唇に自分の唇を押し当てた。
頼む!止まれ!!
願いを込めながら、より強く押し当てる。
唇を塞いでも、魔法に支障はない。
心の中で唱えても結局効果は同じだからだ。
言葉に出す詠唱はただの形式にすぎない。
だから、手で塞ぐことには意味がない。
口付けによって、シュルツが動揺することに意味がある。
一瞬でも途切れれば、魔法は使えない。
俺との口付けに、そもそも口付け自体に、シュルツが重きを置いていなければ俺の負けだ。
もう、テオとバーンの回復に専念するしかない。
……どうだ?
恐る恐る唇を離す。
「うわぁっ」
唇を離した瞬間に、シュルツがその場に崩れ落ちた。
シュルツの首に手をかけていた俺も一緒に崩れ落ちる。
「いててて」
お尻をそのまま地面に打ち付ける形になり、けっこう痛い。
でも!
止まった……。
周囲を見ても、何も変化はない。
みんな俺の暴挙に、時が止まったように微動だにしない。
うぅ。
仕方ないだろ……。
他に思い浮かばなかったんだよ!
少し前のテオの口付けが衝撃的すぎて、何かシュルツに……って考えた時にそれしか出てこなかったんだ……。
シュルツはその場に両手をつき、顔を地面に伏せている。
俺はもう落ち着いているだろうシュルツに何と言っていいか分からない。
俺はテオに嫌だったか?と聞かれて、嫌じゃなかったが、シュルツは俺にされてめちゃめちゃ嫌だったかも……。
姿は変わったが、師匠に口付けされるって、気持ち悪かったかなぁ?
緊急のためだから、許して欲しいんだが……とりあえず、謝罪しよう。
「あの……」
俺が声をかけると、明らかにシュルツが動揺して肩を揺らした。
あー、嫌だったんだ……。
「口付け、して、ごめんな?嫌だったよな?」
俺が言葉をかけた瞬間、シュルツがばっと顔を上げる。
その顔は、シュルツの赤髪にも負けないほど、真っ赤に染まっていた。
「嫌なわけ、ないでしょ」
シュルツが座り込んだまま、俺を抱き寄せる。
「……嫌じゃない。でも、止めるためなのは嫌だった」
いや、めちゃめちゃ嫌そうだったじゃないか!
顔、真っ赤にして怒ってたし……。
俺相手だから、言えないんだろうな……今も、そんな怒った顔を俺に隠すためにこうやって抱き締めてるんだろうな……。
罪悪感が募る。
まずは、誤解を解かないと。
「……テオは、顔を狙った訳じゃないんだ」
「分かってる。ごめんなさい。私が悪いわ。顔を傷つけられると……どうしてもダメね。生徒に不意をつかれただけでも情けないのに、まさか害しようとするなんて。教師失格よ。止めてくれて、ありがとう」
良かった。
いつものシュルツだ。
顔は抱き寄せられてるから見えないけど、声音から落ち着いていると分かる。
「……でも、まさかルカがあんな止め方するなんて」
「いやー、良かった!他の止め方なんて思い浮かばなかったからなー。テオのおかげだ!」
「テオの、おかげ?」
抱き寄せられていた力が弱まり、俺はようやくシュルツの顔を見て話せるようになった。
まだ顔は驚きのためか真顔だったが、落ち着いてはいた。
一安心していた俺はシュルツの声音の変化にまでは気づかない。
「あぁ、今日初めてテオに口付けされたのが衝撃的で!これならシュルツも止められるかもなって思ったんだよ……って、シュルツ?」
「……」
え、え。
シュルツが、さっきよりも怒ってるんだが!?
「テオドール!」
射殺さんばかりの目でテオを見ている。
テオも隣のバーンも状況が飲み込めず、その場に立ちつくしている。
誤解は解いたはず。
何を怒ってるんだ!?
考えてる時間がない。
シュルツが何魔法の詠唱をしているか分からないが、絶対にテオを狙っている。
その隣にいるバーンも無事では済まない……そんな規模の魔法を放ってくるはずだ。
俺も対抗して魔法を放つか?
でも、キレてるシュルツが防護できずに傷を負うのは嫌だ。
そもそも、俺の魔法が制御できずに皆を危険にさらすかもしれない。
魔法は使えない。
木剣での攻撃もダメだ。
今ならシュルツの身体に打ち込めるかもしれないが、きっとシュルツは詠唱を止めない。
詠唱を止めされるほどの打撃を与えることは……俺には無理だ。
傷つけたくない。
シュルツもテオもバーンも、みんな俺にとっては大切なんだ。
誰かを守るために誰かを傷つけることは出来ない。
なら、どうする……シュルツの詠唱を妨害する何か……。
そうだ!
……でも。
いや、考えている間に、詠唱を終えるかもしれない。
俺は心の中でシュルツに謝りつつ、素早く近づく。
「やめろ!意図的に傷つけた訳じゃない!」
一応、シュルツに声をかけたがもちろんキレてるシュルツはこちらを見ようとさえしない。
もう、時間がない!
ごめん、シュルツ!
俺はシュルツに近付くと、その首に自分の左手を回しぐっと力を入れる。
そのまま、下へ傾け、詠唱をしている唇に自分の唇を押し当てた。
頼む!止まれ!!
願いを込めながら、より強く押し当てる。
唇を塞いでも、魔法に支障はない。
心の中で唱えても結局効果は同じだからだ。
言葉に出す詠唱はただの形式にすぎない。
だから、手で塞ぐことには意味がない。
口付けによって、シュルツが動揺することに意味がある。
一瞬でも途切れれば、魔法は使えない。
俺との口付けに、そもそも口付け自体に、シュルツが重きを置いていなければ俺の負けだ。
もう、テオとバーンの回復に専念するしかない。
……どうだ?
恐る恐る唇を離す。
「うわぁっ」
唇を離した瞬間に、シュルツがその場に崩れ落ちた。
シュルツの首に手をかけていた俺も一緒に崩れ落ちる。
「いててて」
お尻をそのまま地面に打ち付ける形になり、けっこう痛い。
でも!
止まった……。
周囲を見ても、何も変化はない。
みんな俺の暴挙に、時が止まったように微動だにしない。
うぅ。
仕方ないだろ……。
他に思い浮かばなかったんだよ!
少し前のテオの口付けが衝撃的すぎて、何かシュルツに……って考えた時にそれしか出てこなかったんだ……。
シュルツはその場に両手をつき、顔を地面に伏せている。
俺はもう落ち着いているだろうシュルツに何と言っていいか分からない。
俺はテオに嫌だったか?と聞かれて、嫌じゃなかったが、シュルツは俺にされてめちゃめちゃ嫌だったかも……。
姿は変わったが、師匠に口付けされるって、気持ち悪かったかなぁ?
緊急のためだから、許して欲しいんだが……とりあえず、謝罪しよう。
「あの……」
俺が声をかけると、明らかにシュルツが動揺して肩を揺らした。
あー、嫌だったんだ……。
「口付け、して、ごめんな?嫌だったよな?」
俺が言葉をかけた瞬間、シュルツがばっと顔を上げる。
その顔は、シュルツの赤髪にも負けないほど、真っ赤に染まっていた。
「嫌なわけ、ないでしょ」
シュルツが座り込んだまま、俺を抱き寄せる。
「……嫌じゃない。でも、止めるためなのは嫌だった」
いや、めちゃめちゃ嫌そうだったじゃないか!
顔、真っ赤にして怒ってたし……。
俺相手だから、言えないんだろうな……今も、そんな怒った顔を俺に隠すためにこうやって抱き締めてるんだろうな……。
罪悪感が募る。
まずは、誤解を解かないと。
「……テオは、顔を狙った訳じゃないんだ」
「分かってる。ごめんなさい。私が悪いわ。顔を傷つけられると……どうしてもダメね。生徒に不意をつかれただけでも情けないのに、まさか害しようとするなんて。教師失格よ。止めてくれて、ありがとう」
良かった。
いつものシュルツだ。
顔は抱き寄せられてるから見えないけど、声音から落ち着いていると分かる。
「……でも、まさかルカがあんな止め方するなんて」
「いやー、良かった!他の止め方なんて思い浮かばなかったからなー。テオのおかげだ!」
「テオの、おかげ?」
抱き寄せられていた力が弱まり、俺はようやくシュルツの顔を見て話せるようになった。
まだ顔は驚きのためか真顔だったが、落ち着いてはいた。
一安心していた俺はシュルツの声音の変化にまでは気づかない。
「あぁ、今日初めてテオに口付けされたのが衝撃的で!これならシュルツも止められるかもなって思ったんだよ……って、シュルツ?」
「……」
え、え。
シュルツが、さっきよりも怒ってるんだが!?
「テオドール!」
射殺さんばかりの目でテオを見ている。
テオも隣のバーンも状況が飲み込めず、その場に立ちつくしている。
誤解は解いたはず。
何を怒ってるんだ!?
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