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58 昂ぶる体に願う
しおりを挟む「…っは、…っ?」
唇を離した次の瞬間、ひょいっと――なんと軽い体、まるで蝶の羽のよう――俺は軽々、ユンファ様を横抱きにした。
「…はぁ、…そ、ソンジュさ…、…っ!」
そのままドサリ――俺は後ろの寝台へ、ユンファ様を押し倒してしまった。
「……はぁ、…はぁ…、はぁ……」
「……、…、そ、ソンジュ様……」
寝台に広がる、ユンファ様の黒く、たおやかな長い髪。
頬を真っ赤に染めて俺を見上げるその薄紫色の瞳は、不安げに揺らいでいる。――しかし、それでいて俺を求めるように熱く潤み、うっとりと緩んでいる。
「ソンジュ様…、ぁ…あの、…僕を、抱いて…くださるのですか…?」
「……っ! …ぁ、いえ、何を、…申し訳ありません、お許しを、…」
ここまできて俺はやっと、ハッとした。
な、何を。何を、――想い合えたという格好は先ほど確実に、ただ現実にそこまでしてよいかと聞かれたら、…否だろう。
今更後悔し、グラグラと揺らぐ自分の瞳が、グラグラと揺らぐ自分の胸が、体が――ゆら、と後ろへ傾く。
俺はいま、ユンファ様を抱こうとしていた。
確実に、いま俺は――この人と、つがおうとしていた。
しかし…――。
すう…と震える、白く大きな片手――鷹揚に――美しい手、長い指、その指先が…俺の衿元を摘み、制止する。
「……行かないで…」――今にも泣き出しそうなほど切ない顔、細められたそのまぶた、熱く潤む薄紫色の瞳――あまりにも繊細でか細く、儚い吐息の声が、壊れそうに俺の全身を呼び止め、縛り付ける。
「…っいえ、いえユンファ様、…俺は、いま貴方を、」
口でばかりだ。
振り払おうとすれば、易くできる――そのはずが、たった衿元を指で摘まれているだけ、それだけで俺は、ユンファ様のほうへなかば戻った。…悲しいかな、男の期待のサガ丸出しである。
彼は悲しげな顔をしていたが、それでいて、俺のことを愛おしそうに見上げていた。
「……その…、か、覚悟は決まって、おります……」
「…は、いや、…さすがにつがい合うまではなりませぬ、…」
俺が顔を横に振ると、ユンファ様は――きゅう、と恥ずかしそうな顔をして赤面しながらも、目線を伏せ…震えているその白い指で、自らの着物の衿元をゆっくりと割り、開けてゆく。
さすがに、俺の目を見ながらは羞恥におかしくなりそうか、目線は伏せられているが――ドクドクと激しく脈打つ俺の心臓、…と、下のモノ。
「…そ…ソンジュ様、…抱いて、…くださいませ…」
「…は…っ! な、なりませぬユンファ様、…」
首元は白い布で覆われているため、まだ肌の色は垣間見えていないが、…俺が衿元を開くその人の手をやわく掴むと、…彼はぼんやりと俺を見上げ――。
「…どうか…ソンジュ様、僕の体でよければ、お好きになさってください…。どのような形でも、ソンジュ様に触れていただけるなら、僕は嬉しく思います……」――静かにそう、切なげに言うのだ。
「…なっ…許されませぬ、そこまではさすがに、……」
俺はそう言うので精一杯だ。
…俺は、――完全に勃起している。
ドクドクと心臓が早鐘を打ち、今にユンファ様の肌を見れば、むしゃぶりついてしまいそうなのだ。
しかしユンファ様は、ふ…と自嘲して微笑む。
「…どうせもう、僕は清い体ではありません…、いや、むしろ…――むしろソンジュ様が…それでも、そんな体でも、よろしいなら……」
「い、いや、いや良いか悪いか、ではなく、…それで言うなら良いも良いに決まっ、…ちが、俺は、とにかくそういうことを言いたいわけじゃ……」
「っなら僕を抱いて、…お願い、ソンジュ様…っ」
しかしユンファ様は、俺の言葉の最中に…ぎゅうっと目を瞑り、思い切ったようぐっと強く衿元を割り開いた。
そして、自らその白く滑らかな胸板を、…そこについた薄桃色の乳首を、俺の目に晒したのだ。
「――……、…」
なんと、綺麗な…いっそ美しい――彼の首布の下、雪白の滑らかな肌、平たい胸に可憐な色合いの小さな乳首。そして、恥ずかしそうに赤面した、美しい顔――。
「…僕は、今宵だけならばまだ、ソンジュ様のものとなれます……」
「………、…」
今にも涙をこぼしそうなほど目を潤ませ、切なく俺を見上げてくるユンファ様は、小さく上擦った声で更に、こう言うのだ。
「明日になれば、僕はもう二度と、貴方様のものにはなれないのです、…ソンジュ様、お願いします…どうか慰めに…――今宵のうちに、もっと素敵な一夜の夢を、僕に見させてくださいませ……」
そう顔を真っ赤にし、涙目で微笑むユンファ様は――やはり誰よりもお美しく、愛おしかった。
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