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118 魅惑の毛皮
しおりを挟む「……はは…、ねえソンジュ」
ユンファ様は、俺が好きだと言えばふっと頭を上げて、俺のことを見上げた。――はにかんでいるのか、その顔は赤面しているが、にっこりと笑っている。
「…もっと君を撫でてもいい?」
「…はは、もちろん」
するとユンファ様は、無垢に目を輝かせて身を起こし、それから俺の方へなかば体を向けると、俺のふわふわと豊かな毛の生えている、頬を挟み込むようにして――ふわ、ふわ、もふ、もふと、…これはどう考えても彼、俺の毛皮の感触を楽しんでいる。
「…凄い…気持ち良いね。僕、動物は初めて触った」
「………、…」
ど、動物…――いや、まあ。
確かに動物…ではあるのだが、この人狼の姿ではその形容、否定し切れぬところはあるのだ――が。…今はユンファ様、完全に俺を、狼そのものだと思っているらしい。
「…小鳥たちを撫でてみたいと思うこともあるんだが…、驚かせては可哀想だしと思ってね…ふふ、しかしソンジュならば、何も遠慮なく触れるよ」
「…はは…それは、まあ…何よりでございます…、……」
と…今度は手櫛で、俺の首筋あたりの毛を梳いているユンファ様は、ニコニコと本当に嬉しそうだ。――やはり俺は今、あの小鳥たちと同じ、動物扱いを受けている。
いや、思えば肉を食わせてくれたときのユンファ様にしても、そうだからこそああして「お食べ」と世話を焼いてくださったのやもしれぬ。――しかしこれでも中身は、人である俺そのものなのだが。
今度はぎゅう、と俺の首に腕を回し、抱き着いてくるユンファ様――「んん…」と幸せそうに唸り、…俺の首筋の毛皮に顔を埋めてきた。
「……凄くふわふわだ…んー、気持ち良い……」――俺の毛の中でそう幸せそうに呟き、すうすうとそこで呼吸されては熱くなる俺の毛、いや、肌…全身。
「………、…」
擽ったい、というより…――さすがに首筋にそうされると、…こしょこしょ、ムラムラとクる。
しかしユンファ様、俺のことを今は無垢な動物――自分に下心などいだくはずもない存在――と見做しているのだろう。…離れても、さわさわと俺の鎖骨辺りを撫でて、そこに目線をやり。
「…はは、しかも凄く良い匂いだ。お日様の匂いがした」
「…………」
ニコニコと…動物と戯れ、はしゃぐ少年のようである。
ふ、と俺の目を見てきたユンファ様は、キラキラとその薄紫色の瞳を輝かせている。
「…体はどうなっているの? 体中、毛だらけ?」
「……ユンファ様…、俺としても体をお見せすることは、なんら構いませぬが……」
となると、俺は――貴方様を襲いますが。
…という俺の含みを、まるで察しないユンファ様は、え? と――目を丸くして、期待感に満ち溢れた笑みを浮かべる。
「…見せてくれるのかい?」
「……、まあ、襲いますがね」
「……? 襲う?」
笑みを浮かべながらもきょとんとしたユンファ様は、俺がその襲うの意味を説明する前に「あっ」と何か、…いや。
俺の尻尾に気が付き、腰を捻ってそれを見下ろしながら、さわさわと尻尾の毛並みを撫でてくる。
「…尻尾もあるんだ。可愛いね」
「…………」
可愛い…?
今に自分を襲おうとしている狼が、――可愛い…?
「…ユンファ様…あまりにも可愛らしいので、…」
「うん、とても可愛いよ。…なんて可愛い尻尾だろう」
「……、ユンファ様…」
体を伏せ――俺のふさふさとした尻尾に顔を埋めてきたユンファ様は、そこでくすくす笑っている。
「…ははは…、やっぱり良い匂いだ…、んん…ふわふわ……」
「…………」
まあ、いいか。
…久しぶりにかなり楽しそうで、この無垢なユンファ様が見られただけ、俺は今かなり幸せである――。
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