121 / 163
121 胡蝶が求めるもの
しおりを挟む俺は昂ぶる愛しき思いに、抱き締めていたユンファ様のその甘い首筋を、ペローンとした。
「……ひあ…っ?♡ ぁぁ…ふ、♡」
すると――人狼となった俺の長い舌が、ややざらついていたからか――しどけない声を声をもらし、ビクンッとしたユンファ様。…俺は気にせず、ペロペロとその甘い首を舐めながら、するり――彼の着物の衿を、はだけさせてゆく。
「…何…っ? んう…っ♡ いや、そ、ソンジュ、…」
にわかに襲おうとしている俺に、ユンファ様は明らかにうろたえている。――やや荒くも肩まで衿をはだけさせると、…見えた白い鎖骨、肩、胸板…淡い桃色の、可愛らしい乳首。
青みを帯びた月明かりに照らされて、より真っ白く美しいその肌――俺が彼の乳首を長い舌でぺろんとすると、ユンファ様はビクンッとして。
「…や、…あぁ…っ♡ ソンジュ、そんな、いきなり……」
「…はは…いきなりではございませぬ。――先だってより俺は、貴方様を襲うと言っていたではないですか。」
「……?」
やはりユンファ様、その言葉の意味がわかっていないご様子である。――まあそんなところも可愛らしいのだが、…「なんだか、よくわからないが…」と、ユンファ様は両手で着物の衿を持ち上げ、自分の胸板をそれごと覆い隠した。
「…まだ駄目だ、ソンジュ……」
「……、な、何故に…?」
俺はその気満々である――そもそもユンファ様に、しかとつがいだと認められた今ならば、尚の事駄目と言われる理由もないはずだ。
しかし、まだ…――それならば今は何が駄目なのか、俺がふと見たユンファ様の顔は、赤らんでいたが。
困惑しているような、はにかんでいるような――潤んだ瞳は可愛らしいが、チラリとやや上目遣いに見てくるその目付きは、どこか頼み込んでくるようである。
「……僕、その前に僕は…君に、……」
「……?」
「……ソンジュ…」
「はい…」
何かモゴモゴとして、俺の名を呼びかけてくるユンファ様に首を傾げると、彼はふとうつむき――頬を紅潮させ、何か言いにくそうにそれきり黙った。
が…やはりする気はないらしく、俺に乱された着物の衿を直してゆく。
「なんでしょうか、何でもお申し付けくださいませ」
でなければ、秘め事をさせてくれぬというのなら、俺は本当に何だってしよう。――するとユンファ様、赤面してモゴモゴと。
「…僕は、その…秘め事の前に、その…――ぁ、あた…、…いや、…」
「……?」
あた…?
ユンファ様はしどもどとすると、「やっぱりいい」とうつむいたまま、前に膝を揃えて座り、気持ち肩を小さくする。
「……、あた…、…?」
あた…がましい。――いや、要求にその否定的な意味はないか。
あた…尺のことか、いや、まさかそれもありえぬ。
あた…新しい、何かが欲しい。
しかし、ユンファ様はそう物欲があるお人ではないのだ。――男娼のように扱われつつも、それでもジャスル様の側室であることに変わりないため、一応は求めれば何でも与えられるお立場でありながら…ユンファ様が求めることといえば、せいぜいが本を借りてきてほしい、それくらいなのである。
――駄目だ、わからん。
「…何でも申されよ。…俺にできることなら…」
「いい、いい…、…とても、やはりとても言えない……」
「…………」
俺は困って、前を向き直し――また丸い月を見上げた。
…するとユンファ様は、…寝台のフチを掴む俺の手、その小指に――おずおずと自らの、その白く長い小指を絡めてきた。…胸がときめいた俺は、思わず眉を寄せる。
「……っユンファ様…、俺は何だって、貴方様になら何だってして差し上げたく存じまする、…」
俺は月を見ながらも、ユンファ様の小指に自ら、しかと小指を絡めた。
「…、…はぁ…、……」
淡いため息を吐いたユンファ様は――すると、蚊の鳴くようなか細い声で、こう言うのだ。
「…なら、頭を…か、髪を…撫でてはくれないか、ソンジュ……」
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる