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20. トト、丸太をぶった斬る

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 ウオオオオオォォーー!!
 何だか血が滾って、やれそうな気がして来た!

 トトが、腰に差してた十一文字権蔵の鞘を握ると、ぶっとい丸太をぶった斬るイメージが頭に湧いてくる。

『これが、『握手』スキルの派生スキル、剣を握れば、剣豪になれるスキルかよ!』

 俺は、何故か、燃え滾る血を抑えながらも精神を統一する。

「トト! 頑張って!」

 なんか知らんが、サクラ姫が手を合わせ祈ってる。
 やっぱり、俺がぶっとい丸太を斬るなんて無理とか思ってるのかよ?
 ていうか、この状況を作り出したのはサクラ姫の筈なんだが……想定以上のぶっとい丸太が出てきて、無理だと思ってしまったのか?

 だがいい。俺は既に、ぶっとい丸太を真っ二つに斬り裂くイメージが出来てるのだ。
 それも、初めてやる居合切りで。

 何故だか、剣を握ってると、周りがスローモーションに見えてくるのだ。
 俺の時間だけが、他の者の時間より進むのが遅くなってるように感じる。

 俺は、体が動くまま、他の者より進むのが遅くなってる時間の中で、ズザン!と、一閃、十一文字権蔵を抜き。再び、鞘に戻し。くるっと後ろを向き、格好良く歩き出してみた。

『クックツクックッ、決まったぜ!』

 とか、思ってるのは、どうやら俺だけ。

「おい! 何だよ!アイツ、やっぱり丸太を斬れないと思って諦めたのか?」

「ハハハハハ!違いねー!」

 なんか、俺の動きが全く見えなかったのであろう騎士達が、俺をディスてる。

 それとは逆に、俺の動きが見えた者達も居て、そんな者達は、俺の動きが信じられないと固まってしまってる。

 その中の1人、試し斬りを見せてくれたアルフレッド君は、俺のあまりに凄まじ過ぎる動きに、驚愕し過ぎてアゴが外れてしまったようだ。

 まあ、若手のアルフレッド君は、やはりこの中では相当な凄腕だったのだろう。
 俺の動きを見えただけでも、大したものだよ。

「トト……」

 なんか、サクラ姫が心配そうに俺を見てるし。
 完全に、サクラ姫は、俺が丸太を斬るのを諦めたと勘違いしてしまってるようだ。

 とか、思ってると、

 ズザザザザーン!

 俺を心配そうに見てたサクラ姫が、何かが倒れる音にビックリして、後ろを振り返る。
 そこには、見事に真っ二つとなったぶっとい丸太が転がっていた。
 俺の見事な剣筋によって斬り裂かれたぶっとい丸太は、数秒後に滑り落ちるように、少しだけ斜めに斬っておいたのである。

 これぞ。ふふ~ん。斬れてないと思ったでしょ?だけど、斬れてるんだよね!作戦!!

「エェェェエエェェーーなんで斬れてるのーー!」

 サクラ姫は、おったまげ。

「何が起こった?!」

「何で斬れてるんだ?」

 まあ、見えなかった奴らは、そうなるよね。

 パチパチパチ

「お見事。流石はサクラ姫様の護衛騎士殿です!」

 俺の動きが、完璧に見えてたであろう騎士団長は手の平返し。
 まあ、もしかしたら、実力がある者に対しては、しっかりと評価する人かもしれないけど。

「エッ?! あのド素人が斬ったのかよ?」

「お前見えたか?」

「でも、騎士団長が言ってるんだぜ」

 見えなかった奴らが、ザワついてる。

「アイツが斬ったのは間違いない……」

 先程まで、口をあんぐり空けてたアルフレッド君が、やっとこさ気を落ちつかせたのか、俺を肯定してくれる。コイツも、もしかしたら良い奴かもしれない。

「本当に、トトが斬ったの?」

「まあな。流石は、十一文字権蔵だぜ!」

 俺は、謙遜して、全ては十一文字権蔵の手柄にする。
 ここで、俺の腕だと言っちゃうと、調子に乗った奴だと思われちゃうかもしれないし、ここは、剣の力のお陰で、ぶっとい丸太が斬れたと言っておいたろうが良いと思うしね。

「謙遜なさるな。その刀が凄い事は確かだが、あの動きは、刀の凄さで成せる技ではない。あの動きは、絶え間ない修行によってのみで成せる熟練者の動き。トト殿は、その歳で、とんでもない修練を積んで来たと思われる!」

 騎士団長が、俺の事をベタ褒めする。
 というか、俺、刀を握ったのは、今日初めてなんだけど。
 修練したのは、井戸掘りの技術だけ。

「トトは、初めて今日、刀を握ったんだよ! 最初に言ってたよね! トトは今日、初めて剣を握ったって!」

 サクラ姫が、わざわざ騎士団長の言葉を正す。

「それは、流石に嘘なのでは?」

 この騎士団長、相手が王族のサクラ姫なのに、案外、ハッキリものを言う。

「嘘じゃない! トトの才能は、留まる事を知らないの! 何でも出来て、とっても凄い、私の自慢の騎士様よ!」

 何故か、サクラ姫は、ドヤ顔。
 まあ、誰も俺が初めて剣を持ったと信じていないと思うけど。
 サクラ姫は、やはり、クレア姫の妹。嘘を付くのが大嫌いであるようだ。

「サクラ姫様が言うなら、そうなんでしょう。私はサクラ姫様を信じます!」

 嘘だろ?! この騎士団長。どんだけ王族に盲目なんだ。
 まあ、王国の騎士って、王に仕える人達だから、これが正解なのかもしれないけど。
 だからと言って、この状況で、サクラ姫を信じちゃうのかよ?

 まあ、この状況を見るだけで、この王国で、騎士団長だけは信じられる人だという事は分かった。

 まだ、騎士団の中では、俺の実力を信じてない者も居ると思うが、俺は、サクラ姫や騎士団長みたいに、少数でも自分を信じてくれる人が居る事が嬉しいのだ。

 俺って、つい最近まで、誰にも認められてなかったから。
 まあ、全ては、握手スキルのお陰なのだけどね。

 ーーー

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