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第2章 城塞都市グラードバッハ編
14. 冒険者ギルド
しおりを挟む俺とクロメは、取り敢えず、グラードバッハの冒険者ギルドに向かう事にした。
ロリコンの衛兵に、毛皮をどこで売れば良いかと聞いたら、冒険者ギルドが買い取ってくれると教えてくれたから。
そして、その時、ついでに冒険者登録をすると良いとも教えてくれた。
なんでも、冒険者登録すると、グラードバッハの入場料がタダになる特典があるのだとか。
しかも、奴隷であったとしても冒険者になれるらしい。
この世界では、奴隷の主人が、奴隷を冒険者として働かせる事が多々あるのだとか。
でもって、グラードバッハ城塞都市なのだが、人口1万人ほどの城塞都市で、この国では、結構大きな街らしい。
治めているのは、グラードバッハ辺境伯。ジジイの家も、第1村人の村も、全てグラードバッハ辺境伯領だったみたい。
城塞都市は、グラードバッハ城を中心に放射線状に広がっており、十時に大通りがある。
東西南北に門があり、東門が正門だという事だ。因みに俺達は、西門から入ってきた。
グラードバッハ城塞都市は、中世ヨーロッパ風の建物が建ち並び、中心に向かうほど金持ちが住んでるのか、立派な家が建っている。
大通りは、大体3階建ての建物で、大通りから離れれば離れるほど掘っ建て小屋みたいな家になってくる感じだ。
俺達は、取り敢えず、街の中心付近にある冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに向かう途中も、シルバーウルフの毛皮を風呂敷替わりに担いでるクロメに驚いた人がたくさん居たが、すぐにクロメの存在に気付くのか、城塞都市の外のように剣を抜かれる事はなかった。
まあ、確かに、城壁で囲まれてる城塞都市に、魔物が紛れこむとは思わないよね。
でもって、衛兵に教えて貰った、冒険者ギルドに到着した。
グラードバッハ冒険者ギルドは、他の建物と同じように3階建てで、石造りの頑丈そうな建物。
クロメが扉を開けると、一斉に注目される。
まあ、チビッ子が、シルバーウルフの毛皮を被ってたら、誰しも驚くよね。
なんか、荒くれ冒険者共に、ヤンヤヤンヤと言われるが、クロメはガン無視。
とっとと、シルバーウルフとホーンラビットの毛皮を売って、食事にありつきたいのである。
冒険者ギルドに向かう道すがら、毛皮を売って金が出来たら、何でも好きな物を食べさせてやると言ったからか、もうそれ以外の事を考えられなくなってしまったようである。
「味付きの食事。ジュルルルル……」
なんとなく分かっていたが、どうやら、クロメは腹ペコ属性があったようで、食べ物に目が無いのだ。
いつも調味料無しのひもじい食事をしていた為か、物凄く味付きの食事に憧れを持っているのである。
「シルバーウルフの毛皮とホーンラビットの毛皮、合計で32万ゴールドです。
それから傷もなく、上手く鞣し処理されてますから、買い取り金額がアップして、しめて35万ゴールドになります!」
なんか、クロメの右目が金の単位のGになってしまってる。
『クロメよ。ホーンラビットとシルバーウルフの魔石も売れるのではないのか?』
「アッ!そうでした! 卍様!」
クロメは慌てて、魔石を取り出す。
そして、毛皮のと魔石の合計は、なんと72万ゴールドとなった。
引き続き、冒険者登録もすませ、晴れてクロメもG級冒険者。
なんか、受付嬢が色々説明してたが、クロメの心はココにあらず。ずっとギルドに併設してる食事処に目が釘付けだし。
そして、冒険者カードを受け取ると、クロメはそのまま食事処に向かおうとする。
「よおよお嬢ちゃん!ご主人様はどうしたよ!」
クロメの隷属の首輪を見て、荒くれ冒険者が、ちょっかいを掛けてくる。
だけれども、クロメはガン無視。
「嬢ちゃん大金手に入れたの見てたぜ!」
荒くれ冒険者は、クロメの前に立ち塞がるが、クロメはするりと避ける。
「ちょっと待ちな!」
筋肉ダルマのような荒くれ冒険者が、クロメの肩を掴む。
「離せ下郎」
クロメの声は、とても冷たい
というか、滅茶苦茶怒っている。
腹ペコ属性の者に対して、食事の邪魔をするのは禁忌なのである。
「下郎だと?奴隷の分際で!!」
「私は、卍様の奴隷である事に誇りを持っている」
いつもなら、大暴れするところだが、それより目の前の食事処が気になってるようだ。
「ハッ? 卍だと? 聞かない名前だな?そいつが、どれだけのもんなんだ?どうせ、大した奴じゃないんだろ!」
プッチン!!
クロメの中の何かが切れる音がする。
それと同時に、俺に刻まれた卍と魔法陣が、眩しく光り輝き、卍の字が描かれた眼帯から光が漏れる。
「下郎。悪い事は言わん。この眼帯の奥に眠る、我が主、卍様の封印が解けた時、その時がお前の命日になる。それでも我が主、卍様を侮辱するか?これ以上、我が主卍様を侮辱すれば、もう私がどれだけ宥めても、卍様を止める事が出来なくなるのだが?」
クロメは、筋肉ダルマを睨みつけながら質問する。
「おい! 止めとけって! そいつ良く見たら黒耳族だぜ!」
筋肉ダルマの仲間が、クロメの黒い尻尾を見て黒耳族だと気付く。
「黒耳族って、未来視眼の一族のか? だけれども、黒耳族は、最近、村を襲われて絶滅したと聞いだぞ?」
なんか、黒耳族って、想像以上に有名だったのか、筋肉ダルマが怯みだす。
「クックックックックックッ。未来視眼?あんな劣等眼と、我が主、卍様を一緒にするな! 我が主様である卍眼は、世界で唯一無二の魔眼! この卍眼であらせられる卍様こそが、この世界の覇者となる偉大なるお方なのだ! クワッハッハッハッハッハッ! 矮小なる人間共よ! 図が高い頭を下げよ!!」
クロメのいつものスイッチが入ってしまった。
「いや。ゴメン。俺が悪かった。今日の事は無かった事にしてくれ!」
筋肉ダルマは、危ない人間と関わりたくないと思ったのか、引いてくれたようだ。
まあ、筋肉ダルマ以外の冒険者達も、クロメの事を生暖かい目をして引いて見てるし。
どうやら、この世界でも、無意味に眼帯を付けて、変な言葉を口走る子供の事を、生暖かい目で見守る文化があるようだった。
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