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第2章 城塞都市グラードバッハ編
15. ミノタウルスの力こぶ亭
しおりを挟む「ジュルリ。シルバーウルフのステーキと、漫画肉! それから、醤油ラーメンと、味噌ラーメン!」
クロメが、冒険者ギルドに併設された食事処で、食べ物を次々と頼む。
この世界は、異世界勇者が居た世界なので、日本の食事も普通にあるようだ。
クロメが、イカれジジイの服をチョキチョキしてリメイクした忍者衣装も、クロメの村の正装だったらしいので、相当、この世界は日本文化が浸透しているようである。
「な……何ですか!? この世界には、こんなにも美味しいものがあるなんて!」
クロメは、目を輝かして、ムシャムシャ、凄い勢いで食事を食べている。
そりゃあ、今迄、塩味もない食事を食べてたのなら、何を食べても美味しいだろ。
「卍様、おかわりしても宜しいですか?」
『おお。ドンドン食べろ!金ならあるからな! 無くなっても、また、稼げばいいだけだし!』
クロメは、食い溜め出来ると思ってるのか、滅茶苦茶食べる。結局、ステーキ3枚。漫画肉も3つ。醤油ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメンまで平らげた。
「ゲフ。お腹一杯です……」
『まあ、それだけ食べたらな……』
他の冒険者達も、クロメを生暖かい目で見守ってる。腹ペコ属性と、中二属性の同居した幼女なんて、誰しも距離を置きたくなるよね……
『それじゃあ、宿屋を探すか?受け付けのお姉さんが言ってた、食事が美味しいオススメ宿に向かうぞ!』
「ゲフ、美味しい食事!」
クロメは、美味しい食事に反応した。
どんだけ、食い意地が張ってるのだろう。
というか、まだ、お腹に入るのか?
受け付けのお姉さんのお勧めの宿は、『ミノタウルスの力こぶ亭』という宿屋で、漫画肉が有名な宿屋らしい。何でも、漫画肉は、ミノタウルスの力こぶから作るらしい。
他にもマンモス肉というのも有るが、コレはミノタウルスのモモ肉の事を言うらしい。流石に、この世界にマンモス居ないしね。
宿屋に付くと、1階は食事処兼、飲み屋になってるらしく、みんな漫画肉をガブ付きながら、お酒をかっくらっている。如何にも冒険者御用達の宿屋といった感じだ。
「ジュルリ……漫画肉……」
クロメは、今さっき食事を食べたばかりだというのに、ヨダレを垂らしてるし。
どんだけ食いしん坊キャラなのだろう。
兎に角、俺はクロメの保護者として、クロメを肥満児にする訳にはいかないのだ。
俺自身も、肥満児の魔眼とか嫌だしね。クロメの中二チックなセリフも、肥満だと似合わなくなるし。
だけれども、ヨダレを垂らすクロメを見てると、俺も、つい、甘くなってしまうのだ。
「漫画肉は駄目だけど、手羽先なら許す!」
そう。この宿屋の名物は漫画肉だけでは無かったのだ。手羽先も人気で、名古屋風の手羽先が売りのようだ。しかも名古屋二大勢力の甘辛い手羽先と胡椒辛い手羽先の二種類ともあったりする。
「クッ! どっちを選べばいいか、とても悩みます……」
クロメは既に、俺の異世界検索機能を使って、名古屋の二大勢力の手羽先屋の味をチェックしているようである。
甘辛いのも捨て難いし、胡椒辛いのも捨て難い。
どうやら、クロメは1種類しか頼んだら駄目だと思ってるようだ。
『2つとも食べていいぞ』
「本当ですか! 卍様!」
クロメの目が輝く。というか、ヨダレが出てる。
「矮小な人間よ!注文を頼む!」
いつものように、俺相手じゃないと、途端に偉そうになる。
「ハハーー! 矮小な人間が、注文を受け付けに来ました!」
ノリが良い、狐耳の宿屋の女将が注文を取りにくる。
「ウム。私は、甘辛味の手羽先と、胡椒味の手羽先を、50個づつ所望する!」
「そんなに食べれるのかい?」
女将が心配して聞いてくる。
無理もない。クロメって10歳くらいの幼女だからね。冒険者ギルドの受け付け姉さんの紹介が無かったら、信用無くて、この宿屋にも泊まれなかったと思うし。
「クックックックッ。誰に物を言っている。私は、世界を統べる予定の卍様の下僕よ。そんな私が、マンモス肉じゃあるまいし、たかが手羽先合計100本程度に屈すると?」
「そこまで言うなら、食べて貰おうか! 但し、全て食べれなかったら料金2倍に! 全て食べきったらタダにしてあげるよ!」
「フン! 卍様の下僕である、この私を甘くみると後悔すると思うぞ!」
「卍様が誰だか知らないが、アンタが手羽先100個食べきったら、卍様でも誰にでも頭を下げて拝んであげるよ!」
「なるほど。面白い。ならば私が手羽先100個食べきったら、お前に卍様を拝ましてやろう。そして、膝まづいて頭《こうべ》を下げるが良い!」
なんか良く分からないが、ノリの良い女将のせいで、大食い大会になってしまったようだ。というか、絶対にクロメが食べきれないと思い、料金2倍をせしめる気満々である。
クロメはこれ見よがしに、全財産が入ってる金貨袋を、テーブルの上に、ドン!と、置いてるからね。
まあ、普段から、マンモス肉チャレンジという、1人で食べきったらタダ。食べれなかったら2倍の料金というイベントをやってるみたいだし(因みに、マンモス肉は5キロ)、この店では、これが、いつもの日常なのかもしれないと、卍様は思うのだった。
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