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89. 白亜のお城
しおりを挟む俺達は無事、商談を終えて世界樹のダンジョンに帰って来た。
サンアリコーポレーションへのフルーツの納品は、ゴトウ族間の【影渡り】スキルを持っているセンコーさんが受け持ってくれる事となった。
これで、お城の毎月の支払いのメドがたった。
最初は、月1000万マーブルなんて無理じゃないかと思っていたのだが、ヨネンさんが言ってた通り、何とかなる形だ。
流石は、超一流ウルフデパートで、家賃を一番払っていると豪語するだけの商売人である。
俺達が、毎月のローンを払えるように、段取りまでしてしまうなんて。
「アド。 お土産だ!『ミノ一番』の高級焼肉弁当だぞ!」と、俺は冒険者バックにしまっておいた、サンアリさんが、「留守番している世界樹の妖精様に」と、お土産として渡されていた高級焼肉弁当をアドに渡した。
勿論、冒険者バックに入れておいたので、出来たて熱々の状態を保っている。
「これは凄いです!
熱々ご飯の上に、甘辛いタレに絡む霜降り厚切りのお肉が山盛りに乗っかってるのです!」と、アドは、高級焼肉弁当の解説をしながら、もの凄いスピードでガツガツ食べている。
どうやらアドは、可愛らしくお淑やかな見た目の容姿なので勘違いしていたが、お肉大好き肉食女子だったようである。
俺はアドが、高級焼肉弁当をガッツいている間に、今回のサンアリコーポレーションとの取引の内容を話したのだが、「高級焼肉弁当の為に頑張る」と、言っていた。
これから何かアドに何かを頼む時は、『ミノ一番』の高級焼肉弁当をお供えすると良いかもしれない。
世界樹のドライアドであるアドは、エルフ族にとって信仰の対象でもあるらしいので、サンアリさんは喜んで高級焼肉弁当を提供してくれるだろう。
そんなこんなで、俺達は普段の生活に戻り約2週間、ヨネンさんに納める素材を集める為に、ダンジョンで狩りを必死で続けたのだった。
そして遂に、お城の完成の日が来た。
お城は、計画通りのタージマハルのような白亜のお城で、俺の特製のセラミックスタイルを使ってる為か、白すぎて目がチカチカする程である。
あまりに目がチカチカするので、あまり凝視できないのが残念であるが、間違いなくこの世界で一番美しい建造物と言っても、嘘偽りは無いであろう。
実際に、設計建築にあたったヨネンさん自らが、この世界で一番美しい建造物で間違いないと自画自賛していたの間違いない筈だ。
ドワーフの職人達も、同じ様な事を言ってたので、ヨネンさんの独りよがりでは無いと思う。
そもそも、前の世界の最も美しい建造物と言われているタージマハルを模して建てたのだ。美しくならない筈が無い。
しかも真っ白過ぎて、太陽光に当たると、直に見ていられないほど眩しい。
そのせいか、ますます神聖な場所に見えてしまう。
まあ、世界樹と世界樹の森自体が、神聖な場所らしいので、そんな所に建っている白亜の城は、知らな人から見たら世界樹の神殿か何かにしか思えないだろう。
そして、言わずものがな、内装も物凄い。
一、二階には、全て壁に、細かい幾何学模様が描かれていたり彫られたりしている。
一応、イスラム建築に準じているので、石像の類は一切置いていない。とてもシンプルなのだが、それがかえって神聖な感じがし、美しく見えるのだ。
そして、3階なのだが、ここは俺達の移住スペースなので、全く手がつけられていない。
実際に生活する場所なので、美しさは必要ない。
使い勝手が大事なのだ。
ヨネンさんは、「ついでに、3階の施行もやってしまいましょう!」とか、言ってきたが、俺はハッキリとお断りした。
俺自身、あまり豪華で大きすぎる部屋が苦手なのだ。
俺の理想はワンルームで、全てが手の届く場所にある部屋が理想なのである。
トイレや洗面所に行くのに、5分もかかるような無駄にデカい家には住みたくない。
狭い方が、冷房や暖房も効きやすいし、光熱費も安くなるというものだ。
そんな訳で、3階の施行は、ヨネンさんから死守した。
ヨネンさんは最後まで、「折角だから、3階もやってしまいましょうよ~」と、言っていたが、3階は俺が時間をかけて、『錬金』で作って行くのだ。
これを、俺の密かなライフワークにするつもりだ。
そんなこんなで、ただいま俺達のお城の、お披露目パーティーが始まろうとしている。
あまり知られたくはないので、センコーさんとバルドさんとヨネンさん。
それから建築に当たってくれたドワーフの職人達とサンアリさんとナンシーさん。
俺達の身内と、建築に関わった者達だけで行う事にした。
ナンシーさんを招待したのは、ウルフデパートの、俺達担当の外商なので、城の建築が終わったら教えて下さいと言っていたからだ。
「それでは、お城のお披露目会を始めます!」と、アナ先生の挨拶で、パーティーが始まった。
パーティーには、お酒が大好きなドワーフ族と酒豪のアナ先生がいるので、取り敢えず、エールを70樽、ワインも30樽、酔い潰し大会に使われるテキーラは500瓶用意した。
これだけお酒があれば、ドワーフ達も満足するだろう。
招待客の相手はアナ先生が、料理はクモと俺が担当する。
ビー子とアドが、ウェートレスだ。
知らない人を世界樹のダンジョンに招き入れたくないので、おもてなしは、全て自分達でやらないといけない。
俺達にとって、パーティーは戦場だった。
なにせドワーフの職人が、200人以上も来ているのだ。
料理を作っても作っても、まだ足りない。
ビー子とアドも、てんてこ舞いだ。
大酒豪であるアナ先生さえも、ドワーフ達に飲み比べを何度も挑まれ、フラフラしているし。
結局、3日目のお昼に、図々しいドワーフ族の最後の一人が帰ってくれて、お城のお披露目会が終わった。
用意したお酒が、全部空になったのは、言うまでも無い。
パーティーが、3日間も続いてしまったのは、多分お酒をたくさん用意してしまったからだと思う。
ドワーフ達は、お酒に目がないのだ。
お酒の量を少なくしておけば、多分ドワーフ達は直ぐに帰ったであろう。
ドワーフ達が、たくさん来ると思って、お酒をたくさん用意したのが裏目にでてしまった形である。
センコーさんが、用意したお酒を見て、「アチャー! やっちゃったね」と、言っていたのは、多分そういう事であろう。
知っていたら、『最初に教えてくれよ!』と、思う、エーサク達であった。
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