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4. レベルアップの男
しおりを挟む塩田郎のまつ毛が、ピクリと動く。
「来る!」
どうやら、タコ観音?侍?は、睨み合いに痺れを切らせたようだ。
塩田郎は、タコ侍と対峙してからずっと握り締めていた刀の柄の鍔部分、人差し指に、一瞬、力を入れる。
そして、刀の切先が鞘から抜けた瞬間! 一気に、人差し指から、小指に力を入れ替え、テコの原理と手首にスナップの相乗効果で、敵を逆袈裟斬りで、真っ二つに斬り裂く。
これが、幕末京都で伝説の人斬りと恐れられた、塩田郎の最大の必殺技、居合切りのコツ。
やり方は、人それぞれかもしれないが、これが京都で何百人と居合切りで人を殺して来た、塩田郎の最適解。
スパーン!
塩田郎は、何事も無かったように、愛刀村正を鞘にしまう。
タコ侍には、あまりに速い塩田郎の剣筋が、全く見えなかったであろう。
斬られたと気付いていないタコ侍が、塩田郎に襲いかかろうとすと、逆袈裟斬りで、斜めに斬り裂かれていたタコ侍の胴体は、滑るように地面に転がった。
「まあ、今まで戦った中で、一番強かったのは確かだな!
多分、俺よりずっと強いし!
だけれども、俺と一対一で、相対したのが不味かった!
なんせ俺、一対一の居合切り勝負で負けた事ねーもん!」
そう、塩田郎は居合切りの達人。
剣の腕前が100だとしたら、居合切りの腕前は、300だったりする。
これが、塩田郎が伝説の人斬りと言われる所以。
暗殺仕事は、殆どが一対一。
しかも、すれ違いざまに、いきなり居合抜きで斬ったりもする。
塩田郎は、居合切りの構えを取った時点で、そもそも相手に勝機は無いのである。
スピードで、塩田郎の右に出る者は居ない。
しかも、居合の構えからの一振は、正に神速。
タコ侍の敗因は、塩田郎と一対一で相対して、しかも、塩太郎に居合の構えを取らせた事。
塩田郎が既に抜刀してた状態だったら、多分、余裕でタコ侍が勝てていた戦いだったのだ。
「いや~危なかったぜ!
俺の事、知らない奴で助かった!」
塩田郎は、たすき掛けしてるお気に入りの魔法の鞄の中から、ペットボトルの水を取り出す。
「はぁ~生き返るぜ! ホント、格上との戦いは緊張するよな。お陰で、喉カラカラだし!」
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「ていうか、さっきから、頭の中に鳴る鈴虫みたいな音なんなんだよ!」
塩田郎は、ぶつくさ文句を言う。
この耳障りな音が、塩田郎の特になる事とは知らずに。
幕末出身の塩田郎は知らないのだ。
異世界お約束のレベルアップを。
そして、何度も言うが、塩田郎は、異世界知識が豊富な、令和日本人ではないのである。
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「あ。やっと終わった……長いっちゅーの」
何度も言うが、ここは、SSSSダンジョン深層部。
普通、Lv.1の駆け出し冒険者が来る所じゃない。
そして、そもそもLv.1の人間が、SSSSダンジョン深層部に生息する魔物を倒す事など不可能なのだ。
しかしながら、塩田郎は、幕末伝説の人斬り。
レベルの概念など、余りある人斬り技術で、簡単に叩き斬ってしまったのだった。
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