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111. 剣聖サトウの凱旋
しおりを挟むムササビ自治国家に戻る事が決まり、塩太郎達『犬の肉球』のメンバー達は、ワッシー、ワシ子に乗って、再び、ムササビ自治国家に戻る事になった。
勿論、シャンティーによるエンチャンターによって、たった30分で。
本当なら、こんな滅茶苦茶なエンチャンターは体が追いつかなくボロボロになってしまう所だが、強制的にエリスポーションで回復させてしまうので、ワッシーとワシ子は意外と平気である。
まあ、思いのほか、初めて見た時より、筋肉隆々になってる気もするけど。
「ついに来たぜ!」
今回は面倒臭いので、冒険者ギルド本部の庭に直接降り立った。
前に来た時、シャンティーがワッシーとワシ子を、冒険者ギルド本部の広大な庭に放し飼いにしても良いよう脅迫?じゃなくて、許可を取っていたのだ。
まあ、ワッシーとワシ子を置いとく厩舎代もバカにならないのでね。
餌も、結構、フルーツとか生えてたり、野生動物なんかも居るので、自給自足できてしまうし、いたせりつくせり。
てな感じで、塩太郎は肩を怒らせ大股で歩きながら、ムササビ冒険者ギルドの建物の中に入っていく。
「クッ! 誰だ? 冒険者ギルド内で殺気を漲らせてる馬鹿な奴は、基本、冒険者ギルド内では暴力御法度なの知らねーのか?」
ギリギリ誰も気絶しない程度で、殺気を発して登場した塩太郎に、誰もが注目する。
「ゲッ! 腹黒シャンティー!!」
だが直ぐに、腹黒シャンティーが塩太郎の後ろに居る事に気付く。
「チッ! 殺気を放ってる奴は、何故か冒険者ギルド内で、暴力使ってもお咎め無しだった腹黒シャンティーのお供の侍野郎かよ!」
「アレが、虎の威を借る狐という奴だな」
どうやらまだ、冒険者の間で塩太郎が剣聖になった事が、あまり知れ渡っていなかったようである。
「オイ! 馬鹿! 知らねーのか! そこの壁に張り出されてるじゃねーか!
あの佐藤 塩太郎とかいう侍、『鷹の爪』団長のハラ・クダシを倒して、剣聖の称号を獲得しやがったみてーだぞ!」
どうやら、冒険者の中にも、塩太郎が剣聖になった事を知ってた者も居るようである。
「嘘だろ!? ハラ・クダシを倒せるのって、剣士じゃ、剣姫ハラダ・ハナや剣鬼ブリトニー・ゴトウ・ロマンチックぐらいじゃなかったのか……」
塩太郎は、自分が噂になってるのに御満悦。顔がニヤニヤしちゃうのを、必死に抑えている。
「はぁ~何が楽しいのやら……」
流石のシャンティーも呆れている。
シャンティーは、金にならない事に全く興味ないのである。
そして、塩太郎は、何故かモーゼの十戒のように道が開けた冒険者カウンターに、そのまま向かう。
「よお! 姉ちゃん。この俺、佐藤 塩太郎様が、しっかり剣聖の称号を獲得出来たか、確認に来たんだが!」
塩太郎は、背を反らし、ふんぞり返って質問する。
「ハイ! しっかりと、佐藤 塩太郎様は、剣聖の称号を獲得しております!」
奇しくも、前に、シャンティーの担当になってしまった、運が悪い受付嬢が涙目で答える。何で、自分の所ばかり、『犬の肉球』のメンバーがやって来るのかと。
「おお! そうかい! 俺は、正式に剣聖になれてたんだな!ありがとうな。嬢ちゃん!」
塩太郎は、わざわざエントランス中の奴らに聞こえる声で、自分が剣聖になった事をアピールしたのだった。
そして、再び、肩で風を切り、ゆっくりとガニ股で、余韻に浸りながらムササビ冒険者ギルド本部から出て行くのであった。
「これだけで、満足なの?」
シャンティーが、塩太郎の耳元まで飛んできて聞いてくる。
「ああ、満足だぜ!」
「これが、1ヶ月間、お小遣いを半額にしてまで、したかった事なの?」
「ああ! 当然だぜ! 俺は、二つ名持ちになる事に憧れてたんだ!
そして、俺はついに剣聖になり、二つ名を手に入れた! 剣聖サトウにな!」
「誰も、アンタの事、剣聖サトウとか呼んで無かったけど?」
シャンティーが、痛いとこついてくる。
「うっせい! これから呼ばれんだよ!」
「剣聖サトウ! 素敵っー! て、これから可愛い姉ちゃんも、たくさん寄ってくるぜ!
俺が居た世界の、無駄に世間に名の売れた人斬り達も、京都の料亭とかで、メッチャモテたしな!」
塩太郎は、日本に居た時の事を思い出して言う。
「塩太郎は、それがとても羨ましかったと……」
「何だ! わりーかよ!」
「アンタ、意外とこの世界に来てからモテてんじゃない?
虎子とか、エリスやら、それからハラダ・ハナとか?」
「うっせー! 3人とも論外なんだよ!
虎子はウザイし、エリスはいつも、ムネオさんの後ろに隠れてるし、ハラダ・ハナなんて、不倶戴天の敵だろうが!」
塩太郎は、強めに指摘する。
「アンタ、本当に、女を見る目がないわよね……3人とも凄く美人で、しかも全員、お金もガッポリ稼いでくれる優良物件じゃないの?働かなくても、嫁がお金を稼いでくれるって、男としてとても理想のヒモ生活できる環境じゃないの?」
相変わらず、シャンティーは金に汚くてゲスい。
「ヒモ生活って……。お前、何でもお金に換算するの止めた方がいいぞ……恋愛は、金じゃねーんだよ!」
「そう。そしたら、私がアンタと結婚してあげてもいいわよ!
アンタ使えば、たくさんお金を稼げそうだし、結婚したら、アンタのお小遣いを3000マーブルまで減らせそうだしね!」
シャンティーは、どうやら、金の為なら、塩太郎との結婚も厭わないようだ。
「誰が、お前みてーな、ガメツイ女と結婚するかよ!
というか、お前と結婚しても、小さ過ぎてナニができねーじゃねーか!」
一応、塩太郎は、結婚生活について指摘する。
「何言ってんの?アンタの粗末なナニよりは、私の体の方が大きいわよ!」
「てめー! 最近、気にしてる事を--!!」
そう、最近、この世界の男のナニのデカさに驚愕して、塩太郎は自信をなくしてたのだ。
塩太郎のナニも、日本では普通のサイズだったのに、こちらの世界は、日本でいう西洋人だらけなので、ナニのサイズも欧米サイズが一般的だったのだ。
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