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132. メリルの特訓(2)

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「ゲホッ!テ……テメー何しやがる!」

 いきなり蹴りをいれられた塩太郎は、咳き込みながら、メリルに怒りをあらわにする。

「あまりに闘気の練度が低かったので、教えてさしあげようと?」

「教えてくれてありがてーが、内蔵破裂する攻撃しなくてもわかるっちゅーの! ボ……ゲホッ!」

 塩太郎は口から血を吐きながら、メリルに文句を言う。

「早く闘気を練り直さないと、また、獣の魔物に腹を抉られますよ。
 このダンジョンにいる魔物に、闘気無しで闘うなんて死ぬも同然ですからね」

「ゲホッ ゲホッ……お前のせいだろうが!」

 塩太郎は、急いで、自分の魔法の鞄の中からエリクサーを取り出し、急いでエリクサーをゴクゴク飲み干す。

「だから、それでは駄目なんです」

 ボコッ!

「オウェ……」

 塩太郎は、再び、メリルの蹴りを受ける。

「ハイ。直ぐに闘気」

「ゲホッ! 致命傷の傷を受けて、闘気を展開なんか出来るか!」

 塩太郎は逆ギレして、メリルを怒鳴りつける。

「それでも闘気を展開し続けて下さい。そうじゃないと、ベルゼブブ攻略レイドで、必ず死んでしまいます。敵は、致命傷を受けたくらいでは止まってくれませんので」

「普通、致命傷受けた時点で終わりだろ!
 致命傷を受けても立ってる俺は、本来、スゲー事してるんだぞ!
 普通の奴が、内蔵破裂する程の攻撃食らったら、気を失ってるってーの!」

「それは、エリクサーが無い世界の常識ですよね?
 コチラの世界では、致命傷受けてもエリクサーをかければ治ってしまいますし、気を失った時点で死亡決定です。
 気を失ってしまったら、自分でエリクサー飲めませんし、ベルゼブブ攻略レイドは乱戦ですので、仲間が気を失っても助ける暇など有りませんし」

「だから、致命傷受けても、気を失わず、闘気を練り続けろと?」

「そうです。それが出来なかった者は、全員死んでますから」

「そんなの出来る奴、居る訳ねーだろ!」

 そう。致命傷を受けた状態で、闘気を練り続ける事など不可能なのだ。
 だって、闘気って、日本で言うと精神集中して行う真剣白刃取りする時や、座禅を組んで瞑想する事で訪れる虚無の世界と同等の状態の事を言うのだから。

 そんな極限の状態を、常時発してるだけでも大変なのに、致命傷を受けてる時まで発しろというのは、無茶な話なのである。

「何故、第1回目ベルゼブブ攻略レイドで、『カワウソの牙』が生き残ったのか。その当時、『カワウソの牙』より、強い者はたくさんいました。剣姫カレン・ロマンチックや、剣聖ガルム・ロマンチック、元拳神シロウ・ムスタカ。
 彼らは全員、致命傷を受けて、闘気が解けた直後に、異界の悪魔の畳み掛けるような攻撃を受けて死んでしまいました。
 では、何故、当時彼らより弱かった『カワウソの牙』が生き残れたか?それは、日頃からブリトニー様に修行と称して、手足を斬られダルマにされる事を日常にしてたから、まあ、致命傷を受ける事に慣れてたんですね。
 彼らは、ブリトニー様に手足を斬られても、何故か勃起して興奮する変態ですから、それが役に立って、殆どの参加者が死んでしまった第1回目のベルゼブブ攻略レイドでも生き残れたのです」

「『カワウソの牙』って、あのおバカ3人組かよ……」

 塩太郎は、冒険者ギルド会議で会ったおバカ3人組を思い出す。

「ハイ。アノおバカ3人組が率いる冒険者パーティーですね。あの冒険者パーティーは、ブリトニー様と、結構、行動を共にしていて、無茶苦茶な虐待を常時受けてたので、手足を斬られた程度では、絶対に闘気を解かないのです。
 闘気を解いた時点で、死ぬのが日常の世界で生きてきましたから」

「傘下冒険者パーティーを、日常的に殺してしまうほど追い詰めるって……ブリトニーの奴、どんだけサイコニャン娘だよ……」

「まあ、そのお陰で、今迄、生き残れてきたのですけどね」

 メリルは、ニッコリと笑った。
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