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155. ベルゼブブ攻略レイド(7)
しおりを挟む少しづつ敵の戦線が後退してくる。
やはり今回は、異界の悪魔を斬れる剣を持つ者達が、一気に3人から、8人に倍以上増えたのが大きいようだ。
多分、ガブリエルの見立てでも、これ程優勢に立ち回れるとは思ってなかった筈だ。
「今回こそ、ベルゼブブを戦線に引きずり出してみせる……」
ガブリエルは、一人呟く。
そう。実を言うと、ベルゼブブが現れたのは、ゴトウ・サイトを自らの手で殺した時と、第1回ベルゼブブ攻略レイドの時しか現れてないのだ。
それ以外でも、かなり優勢であったアナスタシアが参戦した回でも、異界の悪魔ベルゼブブが戦いに参加する事は無かったのである。
「今回は、城に入れそうニャ!」
ノリに乗っているブリトニーも勢いづいている。
しかし、
「第9階位闇属性魔法、ワールドカーズ」
いつの間にか、石造り9階建てのベルゼブブ城の天守の吹き抜けのベランダに移動していた、ベルゼブブ軍No.2のアスタロトが、再び、大魔法を発動させた。
そして、前回同様に、上空に巨体な魔法陣が現れ禍々しいモヤのような霧を発生する。
「チッ! またかよ!」
塩太郎は舌打ちを打つ。エリスが、必死でエリスポーションを掛けて正気に戻してた味方の冒険者達が、再び錯乱状態に陥ってしまう。
最早、仲間の冒険者は邪魔なだけでしかない。
「アンタ、ここに居ても邪魔だから、アッチに行って、エリスを守りに行って!」
シャンティーが、ラインハルトに命令する。
「えっ?! 俺かよ?」
「アンタ、どう見ても、こっち側の戦いについてけてないでしょ!
アンタが活躍できてたのって、最初の登場の時だけよね?異界の悪魔も初見で、アンタが持ってる剣が聖剣だと気付けなくて、そのまま剣を受けとめてくれたお陰で倒せれたけど、その後、アンタ、1匹も異界の悪魔を倒せてないでしょ!」
「えっ?!バレてたのかよ?!」
「アンタ、そのままアソコに居たら、確実に死ぬわよ!」
「だよな……俺も、薄々感じてた……俺、ちょっと場違いかもって……」
ラインハルトは、ヤッパリ死にたく無かったのか、エリスと合流して、エリスの護衛をする事に決めたようだ。
「塩太郎! 城の中を目指すわよ!」
でもって、シャンティーは塩太郎に指示を出す。
「ああ! あの厄介な魔法を使うアスタロトとかいう奴を倒すんだな!」
「ええ。肉壁になってくれそうなアホな子に、エリスの護衛を任せたから、これで心置き無く城に突入出来るわよ!」
「ああ! 俺達『犬の肉球』が、一番乗りで城の中に突入してやる!」
必死に、異界の悪魔と戦っていると、メリルとケンジも合流してくる。
流石に、休みたいのかもしれない。
2人とも、盾役も使わずに単騎で戦い続けてたのだ。
シャンティーが有無を言わさず、メリルとケンジに、回復魔法を掛け、複数のエンチャンターをかける。
どうやら、シャンティーは、『犬の肉球』のメンバーだけじゃなく、メリルとケンジのHP、MP管理も同時に引き受けるようだ。
「アンタ達、今日限定で『犬の肉球』の臨時メンバーよ!
私のエンチャンターと回復魔法を受けた時点で、違うとは言わせないから!
アンタ達の今日の活躍は、全て『犬の肉球』の手柄になるから、忘れないでね!」
また、シャンティーが訳の分からない事を言っている。
「ベルゼブブを倒せるなら何だっていいです。その代わり、しっかり私のフォローをして下さい」
「全ては神シロ様の思し召し。神シロ様の刀を持ったあの侍の仲間になるのは、自然な事だな」
メリルもケンジも了承したようだ。
というか、何故か、ケンジは左目を瞑ったまま喋ってる。
「アンタ、戦闘の時は左目開けてたのに、何で私の回復魔法を受けて、全回復してるはずなのに左目閉じてるのよ?」
シャンティーも、どうやら気になったようだ。
実際、塩太郎も気になってた。
もしかしたら、異界の悪魔程度なら、左目瞑ってても倒せるというアピールか?
「フフフフフ。よく気付いたな。ちびっ子よ。これは、格好良いから瞑ってるだけだ」
何故か、ケンジは、フフンと、自信満々に言い放つ。
「アンタ、分かったわ。ただのバカね」
「フフフフフ。よく言われる」
なんか、よく分からないが。ケンジは格好良く頷いた。もしかしたら、ケンジ的にバカという言葉が褒め言葉だったのかもしれない……知らんけど。
でもって、塩太郎とメリルと何故か、戦闘の時だけシッカリ両目を開けるケンジが、大攻勢をかける。
「行け! 私の下僕達!」
シャンティーの偉そうな号令と共に、前衛3人の火力で一気に、敵の戦線を崩す事に成功し、そして、なし崩し的に、
「『犬の肉球』が、一番乗りだぜ!」
「やったわよ! これは歴史に残る快挙よ!」
「やっと、ここまで来れた……」
「全ては、我が神、シロ様の思し召し」
「骨が折れたわい」
塩太郎達、『犬の肉球』の面々は、異界の悪魔の包囲網を突破して、ベルゼブブの居城に突入する事に成功したのだった。
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