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124. アン・グラスホッパーVSカトリーヌ・グリズリー

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「それでは、アン・グラスホッパー対、カトリーヌ・グリズリーの試合を始める!」

 グロリア先生の号令により、アン姉ちゃんと、カトリーヌの試合が始まった。

 アン姉ちゃんは、今迄、我慢してたであろう、有り得ないほどの殺気を垂れ流す。
 相当、殺気を抑えるトレーニングに、ストレスを貯めてたのか、昨日より、物凄い殺気である。

 それと同時に、観客は、プレッシャーを与えられて苦しそうである。
 アン姉ちゃん。ヤッパリ、半端なく強くなっている。

 対するカトリーヌは、魔法用の杖を相変わらず握り締めている。

 アン姉ちゃんもカトリーヌも、剣術Lv.1と、身体強化Lv.3を持ってるが、アン姉ちゃんの方が、より攻撃特化。
 だって、エドソンから引き継いでる攻撃力Lv.2まで持ってるのだ。
 しかも、風魔法まで使えてしまうので、手に負えない。

 一方、カトリーヌは、グリズリー公爵家の血筋の特徴で、治癒魔法Lv.2しか持ってない。

 カトリーヌも、アホみたいに強いが、グラスホッパー家は、カララム王国一の戦闘民族なのだ。
 何せ、大戦の英雄エドソンと、伝説の冒険者パーティー『熊の鉄槌』のリーダーのエリザベスの血を受け継いでいるのだから。

 カトリーヌは、杖を身構えて、身震いしてるし。まあ、称号聖女を持つカトリーヌが、予選を勝ち抜いてる時点で、おかしな事なんだけどね。

「行くわよ!」

 最初に、アン姉ちゃんが、攻撃を仕掛ける。
 というか、風魔法も使ってるのか、スピードが尋常でない。
 その有り得んスピードの重い攻撃を、全て、魔法用の杖で受け止めるカトリーヌも凄いのだけど。

 だけど、スピードに勝るアン姉ちゃんの攻撃を避けきれずに、腕や足に攻撃がヒットし、カトリーヌの骨がボキッ! ボキッ!と、折れる、乾いた音が聞こえてくる。

 ちょっと、ゾッとする音なのだけど、カトリーヌは、ケロッとした顔をして、骨を折られながらも、アン姉ちゃんの攻撃を払い除け続けるのだ。

「あの音、どう考えても骨が折れる音だよな……」

 俺は、聞き覚えがある音に、寒気を覚えながらも鑑定スキルに聞く。

『しっかり、折られてますね。だけど、折られたその場で回復させてます!』

「なるほど、カトリーヌの治癒魔法Lv.2か」

 ヨナンは、思わず納得する。
 回復魔法が使えるトロワ兄が、まだ実家に居た頃、ヨナンは、アン姉ちゃんに折れた骨を、トロワ兄にそれとなく治して貰っていたから。

『カトリーヌさんも、伊達に聖女の称号を持ってないという事です!』

「だけど、どう考えても、聖女ポイ戦い方じゃないんだけど」

『まあ、あのエリザベスさんと同じ血筋の人ですからね。脳筋で、しかも気持ちも強いですから、アンさんの頭のおかしな攻撃を受けても、全く心が折れてませんよ!』

「骨は、しっかり折られてるんだけどな」

 俺は、上手いこと言ったと思ったのだが、鑑定スキルは、サラッと、スルーする。

『アンさんの戦い方は、肉を切らせて骨を断つじゃなくて、一方的に、相手の骨を折りまくる戦い方ですからね……普通の人じゃ耐えられないですよ。骨折られるのって、とても痛いですから。せめて、真剣使ってくれればいいのに、好んで木刀使いますから……』

「アン姉ちゃんの場合、骨を折ってる感覚無いんじゃないか?誰と試合しても、相手の骨をボキボキ折るし、普通の剣撃の音だと思ってる筈だぞ?
 じゃなければ、観客全員が、骨が折れる不快な音に顔を歪めてるのに、アン姉ちゃんだけは涼しい顔してるのおかしいし!」

『まあ、アンさんの場合、ご主人様の骨を折りなれてますからね!
 今でも、会場に響くこの不快な音を、骨が折れる音と、絶対に思ってませんから!』

 鑑定スキルが、分析する。
 というか、この試合、早く終わって欲しい。
 もう、骨が折れる不快な音に耐えられなくなって来てるし……。

 会場で観戦してる人も、余りの不快さに嘔吐する人や、目を背ける人、会場の外に回避する人まで出始めている始末。

 というか、コレ……決着つかないんじゃないか?
 結局、アン姉ちゃんの圧と、攻撃スピードが物凄過ぎて、カトリーヌは、全く手が出せないし、だけれども、どれだけダメージを食らっても回復魔法で直せてしまうし……

 結局、1時間ぐらい戦い続けて、アレキサンダー君が、王様権限で試合を止めさせた。

 勝敗も、アン姉ちゃんの方が手数が多かったから、特例でアン姉ちゃんが勝ちという事となった。

 でもって、このままアレキサンダー君とカトリーヌとの3位決定戦が始まる予定だったんだけど、アレキサンダー君は棄権してしまった。

 流石に、アン姉ちゃんとカトリーヌの試合を見たら、ヤル気なくなるよね。

 アン姉ちゃんのヤバ過ぎる剣撃を受け止めるだけの実力があるカトリーヌとも、誰もやろうとなんて思わないし。
 回復魔法まで使えるから、例え瀕死の攻撃を受けたとしても、ゾンビのように立ち上がって来そうだし。

 そもそも、カトリーヌの絶対に折れない精神力が、とんでも無いのだ。
 骨を、数千回折られても平気な精神力って、最早、化物級だからな。

『もしかしたら、マゾなだけかもしれませんよ!』

 鑑定スキルが、一々言わなくてもいい事を指摘する。

 折角、折るで、韻を踏んで、上手く話を纏められたと思ってたのに……。
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