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第17話 望まぬ色恋と親友の思わせぶり
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田中くんと藤原さんが付き合うことになった、と会社で報告されて以来、サイトウへの注目度はさらに上がった気がする。特に、藤原さんだ。恋愛成就後、藤原さんはサイトウに感謝しているらしく、会社で会うたびに笑顔で話しかけてくるようになった。
「サイトウさん! この間は本当にありがとうございました! サイトウさんのおかげで、田中くんと付き合えることになりました!」
満面の笑顔で感謝されるサイトウは、その度に「いや、俺は何も……」としどろもどろになる。藤原さんはそんなサイトウの謙遜を「もう、サイトウさんってば!」と楽しそうに受け止める。
サイトウは、一人で目立たず、静かに会社生活を送りたいのに、ナンデモフーズの一件、社長とのゴルフ、そして後輩カップルのキューピッド騒動と、次々と自分の意図しない形で注目を集めてしまう。藤原さんからの積極的な声かけも、サイトウにとっては新たな困り事だった。
そんなある日、藤原さんがサイトウの元にやってきて、耳打ちするように言った。
「あのですね、サイトウさん。実は、サイトウさんのこと、すごく素敵だなって思ってる女子が何人かいるんですよ」
「…………へ?」
サイトウは、今度こそ固まってしまった。素敵? 自分を? しかも、複数人?
「ナンデモフーズさんの件とか、社長とのゴルフの話とか聞いて、サイトウさんのこと、すごく尊敬してて、興味があるみたいで……」
藤原さんはキラキラした目でサイトウを見る。
「良かったら、紹介しましょうか?」
「…………ええええっ!?」
サイトウは、社内で声を上げてしまった。紹介? 素敵? 自分を? 頭の中がパニック状態になる。恋愛相談に乗った結果、後輩の恋は成就したが、今度は自分自身に「素敵だと思ってる女子」が複数いるという話になり、さらに「紹介しましょうか」と来るなんて、サイトウにとって想像もしていなかった展開だ。
「いや、あの! その! 結構です!」
サイトウは慌てて断った。
「その、俺、そういうの苦手なんで……」
「もう、遠慮しちゃって! でも、サイトウさん、絶対モテると思いますよ!」
藤原さんはそう言って、楽しそうに笑いながら去っていった。サイトウは、その場に立ち尽くし、ゲンナリしていた。目立ちたくないのに、人に好かれてしまう。しかも、今度は「恋愛」という形で具体的に異性から興味を持たれているらしい。そして、それを親切心から「紹介します」と言ってくる人が現れた。
(どうしよう……どうすればいいんだ……)
帰宅したサイトウは、リビングにいたイズミに、今日会社であった出来事を、特に藤原さんからの「女子紹介」の話を愚痴った。
「……でさ、イズミ! なんか、俺に興味ある女子がいるとか言い出してさ! しかも紹介しようかとか言うんだぞ! 俺、コミュ障なのに、そんなの絶対無理だって!」
サイトウは、ソファに倒れ込みながら、イズミに訴えた。イズミはサイトウの話を、いつものように冷静に、そして少し面白そうに聞いていた。
「ほう。ついにサイトウの『人たらし力』が、恋愛市場にまで影響を及ぼし始めたか」
イズミは腕を組みながら言った。
「しかも、後輩カップルのキューピッドになったことで、サイトウ株が急上昇、それに乗じてサイトウを狙う女子が現れた、と」
「だから! 能力とかじゃなくて! 俺、コミュ障だって言ってるだろ! そんな俺に、女子を紹介するとか、どうすればいいんだよ!」
「別にどうもしなくていいだろ。断ったんだから」
イズミは淡々と言う。
「断ったけどさ! またああいう話が来たらどうするんだよ! 俺、ほんとにああいうの苦手なんだって!」
サイトウは切実に訴える。人との深い関わり、特に恋愛感情が絡むような状況は、サイトウのコミュ障レベルを遥かに超えている。
イズミは、そんなサイトウを見て、フッと笑った。
「まあ、お前が困ってるのは分かった」
イズミはそう言うと、サイトウに問いかけた。
「で? サイトウは、彼女、つくらねえの?」
「…………へ?」
サイトウは、イズミの唐突な質問に、思わず固まった。彼女? 自分が?
「いや、あの、その……欲しい、とか、いらない、とかじゃなくて……俺、コミュ障だし、そういうの、無理、だから……」
サイトウは、正直な気持ちを答える。彼女が欲しくないと言えば、嘘になる。温かい関係性は、サイトウだって築きたい。しかし、コミュ障ゆえに、それは自分には無理だと、サイトウは心の底から信じているのだ。人とのまともな会話もできない自分に、恋愛なんてできるはずがない。
イズミは、サイトウの答えを聞いて、特に反応を示さなかった。そして、サイトウは、逆にイズミに問いかけた。
「じゃあ、イズミは、どうなんだよ? イズミは、彼女、つくらないの?」
イズミは、サイトウの質問を聞いて、フッと笑った。そして、サイトウをじっと見つめながら、とんでもないことを言い放った。
「……ん? 俺、彼女いないとか、言ったっけ?」
「…………はああああああっ!?」
サイトウは、イズミの予想外すぎる回答に、口をあんぐり開けた。言ったっけ? どういう意味だ? 彼女がいるのか? このイズミに? サイトウが知るイズミは、サイトウと同じように、特定の恋人の気配など全く感じさせない人間だったはずだ。
イズミは、サイトウの驚愕した顔を見て、心の中で笑いを堪えていた。
(いや、本当は彼女なんていないけど、このサイトウの顔、面白すぎるだろ……)
イズミは、サイトウの混乱を面白がりながら、涼しい顔で飲み物を飲んでいる。サイトウは、イズミの言葉の真偽を測りかね、頭の中で疑問符が乱舞していた。イズミに彼女が? いつから? 全く知らなかった。
イズミは、サイトウが「彼女いないとか言ったっけ?」という言葉にどれだけ動揺しているかを楽しんでいた。
(ハハハ、サイトウ、完全に混乱してるな。このまましばらく、彼女がいるようなフリをして、サイトウをからかってやるか)
サイトウは、イズミの予想外の言葉に困惑しつつも、イズミが自分をからかっているような、いつもの雰囲気も感じ取っていた。しかし、イズミの顔からは本心が読み取れない。
コミュ障ゆえに恋愛に自信がないサイトウ。意図せず異性を惹きつけてしまう能力に困惑し、さらに異性の紹介話にゲンナリする。そんなサイトウが親友に恋愛観を語り、そして親友の思わせぶりな一言に驚愕する。
サイトウとイズミの間の、遠慮のない、しかしお互いを理解し合っている関係性の中で、夜は更けていった。イズミの言葉の真偽は闇の中だが、サイトウの「望まぬ恋愛」に悩む日々は、まだまだ続く予感を孕んでいた。
「サイトウさん! この間は本当にありがとうございました! サイトウさんのおかげで、田中くんと付き合えることになりました!」
満面の笑顔で感謝されるサイトウは、その度に「いや、俺は何も……」としどろもどろになる。藤原さんはそんなサイトウの謙遜を「もう、サイトウさんってば!」と楽しそうに受け止める。
サイトウは、一人で目立たず、静かに会社生活を送りたいのに、ナンデモフーズの一件、社長とのゴルフ、そして後輩カップルのキューピッド騒動と、次々と自分の意図しない形で注目を集めてしまう。藤原さんからの積極的な声かけも、サイトウにとっては新たな困り事だった。
そんなある日、藤原さんがサイトウの元にやってきて、耳打ちするように言った。
「あのですね、サイトウさん。実は、サイトウさんのこと、すごく素敵だなって思ってる女子が何人かいるんですよ」
「…………へ?」
サイトウは、今度こそ固まってしまった。素敵? 自分を? しかも、複数人?
「ナンデモフーズさんの件とか、社長とのゴルフの話とか聞いて、サイトウさんのこと、すごく尊敬してて、興味があるみたいで……」
藤原さんはキラキラした目でサイトウを見る。
「良かったら、紹介しましょうか?」
「…………ええええっ!?」
サイトウは、社内で声を上げてしまった。紹介? 素敵? 自分を? 頭の中がパニック状態になる。恋愛相談に乗った結果、後輩の恋は成就したが、今度は自分自身に「素敵だと思ってる女子」が複数いるという話になり、さらに「紹介しましょうか」と来るなんて、サイトウにとって想像もしていなかった展開だ。
「いや、あの! その! 結構です!」
サイトウは慌てて断った。
「その、俺、そういうの苦手なんで……」
「もう、遠慮しちゃって! でも、サイトウさん、絶対モテると思いますよ!」
藤原さんはそう言って、楽しそうに笑いながら去っていった。サイトウは、その場に立ち尽くし、ゲンナリしていた。目立ちたくないのに、人に好かれてしまう。しかも、今度は「恋愛」という形で具体的に異性から興味を持たれているらしい。そして、それを親切心から「紹介します」と言ってくる人が現れた。
(どうしよう……どうすればいいんだ……)
帰宅したサイトウは、リビングにいたイズミに、今日会社であった出来事を、特に藤原さんからの「女子紹介」の話を愚痴った。
「……でさ、イズミ! なんか、俺に興味ある女子がいるとか言い出してさ! しかも紹介しようかとか言うんだぞ! 俺、コミュ障なのに、そんなの絶対無理だって!」
サイトウは、ソファに倒れ込みながら、イズミに訴えた。イズミはサイトウの話を、いつものように冷静に、そして少し面白そうに聞いていた。
「ほう。ついにサイトウの『人たらし力』が、恋愛市場にまで影響を及ぼし始めたか」
イズミは腕を組みながら言った。
「しかも、後輩カップルのキューピッドになったことで、サイトウ株が急上昇、それに乗じてサイトウを狙う女子が現れた、と」
「だから! 能力とかじゃなくて! 俺、コミュ障だって言ってるだろ! そんな俺に、女子を紹介するとか、どうすればいいんだよ!」
「別にどうもしなくていいだろ。断ったんだから」
イズミは淡々と言う。
「断ったけどさ! またああいう話が来たらどうするんだよ! 俺、ほんとにああいうの苦手なんだって!」
サイトウは切実に訴える。人との深い関わり、特に恋愛感情が絡むような状況は、サイトウのコミュ障レベルを遥かに超えている。
イズミは、そんなサイトウを見て、フッと笑った。
「まあ、お前が困ってるのは分かった」
イズミはそう言うと、サイトウに問いかけた。
「で? サイトウは、彼女、つくらねえの?」
「…………へ?」
サイトウは、イズミの唐突な質問に、思わず固まった。彼女? 自分が?
「いや、あの、その……欲しい、とか、いらない、とかじゃなくて……俺、コミュ障だし、そういうの、無理、だから……」
サイトウは、正直な気持ちを答える。彼女が欲しくないと言えば、嘘になる。温かい関係性は、サイトウだって築きたい。しかし、コミュ障ゆえに、それは自分には無理だと、サイトウは心の底から信じているのだ。人とのまともな会話もできない自分に、恋愛なんてできるはずがない。
イズミは、サイトウの答えを聞いて、特に反応を示さなかった。そして、サイトウは、逆にイズミに問いかけた。
「じゃあ、イズミは、どうなんだよ? イズミは、彼女、つくらないの?」
イズミは、サイトウの質問を聞いて、フッと笑った。そして、サイトウをじっと見つめながら、とんでもないことを言い放った。
「……ん? 俺、彼女いないとか、言ったっけ?」
「…………はああああああっ!?」
サイトウは、イズミの予想外すぎる回答に、口をあんぐり開けた。言ったっけ? どういう意味だ? 彼女がいるのか? このイズミに? サイトウが知るイズミは、サイトウと同じように、特定の恋人の気配など全く感じさせない人間だったはずだ。
イズミは、サイトウの驚愕した顔を見て、心の中で笑いを堪えていた。
(いや、本当は彼女なんていないけど、このサイトウの顔、面白すぎるだろ……)
イズミは、サイトウの混乱を面白がりながら、涼しい顔で飲み物を飲んでいる。サイトウは、イズミの言葉の真偽を測りかね、頭の中で疑問符が乱舞していた。イズミに彼女が? いつから? 全く知らなかった。
イズミは、サイトウが「彼女いないとか言ったっけ?」という言葉にどれだけ動揺しているかを楽しんでいた。
(ハハハ、サイトウ、完全に混乱してるな。このまましばらく、彼女がいるようなフリをして、サイトウをからかってやるか)
サイトウは、イズミの予想外の言葉に困惑しつつも、イズミが自分をからかっているような、いつもの雰囲気も感じ取っていた。しかし、イズミの顔からは本心が読み取れない。
コミュ障ゆえに恋愛に自信がないサイトウ。意図せず異性を惹きつけてしまう能力に困惑し、さらに異性の紹介話にゲンナリする。そんなサイトウが親友に恋愛観を語り、そして親友の思わせぶりな一言に驚愕する。
サイトウとイズミの間の、遠慮のない、しかしお互いを理解し合っている関係性の中で、夜は更けていった。イズミの言葉の真偽は闇の中だが、サイトウの「望まぬ恋愛」に悩む日々は、まだまだ続く予感を孕んでいた。
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