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第59話 突然の家飲み
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ボーリングにビリヤード、そしてダーツと、スポーツパーク・ワンダフルでの時間はあっという間に過ぎ去った。気がつけば、窓の外は茜色に染まり、夕暮れの帳が降り始めていた。
「わー、もうこんな時間だ!」
結菜が、楽しかった一日の終わりを惜しむように声を上げた。小西くんも、名残惜しそうにダーツボードを見つめている。
「じゃあ、そろそろ行くか」
イズミの言葉で、四人はスポーツパーク・ワンダフルを後にした。夕食は、近くの駅ビルにあるフードコートで済ませることになった。賑やかなフードコートで、四人はそれぞれ好きなものを注文し、他愛のない会話をしながら一日を振り返った。
食後、結菜は電車で帰るため、サイトウとイズミ、小西くんの三人で駅まで送り届けた。
「今日はありがとうございました! とっても楽しかったです!」
結菜は、にこやかに手を振り、改札へと消えていった。小西くんは、その姿が見えなくなるまで、じっと見送っていた。
「さーて、俺たちも帰るか」
イズミがそう言って歩き出すと、サイトウもそれに続いた。だが、ふとイズミが隣を歩く小西くんの方を振り向いた。
「おい、小西。お前は帰り道こっちじゃないだろ?」
小西くんが、サイトウとイズミと同じ方向へ歩いていることに気づいたのだ。小西くんの顔は、少し緊張しているように見えた。
「え、あ、はい! あの……」
小西くんが言いよどむと、イズミは眉をひそめた。
「なんだよ、まさか、ついてくる気か?」
イズミの怒声が、静まり始めた駅前の通りに響いた。小西くんは、ビクリと肩を震わせたが、意を決したように言った。
「あの! 明日は日曜なんだし、今日は三人でサイトウ先輩の家で家飲みしませんか!? 俺、サイトウ先輩とイズミ先輩と、もっとお話したいんです!」
小西くんは、なぜか前のめりになって、とんでもない提案をしてきた。サイトウは、突然の展開に困惑し、小西くんとイズミの顔を交互に見る。イズミは、小西くんの勝手な提案に呆れた顔をしていたが、次の瞬間、ある考えが閃いたようだ。
(ちょうどいい……!)
イズミの顔に、ニヤリとした笑みが浮かんだ。
「ほう、家飲み、だと? 面白いじゃねぇか。いいぜ、今日はとことん付き合ってやるよ、小西」
イズミは、普段のクールな表情からは想像もつかないほど、獲物を狙うような目で小西くんを見た。サイトウは、イズミの変貌ぶりに困惑する。
「え、イズミ? 大丈夫か? なんだか、すごくいやらしい顔してるけど……」
「ああ、最高の機会だ。ユナに手を出さないように、しっかり言い聞かせてやるからな……!」
イズミは、サイトウではなく、小西くんの方を真っ直ぐ見据えて不敵に笑った。小西くんは、イズミのただならぬ雰囲気に、少し後ずさりしている。
かくして、サイトウの家で急遽、男三人での家飲みが決定した。イズミの承諾を得た後、三人は最寄りのスーパーに立ち寄り、酒と肴を買い込んだ。サイトウは、こんな展開になるとは夢にも思っていなかったが、どこか浮かれた様子のイズミと、緊張しきった小西くんを見て、呆れつつも少しだけ面白く感じていた。
そして、サイトウの家。
ビールやチューハイ、唐揚げや枝豆、ポテトサラダなどがテーブルに並べられ、ささやかな宴が始まった。酒が進むにつれ、イズミの口調はさらに大胆になっていく。
「おい、小西! お前、俺の妹に変な気を起こしたらただじゃ済まさねぇからな! お前みたいなサイトウフリークに可愛い妹は絶対渡さねぇ!」
イズミがドスの利いた声で言い放つと、小西くんの顔はみるみるうちに真っ赤になった。サイトウは、そんな小西くんの様子を見て、アルコールのせいかと勘違いしている。
「小西くん、酔っぱらうの早いな。まだ一杯目だよ?」
サイトウが呑気なことを言う傍らで、小西くんは慌てふためいて否定した。
「お、俺は別にそんなこと……お、思ってたりしませんよ!」
小西くんは、顔を真っ赤にしたまま、必死に手を振って否定する。だが、その顔は正直だった。
「……確かに結菜さんはとても可愛かったですが……」
小西くんは、イズミから視線を外し、恥ずかしそうに小声で付け加えた。その言葉を聞いたイズミの眉がピクピクと動き、顔に苛立ちの色が浮かんだ。
イズミと小西くんがギャーギャーと言い合いながら、楽しそう(?)に酒を飲んでいる。その様子を、サイトウはビール片手に眺めていた。
(なんだかんだ言って、こういうのも、楽しいものだな)
普段はコミュ障で人と深く関わることを避けていたサイトウだが、目の前で繰り広げられる、騒がしくも温かい光景に、じんわりと心地よさを感じていたのだった。
「わー、もうこんな時間だ!」
結菜が、楽しかった一日の終わりを惜しむように声を上げた。小西くんも、名残惜しそうにダーツボードを見つめている。
「じゃあ、そろそろ行くか」
イズミの言葉で、四人はスポーツパーク・ワンダフルを後にした。夕食は、近くの駅ビルにあるフードコートで済ませることになった。賑やかなフードコートで、四人はそれぞれ好きなものを注文し、他愛のない会話をしながら一日を振り返った。
食後、結菜は電車で帰るため、サイトウとイズミ、小西くんの三人で駅まで送り届けた。
「今日はありがとうございました! とっても楽しかったです!」
結菜は、にこやかに手を振り、改札へと消えていった。小西くんは、その姿が見えなくなるまで、じっと見送っていた。
「さーて、俺たちも帰るか」
イズミがそう言って歩き出すと、サイトウもそれに続いた。だが、ふとイズミが隣を歩く小西くんの方を振り向いた。
「おい、小西。お前は帰り道こっちじゃないだろ?」
小西くんが、サイトウとイズミと同じ方向へ歩いていることに気づいたのだ。小西くんの顔は、少し緊張しているように見えた。
「え、あ、はい! あの……」
小西くんが言いよどむと、イズミは眉をひそめた。
「なんだよ、まさか、ついてくる気か?」
イズミの怒声が、静まり始めた駅前の通りに響いた。小西くんは、ビクリと肩を震わせたが、意を決したように言った。
「あの! 明日は日曜なんだし、今日は三人でサイトウ先輩の家で家飲みしませんか!? 俺、サイトウ先輩とイズミ先輩と、もっとお話したいんです!」
小西くんは、なぜか前のめりになって、とんでもない提案をしてきた。サイトウは、突然の展開に困惑し、小西くんとイズミの顔を交互に見る。イズミは、小西くんの勝手な提案に呆れた顔をしていたが、次の瞬間、ある考えが閃いたようだ。
(ちょうどいい……!)
イズミの顔に、ニヤリとした笑みが浮かんだ。
「ほう、家飲み、だと? 面白いじゃねぇか。いいぜ、今日はとことん付き合ってやるよ、小西」
イズミは、普段のクールな表情からは想像もつかないほど、獲物を狙うような目で小西くんを見た。サイトウは、イズミの変貌ぶりに困惑する。
「え、イズミ? 大丈夫か? なんだか、すごくいやらしい顔してるけど……」
「ああ、最高の機会だ。ユナに手を出さないように、しっかり言い聞かせてやるからな……!」
イズミは、サイトウではなく、小西くんの方を真っ直ぐ見据えて不敵に笑った。小西くんは、イズミのただならぬ雰囲気に、少し後ずさりしている。
かくして、サイトウの家で急遽、男三人での家飲みが決定した。イズミの承諾を得た後、三人は最寄りのスーパーに立ち寄り、酒と肴を買い込んだ。サイトウは、こんな展開になるとは夢にも思っていなかったが、どこか浮かれた様子のイズミと、緊張しきった小西くんを見て、呆れつつも少しだけ面白く感じていた。
そして、サイトウの家。
ビールやチューハイ、唐揚げや枝豆、ポテトサラダなどがテーブルに並べられ、ささやかな宴が始まった。酒が進むにつれ、イズミの口調はさらに大胆になっていく。
「おい、小西! お前、俺の妹に変な気を起こしたらただじゃ済まさねぇからな! お前みたいなサイトウフリークに可愛い妹は絶対渡さねぇ!」
イズミがドスの利いた声で言い放つと、小西くんの顔はみるみるうちに真っ赤になった。サイトウは、そんな小西くんの様子を見て、アルコールのせいかと勘違いしている。
「小西くん、酔っぱらうの早いな。まだ一杯目だよ?」
サイトウが呑気なことを言う傍らで、小西くんは慌てふためいて否定した。
「お、俺は別にそんなこと……お、思ってたりしませんよ!」
小西くんは、顔を真っ赤にしたまま、必死に手を振って否定する。だが、その顔は正直だった。
「……確かに結菜さんはとても可愛かったですが……」
小西くんは、イズミから視線を外し、恥ずかしそうに小声で付け加えた。その言葉を聞いたイズミの眉がピクピクと動き、顔に苛立ちの色が浮かんだ。
イズミと小西くんがギャーギャーと言い合いながら、楽しそう(?)に酒を飲んでいる。その様子を、サイトウはビール片手に眺めていた。
(なんだかんだ言って、こういうのも、楽しいものだな)
普段はコミュ障で人と深く関わることを避けていたサイトウだが、目の前で繰り広げられる、騒がしくも温かい光景に、じんわりと心地よさを感じていたのだった。
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