欲情プール

よつば猫

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戻った愛と目覚める欲1

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「それにしても茉歩の上司、専務さんだっけ?
人使い荒いよなぁ。
昨日はあんまり寝てないんじゃないのか?」

「仕方ないよ、今日がプレゼンだったから。
それに人使いが荒い訳じゃなくて、むしろ私が増やした作業だから、強引に手伝わせてもらってたの。
しかも専務って1人で背負い込んじゃう人だから、何だかほっとけなくて」

 専務はやっぱり過労だった。
一泊入院する事になったものの、大事には至らず。
会社には、定期検診の一環として検査入院した事になっている。

 私はというと……
明日はもちろん、当分の無理ないスケジュールを調整したり、雑務をこなして。
今日は定時で上がると、買い物に寄って。
帰って来た4階のフロアで、スカイラウンジに行こうとしてた聡と鉢合わせた。

 成り行きで一緒に飲む事になったわけだけど……
聡と外で飲むのは、どれくらいぶりだろう。

「へ~ぇ、なんか茉歩と似てるね。
茉歩もさ、弱みを見せずに1人で抱え込んじゃうだろ?」
そう言われて。

 苦笑いを返した。
解ってくれてるなら、どうしてこんな酷い仕打ち(不倫)をするの?

 なんて、理性と感情は別物だよね。
せっかく2人で飲んでるのに、自分の気持ちに水を差したくない。

「けど、ほっとけないなんて……
茉歩はほんとに優しいなぁ。
そのうえ美人で仕事も出来て、こんな最高の部下いないだろっ」

「どうしたのっ?誉め殺し?
おだてたって、なんにもでないからっ」

「ひどいなぁ!本心なのにっ」

 そんな調子で、笑い合う私達。

 聡との時間を、精いっぱい楽しみたかった。
だってその時間はもう、限られてるから。

 そしてもう1つ。
専務に抱いた持て余す感情を、吹き飛ばしたかった。

 大丈夫。
それは同情的な、友情的な感情で……
しかも、一時的なものに決まってる。




 そうして、気持ちをリフレッシュした翌日。

 専務を病院まで迎えに行くと、ナース達に口説かれてる有り様が映り込む。

「お疲れ様です」と声を掛けると、彼女達は勤務に戻って行ったけど。

「どこでもモテますね。
ちゃんと身体は休めましたか?」
休養に集中出来たのか、純粋に心配したのに。

「あれ、ヤキモチ?
大丈夫、俺は茉歩にしか興味ないから」
なんて……

 この人はっ!
せっかく気持ちをリフレッシュしたのに、何でそれを乱す事言うのっ?

「っ、ふざけた事言ってないで、退院の準備をして下さい。
まだ全然片付けてないじゃないですかっ」
必死に動揺を抑えて、切り躱す。

 大体!
もうすぐ離婚するとはいえ、私は人妻だし。
専務の心には愛する人がいて、おまけに婚約者まで居る。
だからこんな他意のない軽いセリフ、間に受ける事ないって解ってるのに……
どうかしてる!


 だけど、それはともかく。
専務が無事に回復して、ほんとに良かった。

 いくら隠されてたとはいえ。
上司の体調不良にも気付かなかった事に、秘書として責任を感じてた私は、余計ほっとした。
そう、秘書として……





 そんな数日後。
退院したとはいえ、しばらく専務に無理はさせられないため。
調整したスケジュールにより、私も引き続き早い帰宅をすると。

 あれ、聡どこ行ったんだろ?
帰って来た痕跡はあるのに、見当たらない。

 またスカイラウンジかな?
この前の楽しさを思い出して……
また一緒に飲みたいと、行ってみる事にした。


 ところが、聡は居なくて。
1人で飲むつもりもなく、下りエレベーターに乗り込むと。
次の階で止まって、扉が開いた。

「信じてくれないなら、もういーから!」

「そうじゃなくてっ……」

 正面には誰も居ないのに、男女の喧嘩の声が飛び込んで来て。

 乗るのか、閉めた方がいいのか……
声のする通路を覗き込んで、心臓が止まった。

「うるさい!
エレベーター来たから乗ればっ!?」

露美ロミっ、待ってくれ!」

 慌ててエレベーターの扉を閉めると。
激しくえぐられた胸に、呼吸もままならず。
ただただショックに打ち込めされた。

 そう、喧嘩をしてたのは……
聡と、恐らく不倫相手で。
ロミと呼ばれてたそのコは、若くてとても綺麗な女の子だった。
それはもう、勝ち目もないくらい。

 だだでさえ耐えられないと思ってた、一緒に居る所を目撃して。
しかも相手がそんなに若くて綺麗なコだなんて!

 聡は、モデルのようなそのコの細い腕を、引き止めるように掴んでて。
それは、想像したくもないのに、2人の絡みを連想させて……
胸が捻り潰される。


 大体、何でこのマンションにいるの!?
ひと気のない階に潜んだりしてっ……
信じられない!
もうっ、あり得ないよ!!

 ねぇ聡っ……
聡を寂しくさせた罰は、そんなに重いの?
ただ頑張って来ただけなのに……
私はちゃんと愛してたのに!



 その日は、聡と顔を合わせる事が出来ずに……
体調が悪いと、部屋にこもって。
眠れない夜を過ごした。

 だけどこれは、バチが当たったのかもしれない。
聡とこんな時なのに、専務に心を動かされてた。
そんな危機感のない私への、戒めに……



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