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混血系大公編:第二部
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「どうでした?懐かしの古巣の様子は」
傭兵団本部へ続く道をのんびり歩きながら、ヴァレさんに感想を伺う。彼は髪をかきあげ、「そうだなぁ…」と思案したあと、ぽつりと呟いた。
「懐かしくもあるが、寂しくもあるな」
「えっ、寂しいんです?」
所長さんは太陽帝フリークだから、ほとんど内装もそのままで使ってたはずだけど。
「建物は変わっていないようだけれどね。でもあの場所はもう、衛兵隊のものだ。…俺のものじゃあない」
「あ…」
ヴァレさんが作った傭兵団は、もう解散してしまった。ヴァレさんの元に残った人もいるけれど、ハリーさんのように領地を治めるために離れて行ってしまった人も多い。その場所に所縁があるとはいえ全然違う組織の人たちが入っているのは、やはり疎外感を感じてしまうんだろうか。
「だが仕方ない。俺の傭兵団は、もう解散したのだから」
「……」
ヴァレさんの言葉に、胸の奥がチクリと痛む。…ヴァレさんの言葉が、あまりにも身に染みてしまうから。
今のところはなんとか、私たちの傭兵団は生き残っている。でもボナ・ノクテムはもう終わった。戦いの機会は確実に少なくなっている。私たちの傭兵団が、必要なくなる日だってそのうちに来るのかもしれない。
この世界で目覚めてからずっと、私の居場所だった傭兵団。できることならずっと、存続させていきたいと思っているけれど。いずれ私は、爵位を受け取らなければいけなくて。そうなったら私は授与された領地を治めなければいけないし、結局存続云々の前に、私は傭兵団を離れることになるんだろう。
そうなったら誰を残し、誰を連れて行くか。…悩みが尽きることはない。
「…はぁ、頭が痛い…」
独り言のつもりだったけど、ヴァレさんには聞こえてしまったらしい。軽く笑って、のしかかる重みを払うように私の肩をポンポンと叩いた。
「すまない、俺が余計なことを言ったか?」
「そんなことは…」
「そーだそーだ。オッサンが辛気くせぇこと言うからだ…痛ェ!」
後ろから大暴言を吐いたロルフを、私が叱る間もなくビョルンが拳で黙らせてくれた。ナイス。
「いずれは考えなきゃ行けないことなんで、ボチボチ、考えていきます」
「そうだな、まだ時間はある…納得のいくまで、ゆっくり考えてくれればいい」
「うん…」
褒賞式やなんやらはもう時期が決まっちゃってるんだけど、私が授与される領地についてはまだ協議中らしいし、実際に決まったとしても今その領地を治めている代官が引継ぎまでは任期を続けてくれるから、多少引き延ばしても問題はないのだそうだ。
「君のためなら、いくらでも引き延ばすよ?」
「ふふ、それじゃさすがに『お代官様』に悪いですよ」
「オダイカン様…?」
おっといかん、自分の中で『お代官様~』が定着しちゃってたわ。
「そうですね…本当、ボチボチ、いろいろ考えていかなきゃな~!」
最近いろいろ問題が起きて後回しに
「よろしく頼むよ。いくらでも相談に乗るから、気軽に連絡してくれ」
今度はポンポンと優しく背中を叩かれて、心強くてついつい頼りにしてしまいそうになる。でもこの人は、かつてのような近所の頼りになるお兄さんじゃない。この国の皇帝で、ものすごく多忙な立場なんだから、頼り過ぎてはいけない。
「ふふ、ありがとうございます。でもまずは…家族で話し合ってみますね。私には頼りになる夫たちがいるんで」
ね、と振り向くと、ビョルンがニコッと笑って頷いてくれた。うんうん、ビョルンさんは本当に頼りになるからね。ヴァレさんの手を煩わせなくても大丈夫ですよー。安心してねー。って言ったつもりなんですけど。
「…ああ、そうだね」
そう答えたヴァレさんの声が、ほんの少しだけどトーンが下がったように聞こえた。…あれ?なんか気に食わないこと言っちゃったかな?なんか失敗したかな、と自分の言葉を思い返そうとしたんだけど…。
「おいシャーラ、俺は?」
後ろからガシッと肩を組まれて、恨みがましい低ーい声を耳元で囁かれてその思考は吹っ飛んだ。
「えッ、何よロルフ?」
「何よじゃねー。お前『頼りになる夫』のとこで俺のことスルーしたろ」
ああ~…。あんまり意識してなかったけど、ついつい本音が出てスルーしちゃったかも。クソ、目ざといなコイツ。
「いやだって、アンタ頼りになる夫っていうより手のかかる駄け…」
「おぉ?なんつったテメェ」
「あぶぶぶ」
ぶにーっと片手で頬を両側から押しつぶされる。ちょっと、これじゃ喋れないんだけど!
「はなふてよ(離してよ)!」
「あ?なんだって?」
「へおほへろ(手を退けろ)!」
「俺が一番頼りになるって?」
「ひってない(言ってない)!」
「そうかそうか、俺もお前の夫だからな。もちろん頼りにしてくれていいんだぜ?」
「このはへん!(この駄犬)!」
「わかったわかった、礼は体で払えよ?」
「ムキーーーー!!」
がんばってロルフの腕を引っぺがそうとするんだけど、びくともしねぇぇ!!
「やれやれ…」
わちゃわちゃやり合ってる私たちに、ビョルンが頭を押さえてため息をつく。そしてそれを見たヴァレさんもまた、
「アッハッハッハ!」
と大口を開けて笑っていて…なんというかもう、カオスだった。
傭兵団本部へ続く道をのんびり歩きながら、ヴァレさんに感想を伺う。彼は髪をかきあげ、「そうだなぁ…」と思案したあと、ぽつりと呟いた。
「懐かしくもあるが、寂しくもあるな」
「えっ、寂しいんです?」
所長さんは太陽帝フリークだから、ほとんど内装もそのままで使ってたはずだけど。
「建物は変わっていないようだけれどね。でもあの場所はもう、衛兵隊のものだ。…俺のものじゃあない」
「あ…」
ヴァレさんが作った傭兵団は、もう解散してしまった。ヴァレさんの元に残った人もいるけれど、ハリーさんのように領地を治めるために離れて行ってしまった人も多い。その場所に所縁があるとはいえ全然違う組織の人たちが入っているのは、やはり疎外感を感じてしまうんだろうか。
「だが仕方ない。俺の傭兵団は、もう解散したのだから」
「……」
ヴァレさんの言葉に、胸の奥がチクリと痛む。…ヴァレさんの言葉が、あまりにも身に染みてしまうから。
今のところはなんとか、私たちの傭兵団は生き残っている。でもボナ・ノクテムはもう終わった。戦いの機会は確実に少なくなっている。私たちの傭兵団が、必要なくなる日だってそのうちに来るのかもしれない。
この世界で目覚めてからずっと、私の居場所だった傭兵団。できることならずっと、存続させていきたいと思っているけれど。いずれ私は、爵位を受け取らなければいけなくて。そうなったら私は授与された領地を治めなければいけないし、結局存続云々の前に、私は傭兵団を離れることになるんだろう。
そうなったら誰を残し、誰を連れて行くか。…悩みが尽きることはない。
「…はぁ、頭が痛い…」
独り言のつもりだったけど、ヴァレさんには聞こえてしまったらしい。軽く笑って、のしかかる重みを払うように私の肩をポンポンと叩いた。
「すまない、俺が余計なことを言ったか?」
「そんなことは…」
「そーだそーだ。オッサンが辛気くせぇこと言うからだ…痛ェ!」
後ろから大暴言を吐いたロルフを、私が叱る間もなくビョルンが拳で黙らせてくれた。ナイス。
「いずれは考えなきゃ行けないことなんで、ボチボチ、考えていきます」
「そうだな、まだ時間はある…納得のいくまで、ゆっくり考えてくれればいい」
「うん…」
褒賞式やなんやらはもう時期が決まっちゃってるんだけど、私が授与される領地についてはまだ協議中らしいし、実際に決まったとしても今その領地を治めている代官が引継ぎまでは任期を続けてくれるから、多少引き延ばしても問題はないのだそうだ。
「君のためなら、いくらでも引き延ばすよ?」
「ふふ、それじゃさすがに『お代官様』に悪いですよ」
「オダイカン様…?」
おっといかん、自分の中で『お代官様~』が定着しちゃってたわ。
「そうですね…本当、ボチボチ、いろいろ考えていかなきゃな~!」
最近いろいろ問題が起きて後回しに
「よろしく頼むよ。いくらでも相談に乗るから、気軽に連絡してくれ」
今度はポンポンと優しく背中を叩かれて、心強くてついつい頼りにしてしまいそうになる。でもこの人は、かつてのような近所の頼りになるお兄さんじゃない。この国の皇帝で、ものすごく多忙な立場なんだから、頼り過ぎてはいけない。
「ふふ、ありがとうございます。でもまずは…家族で話し合ってみますね。私には頼りになる夫たちがいるんで」
ね、と振り向くと、ビョルンがニコッと笑って頷いてくれた。うんうん、ビョルンさんは本当に頼りになるからね。ヴァレさんの手を煩わせなくても大丈夫ですよー。安心してねー。って言ったつもりなんですけど。
「…ああ、そうだね」
そう答えたヴァレさんの声が、ほんの少しだけどトーンが下がったように聞こえた。…あれ?なんか気に食わないこと言っちゃったかな?なんか失敗したかな、と自分の言葉を思い返そうとしたんだけど…。
「おいシャーラ、俺は?」
後ろからガシッと肩を組まれて、恨みがましい低ーい声を耳元で囁かれてその思考は吹っ飛んだ。
「えッ、何よロルフ?」
「何よじゃねー。お前『頼りになる夫』のとこで俺のことスルーしたろ」
ああ~…。あんまり意識してなかったけど、ついつい本音が出てスルーしちゃったかも。クソ、目ざといなコイツ。
「いやだって、アンタ頼りになる夫っていうより手のかかる駄け…」
「おぉ?なんつったテメェ」
「あぶぶぶ」
ぶにーっと片手で頬を両側から押しつぶされる。ちょっと、これじゃ喋れないんだけど!
「はなふてよ(離してよ)!」
「あ?なんだって?」
「へおほへろ(手を退けろ)!」
「俺が一番頼りになるって?」
「ひってない(言ってない)!」
「そうかそうか、俺もお前の夫だからな。もちろん頼りにしてくれていいんだぜ?」
「このはへん!(この駄犬)!」
「わかったわかった、礼は体で払えよ?」
「ムキーーーー!!」
がんばってロルフの腕を引っぺがそうとするんだけど、びくともしねぇぇ!!
「やれやれ…」
わちゃわちゃやり合ってる私たちに、ビョルンが頭を押さえてため息をつく。そしてそれを見たヴァレさんもまた、
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と大口を開けて笑っていて…なんというかもう、カオスだった。
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