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混血系大公編:第二部
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まぁでも。
「伊達にウチの看板背負ってないですからねー」
「ビョルンを引きずり出すには、まだ遠いか」
「んふふ、まだまだ。騎士さん10人くらいは連れてきてもらわないと」
「言ったな?ならばヒョウエを呼び戻すか」
「いきなり最強戦力キター」
ヴァレさんが口にしたヒョウエってのは、帝国騎士団最強と言われている近衛騎士の名前だ。ウチのビョルンは帝国で1、2を争う強さだと思ってるけど、その争う相手はこのヒョウエさんだ。前世でいう日本人って感じの見た目の人で、漢字はやっぱり「兵衛(ひょうえ)」って書くらしい。以前本人に聞いたことがある。
「あれ、呼び戻すってことは兵衛さん、いまどちらかに出張中ですか?」
「今は甥っ子についているよ」
ヴァレさんの甥っ子…つまり現皇太子殿下の剣術指南兼護衛として、付き従っているらしい。その甥っ子さんは皇帝教育の一貫で別の領地へ出向中のため、兵衛さんもそちらに着いて行ってるのだとか。
「最高戦力を外に出しちゃっていいんですか?」
「もちろん。ヒョウエほどではなくとも優秀な騎士はたくさんいるしね。それにいざとなれば、君たちが助けてくれるだろう?」
「うふふ、もちろん」
私もヴァレさんにはお世話になってるからねー。要請があればもちろん、手を尽くしますよ。
そんな私の返答に、ヴァレさんはフッと軽く肩をすくめた。
「助かるよ。甥っ子は兵衛を寵愛していてね。もう手放す気はないだろうから」
「へ、へぇ…?」
それは部下としてって意味で捉えてよいですかい…?この世界って同性愛は全然マイナーじゃないからね、同性のカップルも珍しくはないんだけど。皇太子殿下は成人もしていないハイティーンだし、兵衛さんはビョルンと同じ年くらいだったはずだ。……まさかね。
少し考えて黙りこくってしまった私の肩口を、ビョルンがちょいと肘でつついた。
顔を上げると衛兵隊長のモーガンさんがこっちに来ているのが見えて、そこでヴァレさんとの会話を打ち切った。
「いやぁ、ボコボコにされました!」
爽やかな笑顔で言うモーガンさんに、プッと吹き出してしまう。
「そのようで…怪我はないです?」
「軽い打ち身程度ですよ!情けないことに完全に遊ばれてますわアッハッハ!」
モーガンさんは一番いい線行ってた気がするけど、ロルフに一撃も与えられなかった。それでも目をキラキラさせて笑ってるから、この人もなかなかの戦闘狂よねぇ。
そんな話をしていると、ロルフが肩をグルグル回しながら戻ってきた。
「おかえり、ロルフ」
「チッ、準備運動にもなりゃしねぇ」
おーおー、言うねぇ。でも大して汗もかいてないようで、大法螺吹いてるってわけでもないのよねぇ。
「ロルフ…ちょっとやりすぎだぞ」
ビョルンが鍛錬場に目を向けて小言を言う。そこには衛兵さんたちの死屍累々…いやまぁもちろん死んではないんだけど、グッタリして動けないような状態の男どもが何人もぶっ倒れている。
…これ、住民から出動要請が来た時、仕事できるんかい…?
「ヘッ、知るかよ。向かってくるからぶちのめしただけだ」
「まったく…スマンな、モーガン」
「いえいえ!英雄殿の胸をお借りできる貴重な機会に、限界まで挑んだアイツらが未熟なだけですよ。なぁに、奴ら若いんで、すぐ復活しますよ!」
遠くで「無理っす~…」とか細い声が聞こえた気がするけど、モーガンさんはシレっと無視して私たちにお礼を言った。
「この後のご予定は?」
「あ、ウチの傭兵団本部にも寄る予定です」
「おっと…さすがに休憩してからもうひと合わせは、ご迷惑でしょうな」
「クソ迷惑」
「ロルフ!」
吐き捨てるように暴言を吐いたロルフに裏拳を叩きこむ(もちろん効いてない)けど、モーガンさんは気にした素振りもなくカラッと笑った。
「それではお引止めするのも申し訳ない。今日はありがとうございました!またお時間がありましたら、お手合わせ願います!」
「やなこった」
「もーロルフは黙って!」
ペシっと再びツッコんでから、ちらっとヴァレさんに視線を向ける。すると「もういいよ」というように頷いてくれたので、私たちはそろそろお暇することにした。
「モーガンさん、この後所長さんに挨拶してから出ますけど、よかったらウチの傭兵たちとの合同訓練を提案してみてもいいですか?お互い、色んな相手と手合わせした方がいい訓練になるでしょうし」
「それは願ってもみない提案です!是非に!」
私の提案にモーガンさんは食い気味に乗ってくれて、私は若干仰け反りつつそれを了承した。
「じゃあ、また予定詰めますね。よろしくお願いします」
「はい、楽しみにお待ちしております!」
元気よく返事してくれたモーガンさんに手を振って、私たちはその場を後にした。それから所長さんの所に顔を出して先ほどの提案をすると、喜んで了承してくれた。所長さんの補佐官とウチの秘書が連絡を取り合って予定を決めてくれることになったので、よろしくと挨拶して衛兵隊詰所を後にした。
「伊達にウチの看板背負ってないですからねー」
「ビョルンを引きずり出すには、まだ遠いか」
「んふふ、まだまだ。騎士さん10人くらいは連れてきてもらわないと」
「言ったな?ならばヒョウエを呼び戻すか」
「いきなり最強戦力キター」
ヴァレさんが口にしたヒョウエってのは、帝国騎士団最強と言われている近衛騎士の名前だ。ウチのビョルンは帝国で1、2を争う強さだと思ってるけど、その争う相手はこのヒョウエさんだ。前世でいう日本人って感じの見た目の人で、漢字はやっぱり「兵衛(ひょうえ)」って書くらしい。以前本人に聞いたことがある。
「あれ、呼び戻すってことは兵衛さん、いまどちらかに出張中ですか?」
「今は甥っ子についているよ」
ヴァレさんの甥っ子…つまり現皇太子殿下の剣術指南兼護衛として、付き従っているらしい。その甥っ子さんは皇帝教育の一貫で別の領地へ出向中のため、兵衛さんもそちらに着いて行ってるのだとか。
「最高戦力を外に出しちゃっていいんですか?」
「もちろん。ヒョウエほどではなくとも優秀な騎士はたくさんいるしね。それにいざとなれば、君たちが助けてくれるだろう?」
「うふふ、もちろん」
私もヴァレさんにはお世話になってるからねー。要請があればもちろん、手を尽くしますよ。
そんな私の返答に、ヴァレさんはフッと軽く肩をすくめた。
「助かるよ。甥っ子は兵衛を寵愛していてね。もう手放す気はないだろうから」
「へ、へぇ…?」
それは部下としてって意味で捉えてよいですかい…?この世界って同性愛は全然マイナーじゃないからね、同性のカップルも珍しくはないんだけど。皇太子殿下は成人もしていないハイティーンだし、兵衛さんはビョルンと同じ年くらいだったはずだ。……まさかね。
少し考えて黙りこくってしまった私の肩口を、ビョルンがちょいと肘でつついた。
顔を上げると衛兵隊長のモーガンさんがこっちに来ているのが見えて、そこでヴァレさんとの会話を打ち切った。
「いやぁ、ボコボコにされました!」
爽やかな笑顔で言うモーガンさんに、プッと吹き出してしまう。
「そのようで…怪我はないです?」
「軽い打ち身程度ですよ!情けないことに完全に遊ばれてますわアッハッハ!」
モーガンさんは一番いい線行ってた気がするけど、ロルフに一撃も与えられなかった。それでも目をキラキラさせて笑ってるから、この人もなかなかの戦闘狂よねぇ。
そんな話をしていると、ロルフが肩をグルグル回しながら戻ってきた。
「おかえり、ロルフ」
「チッ、準備運動にもなりゃしねぇ」
おーおー、言うねぇ。でも大して汗もかいてないようで、大法螺吹いてるってわけでもないのよねぇ。
「ロルフ…ちょっとやりすぎだぞ」
ビョルンが鍛錬場に目を向けて小言を言う。そこには衛兵さんたちの死屍累々…いやまぁもちろん死んではないんだけど、グッタリして動けないような状態の男どもが何人もぶっ倒れている。
…これ、住民から出動要請が来た時、仕事できるんかい…?
「ヘッ、知るかよ。向かってくるからぶちのめしただけだ」
「まったく…スマンな、モーガン」
「いえいえ!英雄殿の胸をお借りできる貴重な機会に、限界まで挑んだアイツらが未熟なだけですよ。なぁに、奴ら若いんで、すぐ復活しますよ!」
遠くで「無理っす~…」とか細い声が聞こえた気がするけど、モーガンさんはシレっと無視して私たちにお礼を言った。
「この後のご予定は?」
「あ、ウチの傭兵団本部にも寄る予定です」
「おっと…さすがに休憩してからもうひと合わせは、ご迷惑でしょうな」
「クソ迷惑」
「ロルフ!」
吐き捨てるように暴言を吐いたロルフに裏拳を叩きこむ(もちろん効いてない)けど、モーガンさんは気にした素振りもなくカラッと笑った。
「それではお引止めするのも申し訳ない。今日はありがとうございました!またお時間がありましたら、お手合わせ願います!」
「やなこった」
「もーロルフは黙って!」
ペシっと再びツッコんでから、ちらっとヴァレさんに視線を向ける。すると「もういいよ」というように頷いてくれたので、私たちはそろそろお暇することにした。
「モーガンさん、この後所長さんに挨拶してから出ますけど、よかったらウチの傭兵たちとの合同訓練を提案してみてもいいですか?お互い、色んな相手と手合わせした方がいい訓練になるでしょうし」
「それは願ってもみない提案です!是非に!」
私の提案にモーガンさんは食い気味に乗ってくれて、私は若干仰け反りつつそれを了承した。
「じゃあ、また予定詰めますね。よろしくお願いします」
「はい、楽しみにお待ちしております!」
元気よく返事してくれたモーガンさんに手を振って、私たちはその場を後にした。それから所長さんの所に顔を出して先ほどの提案をすると、喜んで了承してくれた。所長さんの補佐官とウチの秘書が連絡を取り合って予定を決めてくれることになったので、よろしくと挨拶して衛兵隊詰所を後にした。
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