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混血系大公編:第二部
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話がまとまって、イスは会場の最終チェックをするために先に出て行った。
残った3人で話していると、玄関のノッカーが鳴る。あれ、誰だろう?腰を浮かせると、ヴァレさんが「ジョバンニだよ」と開ける前からわかったようで答えてくれた。
何でわかるのかな?
ビョルンとかロルフも時々そうなんだけど、優れた戦士って感覚が鋭敏なのかな。予知能力でもある?って思うぐらい察知する力がすごいと思う時があるのよね。
ビョルンにも特に止められなかったので、私が玄関まで行って応対する。
「いらっしゃいませー…って、えッ?!」
「失礼、英雄殿。まずは入れていただけますか?」
「あ、はい…?」
「失礼」
ヴァレさんの予想通り先頭にいたのはジョバンニさんだったんだけど、後ろにいたフードを浅く被った人物に驚いてしまう。でも私の驚きを無視して、ジョバンニさんは少々強引に足を踏み込んで来たので、私は大人しくその場を譲った。
朝来たのと同じ騎士さんに「しっかり施錠してくださいね」と促されたので、慌てて鍵を掛けて私も居間に向かった。
「やぁジョバンニ、早かったね」
「充分考慮したつもりですが。英雄殿と話はつきましたか?随分な『お遊び』に付き合わせたようですが」
「厳しいね。話はちゃんと済んでいるよ」
「重畳の至り」
二人が会話をしている間も、私はジョバンニさんの後ろにいる人物に釘付けになってしまう。
そんな私に気づいたヴァレさんは、クスリと笑ってこう言った。
「おやシャトラ。そんな男に目を奪われていては、嫉妬してしまうよ?」
「え、いやだって…」
私はヴァレさんとその人物を交互に見ながら、思わず大きな声を出す。
「この人、ヴァレさんにソックリじゃないですか!」
そう言うと、ヴァレさん?は私を見てにっこりと笑った。
「え、え?双子…?」
混乱しておろおろしている私に、ヴァレさんはプッと吹き出してから否定した。
「まさか、私の替え玉(ダブル)だよ」
「替え玉(ダブル)…?!それでもこんなにソックリってあります?!」
影武者ってことよね。でもでも、こんなヴァレさんみたいな完璧に近いイケメンが、この世に二人もいるとは思えないんだけど!
「附術ですよ。ミケーレ、もういいから取りなさい」
「はい」
ミケーレと呼ばれたヴァレさん?(いかん混乱してる)はフードを外し、首に掛けていたネックレスを外す。すると一瞬空気が揺らいだ後、彼の本当の姿が現れた。
背格好と髪型、髪色はパッと見似ている。顔立ちもちょっと似ている、けれどよく見れば全然違う。たいへん失礼な言い方をすると、ヴァレさんの下位互換みたいな青年がそこには立っていた。
「お、おぉ~…」
さっき驚き過ぎたせいか、変な感嘆の声が出てしまう。すると替え玉さんは居心地悪そうな顔をして、しょんぼり俯いてしまった。
「がっかりさせてしまって申し訳ありません…」
「い、いやいやいや!貴方は何も悪くないです!私が勘違いしてたのが悪いだけですし!貴方も充分にイケメンです!えーとホラ、あれだ!そもそもヴァレさんがイケメン過ぎるのが悪いんだ!!」
「何を言ってるんですか」
ヴァレさんと騎士さん(1名)が吹き出す。ジョバンニさんからヒヤっとするほど冷たいツッコミが飛ぶ。このヒト怖い。
「あっはははは!あー、苦しい!」
「陛下もお静かに。話が進みません」
「あぁ、はいはい、ブフッ、ちょっと待ってくれ…」
ヴァレさんに対しても容赦なく冷たい。慣れてるのかまったく応えた様子はないけれど。
ヴァレさんは目尻を指で拭い、息を整えたあと私に向かって話してくれた。
「ああ、やれやれ。実はねシャトラ、私はもともとプレゼンに出る予定ではあったけれど、午前はお忍びで来たのであって、本来はこの時間に来る予定だったんだよ」
「お忍びだってのは知ってますけど…ああ、そっか。いま到着したってことにするんですね?」
「ご名答」
そこまで言われて理解する。そっか、ウチに来るのに、誰にも目撃されないってのは無理だものね。朝にヴァレさんが来た時は、皇帝陛下が来たとはわからないように変装していたんだろう。カツラとかの変装アイテムも持ってたしね。
だけどプレゼンでは本来の姿で出席するから、皇帝陛下が実際に到着したところを誰も見ていないとなるとおかしい。じゃあいつからいたの?ってなれば朝にジョバンニさんたちが来た時だと勘づかれるだろうし、じゃあ朝からウチで何してたの?ってなれば変に勘ぐられてしまいそうだし。それで替え玉さんを使って、皇帝陛下がいまウチに来たって姿を世間に見せたのね。わかりやすい事実があれば、それ以上疑いを持たれることはないから。
替え玉さんはヴァレさんが身に着けていたの茶髪のカツラを被り、眼鏡も身に着けてみせる。なるほど、今度は『ヴァレンティーノ』になっておくんだね。
「へぇ~。皇帝陛下の護衛の為に、いろいろ考えているんですねぇ」
「ええ。大変なんです、とても。無駄にフットワークが軽いもので」
「アハハ…」
わー。ジョバンニさん手厳しー。
「ああ、それと。そのフットワークで貴方にご迷惑をお掛けしたようで。お詫び申し上げます」
それはもちろん、5番街でスライム相手に戦ったことを言っているのだろう。衛兵さんたちも動員しちゃったし、さすがに情報はもう届いているか。
「あっ、いえ!私こそ、陛下に怪我をさせてしまって…」
「なんの。隙あらば体を鍛えているようなお人ですから、そのぐら…」
そう言いかけて止めたので、私は不思議に思ってジョバンニさんの視線を追う。
その先には、私が顔を向けた途端になにかのジェスチャーをサッとやめたヴァレさん。
「…あー、失礼。そうですね、陛下の玉体に傷をつけたのですから、責任を取っていただきましょう」
ヴァレさーん!ジョバンニさんになんか指図したでしょ!いや責任はちゃんと果たすつもりでいるんだけどさぁ!
「責任はもちろん、私個人で負います。ただ具体的に、いかほどか伺いたいんですけど」
「責任ですか、そうですね…」
視界の隅で、ヴァレさんがなんかハンドサイン送ってるのが見える。それを見たジョバンニさんの目が、どんどん冷え込んでいくのも見える。
「まぁ、そうですね。疵物(きずもの)にした責任でも取っていただければよろしいんじゃないですかね」
「疵物?!」
私、ヴァレさんを疵物にしちゃったの?!
「えっ、どうしよう!嫁にもらえばいい?!」
騎士さんがまたブフゥと吹き出す。ヴァレさんがお腹をかかえている。ビョルンは天井を仰いでいる。替え玉さんはオロオロしている。そしてジョバンニさんは淡々とした声で続ける。
「喜んで嫁ぐんじゃないですかね」
「まじかー!」
「グフッ!あはは、ははッ!ははは!」
この場のカオスを、鎮めてくれるものは誰もいなかった。
残った3人で話していると、玄関のノッカーが鳴る。あれ、誰だろう?腰を浮かせると、ヴァレさんが「ジョバンニだよ」と開ける前からわかったようで答えてくれた。
何でわかるのかな?
ビョルンとかロルフも時々そうなんだけど、優れた戦士って感覚が鋭敏なのかな。予知能力でもある?って思うぐらい察知する力がすごいと思う時があるのよね。
ビョルンにも特に止められなかったので、私が玄関まで行って応対する。
「いらっしゃいませー…って、えッ?!」
「失礼、英雄殿。まずは入れていただけますか?」
「あ、はい…?」
「失礼」
ヴァレさんの予想通り先頭にいたのはジョバンニさんだったんだけど、後ろにいたフードを浅く被った人物に驚いてしまう。でも私の驚きを無視して、ジョバンニさんは少々強引に足を踏み込んで来たので、私は大人しくその場を譲った。
朝来たのと同じ騎士さんに「しっかり施錠してくださいね」と促されたので、慌てて鍵を掛けて私も居間に向かった。
「やぁジョバンニ、早かったね」
「充分考慮したつもりですが。英雄殿と話はつきましたか?随分な『お遊び』に付き合わせたようですが」
「厳しいね。話はちゃんと済んでいるよ」
「重畳の至り」
二人が会話をしている間も、私はジョバンニさんの後ろにいる人物に釘付けになってしまう。
そんな私に気づいたヴァレさんは、クスリと笑ってこう言った。
「おやシャトラ。そんな男に目を奪われていては、嫉妬してしまうよ?」
「え、いやだって…」
私はヴァレさんとその人物を交互に見ながら、思わず大きな声を出す。
「この人、ヴァレさんにソックリじゃないですか!」
そう言うと、ヴァレさん?は私を見てにっこりと笑った。
「え、え?双子…?」
混乱しておろおろしている私に、ヴァレさんはプッと吹き出してから否定した。
「まさか、私の替え玉(ダブル)だよ」
「替え玉(ダブル)…?!それでもこんなにソックリってあります?!」
影武者ってことよね。でもでも、こんなヴァレさんみたいな完璧に近いイケメンが、この世に二人もいるとは思えないんだけど!
「附術ですよ。ミケーレ、もういいから取りなさい」
「はい」
ミケーレと呼ばれたヴァレさん?(いかん混乱してる)はフードを外し、首に掛けていたネックレスを外す。すると一瞬空気が揺らいだ後、彼の本当の姿が現れた。
背格好と髪型、髪色はパッと見似ている。顔立ちもちょっと似ている、けれどよく見れば全然違う。たいへん失礼な言い方をすると、ヴァレさんの下位互換みたいな青年がそこには立っていた。
「お、おぉ~…」
さっき驚き過ぎたせいか、変な感嘆の声が出てしまう。すると替え玉さんは居心地悪そうな顔をして、しょんぼり俯いてしまった。
「がっかりさせてしまって申し訳ありません…」
「い、いやいやいや!貴方は何も悪くないです!私が勘違いしてたのが悪いだけですし!貴方も充分にイケメンです!えーとホラ、あれだ!そもそもヴァレさんがイケメン過ぎるのが悪いんだ!!」
「何を言ってるんですか」
ヴァレさんと騎士さん(1名)が吹き出す。ジョバンニさんからヒヤっとするほど冷たいツッコミが飛ぶ。このヒト怖い。
「あっはははは!あー、苦しい!」
「陛下もお静かに。話が進みません」
「あぁ、はいはい、ブフッ、ちょっと待ってくれ…」
ヴァレさんに対しても容赦なく冷たい。慣れてるのかまったく応えた様子はないけれど。
ヴァレさんは目尻を指で拭い、息を整えたあと私に向かって話してくれた。
「ああ、やれやれ。実はねシャトラ、私はもともとプレゼンに出る予定ではあったけれど、午前はお忍びで来たのであって、本来はこの時間に来る予定だったんだよ」
「お忍びだってのは知ってますけど…ああ、そっか。いま到着したってことにするんですね?」
「ご名答」
そこまで言われて理解する。そっか、ウチに来るのに、誰にも目撃されないってのは無理だものね。朝にヴァレさんが来た時は、皇帝陛下が来たとはわからないように変装していたんだろう。カツラとかの変装アイテムも持ってたしね。
だけどプレゼンでは本来の姿で出席するから、皇帝陛下が実際に到着したところを誰も見ていないとなるとおかしい。じゃあいつからいたの?ってなれば朝にジョバンニさんたちが来た時だと勘づかれるだろうし、じゃあ朝からウチで何してたの?ってなれば変に勘ぐられてしまいそうだし。それで替え玉さんを使って、皇帝陛下がいまウチに来たって姿を世間に見せたのね。わかりやすい事実があれば、それ以上疑いを持たれることはないから。
替え玉さんはヴァレさんが身に着けていたの茶髪のカツラを被り、眼鏡も身に着けてみせる。なるほど、今度は『ヴァレンティーノ』になっておくんだね。
「へぇ~。皇帝陛下の護衛の為に、いろいろ考えているんですねぇ」
「ええ。大変なんです、とても。無駄にフットワークが軽いもので」
「アハハ…」
わー。ジョバンニさん手厳しー。
「ああ、それと。そのフットワークで貴方にご迷惑をお掛けしたようで。お詫び申し上げます」
それはもちろん、5番街でスライム相手に戦ったことを言っているのだろう。衛兵さんたちも動員しちゃったし、さすがに情報はもう届いているか。
「あっ、いえ!私こそ、陛下に怪我をさせてしまって…」
「なんの。隙あらば体を鍛えているようなお人ですから、そのぐら…」
そう言いかけて止めたので、私は不思議に思ってジョバンニさんの視線を追う。
その先には、私が顔を向けた途端になにかのジェスチャーをサッとやめたヴァレさん。
「…あー、失礼。そうですね、陛下の玉体に傷をつけたのですから、責任を取っていただきましょう」
ヴァレさーん!ジョバンニさんになんか指図したでしょ!いや責任はちゃんと果たすつもりでいるんだけどさぁ!
「責任はもちろん、私個人で負います。ただ具体的に、いかほどか伺いたいんですけど」
「責任ですか、そうですね…」
視界の隅で、ヴァレさんがなんかハンドサイン送ってるのが見える。それを見たジョバンニさんの目が、どんどん冷え込んでいくのも見える。
「まぁ、そうですね。疵物(きずもの)にした責任でも取っていただければよろしいんじゃないですかね」
「疵物?!」
私、ヴァレさんを疵物にしちゃったの?!
「えっ、どうしよう!嫁にもらえばいい?!」
騎士さんがまたブフゥと吹き出す。ヴァレさんがお腹をかかえている。ビョルンは天井を仰いでいる。替え玉さんはオロオロしている。そしてジョバンニさんは淡々とした声で続ける。
「喜んで嫁ぐんじゃないですかね」
「まじかー!」
「グフッ!あはは、ははッ!ははは!」
この場のカオスを、鎮めてくれるものは誰もいなかった。
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