ある友人について

miki

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始まり

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私の学校は中高一貫の男子校で、私は中高の部活としては多分珍しいある部活に入った。なぜそれを選んだかは今となってはもう覚えていない。きっとしょうもないような理由だったのだろう。
その部活は私が入部した時、先輩が3人しかいなかった。

先輩が3人しかいなかったということで、私の同期も少なかったと想像する人もいると思うが、どういうわけか私の同期は多く、最後まで続けた人だけでも私含め5人いた。一番多い時で10人くらいたような気がする。
今回、この話に登場するのはこの最後まで一緒に部活を続けた5人のうちの1人、無難にTと呼ぶことにしよう、彼である。Tには部活の体験会で初めて会った。第一印象は”体格はいいけど優しそうな人”だった、つまり、普通の人、ということだ。
中2までは彼とはただの部活仲間というところだったが、中3になりクラスが同じになったことでさらに仲良くなるのは自然な流れだった。
私は小柄で顔も自分でいうのもアレだが悪くなく、かつ童顔であったため友達から可愛がられた。そういう雰囲気があったためか、自分の性格か、どちらもあるだろうが、友達とスキンシップをとることが多かった。膝の上に座ったりとか、頭をなでたりとか。Tとは仲が良かったので、それが他の人に比べて多かった気がする。
中学生の間は何事もなかった。ただの仲の良い友達だった。それが変わったのは高校に入ってからである。


あれはいつのことだっただろうか。たしか高1の冬だった気がするが、クラス替えで別々のクラスになっていたTがわざわざ僕のクラスに来て、学校の帰りに少し歩いて帰らないと誘ってきた。いつもはそんなこと言わないのにどうしたのかな?何か話したいことでもあるのだろうかと思い、その誘いにのった。
いつもの道ではなく、少し遠回りをして彼は歩いて行った。僕はそれについていく。
彼はしばらく後ろの僕を振り返らず、黙々と歩いていたが、人気のない路地で唐突に立ち止まった。
そして僕の目を覗いてこう言い放った。

「僕は君のことが好きだ」

僕は一瞬驚いたが、その後はこれがいわゆるBLというやつか、まさか当事者になるとは、とどこか達観した気持ちでいた。なんと返事をすればいいのだろうと思案して黙っているとTは続ける。

「こんなこと言うと君が困ると言うのはわかっているんだけど、自分の気持ちを抑えられないんだ。僕は自分のことを同性愛者とか両性愛者ではないと思っているんだけど、君はなんか、特別なんだ。だから、僕と付き合ってほしいと思ってる。」

告白だけでなく、付き合って欲しいとな。僕は異性愛者で告白すると困るってことは認識しているのに、付き合って欲しいとまで言うのか。ちょっと都合が良すぎやしないか、と思いながらも
「僕が異性愛者で同性愛者でも両性愛者でもないことは知っているんだろ?付き合ってとか聞いてどうするつもりなの」
と聞く。
「君が異性愛者で僕のことを恋愛対象として見れないのは知っている。付き合ってくれっていうのは形だけでもいいんだ。恋人みたいなことをしてくれれば。もし付き合ってくれなかったとしたら絶交したい。友達のままでいるのは正直苦しいんだ。」
なるほどこうくるか。僕としては断って、でも大事な親友だ。今まで通り友達でいよう、そういう流れに持っていくつもりだったのが、どうやらその道が断たれてしまったようだ。どうしたものか。彼を恋愛対象とは見れないので付き合うつもりはないが、Tとの関係は断ちたくない。そんな都合のいいことを考えていた。
「断ったらどうしても絶交するのか」
「ああ」
「ちなみに形式的でもいいというのはどういう意味なの?」
「多分、君は僕のものだ、って言いたいのと、さっきも言ったように恋人らしいことをしたいっていうこと。手を繋ぐとか」
彼はキッパリと言う。

なんだ、それくらいか。
僕は悩む。少なくとも悩んだフリをする。

「わかった、君と付き合うよ。好きなのは友達としてだけどね。」
「ほんとにいいのか?」
「いいよ」
彼は本当に嬉しそうな笑顔にほんの少しの困惑を混ぜていた。
「ありがとう」
僕はTのことは恋愛的に好きではない。ただ、Tとの関係が無くなるのは寂しいと思った。だから僕は打算的な行動をとった。いくら好きだと言っても、所詮は高校1年生、どこかで僕に愛想が尽きるだろうと思った。それまでは自分が少し我慢すれば良いだけだ。

その当時の僕はこのような考えからお互いにとって最悪な決断をした。もし時間を遡れるなら当時の自分を殴ってやりたい。全てはここから始まった。
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