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優雅なようで大変なドラゴンの一日
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「ああ、もう夜明けなのね」
われはセーメイオンというドラゴンだ、われの一日は夜明けから始まるのだ。世界の大きな力であり全ての力の源と繋がり、そこから今日も生きていく為の力を貰って始まるのだった。われはもう七百歳と幾つかになろうという立派なドラゴンである、千の年月を生きるドラゴンとしては円熟した性格を持ち、世界の大きな力から貰うものだけで生きていけるドラゴンだ。
われは本来の食事である世界の力を貰うと、近くにある友人の家に向かって飛び、その友人の家を壊さないように人間に変身した。結い上げた長くて蒼い髪に同じ色の瞳をわれは持っていた、今日はマーメイドラインとあかりが言っていた白いドレス姿にしてみた。ドラゴンは成長はするが外見年齢は全盛期で止まる、だからわれの人間での見た目は二十五歳くらいで止まっている。そうしてゆっくりと優雅にドアを三回ノックして、中から返事があったので扉を開けてわれは友人であるあかりに声をかけた。
「ごきげんよう、あかり」
「セーメイオン様、おはようございます。今日は空気が澄んでいて、よく晴れそうですね」
「ええ、雨の日だけ聞こえる雨音も悪くはないわ、でも空を飛ぶなら晴れているほうが気持ちがいいわ」
「そうですか、車やバイクと同じみたい。あっ、すぐに朝ご飯の用意をしますね」
「あかりの食事は美味だから、毎日の楽しみにしているわ」
「え? そんな普通の朝ご飯ですよ」
一人前と認められているわれのようなドラゴンなら、本当は普通の食物を食べる必要がなかった。世界の大きな力から貰う力だけで、それで十分に成熟したドラゴンなら生きていけるからだ。でも食という楽しみをわざわざ捨てることもない、だからわれはこうして隣人である迷い人の鈴木あかりのもとをよく訪れていた。あかりは珍しいことに迷い人と言われる者である、われの住む世界とは違う世界からきた人間であった。
あかりは胸くらいまでの長さの黒髪に黒い瞳を持つ、日本とかいう島国からこのわれの世界にやってきた。そして異世界の人間だからわれの知らないことをしばしば言うのだ、例えば今も言った車やバイクといった物のことだ。会話の流れから察するにどこかへ移動する時に使うものなのだろう、もしかしたら広い空を飛ぶ物なのかもしれない、異世界の技術についてはわれであっても知らないことが多かった。
「あっ、母上。見てください、卵が上手く焼けました」
「………………アルカンシエル、まずはこのわれに朝の挨拶をしなさい」
「あっ、ははっ、すみません。おはようございます、母上」
「ごきげんよう、アルカンシエル」
「あっ、それでですね。ほらっ、綺麗に卵が焼けてるでしょう」
「それはもう聞きました、あまりあかりの手を煩わせないように」
われは息子であるふわふわとした金の髪に蒼い瞳を持つアルカンシエルを見た、われの息子だと言うのに変身しても平民のような姿しかとれていなかった。そしてまずはわれに朝の挨拶をするように注意した、この息子はどうものんびりとし過ぎているところがある、そして勉強や鍛練をサボりまくっていた。だから時々、いやもう少し多めに、いいえほぼ毎回のように、なにかしら注意をしないといけないことがあるのだ。
決して悪い子ではないのだがもうすぐ一人前のドラゴンになるのに、そのための実力が伴っていないという、われをとても心配させるとても可愛い息子だった。そうして朝の食事をあかりがいただきますと言って皆で食べ始めたが、ああもうマナーというものがわれの息子は全くできていなかった。ナイフとフォークをその時々で好きな方の手で持つし、口元にはパンケーキのくずまでつけている、全くその様子がわれにとってはマナーは悪かったが可愛いくて仕方がなかった。
「あかり姉さんのご飯はいつも美味しいね」
「あら、ありがとう。シエルくん、ほっぺたにパンくずがついてるわよ」
「母上も美味しいでしょう、俺が焼いた卵ですよ」
「シエルくんが料理を手伝ってくれるから本当に助かるわ」
「あかり姉さんって俺、大好き!!」
「私も大好きよ、シエルくん」
われはあまり息子と話すことがなかった、どう話していいのか分からないことが多かった、われの初めての息子であったからだ。だからわれの友人であるあかりそして一生懸命に話している息子を、彼らを可愛いと思いながら黙って食事をしていた。ふわふわのパンケーキとカリカリに焼いてあるベーコンにかけられたピリッとした胡椒、それに可愛い息子が焼いてくれた卵などを一口ずつ味わいながら食べた。マナーだって本当は教えてやりたいのだが、われの息子はその前に覚えるべきことが多過ぎた。
そして息子への接し方がいまいちわれには分からない、息子は何をやっても覚えが悪くてわれは叱ってばかりいた。でも叱るだけでは子どものドラゴンは成長しない、褒めることも大事なのだとは分かっていたのだ、だがわれの息子は滅多に褒めるところがなかっただけだった。もうすぐ一人前のドラゴンとなって巣立つ息子、われはその可愛い息子のことが心配でならなかった。でもそんなわれから出た言葉は、とてもだが優しいとは言えないものだった。
「アルカンシエル、朝食が終わったら鍛練をします」
「うええぇぇ!?」
「そんな妙な声を出さないこと、そうしてしっかりと鍛練に励むのです」
「………………はい、母上」
うぅ、われの息子はこんなにも愛おしいものだった。いつものことだがわれはこっそりと心の中だけで、怒られてしょんぼりしてても息子は凄く可愛いと思っていた。でもわれはアルカンシエルを鍛えないといけない、一人前のドラゴンになれるように、とても厳しく理不尽で残酷なこの世界で一人で生きていけるように、そう可愛い息子の為にも彼を鍛え上げないといけなかった。だから朝食が終わったら、われと息子はドラゴンの姿に戻って空へと優雅に飛びたった。
「アルカンシエルもっと早く飛びなさい、われの縄張りの見回りが終わりませんよ!!」
「はっ、はい。母上、俺も頑張ってます!!」
「そしていつ襲撃を受けてもいいようにしておきなさい、それに縄張りのことをよく観察して知りなさい!!」
「はっ、はいぃ!! 母上、でもちょっぴり飛ぶのが速すぎだと思います!!」
「このくらいの速さで弱音とは、それに縄張りの観察はできたのですか!?」
「はっ、はいぃぃ!! えっと、よく分からないです!!」
われは普段は魔の森の奥にある洞窟に住んでいる、そしてわれの洞窟の周囲にある魔の森や人間などもいる領土が縄張りだった。息子はわれと同じ速度で飛ぶことに一生懸命で、縄張りの観察などができていなかった、いや飛ぶことさえ上手くなくてだんだんとわれから遠ざかりはじめていた。ああ、なんと情けないが可愛い息子、いやしかしドラゴンはただ可愛いだけではいけないのだ。
「あれを見なさい、われの息子よ」
「はっ、はい。えっ、ええと、人間の新しい村でしょうか?」
「あれはただの盗賊たちです、開拓もせず武器を持った男ばかりで、極端に女が少なく碌な服も来ていないでしょう」
「そう言われれば、そんな気もします」
「人間をよく観察するのです、人間は時に他のドラゴンよりも恐ろしい敵となります」
「えぇ~!? ドラゴンよりもですかぁ? だって人間なんて猿、あかり姉さん以外はそうですよ」
われの息子であるアルカンシエルは人間の恐ろしさを分かっていない、人間とは小さく百年も生きられないそんなか弱い生き物のくせに、時には強くドラゴンと同じくらいの魔法を使うこともあるのだ。それに人間の持つ知性は馬鹿にできなかった、ドラゴンは正々堂々と敵と戦うことを望むことが多かった。それに対して人間はどんな卑怯な手段を使ってもいい、最終的に勝てばいいのだと思っている種族だった。
そんな人間の恐ろしさをわれの可愛い息子はよく分かっていない、それは息子が姉のように慕っている迷い人のあかりにも原因があった。あかりは大人しくてとても優しく、争いを好まず他の人間を怖がっていた。そんな大人しくて優しいあかりによく懐いている可愛い息子だから、人間の本性というものがどんなに恐ろしいものなのか分からないでいるのだ。
「われについてきなさい」
「はい、母上」
今日はそんな息子を教育する、人間の残酷さを分からせる良い機会だった。われはついてきなさいと可愛い息子に言って、盗賊という人間の中でもくずである輩のアジトに堂々と降り立った。盗賊とは人間の世界では落ちこぼれた者たちだ、だから残酷な殺人もためらわないし、女を強姦することも多かった。人間のなかでも理性が無い、そういう愚かな卑怯者たちの集まりだった。
「われの縄張りで勝手に生きる浅ましい人間どもよ、そなたらの命でその重罪を償って貰うとしよう」
「うっわっ、ゾロゾロと出てきた。猿って言うより小さな虫みたい、まるで蟻さんみたいだ」
われの威厳のある大声に人間たちは驚いていた、恐怖し怯えて震えあがっていた。その一方でわれの可愛い息子は小声で人間のことを蟻のようだと言った、蟻にだって噛む力があるから数が集まれば時には危険なものになるのだ。そういうことがわれの息子には分かっていなかった、息子は慌てふためく人間たちを興味深そうに見ていたが、その本性までは見抜けていないのでわれは空からおりることにした。
「ドラゴンだ、逃げろ!!」
「待てよ、小さなドラゴンがいるぜ」
「あいつを倒せば大儲けだ」
「ドラゴンスレイヤーになれるぞ」
「武器を持て!! 戦え!!」
われが空から降り立ったことで人間たちは混乱した、逃げ出す者もいたし非力ながら戦おうとする者もいた。捕らえられていた女たちは真っ先に逃げ出した、これはまぁ放っておいてもいいことだった。それよりもわれと戦おうとした者たち、このくずどもを見逃すわけにはいかなかった。それにそんな戦おうとした者たちはわれよりも、われの大切な息子であるアルカンシエルを狙っていた。だからわれは咄嗟に高音の炎であるブレスを吐いて、われの大切な小さな息子を狙うような輩を、そんな愚かで卑怯な人間たちを簡単に焼き払った。
「母上、凄い」
「………………」
可愛い息子はそんなわれを尊敬するように見ていた、われはそんな息子がとても可愛くて仕方がなかった。こんなブレス一つでも息子にとっては憧れの対象になるのだ、われの息子は弱く基本的な炎のブレスすら碌に吐くことができないでいた。われは息子が大きくなるように沢山の魔物を食べさせたし、最近はあかりが栄養が偏るといけないからと薬草も食べさせていた、それでもわれの息子は小さく弱く可愛いが成長が遅かった。
「母上、もう誰もいなくなりました」
「そうやって小首を傾げれば可愛いと思って…………、コホンッ。それでは人間が隠していた、財宝を探しなさい」
「はい、母上。わ~い、宝探しだ!!」
「………………」
われの息子のドラゴンは無邪気に盗賊のアジトを壊して、そうして金貨や銀貨それに宝石や魔法の武器などを探し出した。息子はちっとも人間を恐れている様子が無かった、われは人間の残酷さを息子にうまく伝えることができなかった。強いわれだからこそこうやって狡猾な人間を容易く殺せるのだ、でもまだ子どもであり非力である息子ならこうはいかなかった。
「………………可愛い、でも未熟な息子」
「母上、何か言いました?」
「コホンッ、何も言っておりません」
「そうですか、ええと俺の気のせいかな?」
われの息子のアルカンシエルはわれがいなければ、逆に人間たちに殺されたかもしれなかった。ドラゴンの体は死ねば世界の源へと戻って消えてしまうから、生きたままでわれの可愛い息子は人間たちに解体されたかもしれなかった。そんなわれの心を押し潰すような恐ろしいことが起こるのがこの世界だった、われと息子が住んでいるこの世界はとても残酷で弱者には容赦がなかった。
「アルカンシエル、こうやって何かを殺すのなら、いつも殺される覚悟を持ちなさい」
「は~い、あっ!? 凄くキラキラした宝石だぁ!! こっちもいいカッコいい剣だぁ!!」
「きちんとこの母の話を聞きなさい!! いいですか、この馬鹿息子!!」
「はっ、はい。母上、ええと覚悟ですね。はははっ、覚悟か、覚悟ね」
われは可愛くて堪らない息子のことが心配でならなかった、われの息子はドラゴンとして生きるのに向いていなかった。ドラゴンは戦いながら生きていく種族だった、なのにわれの息子は戦うための強い牙も、その小さな体を補うような知恵も持っていなかった。このままではわれの息子は生きていけない、そう残酷なこの世界の中で生き残っていけなかった。
「母上、もうすぐ夜です。早く帰りましょう、あかり姉さんが今日は生姜焼きを作るそうです」
「アルカンシエル、ドラゴンとして強くなりなさい、もっと鍛練を続けなさい」
「はい、母上。でも今日はもう帰りましょう、鍛練は明日からまたします」
「………………」
われはひとまず息子の言う通りにわれの住処へ帰ることにした、決してあかりの作る美味しい生姜焼きのことを思い浮かべたわけじゃない、そう明日への英気を養うためにも帰ることにしたのだ。われの『魔法の箱』に盗賊たちから奪った宝を全て入れて、そうしてわれと息子は帰るためにまた飛び始めた。
どうしても息子の体は小さくわれに比べて空を飛ぶ速度が遅かった、そして可愛い息子が追いついてきてやっとあかりの家についたら、われと息子はまた人間の姿に変身した。われは今度はエンパイアラインとあかりに言われた、そんな黒いドレスを身にまとった、ドラゴンはこうやって好きなように服を変えることができるのだ。われの息子は服に関して知識がなく、いや人間に対しての知識全体が少なく、いっつも簡単な上着にズボンの平民の服ばかり着ていた。
「ごきげんよう、あかり」
「セーメイオン様、お帰りなさいませ。シエルくんも鍛練はできた?」
「ただいま、あかり姉さん。ええと、鍛練はまぁまぁだったよ」
「………………」
「すぐに夕食にしますね、今日は生姜焼きですよ」
「はははっ、俺。あかり姉さんの生姜焼きって大好き!!」
そうしてわれは友人であるあかりや可愛い息子と夕食を食べた、あかりは他の世界から来たからか料理がとても上手かった。われは美味しい食事をあかりという友人ができて初めて知った、それまでのわれは自分の縄張りのことばかり気にして、人間の食事という楽しみを知らなかったのだ。七百年といくつか生きているわれでも知らないことがある、生きている限りいや生きようと思う限り、学ぶということを忘れてはならなかった。
それがまだ百五十年ほどしか生きていない息子なら、尚更知らないことや分からないことが多いはずだった。もっとわれは息子には勉強をして貰いたかった、息子自身から積極的に動き学んで欲しかった。そんな可愛い息子であるアルカンシエル、その子は夕食を食べると食後のお茶も飲まずに眠ってしまった、なんという可愛い寝顔だろうか世界で一番に可愛らしい寝顔だった。全くなんて可愛いのだろう、ふわふわとした金の髪をわれは思わずだがソッと撫でてみた。それから、われは友人であるあかりと話をした。
「あかり、アルカンシエルはドラゴンとして、この残酷な世界で生きていけるでしょうか」
「…………セーメイオン様、確かにシエルくんはもっと勉強と鍛練を頑張らなきゃなりません」
「そうなのです、ですがもう間に合わないかもしれないわ。あと少しで息子は一人前のドラゴンの年齢になります」
「大丈夫です!! きっとまだ間に合います、シエルくんは素直な良い子です!!」
「ええ、そうね。とても可愛らしいわれの息子、この命よりも大切なわれの息子」
「私もシエルくんが大好きです、だからもっと彼に頑張って貰うようにお手伝いします!!」
われはあかりがいれてくれた紅茶を、優雅な仕草でゆっくりと飲みながら、そうして可愛らしい寝顔をしている息子を見ていた。もうすぐ必ず別れなければならない息子、そう一人前のドラゴンになるはずの愛おしい息子だった。友人であるあかりもわれと同じように息子の寝顔を見て微笑んでいた、あかりもわれの息子の将来のことを真剣に友人として心配してくれていた。
「むにゃ、母さん。ううん、あかり姉さん」
われと友人であるあかりは息子の寝言を聞いてまた微笑み合った、なんという可愛いことを言う息子だろうか、われはこんなに可愛い生き物を他に知らなかった。どうか息子よ、優しくてもいい、可愛くてもいい。だけどどうか強くなって欲しい、この残酷な世界で生き残っていけるように、可愛い息子には変わって欲しかった。われにできることならなんだってしてみせるから、だからどうか強いドラゴンへと成長して欲しかった。なんなら息子が本当に望めば、われの存在が息子の成長に悪いのならば、この大切な縄張りを息子に渡しても構わなかった。
「われにできることなら何でもしてみせよう、だからどうかわれの愛おしい息子、お前は強くなってこの世界を生き抜いていっておくれ」
そうしてしばらくわれは息子の可愛い寝顔を眺めていたが、すっかり眠ってしまっているようなので起こさず、今夜はあかりのところに息子は泊めて貰うことにした。あかりはセーメイオン様はツンデレですねと、少し面白そうに笑って言ってわれを見送ってくれた、つんでれの意味はわれにも分からなかった。われはいつものように魔の森の奥にある、洞窟の最奥の宝部屋でドラゴンの姿に戻り眠ることにした、そうしていながらもすぐ傍にあるあかりの家を見守っていた。あの家にはわれの大切な宝物である息子と、そしてわれの大事な友人であるあかりがいるのだ。
「おやすみなさい、われの可愛い息子。アルカンシエル、本当に心から貴方を愛しているわ」
明日こそは息子を厳しく鍛えようとわれは思っていた、明日こそは息子に世界がどんなに残酷で、無力なドラゴンなどが生きていけない世界か教えておきたかった。それでもし息子に憎まれてもわれは良かった、われの息子が立派なドラゴンになってくれるのなら、それだけでわれはとても幸せだったのだ。われはあかりのところに預けてきた息子のことを想った、どうか何をしてでもいいから強くなって欲しい、そう強いドラゴンとなって生き抜いていって欲しい、とそれだけを願いながらわれは短い眠りについた。
われはセーメイオンというドラゴンだ、われの一日は夜明けから始まるのだ。世界の大きな力であり全ての力の源と繋がり、そこから今日も生きていく為の力を貰って始まるのだった。われはもう七百歳と幾つかになろうという立派なドラゴンである、千の年月を生きるドラゴンとしては円熟した性格を持ち、世界の大きな力から貰うものだけで生きていけるドラゴンだ。
われは本来の食事である世界の力を貰うと、近くにある友人の家に向かって飛び、その友人の家を壊さないように人間に変身した。結い上げた長くて蒼い髪に同じ色の瞳をわれは持っていた、今日はマーメイドラインとあかりが言っていた白いドレス姿にしてみた。ドラゴンは成長はするが外見年齢は全盛期で止まる、だからわれの人間での見た目は二十五歳くらいで止まっている。そうしてゆっくりと優雅にドアを三回ノックして、中から返事があったので扉を開けてわれは友人であるあかりに声をかけた。
「ごきげんよう、あかり」
「セーメイオン様、おはようございます。今日は空気が澄んでいて、よく晴れそうですね」
「ええ、雨の日だけ聞こえる雨音も悪くはないわ、でも空を飛ぶなら晴れているほうが気持ちがいいわ」
「そうですか、車やバイクと同じみたい。あっ、すぐに朝ご飯の用意をしますね」
「あかりの食事は美味だから、毎日の楽しみにしているわ」
「え? そんな普通の朝ご飯ですよ」
一人前と認められているわれのようなドラゴンなら、本当は普通の食物を食べる必要がなかった。世界の大きな力から貰う力だけで、それで十分に成熟したドラゴンなら生きていけるからだ。でも食という楽しみをわざわざ捨てることもない、だからわれはこうして隣人である迷い人の鈴木あかりのもとをよく訪れていた。あかりは珍しいことに迷い人と言われる者である、われの住む世界とは違う世界からきた人間であった。
あかりは胸くらいまでの長さの黒髪に黒い瞳を持つ、日本とかいう島国からこのわれの世界にやってきた。そして異世界の人間だからわれの知らないことをしばしば言うのだ、例えば今も言った車やバイクといった物のことだ。会話の流れから察するにどこかへ移動する時に使うものなのだろう、もしかしたら広い空を飛ぶ物なのかもしれない、異世界の技術についてはわれであっても知らないことが多かった。
「あっ、母上。見てください、卵が上手く焼けました」
「………………アルカンシエル、まずはこのわれに朝の挨拶をしなさい」
「あっ、ははっ、すみません。おはようございます、母上」
「ごきげんよう、アルカンシエル」
「あっ、それでですね。ほらっ、綺麗に卵が焼けてるでしょう」
「それはもう聞きました、あまりあかりの手を煩わせないように」
われは息子であるふわふわとした金の髪に蒼い瞳を持つアルカンシエルを見た、われの息子だと言うのに変身しても平民のような姿しかとれていなかった。そしてまずはわれに朝の挨拶をするように注意した、この息子はどうものんびりとし過ぎているところがある、そして勉強や鍛練をサボりまくっていた。だから時々、いやもう少し多めに、いいえほぼ毎回のように、なにかしら注意をしないといけないことがあるのだ。
決して悪い子ではないのだがもうすぐ一人前のドラゴンになるのに、そのための実力が伴っていないという、われをとても心配させるとても可愛い息子だった。そうして朝の食事をあかりがいただきますと言って皆で食べ始めたが、ああもうマナーというものがわれの息子は全くできていなかった。ナイフとフォークをその時々で好きな方の手で持つし、口元にはパンケーキのくずまでつけている、全くその様子がわれにとってはマナーは悪かったが可愛いくて仕方がなかった。
「あかり姉さんのご飯はいつも美味しいね」
「あら、ありがとう。シエルくん、ほっぺたにパンくずがついてるわよ」
「母上も美味しいでしょう、俺が焼いた卵ですよ」
「シエルくんが料理を手伝ってくれるから本当に助かるわ」
「あかり姉さんって俺、大好き!!」
「私も大好きよ、シエルくん」
われはあまり息子と話すことがなかった、どう話していいのか分からないことが多かった、われの初めての息子であったからだ。だからわれの友人であるあかりそして一生懸命に話している息子を、彼らを可愛いと思いながら黙って食事をしていた。ふわふわのパンケーキとカリカリに焼いてあるベーコンにかけられたピリッとした胡椒、それに可愛い息子が焼いてくれた卵などを一口ずつ味わいながら食べた。マナーだって本当は教えてやりたいのだが、われの息子はその前に覚えるべきことが多過ぎた。
そして息子への接し方がいまいちわれには分からない、息子は何をやっても覚えが悪くてわれは叱ってばかりいた。でも叱るだけでは子どものドラゴンは成長しない、褒めることも大事なのだとは分かっていたのだ、だがわれの息子は滅多に褒めるところがなかっただけだった。もうすぐ一人前のドラゴンとなって巣立つ息子、われはその可愛い息子のことが心配でならなかった。でもそんなわれから出た言葉は、とてもだが優しいとは言えないものだった。
「アルカンシエル、朝食が終わったら鍛練をします」
「うええぇぇ!?」
「そんな妙な声を出さないこと、そうしてしっかりと鍛練に励むのです」
「………………はい、母上」
うぅ、われの息子はこんなにも愛おしいものだった。いつものことだがわれはこっそりと心の中だけで、怒られてしょんぼりしてても息子は凄く可愛いと思っていた。でもわれはアルカンシエルを鍛えないといけない、一人前のドラゴンになれるように、とても厳しく理不尽で残酷なこの世界で一人で生きていけるように、そう可愛い息子の為にも彼を鍛え上げないといけなかった。だから朝食が終わったら、われと息子はドラゴンの姿に戻って空へと優雅に飛びたった。
「アルカンシエルもっと早く飛びなさい、われの縄張りの見回りが終わりませんよ!!」
「はっ、はい。母上、俺も頑張ってます!!」
「そしていつ襲撃を受けてもいいようにしておきなさい、それに縄張りのことをよく観察して知りなさい!!」
「はっ、はいぃ!! 母上、でもちょっぴり飛ぶのが速すぎだと思います!!」
「このくらいの速さで弱音とは、それに縄張りの観察はできたのですか!?」
「はっ、はいぃぃ!! えっと、よく分からないです!!」
われは普段は魔の森の奥にある洞窟に住んでいる、そしてわれの洞窟の周囲にある魔の森や人間などもいる領土が縄張りだった。息子はわれと同じ速度で飛ぶことに一生懸命で、縄張りの観察などができていなかった、いや飛ぶことさえ上手くなくてだんだんとわれから遠ざかりはじめていた。ああ、なんと情けないが可愛い息子、いやしかしドラゴンはただ可愛いだけではいけないのだ。
「あれを見なさい、われの息子よ」
「はっ、はい。えっ、ええと、人間の新しい村でしょうか?」
「あれはただの盗賊たちです、開拓もせず武器を持った男ばかりで、極端に女が少なく碌な服も来ていないでしょう」
「そう言われれば、そんな気もします」
「人間をよく観察するのです、人間は時に他のドラゴンよりも恐ろしい敵となります」
「えぇ~!? ドラゴンよりもですかぁ? だって人間なんて猿、あかり姉さん以外はそうですよ」
われの息子であるアルカンシエルは人間の恐ろしさを分かっていない、人間とは小さく百年も生きられないそんなか弱い生き物のくせに、時には強くドラゴンと同じくらいの魔法を使うこともあるのだ。それに人間の持つ知性は馬鹿にできなかった、ドラゴンは正々堂々と敵と戦うことを望むことが多かった。それに対して人間はどんな卑怯な手段を使ってもいい、最終的に勝てばいいのだと思っている種族だった。
そんな人間の恐ろしさをわれの可愛い息子はよく分かっていない、それは息子が姉のように慕っている迷い人のあかりにも原因があった。あかりは大人しくてとても優しく、争いを好まず他の人間を怖がっていた。そんな大人しくて優しいあかりによく懐いている可愛い息子だから、人間の本性というものがどんなに恐ろしいものなのか分からないでいるのだ。
「われについてきなさい」
「はい、母上」
今日はそんな息子を教育する、人間の残酷さを分からせる良い機会だった。われはついてきなさいと可愛い息子に言って、盗賊という人間の中でもくずである輩のアジトに堂々と降り立った。盗賊とは人間の世界では落ちこぼれた者たちだ、だから残酷な殺人もためらわないし、女を強姦することも多かった。人間のなかでも理性が無い、そういう愚かな卑怯者たちの集まりだった。
「われの縄張りで勝手に生きる浅ましい人間どもよ、そなたらの命でその重罪を償って貰うとしよう」
「うっわっ、ゾロゾロと出てきた。猿って言うより小さな虫みたい、まるで蟻さんみたいだ」
われの威厳のある大声に人間たちは驚いていた、恐怖し怯えて震えあがっていた。その一方でわれの可愛い息子は小声で人間のことを蟻のようだと言った、蟻にだって噛む力があるから数が集まれば時には危険なものになるのだ。そういうことがわれの息子には分かっていなかった、息子は慌てふためく人間たちを興味深そうに見ていたが、その本性までは見抜けていないのでわれは空からおりることにした。
「ドラゴンだ、逃げろ!!」
「待てよ、小さなドラゴンがいるぜ」
「あいつを倒せば大儲けだ」
「ドラゴンスレイヤーになれるぞ」
「武器を持て!! 戦え!!」
われが空から降り立ったことで人間たちは混乱した、逃げ出す者もいたし非力ながら戦おうとする者もいた。捕らえられていた女たちは真っ先に逃げ出した、これはまぁ放っておいてもいいことだった。それよりもわれと戦おうとした者たち、このくずどもを見逃すわけにはいかなかった。それにそんな戦おうとした者たちはわれよりも、われの大切な息子であるアルカンシエルを狙っていた。だからわれは咄嗟に高音の炎であるブレスを吐いて、われの大切な小さな息子を狙うような輩を、そんな愚かで卑怯な人間たちを簡単に焼き払った。
「母上、凄い」
「………………」
可愛い息子はそんなわれを尊敬するように見ていた、われはそんな息子がとても可愛くて仕方がなかった。こんなブレス一つでも息子にとっては憧れの対象になるのだ、われの息子は弱く基本的な炎のブレスすら碌に吐くことができないでいた。われは息子が大きくなるように沢山の魔物を食べさせたし、最近はあかりが栄養が偏るといけないからと薬草も食べさせていた、それでもわれの息子は小さく弱く可愛いが成長が遅かった。
「母上、もう誰もいなくなりました」
「そうやって小首を傾げれば可愛いと思って…………、コホンッ。それでは人間が隠していた、財宝を探しなさい」
「はい、母上。わ~い、宝探しだ!!」
「………………」
われの息子のドラゴンは無邪気に盗賊のアジトを壊して、そうして金貨や銀貨それに宝石や魔法の武器などを探し出した。息子はちっとも人間を恐れている様子が無かった、われは人間の残酷さを息子にうまく伝えることができなかった。強いわれだからこそこうやって狡猾な人間を容易く殺せるのだ、でもまだ子どもであり非力である息子ならこうはいかなかった。
「………………可愛い、でも未熟な息子」
「母上、何か言いました?」
「コホンッ、何も言っておりません」
「そうですか、ええと俺の気のせいかな?」
われの息子のアルカンシエルはわれがいなければ、逆に人間たちに殺されたかもしれなかった。ドラゴンの体は死ねば世界の源へと戻って消えてしまうから、生きたままでわれの可愛い息子は人間たちに解体されたかもしれなかった。そんなわれの心を押し潰すような恐ろしいことが起こるのがこの世界だった、われと息子が住んでいるこの世界はとても残酷で弱者には容赦がなかった。
「アルカンシエル、こうやって何かを殺すのなら、いつも殺される覚悟を持ちなさい」
「は~い、あっ!? 凄くキラキラした宝石だぁ!! こっちもいいカッコいい剣だぁ!!」
「きちんとこの母の話を聞きなさい!! いいですか、この馬鹿息子!!」
「はっ、はい。母上、ええと覚悟ですね。はははっ、覚悟か、覚悟ね」
われは可愛くて堪らない息子のことが心配でならなかった、われの息子はドラゴンとして生きるのに向いていなかった。ドラゴンは戦いながら生きていく種族だった、なのにわれの息子は戦うための強い牙も、その小さな体を補うような知恵も持っていなかった。このままではわれの息子は生きていけない、そう残酷なこの世界の中で生き残っていけなかった。
「母上、もうすぐ夜です。早く帰りましょう、あかり姉さんが今日は生姜焼きを作るそうです」
「アルカンシエル、ドラゴンとして強くなりなさい、もっと鍛練を続けなさい」
「はい、母上。でも今日はもう帰りましょう、鍛練は明日からまたします」
「………………」
われはひとまず息子の言う通りにわれの住処へ帰ることにした、決してあかりの作る美味しい生姜焼きのことを思い浮かべたわけじゃない、そう明日への英気を養うためにも帰ることにしたのだ。われの『魔法の箱』に盗賊たちから奪った宝を全て入れて、そうしてわれと息子は帰るためにまた飛び始めた。
どうしても息子の体は小さくわれに比べて空を飛ぶ速度が遅かった、そして可愛い息子が追いついてきてやっとあかりの家についたら、われと息子はまた人間の姿に変身した。われは今度はエンパイアラインとあかりに言われた、そんな黒いドレスを身にまとった、ドラゴンはこうやって好きなように服を変えることができるのだ。われの息子は服に関して知識がなく、いや人間に対しての知識全体が少なく、いっつも簡単な上着にズボンの平民の服ばかり着ていた。
「ごきげんよう、あかり」
「セーメイオン様、お帰りなさいませ。シエルくんも鍛練はできた?」
「ただいま、あかり姉さん。ええと、鍛練はまぁまぁだったよ」
「………………」
「すぐに夕食にしますね、今日は生姜焼きですよ」
「はははっ、俺。あかり姉さんの生姜焼きって大好き!!」
そうしてわれは友人であるあかりや可愛い息子と夕食を食べた、あかりは他の世界から来たからか料理がとても上手かった。われは美味しい食事をあかりという友人ができて初めて知った、それまでのわれは自分の縄張りのことばかり気にして、人間の食事という楽しみを知らなかったのだ。七百年といくつか生きているわれでも知らないことがある、生きている限りいや生きようと思う限り、学ぶということを忘れてはならなかった。
それがまだ百五十年ほどしか生きていない息子なら、尚更知らないことや分からないことが多いはずだった。もっとわれは息子には勉強をして貰いたかった、息子自身から積極的に動き学んで欲しかった。そんな可愛い息子であるアルカンシエル、その子は夕食を食べると食後のお茶も飲まずに眠ってしまった、なんという可愛い寝顔だろうか世界で一番に可愛らしい寝顔だった。全くなんて可愛いのだろう、ふわふわとした金の髪をわれは思わずだがソッと撫でてみた。それから、われは友人であるあかりと話をした。
「あかり、アルカンシエルはドラゴンとして、この残酷な世界で生きていけるでしょうか」
「…………セーメイオン様、確かにシエルくんはもっと勉強と鍛練を頑張らなきゃなりません」
「そうなのです、ですがもう間に合わないかもしれないわ。あと少しで息子は一人前のドラゴンの年齢になります」
「大丈夫です!! きっとまだ間に合います、シエルくんは素直な良い子です!!」
「ええ、そうね。とても可愛らしいわれの息子、この命よりも大切なわれの息子」
「私もシエルくんが大好きです、だからもっと彼に頑張って貰うようにお手伝いします!!」
われはあかりがいれてくれた紅茶を、優雅な仕草でゆっくりと飲みながら、そうして可愛らしい寝顔をしている息子を見ていた。もうすぐ必ず別れなければならない息子、そう一人前のドラゴンになるはずの愛おしい息子だった。友人であるあかりもわれと同じように息子の寝顔を見て微笑んでいた、あかりもわれの息子の将来のことを真剣に友人として心配してくれていた。
「むにゃ、母さん。ううん、あかり姉さん」
われと友人であるあかりは息子の寝言を聞いてまた微笑み合った、なんという可愛いことを言う息子だろうか、われはこんなに可愛い生き物を他に知らなかった。どうか息子よ、優しくてもいい、可愛くてもいい。だけどどうか強くなって欲しい、この残酷な世界で生き残っていけるように、可愛い息子には変わって欲しかった。われにできることならなんだってしてみせるから、だからどうか強いドラゴンへと成長して欲しかった。なんなら息子が本当に望めば、われの存在が息子の成長に悪いのならば、この大切な縄張りを息子に渡しても構わなかった。
「われにできることなら何でもしてみせよう、だからどうかわれの愛おしい息子、お前は強くなってこの世界を生き抜いていっておくれ」
そうしてしばらくわれは息子の可愛い寝顔を眺めていたが、すっかり眠ってしまっているようなので起こさず、今夜はあかりのところに息子は泊めて貰うことにした。あかりはセーメイオン様はツンデレですねと、少し面白そうに笑って言ってわれを見送ってくれた、つんでれの意味はわれにも分からなかった。われはいつものように魔の森の奥にある、洞窟の最奥の宝部屋でドラゴンの姿に戻り眠ることにした、そうしていながらもすぐ傍にあるあかりの家を見守っていた。あの家にはわれの大切な宝物である息子と、そしてわれの大事な友人であるあかりがいるのだ。
「おやすみなさい、われの可愛い息子。アルカンシエル、本当に心から貴方を愛しているわ」
明日こそは息子を厳しく鍛えようとわれは思っていた、明日こそは息子に世界がどんなに残酷で、無力なドラゴンなどが生きていけない世界か教えておきたかった。それでもし息子に憎まれてもわれは良かった、われの息子が立派なドラゴンになってくれるのなら、それだけでわれはとても幸せだったのだ。われはあかりのところに預けてきた息子のことを想った、どうか何をしてでもいいから強くなって欲しい、そう強いドラゴンとなって生き抜いていって欲しい、とそれだけを願いながらわれは短い眠りについた。
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