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1-10母の愛には違いない

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「まぁ、狼どもは金になって黒字だし、偶には奢っておくのもいいだろう」

 俺にとっては狼の群れを倒せて金に換えることができて、それも大黒字でほくほくとした感じで、そのまま偶然だったが同じ宿屋の借りている部屋に戻った。しかし俺にあれほど弓矢の才能があったとは驚きだ、しかもかなり遠い距離から弓矢で確実に頭を射抜いてた。十数匹いた狼をちょっと目が良くなったとはいえ、自分のところに辿り着く前に倒せたのは凄いような気がした。あっ、矢がそれで無くなったな買いに行こうと眠りに落ちる前に思った

「おはよう、ジュジュ、リリー、キリエ、アマーリエ」
「おはよ~」
「はい、おはようです~」
「はよ~」
「おはようなのです~」

 翌日スッキリと目が覚めた俺に対して、ジュジュたちのパーティは朝食の席でぐったりとしていた。何でも酒を飲み過ぎると二日酔いというものになるらしい、母さんも機会があれば酒を飲んでいたが、翌日そんなことになっていたことはないなぁと母を思い出した。俺はそれから矢を買い足しに武器屋に行って、ついでに良い剣はないかと見たりした、よく見ると初めてみる武器屋の人でこう言われた。

「お、おい坊ちゃんよ。そのショートソードとナイフ、ちょっと見せちゃくれねぇか?」
「あっ、はい。どうぞ」

 俺はショートソードと剥ぎ取り用のナイフ、これは実家の宝物庫から貰えたものなのだった。なんと母さんは好きな武具を好きなだけもっていけと俺に命令した、別にこれはあんたのためじゃないドラゴンとして、そう成人したお祝いだと言ってくれたのだ。ドラゴンが宝物を譲るなんて滅多にないことだ、つまり俺も一応は息子として認識されていたようで嬉しかった。

 それで身長が低い俺でも使いやすそうなよく切れそうなショートソードと、なんだかデザインがカッコ良くて使いやすそうな、そんなナイフを武器としてはいただいてきたのだ。母さんにはもっと持っていけと言われたので、一応予備として似たようなショートソードとナイフがもう一組、俺の『魔法マジックの箱ボックス』の中にいれてあるのだ。さて、俺の剣たちが一体どーしたと言うのだ。

「うおおおぉぉぉ、このショートソードには自動修復、自動洗浄、自動伸縮それに使用者登録が付与されてやがる、こっちのナイフも同じだ!! 坊ちゃん、どこでこれを手に入れたんだ!?」
「ええええと、これでも俺は良い家の坊ちゃんでして!! それは家宝になったというか、家宝を頂いてきたのです!!」

 俺以外に客がいなくて良かった、それから武器屋のおっさんから他にはないかと言われた。なんかもう嫌な予感はしたが、こっそりと『魔法マジックの箱ボックス』からもう一組の剣を持ち出して見て貰った。はい、同じような評価頂きました。えっ、俺の武器ってそんな凄いものだったの、母さんは何も言わなかったけど凄い物を持ち出してしまった。

「ぼっちゃん、この矢はサービスするからよ。しばらくお前さんの武器をここでみせてくれや、こんなに見事なできの剣と、こんなに素晴らしい付与魔法がかかってのは久しぶりなんだよ!!」
「ええええと、はっ、はい。それでは俺もこの武器屋の武器を見せてもらっています。俺の剣がそんな名品だったなんて、あははは。知らなかったなぁ、俺」

「おう、俺もできるなら買い取りたいくらいだが、金が足りないから見せてもらうだけだ。でも気をつけろよ、こんな名品を使っていることは普段は隠しておくといい」
「そうなんですか、はい。そうします、それとよければ付与魔法について教えてくれませんか」

 そこから俺は武器屋の親父さんから付与魔法について、色々と教えてもらったうえに初心者用の本まで貰ってしまった。付与魔法も勉強してみないといけないな、せめて今持っている武器の付与効果が見えるくらいにならないとだ。そうして武器屋の親父さんの満面の笑みで見送られることになったのだが、俺は他にも実家から持ち出してきた物があった。例えばローブや何でできているか分からない胸当てとか防具だ、これをお客さんがいない隙に防具屋の一番腕の良いお姉さんに見てもらった。

「あらまぁ、凄いわぁ。自動修復、自動洗浄、自動伸縮それに使用者登録がついているわぁ。ごめんね、うちではこれだけの凄い防具は用意できないわ」
「いや、いいんです。えっと、剥ぎ取り用に丈夫な皮の手袋ありませんか、俺って手が小さいからちょうどいいものがみつからなくて」

 防具屋のお姉さんは俺のローブと防具を褒めたあと、昨日の狼退治で儲けた金でできるだけ良い皮手袋を選んでくれた。母さん、なんて凄いものを俺にくれてたんだ。この武器と防具の山からさっさと選ぶのよ、これ以外はわれの宝物だから駄目っとか言っていた。けれどあれはもしかして、できるだけ良いものを多分だが俺にくれたのだ。こういうのを何て言うんだっけ、そうだ。

「ツンデレか!!」
「えっ!? どうしたの坊や?」

「い、いや母親の過剰な愛情を今、やっと思い知っているところです」
「そうね、こんなにすばらしい防具だもの。親御さんは君を大事にしていたんだろうね」

 そうして俺は防具屋を出ていった、防具屋のお姉さんも俺が持っている物の価値を、簡単に信用できない人間に教えないように言ってくれた。うう、この街の武器屋と防具屋の人たちは優し過ぎた。誰がわざわざ伝説になるようなお宝、それを持ち歩いているとか言うものか、俺は母さんに感謝すると共に黙っていることにした。

 そうやって俺は装備の点検をすると、また稼ぎに森の中へと入っていった。まだ俺はフィーレの街の森を探索しきれていない、それだけの大きな森で魔物がでることから魔の森でもあった。俺としてはこの森は深くて人間があまり出入りしない場所だったら、最奥に洞窟でも作って俺の縄張りにしてしまいたかった。ここからなら実家の魔の森はすぐそこだ、ご近所とはいえ縄張りが作れれば俺は独立したことになるのだ。

「ん? 何かいるな、なんだデビルベアか」

 俺は森の奥は進む途中でデビルベアを見つけた、でも俺にとっては森の探索が目的なので、気がつかないふりをしてこっそりとその傍を通りぬけた。あかり姉さんが言っていた縛りプレイというものはただ力が強くなるだけではなく、どうも知識が覚えやすくなるとか、気配を察知して逆にこちらは気配を消すとかできるようなのだ。

「そういえば俺も縛りプレイをはじめて、もう一年くらい経つんじゃないかな?」

 思えば一年前の俺はとても弱いドラゴンだった、それがどうだろう人間の姿になるという縛りプレイで、かなり普通のドラゴンに近くなっている気がした。身体能力が上がったのに比べて魔法は相変わらず、中級と上級魔法で苦戦しているがそれでも少しずつ使えるようになっていた。『水竜巻ウォータートルネード』とか、『風斬撃ウインドスラッシュ』とか、『火炎球フレイムボール』とか、『硬石槍スートンスピア』なんて覚えたりしたのだ。

「普通のドラゴンなら当たり前のことだけど、俺にとっては凄い進歩だよなぁ」

 初級魔法でさえ完全に覚えてなかった俺である、それが偏った知識ではあるが中級や上級魔法が使えるようになった。凄い、縛りプレイは凄すぎた。こんな発見をしてくれたあかり姉さんには感謝しかない、すてーたす?とやらは今も理解できないが、とにかく実感を伴って強くなっていることにはかわりなかった。

 さて、フィーレの街の森はまだ奥があるようだった。大きさはちょっと小さいが、誰も他に魔物がいなかったら、ここを俺の縄張りにしていいんじゃないかなと思った。うーん、街がちょっと近過ぎるから、ドラゴンスレイヤー狙いの冒険者なんかがきそうだな、そうなると俺は母さんほど強くないからまだ縄張りを作るのは無理だ。それにだ、俺はとっても面倒なものを見つけてしまった。

「うっわっ、これが噂で聞いたダンジョンかよ」

 なんだかやけに森の中で人間が集まっている場所があった、行ってみると何人かの冒険者が岩でできた入り口に入っていくところだった。ダンジョンとは砂糖の山のようなものだ、お宝という砂糖に冒険者というものが群がっていくところだった。これは俺の縄張りにするには問題が多すぎる、人が多くくるような縄張りは安全じゃないから嫌だ。

「帰ろうっと………………、いや待てよ」
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