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1-08本物の婚約者
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「シャイン、俺のことが怖いか?」
「いいえ、デクス様」
「いくら怖いと言っても、もう逃がしてやれないけれど」
「私はデクス様が怖くありません、どうしてそのようなことを聞かれるのです?」
「あの三人の側室候補だが、本当はずっと部屋の中まで監視をつけていた」
「まぁ、それでは彼女たちの会話は筒抜けでしたのね」
私は王太子の部屋のベッドでデクス様に、いきなりそんな質問をされてそれに答えた。デクス様の用心深さには驚いたが、でもデクス様が怖くはなかった。そもそも王家に嫁ぐということは生活全てを丸裸にされるようなものだった、どこに行っても侍女か護衛の騎士がついてきた。お風呂の中でさえ私は一人ではいられなかった、侍女たちは遠慮することなく私の体を、デクス様のために毎日磨き上げていた。
「ふふっ、本当は私のお風呂も覗いていたりしませんか?」
「それは俺の理性が崩壊するから、必死の思いで我慢している!!」
「それならば構いません、それに結婚したら私と一緒にお風呂に入るのでしょう」
「その通りだ、俺はそれを今から楽しみにしているような男だ」
「女性でも男性でも性欲があるのですもの、仕方がないことです」
「シャインにも性欲があるのか!? じっ、実は隠れて自慰などしているのか!?」
私はデクス様のその質問に顔が真っ赤になった、私は自慰などはしたことは無かった。だが、最近こう逞しくてカッコよくなったデクス様、彼を見ると自分の下半身がうずくような気がしていた。そんな時には私にも性欲というものがあるのだ、そう思っていたところだった。顔が真っ赤になってしまった私に、デクス様は更に深く踏み込んで話しを聞いてこられた。
「なぁ、シャイン。どうか教えてくれ!!」
「お聞きになってどうするのです、そんな恥ずかしいことは申せません」
「そこを何とか少しだけ、どんな時に君は興奮するんだ!?」
「だからお話できません!! ご自由にご想像なさってください!!」
「なぁ、シャイン。少しだけだ、今は他に誰もいないから教えてくれ」
「…………デクス様の上半身の裸を見ると、少しだけ私の下半身がうずくような気がします」
私はそれだけ言うと布団を被ってデクス様から隠れてしまった、だからデクス様がどんな顔をしているのか分からなかった。それっきりデクス様が黙ってしまわれたので、呆れてしまわれたのかと思って私は顔を出した。するとそれを待っていたのだろう、デクス様に思いっきり深いキスを口にされた。今までどんなキスも口にはしたことが無かったのに、舌まで入るような大人の深いキスをデクス様にされてしまった。
「ぷはっ、デクス様!? いきなり、何てことをなさるのです!!」
「いや、シャインの性欲の対象が俺の上半身かと思ったら、嬉しくて堪らなくてキスしてしまった」
「デクス様は!? いえ、お聞きしないことにします」
「ああ、もちろん俺の性欲の対象はシャインに決まっている。君の脱いだ服などに随分世話になっている」
「せっかく聞かなかったのに!! わざわざ教えてくれなくても結構です!!」
「俺はしばらく上半身は裸で過ごそうか?」
私はそういってデクス様が服を脱ごうをするので、それを止めるために慌ててデクス様のシャツに手をかけた。そんな私を待っていたのだろう、デクス様はまた私を腕の中に捕まえて深いキスをした。息も碌にできないような深いキスだった、そうしてデクス様がキスをする度に、私はまた下半身の奥の方がうずくような気がした。
「もう、デクス様ったらまだ私たちは、たった十三歳の子どもです!!」
「でも性欲くらいは自覚のある子どもだな、だったらそれを発散するのも当然だろう」
「私にはいつもの頬や手へのキスで十分です!!」
「本当にそうか、今のキスは気持ちよくなかったのか?」
「…………正直に言うと、少し気持ち良すぎました。だから、もう駄目です!!」
「ははっ、シャイン。それは俺には逆効果だ、もういつものキスじゃ満足できそうにない」
そう言ってデクス様は私にまた深いキスをした、私もそのキスが気持ち良かったから抵抗できなかった。それからは私たちは誰もいない時には深いキスをした、そうやってお互いに気持ち良くなっていた。私は早く十五歳になってデクス様に抱かれたいような、いやでも十五歳になったら抱き潰されそうな気もしていたから悩んだ。
「二年後が楽しみだ、シャイン」
「私は複雑な気持ちです、デクス様」
「どうしてなんだ? 君も俺とのキスが気持ち良かったんだろう?」
「だからなんです!! 自分が自分でなくなりそうで怖いです!!」
「そんなに怖がることは無い、きっと二年後の俺はシャインを優しく抱いてみせる」
「…………そう期待しておきます、たっ、楽しみにしていますからね」
そうして私たちは二年間を一緒に過ごした、私とデクス様はもう十五歳の成人になった。とうとうデクス様と結婚するのかと私は思っていた、周囲でも私たちの結婚式の準備が進んでいた。私はデクス様との結婚がとても待ち遠しくて、同時に少しデクス様との関係が変わることが怖かった。今まで通りに溺愛して貰えるのか不安だった、私が手に入ったからといって、デクス様が私への興味を失われるんじゃないかと怖かった。
「デクス殿下に至急お目通り願いたい!!」
そんな私にある日お父さまが大変な話を持ってきた、お父さまはデクス様にも応接室で同席して貰った。お父さまの顔色は真っ青だった、そうして私の事を気の毒そうな目で見て、でも何も言ってくれなかった。私はこれはただごとではないと思った、一体何が起こったのかと不安になってデクス様に抱き着いた。そうして私とデクス様それにお父さまの三人だけになったら、ようやくお父さまは話し始めた。
「シャイン、お前の本当の婚約者という男が現れた」
「はぁ!? 私にはデクス様以外に婚約者はおりません」
「確かにそうだった、でも私の父上が交わした魔法契約書を持って来た男がいるんだ」
「ええ!? お爺様が私の婚約者を決めていたのですか!?」
「ああ、そうだ。お爺様が若い頃に隣国のラーデン国へ旅をした、その時にラーデン国王に父上の孫に女の子が生まれたら、ラーデン国王の王子と結婚させるという魔法契約書を交わしたようだ」
「ええと、そうなるとどうなりますの? 私はデクス様の婚約者では無くなってしまうのですか!?」
私はいきなりそんな知りもしない婚約者が現れて混乱した、お父さまも同じように混乱していて法律的に魔法契約書を詳しい者に見て貰って、確かに私が婚約者となっていると言われた。デクス様は無表情で私とお父さまの話を聞いていた、もし古い魔法契約書が優先されるのならば、私はラーデン国の王子のところへ嫁ぐことになるのだった。そんな混乱の中でデクス様は冷静だった、お父さまからその魔法契約書のその写しを見せて貰っていた。
「お父さま、私は嫌です!! 私はデクス様の妻になりたいです!!」
「私だってお前の気持ちを優先したい、でもラーデン国との国際問題に発展するかもしれない」
「そんな今になって酷いです!!」
「私も父上がそんな魔法契約書を、交わしているなんて知らなかったんだ!!」
「どうにかできませんか!! 私はデクス様に嫁ぎたいです!!」
「魔法契約書を読む限りではどうにもできん、私と専門家が読んだ限りではそうだった」
私は涙がポロポロと零れるのが分かった、私はデクス様から溺愛されていたが、私だってデクス様のことを溺愛していた。そう溺愛されるのに慣れる度に私は、デクス様のことを溺れるように愛した。口ではデクス様のいきすぎた溺愛に文句を言っても、本当のところは本気で怒ってなどいなかった。私は思いっきり泣きその場に崩れ落ちた、その古い魔法契約書を破り捨ててやりたい気持ちでいっぱいだった。
「大丈夫だ、シャイン」
「デクス様?」
「この魔法契約書には抜け道がある」
「本当ですか!? デクス様!!」
「ああ、この魔法契約書によれば君のお爺様の孫に、『それに該当する清らかな娘と結婚させる』と書いてある」
「その部分がこの魔法契約書の抜け道ですか?」
私にはそれのどこが魔法契約書の抜け道なのか分からなかった、でもお父さまは何度もその部分を読み返してそれが分かったようだった。そうするとお父さまは国王陛下にご相談を、とデクス様に言ってきた。デクス様は部屋を一旦出てから『これから先にシャインに何が遭っても、シャインとデクスを必ず結婚させる』という、お父さまと国王陛下が交わした魔法契約書を持ってきた。
「そういうわけだ、公爵。少々早く事が進むことになったが、俺とシャインはこのまま結婚する」
「分かりました、殿下。この書状を持って来られた方には、うちには条件に該当する娘がいないと返事を致します。それから、ラーデン国から我が国の不穏分子の情報を得られました」
「くれぐれも慎重に言葉を選んで説得してくれ、シャインのことを何と言ってもいいから、絶対にそちらの縁談は断ってくれ。この国の不穏分子については、今日中に俺の父上と相談してくれ」
「かしこまりました、殿下。それではシャインには明日にでも?」
「いや、もう今からすぐにそうしておく。そうしておかないと俺が心配で気が狂いそうだ」
「分かりました、殿下。私はこれで失礼致します、できれば殿下がお優しい心をお持ちであると信じております」
そう言ってお父さまは帰っていった、私は訳が分からなかった。でもいきなり現れた婚約者の方はお父さまが断ってくれるということは分かった、それで私は安心してようやく泣き止んだ。でもこれから大変なのは私の方だった、デクス様は無表情のまま私のことを抱き上げて、応接間を出て後宮の自分の部屋まで私を連れていかれた。そして、私のことをベッドに放り投げた。
「デクス様、婚約者が二重になっていたことを怒ってらっしゃるのですか? でも父も私も何も知らなかったのです!! 決してデクス様を騙そうとしたことなどありません!!」
「それは分かっているよ、シャイン」
「デクス様、良かった!!」
「シャインは俺の妻になりたいと言ってくれたな? 俺に嫁ぎたいと言ってくれたな?」
「はい、そう申し上げました。私はデクス様に嫁ぎたいと思っております!!」
「それなら、今から君を抱かせてくれ」
私はデクス様の言っていることが咄嗟に分からなかった、聞き間違いをしたかと思ってしまった。そうしたらデクス様が私を押し倒して深いキスをしてきた、それもいつものキスよりも深くて激しいキスだった。私は窒息するかと思った、それくらい激しいキスだった。なんとかデクス様が口を放した時に息をすると、またすぐに口をキスで塞がれてしまった、私は必死にどうしてとデクス様に聞いた。
「俺のシャインは可愛いから、すぐに手を出そうとする奴が出てくる」
「そっ、そんな覚えは今回以外ありません!!」
「いや、あったんだ。俺が何度も、何度も、何度もそんな機会を潰してきただけだ」
「ええ!? いつそんなことがありました!?」
「酷くなったのはあのフロンティア学園に行きだした頃からだな、シャインが出歩く機会が増えたから余計な虫も増えたんだ」
「そっ、そんなこと私は知りません!! 私は男性を誘惑したことなどありません!!」
そう言ったらデクス様は深いキスをするだけじゃなくて、私の着ているドレスを脱がしはじめた。このままでは婚前交渉になってしまうと私は慌てた、それでデクス様のキスを拒むようにしたら、デクス様から両手を彼が身につけていたベルトで縛られてしまった。そうしてデクス様は私の素肌に触れはじめた、胸を揉まれたりもっと大事な部分にデクス様は手を伸ばしてきた。私は必死でデクス様を止めようと、声を振り絞ってこう言った。
「デクス様、私たちまだ結婚しておりません!!」
「うん、分かっている。これから俺たちは結婚する、でもその前にシャインを抱いておく」
「ええ!? どうして!? 結婚してからで良かったはずです!!」
「そうも言えなくなったんだよ、あの忌々しい古い魔法契約書のおかげで」
「あの古い魔法契約書のせいですか!? でもあれはお父さまがお断りするって!!」
「その前提としてシャイン、君にこのまま処女でいてもらったら困るんだ、だから俺と愛し合うしかないだろう」
私はデクス様にほとんど裸にされていた、そうしてまた胸を揉まれたり、子どもの頃に怪我をした右足を撫でられたりした。その間もデクス様は深いキスを止めなかった、だから私は息も絶え絶えに訳が分からないことをデクス様に伝えた。そうしたらデクス様はようやく深いキスを止めてくれた、でも私の頭の上で縛っている両手は解いてくれなかった。デクス様はやっと欲しかったものが手に入る、そのようなとろけそうな顔をしていた。
「シャインに『清らかな娘』でいて貰ったら困る、可愛いシャイン俺のことをもっと誘惑してくれ」
「いいえ、デクス様」
「いくら怖いと言っても、もう逃がしてやれないけれど」
「私はデクス様が怖くありません、どうしてそのようなことを聞かれるのです?」
「あの三人の側室候補だが、本当はずっと部屋の中まで監視をつけていた」
「まぁ、それでは彼女たちの会話は筒抜けでしたのね」
私は王太子の部屋のベッドでデクス様に、いきなりそんな質問をされてそれに答えた。デクス様の用心深さには驚いたが、でもデクス様が怖くはなかった。そもそも王家に嫁ぐということは生活全てを丸裸にされるようなものだった、どこに行っても侍女か護衛の騎士がついてきた。お風呂の中でさえ私は一人ではいられなかった、侍女たちは遠慮することなく私の体を、デクス様のために毎日磨き上げていた。
「ふふっ、本当は私のお風呂も覗いていたりしませんか?」
「それは俺の理性が崩壊するから、必死の思いで我慢している!!」
「それならば構いません、それに結婚したら私と一緒にお風呂に入るのでしょう」
「その通りだ、俺はそれを今から楽しみにしているような男だ」
「女性でも男性でも性欲があるのですもの、仕方がないことです」
「シャインにも性欲があるのか!? じっ、実は隠れて自慰などしているのか!?」
私はデクス様のその質問に顔が真っ赤になった、私は自慰などはしたことは無かった。だが、最近こう逞しくてカッコよくなったデクス様、彼を見ると自分の下半身がうずくような気がしていた。そんな時には私にも性欲というものがあるのだ、そう思っていたところだった。顔が真っ赤になってしまった私に、デクス様は更に深く踏み込んで話しを聞いてこられた。
「なぁ、シャイン。どうか教えてくれ!!」
「お聞きになってどうするのです、そんな恥ずかしいことは申せません」
「そこを何とか少しだけ、どんな時に君は興奮するんだ!?」
「だからお話できません!! ご自由にご想像なさってください!!」
「なぁ、シャイン。少しだけだ、今は他に誰もいないから教えてくれ」
「…………デクス様の上半身の裸を見ると、少しだけ私の下半身がうずくような気がします」
私はそれだけ言うと布団を被ってデクス様から隠れてしまった、だからデクス様がどんな顔をしているのか分からなかった。それっきりデクス様が黙ってしまわれたので、呆れてしまわれたのかと思って私は顔を出した。するとそれを待っていたのだろう、デクス様に思いっきり深いキスを口にされた。今までどんなキスも口にはしたことが無かったのに、舌まで入るような大人の深いキスをデクス様にされてしまった。
「ぷはっ、デクス様!? いきなり、何てことをなさるのです!!」
「いや、シャインの性欲の対象が俺の上半身かと思ったら、嬉しくて堪らなくてキスしてしまった」
「デクス様は!? いえ、お聞きしないことにします」
「ああ、もちろん俺の性欲の対象はシャインに決まっている。君の脱いだ服などに随分世話になっている」
「せっかく聞かなかったのに!! わざわざ教えてくれなくても結構です!!」
「俺はしばらく上半身は裸で過ごそうか?」
私はそういってデクス様が服を脱ごうをするので、それを止めるために慌ててデクス様のシャツに手をかけた。そんな私を待っていたのだろう、デクス様はまた私を腕の中に捕まえて深いキスをした。息も碌にできないような深いキスだった、そうしてデクス様がキスをする度に、私はまた下半身の奥の方がうずくような気がした。
「もう、デクス様ったらまだ私たちは、たった十三歳の子どもです!!」
「でも性欲くらいは自覚のある子どもだな、だったらそれを発散するのも当然だろう」
「私にはいつもの頬や手へのキスで十分です!!」
「本当にそうか、今のキスは気持ちよくなかったのか?」
「…………正直に言うと、少し気持ち良すぎました。だから、もう駄目です!!」
「ははっ、シャイン。それは俺には逆効果だ、もういつものキスじゃ満足できそうにない」
そう言ってデクス様は私にまた深いキスをした、私もそのキスが気持ち良かったから抵抗できなかった。それからは私たちは誰もいない時には深いキスをした、そうやってお互いに気持ち良くなっていた。私は早く十五歳になってデクス様に抱かれたいような、いやでも十五歳になったら抱き潰されそうな気もしていたから悩んだ。
「二年後が楽しみだ、シャイン」
「私は複雑な気持ちです、デクス様」
「どうしてなんだ? 君も俺とのキスが気持ち良かったんだろう?」
「だからなんです!! 自分が自分でなくなりそうで怖いです!!」
「そんなに怖がることは無い、きっと二年後の俺はシャインを優しく抱いてみせる」
「…………そう期待しておきます、たっ、楽しみにしていますからね」
そうして私たちは二年間を一緒に過ごした、私とデクス様はもう十五歳の成人になった。とうとうデクス様と結婚するのかと私は思っていた、周囲でも私たちの結婚式の準備が進んでいた。私はデクス様との結婚がとても待ち遠しくて、同時に少しデクス様との関係が変わることが怖かった。今まで通りに溺愛して貰えるのか不安だった、私が手に入ったからといって、デクス様が私への興味を失われるんじゃないかと怖かった。
「デクス殿下に至急お目通り願いたい!!」
そんな私にある日お父さまが大変な話を持ってきた、お父さまはデクス様にも応接室で同席して貰った。お父さまの顔色は真っ青だった、そうして私の事を気の毒そうな目で見て、でも何も言ってくれなかった。私はこれはただごとではないと思った、一体何が起こったのかと不安になってデクス様に抱き着いた。そうして私とデクス様それにお父さまの三人だけになったら、ようやくお父さまは話し始めた。
「シャイン、お前の本当の婚約者という男が現れた」
「はぁ!? 私にはデクス様以外に婚約者はおりません」
「確かにそうだった、でも私の父上が交わした魔法契約書を持って来た男がいるんだ」
「ええ!? お爺様が私の婚約者を決めていたのですか!?」
「ああ、そうだ。お爺様が若い頃に隣国のラーデン国へ旅をした、その時にラーデン国王に父上の孫に女の子が生まれたら、ラーデン国王の王子と結婚させるという魔法契約書を交わしたようだ」
「ええと、そうなるとどうなりますの? 私はデクス様の婚約者では無くなってしまうのですか!?」
私はいきなりそんな知りもしない婚約者が現れて混乱した、お父さまも同じように混乱していて法律的に魔法契約書を詳しい者に見て貰って、確かに私が婚約者となっていると言われた。デクス様は無表情で私とお父さまの話を聞いていた、もし古い魔法契約書が優先されるのならば、私はラーデン国の王子のところへ嫁ぐことになるのだった。そんな混乱の中でデクス様は冷静だった、お父さまからその魔法契約書のその写しを見せて貰っていた。
「お父さま、私は嫌です!! 私はデクス様の妻になりたいです!!」
「私だってお前の気持ちを優先したい、でもラーデン国との国際問題に発展するかもしれない」
「そんな今になって酷いです!!」
「私も父上がそんな魔法契約書を、交わしているなんて知らなかったんだ!!」
「どうにかできませんか!! 私はデクス様に嫁ぎたいです!!」
「魔法契約書を読む限りではどうにもできん、私と専門家が読んだ限りではそうだった」
私は涙がポロポロと零れるのが分かった、私はデクス様から溺愛されていたが、私だってデクス様のことを溺愛していた。そう溺愛されるのに慣れる度に私は、デクス様のことを溺れるように愛した。口ではデクス様のいきすぎた溺愛に文句を言っても、本当のところは本気で怒ってなどいなかった。私は思いっきり泣きその場に崩れ落ちた、その古い魔法契約書を破り捨ててやりたい気持ちでいっぱいだった。
「大丈夫だ、シャイン」
「デクス様?」
「この魔法契約書には抜け道がある」
「本当ですか!? デクス様!!」
「ああ、この魔法契約書によれば君のお爺様の孫に、『それに該当する清らかな娘と結婚させる』と書いてある」
「その部分がこの魔法契約書の抜け道ですか?」
私にはそれのどこが魔法契約書の抜け道なのか分からなかった、でもお父さまは何度もその部分を読み返してそれが分かったようだった。そうするとお父さまは国王陛下にご相談を、とデクス様に言ってきた。デクス様は部屋を一旦出てから『これから先にシャインに何が遭っても、シャインとデクスを必ず結婚させる』という、お父さまと国王陛下が交わした魔法契約書を持ってきた。
「そういうわけだ、公爵。少々早く事が進むことになったが、俺とシャインはこのまま結婚する」
「分かりました、殿下。この書状を持って来られた方には、うちには条件に該当する娘がいないと返事を致します。それから、ラーデン国から我が国の不穏分子の情報を得られました」
「くれぐれも慎重に言葉を選んで説得してくれ、シャインのことを何と言ってもいいから、絶対にそちらの縁談は断ってくれ。この国の不穏分子については、今日中に俺の父上と相談してくれ」
「かしこまりました、殿下。それではシャインには明日にでも?」
「いや、もう今からすぐにそうしておく。そうしておかないと俺が心配で気が狂いそうだ」
「分かりました、殿下。私はこれで失礼致します、できれば殿下がお優しい心をお持ちであると信じております」
そう言ってお父さまは帰っていった、私は訳が分からなかった。でもいきなり現れた婚約者の方はお父さまが断ってくれるということは分かった、それで私は安心してようやく泣き止んだ。でもこれから大変なのは私の方だった、デクス様は無表情のまま私のことを抱き上げて、応接間を出て後宮の自分の部屋まで私を連れていかれた。そして、私のことをベッドに放り投げた。
「デクス様、婚約者が二重になっていたことを怒ってらっしゃるのですか? でも父も私も何も知らなかったのです!! 決してデクス様を騙そうとしたことなどありません!!」
「それは分かっているよ、シャイン」
「デクス様、良かった!!」
「シャインは俺の妻になりたいと言ってくれたな? 俺に嫁ぎたいと言ってくれたな?」
「はい、そう申し上げました。私はデクス様に嫁ぎたいと思っております!!」
「それなら、今から君を抱かせてくれ」
私はデクス様の言っていることが咄嗟に分からなかった、聞き間違いをしたかと思ってしまった。そうしたらデクス様が私を押し倒して深いキスをしてきた、それもいつものキスよりも深くて激しいキスだった。私は窒息するかと思った、それくらい激しいキスだった。なんとかデクス様が口を放した時に息をすると、またすぐに口をキスで塞がれてしまった、私は必死にどうしてとデクス様に聞いた。
「俺のシャインは可愛いから、すぐに手を出そうとする奴が出てくる」
「そっ、そんな覚えは今回以外ありません!!」
「いや、あったんだ。俺が何度も、何度も、何度もそんな機会を潰してきただけだ」
「ええ!? いつそんなことがありました!?」
「酷くなったのはあのフロンティア学園に行きだした頃からだな、シャインが出歩く機会が増えたから余計な虫も増えたんだ」
「そっ、そんなこと私は知りません!! 私は男性を誘惑したことなどありません!!」
そう言ったらデクス様は深いキスをするだけじゃなくて、私の着ているドレスを脱がしはじめた。このままでは婚前交渉になってしまうと私は慌てた、それでデクス様のキスを拒むようにしたら、デクス様から両手を彼が身につけていたベルトで縛られてしまった。そうしてデクス様は私の素肌に触れはじめた、胸を揉まれたりもっと大事な部分にデクス様は手を伸ばしてきた。私は必死でデクス様を止めようと、声を振り絞ってこう言った。
「デクス様、私たちまだ結婚しておりません!!」
「うん、分かっている。これから俺たちは結婚する、でもその前にシャインを抱いておく」
「ええ!? どうして!? 結婚してからで良かったはずです!!」
「そうも言えなくなったんだよ、あの忌々しい古い魔法契約書のおかげで」
「あの古い魔法契約書のせいですか!? でもあれはお父さまがお断りするって!!」
「その前提としてシャイン、君にこのまま処女でいてもらったら困るんだ、だから俺と愛し合うしかないだろう」
私はデクス様にほとんど裸にされていた、そうしてまた胸を揉まれたり、子どもの頃に怪我をした右足を撫でられたりした。その間もデクス様は深いキスを止めなかった、だから私は息も絶え絶えに訳が分からないことをデクス様に伝えた。そうしたらデクス様はようやく深いキスを止めてくれた、でも私の頭の上で縛っている両手は解いてくれなかった。デクス様はやっと欲しかったものが手に入る、そのようなとろけそうな顔をしていた。
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