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巻き戻った世界

魔法鑑定 2

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「しかし、“聖女”なんて名称はアルマリア王国の連中がただ使っているだけだと思っていたが」


フレッド兄さんがそう言うと、フレッド兄さんに呼ばれて来ていた神父さんが苦笑していた。「その称号があるからにはそれなりの理由があるものですよ」と言っていた。
神父さんから逃げて申し訳がないのだけれど聖職者という人間に良いイメージが全くない。女連れ込む人間とか、お金にがめつく溜め込むのが大好きな人間とかはいっぱい見てきたけど良い人って本当に見たことなかったので。
国が変われば常識も変わる…とジェリーが言っていたのでこの国の方は優しいのかもしれませんけど!


「しかし、その子は一体何があってそんなに怯えているのですか?」


怪訝そうな顔の神父さんは「聖女になれば贅沢もある程度許されて、最上の教育も受けさせてもらえるし、そう悪い話でもないと思うのですが」と首を傾げた。


「この子はアルマリア王国出身だ。…悪い噂が飛び交っていたとして不思議ではない」

「では検査の前に出てこれたのだけは幸いでしたね。あの国では昨今、国が有益と思える光魔法使いすら生まれていません。もし彼女が向こうで見つかっていたらそれこそ休みもなく働かされていたでしょう」


その通りでした。
けれど今の私が経験していることではないので口を噤む。確かに飢え死はしなかったし、住む場所もあったけれど安らげる場所はなかった。


「聖女が現れたという報告は必要ですが、できるだけ彼女の意に沿うように調整をしましょう」

「頼む」


それにしても、私以外にも沢山の光属性魔法を持つ人はいた。真面目に鍛錬をやってはいなかったけれど、平民の私を聖女から引きずり落とそうと辞退を迫る声は多かったし、事実それで多くの嫌がらせも受けていた。だから、“聖女という称号を得るためであれば努力をするのでは”、と思う気持ちもある。
…それで努力する人たちならとっくにそういう地位にいたかぁ。あの国では平民の価値なんてなかったし。私と同じくらいか少し魔力が少なく程度であれば、その子がそう呼ばれていたと思う。


「神なんていないと思っていましたが、聖女がいるということは主も存在するのでしょうね」


おい神父、と突っ込みたいところではあるけれど、当の私も同じ気持ちだった。


「おまえ、一応聖職者だろうが」

「話に出たアルマリアなどを見れば信仰心にも揺らぎが出るというものです」


優しそうに、穏やかそうに見える笑顔を浮かべながらも吐き出す言葉には少しの棘が見えた。

神様なんていないという気持ちと、人生のやり直しができている今のことを考えるとやっぱりいるんじゃないかという気持ちとがあるのでコメントがしにくい話題である。


「マーガレットさんもまだ小さい。スキルがランクダウンする可能性もないわけではないのです。上部も丸め込める可能性はあるでしょうし」


安心させるようにそう言う神父サンを見ながらフレッド兄さんは「コイツ、意地でも丸め込むつもりだ……」と小声で呟いた。

神父さんが帰った後、フレッド兄さんは「アイツもスキルのせいで家族に無理やり聖職者にされた人間だから思うところがあるのだろうな」とララ姉さんに言っていた。
それと、なんだか私を見ながら複雑そうな表情もしていた。なんだろう?
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