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守りの聖女と学園生活
学園入学 2
しおりを挟む前も思っていたのだけれど、どうして学園長のお話って長いのかなぁ。
ヴェールを外した私はさぞかし眠そうな顔をしているだろうと苦笑する。
長いお話が終わると、次は生徒会長、その次に今年の最優秀新入生が挨拶した。
生徒会長が第一王子、新入生挨拶が第二王子。偶然にも在籍期間中に王子様が二人いるなんて、と少し遠い目をしてしまう。
えーっと、まぁジェリーも正式な身分は王子様なんだけどね。
それが済んだらクラス別に分かれる。
たくさんお勉強をさせてもらえたので、一番良いクラスに入れた。分からないところはジュリアス義兄様やジェリー、アロイスさん、オリヴィア義姉様が教えてくれた。
前の人生では嫌がらせのせいでまともにお勉強させてもらえなかったので、すごくうれしくって頑張った。
教室に入ろうと扉を開けると、キラキラした青年がたくさんの女の子に囲まれていた。よく見ると第二王子だ。
困ったように眉を下げる彼の右腕には…筆舌し難いのだけれど“きゅるるん”とした可愛い女の子が抱きついていた。
「ユリウス殿下ぁ、エミリィのことだけ見ててぇ」
「いや、私、君みたいな人苦手だし」
バッサリ切り捨てているのに、「もぉ~照れちゃってぇ」と甘ったるい声でしがみつくその根性にしばらく硬直してしまった。
他の女の子も同じような感じで縋り付いているのを、彼自身ドン引きしながら「辞めてほしいといっているのだけれど」と必死に苛立ちを押し込めたような声で告げる。
そして不思議なのは誰も助けない。
おかげで後ろの席が座れない状態になっているし、前の黒板を見るにそこは私の席だった。なので心の底から関わりたくなかったけれど「すみません」と声をかけた。
「そちら、私の席なのです。もうすぐ先生もいらっしゃると思うので離れていただいてもよろしいかしら?」
そう言うと、「は?」という声がきゅるるん女子から漏れた。最後まで猫被ってほしい。ユリウス殿下?が尚且つ引いている。
「何故、わたくしが平民の女に指図されなければならないの?」
その言葉を聞いた殿下は、思いっきり手を叩き落とした。
ジュリアス義兄様に聞いた話では、彼は第二王子とされてはいるが、その実は彼の父はメリッサ義母様の元婚約者であり、その母は平民から男爵令嬢になった女性だという。
ピンクブロンドの髪は母親譲りでも、その深い青の瞳はロイヤルブルーなんて呼ばれる王家の色。だから王家も殺すには惜しい、と彼だけは生かされた。
現王の息子として育てられた彼ではあるけれど、人の口に戸は立てられないもの。いつからか、彼は自分の出自を知ることになった。
だからこそ彼は王位継承権を棄て、己を律するために努力している。
そう義兄は評価していた。
まぁ、だからこそ血筋なのでイケるって思ったこんな地雷臭漂う女の子たちは集まっちゃうのかもしれませんが、彼自身には非はないので可哀想と言いますか。
それにしても多分、これ我慢の限界だったのでしょうね。
「先ほどから私が動くたびに離れろと言っているのに付き纏い、あまつさえ差別発言までするとは……君の家ではろくな教育もできないらしい」
「なっ……!?」
「ついでに教えておいてやるが、彼女は元の生まれは知らぬが、現在はグリズリー辺境伯令嬢だ。おまけに聖女。君よりも格は上だよ」
その言葉に顔を真っ赤にして私を睨む。
その瞬間、教室の前の方の扉が開いて先生が顔を出した。後方を見て嫌そうな顔をしている。
「おい。ホームルームの時間だぞ。後ろのピンク、水色、オレンジ。さっさと元の教室に戻れ」
そもそもこのクラスでもなかったの?
入学1日目から遅刻って。
先生のおかげで彼女たちは去り、席が空いたので座った。
黒板を見ながら、それにしても、このヴェールってば視界がクリアなんだけど一体どんな魔法がかかっているのかしらと改めて思った。
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