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XX Ⅰ

XX Ⅰ-34

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「……怖い?」
 クリスは訊いた。
 司は黙って、首を振る。
「あの時みたいにはしない……」
 蜜で潤った司の葩は、クリスをきつく締め付けながらも、拒むことはせずに、受け入れた。
 司も、息を止めてはいるものの、苦鳴をあげることは、しなかった。
「く……」
 それは、クリスの呻きだった。
「……クリス?」
 司がその呻きを聞いて、首を傾げる。
「もう少し……力を抜いてくれると……嬉しい……」
「え……?」
 当人は、力を入れている積もりもないらしい。当然、力の抜き方も判ってはいないのだろう。
「息を吐いて……」
 クリスは言った。
 司は言われた通りに、息を吐く。が――。
「参ったな……」
 中のきつさは、変わらない。
「――クリス?」
「いや、大丈夫だ……。痛い?」
「……。少し」




「……。少し」
 不思議なほどに、痛みというものは感じなかった。それでも、司はそう言った。何故、初めての時、あれほどの痛みを感じたのかも、判らなかった。もちろん、今日のクリスが、優しく、ゆっくりと入って来たこともあっただろう。司の体は悲鳴を上げることもなく、クリスを中に受け入れていた。
「ゆっくり動かす……。痛ければ我慢しなくていい」
 クリスが言った。
「ん……」
 痛みの呻きでは、なかった。息が詰まりそうになって呼吸を忘れたが、クリスの肩を押し戻そうとは思わなかった。
 クリスの安堵が肌から伝わり、徐々に体を馴らすように、パリから途切れていた初夜を、満たして行った……。




 クリスの寝息が聞こえ始め、さらに二時間ほど経った頃、司はその眠りを妨げないように、静かにベッドを抜け出した。
「痛……っ」
 床に足をついた刹那、微かな痛みが駆け抜けた。クリスを受け入れた時には感じなかった痛みだが、未熟な部分を何度も突き上げられる度に、また別の痛みが走っていた。我慢できない痛みではなかったこともあって、結局、口に出すことは出来なかった。女の体でのセックスは、こういうものだろう、とも思っていた。多分、男がセックスに夢中になる理由も解っては、いなかった。
 どっちにしても、女は絶滅して良かったのだ――そう思ったりもした。煩わしい生理からも解放され、痛い思いをするセックスもしなくて、いい。受け入れるようにしか出来ていない女の体は、男のようには強くもならず、不公平が多過ぎるのだ。女が絶滅したのは、神々がその女の姿を哀れんだ所以のことだったのだろう。
「さて……」
 服を身につけ、司は静かに部屋から抜け出した。

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