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1章 救世のユミル
4話 学園寮
しおりを挟むオストラント学園は全寮制だ。
学生はもちろん、教員や事務員、学園維持のための職人などにも立派な寮が手配されている。
生徒の部屋のグレードは、クラスの順位によって内装や広さなどが違い、学年別に分かれているため、先輩や後輩などと相部屋ということもない。
Dクラスの生徒の部屋は、個室にシャワーとトイレもあり、部屋は結構狭いものの、ベッドとクローゼット、そして小さなテーブルくらいは入るので、特に不便もなかった。ちなみに言うと、Eクラスは、同じクラスの生徒2人ひと組みの相部屋らしい。
ユミルは自分が割り当てられた部屋にさっさと入ると、荷物をベッドの脇に置いてそのまま腰掛けた。
「…ふぅ」
天下のオストラント学園に入学して、はや1日目が終わった。
今日一日、大勢の同年代の少年少女たちに囲まれたことで、再度己が今は14歳の子供であることが身に染みて分かったのだ。
亜空間から鏡を取り出して目の前に浮かせ、今の自分を覗き込む。
どこにでもいる栗色の髪、ありふれた碧眼、可もなく不可もない平凡な容姿。特段前の顔に思い入れがあったわけでもないが、昔の印象的な白髪を思えば、何度見ても今の顔は少々見慣れない。
まあ目立たないのは利点でしかないのだが。
(…そういえば、あのゼクトラって子は大変そうだったなぁ)
鏡を仕舞ってベッドに上半身を倒しながら、昼間のことを思い出す。
何せ、顔を出しただけであの騒ぎだ。
自分ならとても休まらないだろうし、彼が学校に来たがらなくなっても仕方がないと思う。理由は他にあるにしても、面倒なことには変わりないだろう。
しかし、ユミルとて騒いでいる側の一員となっていたのだから申し訳なく思った。
(あれは、何だったのか…)
思い出すのは、こちらを驚いたように見つめるゼクトラの姿だ。
知り合いに似ていたのかとも思ったが、彼が授業に出ないタイプの生徒ならば、学内で会う機会もないだろうし、もう確かめる方法はないのではないか。
(答えだけでも知りたいな)
こちらから話しかけるのは望まれていないかもしれない。あっちから話しかけてこないかな~、などと考えながら、ゴロンと体を傾け、上空に亜空間とは別のワープポータルを開く。
その奥にあるのは、魔導士団時代に開拓した深海ダンジョン内の大規模邸宅で、今は忘れ去られていてもったいないから、物置きやたまの休憩に使っている家だ。
寝転んだまま、その邸宅から魔法で数着の普段着を引っ張ってきて、そのまま寮部屋のクローゼットに入れる。
この部屋は狭いので、わざわざ家具や小物をこちらに移動する必要はないのだが、流石に服などはかかっていないと不自然だろう。
ついでに果物をひと房だけ持ってきてパクパクと口に入れた。
実はこの果物、ネプールといって、精霊の森でしか採取できず、売れば上級貴族の食費1年分くらいにはなるのだが、ユミルは特に気にすることもなく、毎日気軽に食べている。
部屋に入ってすぐ、魔法で衣服や身体の清掃は粗方済ませているため、あとはもう寝るだけなのだが、いかんせん、年甲斐もなくはしゃいでいるのか、眠気が訪れる気配が一向になかった。
(うーん、散策でもしようか)
ユミルは自身に認識阻害魔法をかけ、ベッドから立ち上がって窓を開けた。
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