7 / 16
1章 救世のユミル
6話 記憶 ①
しおりを挟む
『ーーユミル!』
いつもの丘を、目に涙を浮かべたオストロが駆け上がってくる。
『聞いてくれよ、リリアナのやつがまた俺の影口をギルドで喋ってたんだ!』
丘の頂上に着くなり崩れ落ちたオストロに、ユミルは呆れたように横にしゃがみ込む。
『そんなに落ち込むなら、もう少しリリアナにも優しくしてやったらいいのに。街の女の子たちにはあんなにキラキラした笑顔でさっむいセリフ囁いてるけど、リリアナ限定で否定から入るところをまず直したら?』
『え、待ってそんな寒いのか!?』
温厚なユミルの言いように驚愕したオストロが、ガバッと顔を上げて真っ青になる。
『さあ、リリアナは路上の虫を見るような目を向けてた気がするけど、ウケは良くないんじゃない?』
『そんなぁ』
幼い頃から全く変わらない彼らの関係性が微笑ましくて、思わず笑ってしまう顔を隠しながら、オストロの分の酒をグラスに注ぐ。
『まあ飲みなよ。…リリアナも嫌いな奴と長く一緒にいるような性格じゃないだろ?思い切って気持ちを伝えてみないと状況は変わらないし、ゆっくりしてると他の人に取られるかもね』
『ほッ、他のやつって、例えば!?』
動揺する様子が面白くて、悪戯心が湧いたユミルが目を細めて街の方を見る。
『そりゃあ、リリアナは人気が高いから。ギルドでも競い合って話しかけに行く連中は多いし、リリアナ行きつけのカフェの店員とか、花屋の手伝い、雑技団の若連中に、それから宿屋のカールも、この前は微笑みかけられて頬を染めてたよ。ま、可能性はどこにでも転がってるさ』
『そんなにモテてるのか?』
普段リリアナと言い争ってるオストロは、破天荒で攻撃的なリリアナの性格を多く見ているため、女性としての人気が高い様子は想像していなかったのだろう。
『俺だって、天真爛漫で笑顔が可愛いリリアナは魅力的に思うよ』
『ユミルッ!?』
『あはは、冗談だって』
本気で焦ったようで、青い顔に涙を浮かべたオストロがゆるゆるとうなだれる。
『そういえば、この前ルキウスがさぁ、寝落ちしたリリアナを横抱きで部屋まで運んで、そぉぉっと毛布をかけてやってたんだ。…あれって好きってことなのか??なあ!?』
ユミルが見る限り、ルキウスがリリアナに抱く好意は少なからずそちらに近いと感じているが、オストロがこんな感じなのはリリアナ以外は知っているし、ルキウスもオストロを応援しつつ、どうやらそういうのには疎いようで、自分の件には無自覚であるらしい。ルキウスの気持ちがしっかりと育つ可能性も低くはないだろうが、それを今ここで言って聞かせるほど無粋ではない。
『ルカの真面目な気質はよく知ってるだろ。俺だってその場面に遭遇したら同じことをやったよ』
『…確かにそうか』
ルキウスは元貴族の出だからか、面倒見がよく真面目で、魔導士団のオカン的な存在だ。オカンと言ったら凄く怒られるが。
仲間内にあまり不和が起こるのは嫌だが、みんなに幸せになってほしいし、人生経験は多いに越したことはない。誰がいつ死ぬかわからない仕事をしていることもあって、今その時を全力で生きることが我々の掟だ。
『取りあえず、リリアナと喧嘩せずに一日を終わらせることが当面の課題かな』
『うぐっ』
『はやく状況を変えたいんなら、プレゼントでも用意してみたら?』
『それは…、花とかか?』
頬を染めて斜め下を向いたオストロに、ユミルは目を見開いて満面の笑みを浮かべた。
『あはは、オストロって存外、ロマンチックなとこあるよね!うんうん、気持ちが籠もってて凄く良いと思うなぁ』
『はぁ!?プレゼントって普通花束なんじゃないのか!?他に何かあるのか?』
『ふふ、いや、花束以外にないよ。これ以上ないね、フフッ、うん。素敵だなあ』
『あ!?おい、笑うなッ、だ、誰にも言うなよッ??』
笑い転げるユミルと、焦るオストロの背後から、また聞き慣れた声が降ってくる。
『…何を誰にも言うなって言ってたの?』
丘に上がってきたのは、同じく魔導士団所属のニーアとシモンだった。
『何でもない!』
『あ、ねぇ二人とも聞いてよ、オストロったらさぁ…』
『ッダァァァァァァァァ!!!くっそぉ』
丘中を転げ回る勢いで悶え出したオストロがあまりにも面白いのだが、揶揄いすぎたか、と笑いすぎで滲んだ涙を拭って手招く。
『ほら、せっかく二人も来たし、四人で飲もう』
そんなに早く切り替えられるか、と恨みがましい目でこちらにブスくれているオストロを見て、ニーアが肩をすくめてユミルを嗜める。
『一応は団長なんだから、明日の仕事に支障が出ないよう、ほどほどにしなよね』
『うん。ついやりすぎたかな、気を付けるよ』
いつもの丘を、目に涙を浮かべたオストロが駆け上がってくる。
『聞いてくれよ、リリアナのやつがまた俺の影口をギルドで喋ってたんだ!』
丘の頂上に着くなり崩れ落ちたオストロに、ユミルは呆れたように横にしゃがみ込む。
『そんなに落ち込むなら、もう少しリリアナにも優しくしてやったらいいのに。街の女の子たちにはあんなにキラキラした笑顔でさっむいセリフ囁いてるけど、リリアナ限定で否定から入るところをまず直したら?』
『え、待ってそんな寒いのか!?』
温厚なユミルの言いように驚愕したオストロが、ガバッと顔を上げて真っ青になる。
『さあ、リリアナは路上の虫を見るような目を向けてた気がするけど、ウケは良くないんじゃない?』
『そんなぁ』
幼い頃から全く変わらない彼らの関係性が微笑ましくて、思わず笑ってしまう顔を隠しながら、オストロの分の酒をグラスに注ぐ。
『まあ飲みなよ。…リリアナも嫌いな奴と長く一緒にいるような性格じゃないだろ?思い切って気持ちを伝えてみないと状況は変わらないし、ゆっくりしてると他の人に取られるかもね』
『ほッ、他のやつって、例えば!?』
動揺する様子が面白くて、悪戯心が湧いたユミルが目を細めて街の方を見る。
『そりゃあ、リリアナは人気が高いから。ギルドでも競い合って話しかけに行く連中は多いし、リリアナ行きつけのカフェの店員とか、花屋の手伝い、雑技団の若連中に、それから宿屋のカールも、この前は微笑みかけられて頬を染めてたよ。ま、可能性はどこにでも転がってるさ』
『そんなにモテてるのか?』
普段リリアナと言い争ってるオストロは、破天荒で攻撃的なリリアナの性格を多く見ているため、女性としての人気が高い様子は想像していなかったのだろう。
『俺だって、天真爛漫で笑顔が可愛いリリアナは魅力的に思うよ』
『ユミルッ!?』
『あはは、冗談だって』
本気で焦ったようで、青い顔に涙を浮かべたオストロがゆるゆるとうなだれる。
『そういえば、この前ルキウスがさぁ、寝落ちしたリリアナを横抱きで部屋まで運んで、そぉぉっと毛布をかけてやってたんだ。…あれって好きってことなのか??なあ!?』
ユミルが見る限り、ルキウスがリリアナに抱く好意は少なからずそちらに近いと感じているが、オストロがこんな感じなのはリリアナ以外は知っているし、ルキウスもオストロを応援しつつ、どうやらそういうのには疎いようで、自分の件には無自覚であるらしい。ルキウスの気持ちがしっかりと育つ可能性も低くはないだろうが、それを今ここで言って聞かせるほど無粋ではない。
『ルカの真面目な気質はよく知ってるだろ。俺だってその場面に遭遇したら同じことをやったよ』
『…確かにそうか』
ルキウスは元貴族の出だからか、面倒見がよく真面目で、魔導士団のオカン的な存在だ。オカンと言ったら凄く怒られるが。
仲間内にあまり不和が起こるのは嫌だが、みんなに幸せになってほしいし、人生経験は多いに越したことはない。誰がいつ死ぬかわからない仕事をしていることもあって、今その時を全力で生きることが我々の掟だ。
『取りあえず、リリアナと喧嘩せずに一日を終わらせることが当面の課題かな』
『うぐっ』
『はやく状況を変えたいんなら、プレゼントでも用意してみたら?』
『それは…、花とかか?』
頬を染めて斜め下を向いたオストロに、ユミルは目を見開いて満面の笑みを浮かべた。
『あはは、オストロって存外、ロマンチックなとこあるよね!うんうん、気持ちが籠もってて凄く良いと思うなぁ』
『はぁ!?プレゼントって普通花束なんじゃないのか!?他に何かあるのか?』
『ふふ、いや、花束以外にないよ。これ以上ないね、フフッ、うん。素敵だなあ』
『あ!?おい、笑うなッ、だ、誰にも言うなよッ??』
笑い転げるユミルと、焦るオストロの背後から、また聞き慣れた声が降ってくる。
『…何を誰にも言うなって言ってたの?』
丘に上がってきたのは、同じく魔導士団所属のニーアとシモンだった。
『何でもない!』
『あ、ねぇ二人とも聞いてよ、オストロったらさぁ…』
『ッダァァァァァァァァ!!!くっそぉ』
丘中を転げ回る勢いで悶え出したオストロがあまりにも面白いのだが、揶揄いすぎたか、と笑いすぎで滲んだ涙を拭って手招く。
『ほら、せっかく二人も来たし、四人で飲もう』
そんなに早く切り替えられるか、と恨みがましい目でこちらにブスくれているオストロを見て、ニーアが肩をすくめてユミルを嗜める。
『一応は団長なんだから、明日の仕事に支障が出ないよう、ほどほどにしなよね』
『うん。ついやりすぎたかな、気を付けるよ』
10
あなたにおすすめの小説
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ
椿谷あずる
BL
平凡な高校生だった俺は、ある日事故で命を落としギャルゲーの世界に主人公としてに転生した――はずだった。薔薇色のハーレムライフを望んだ俺の前に、なぜか一緒に事故に巻き込まれた悪友・野里レンまで転生してきて!?「お前だけハーレムなんて、絶対ズルいだろ?」っておい、俺のハーレム計画はどうなるんだ?ヒロインじゃなく、男とばかりフラグが立ってしまうギャルゲー世界。俺のハーレム計画、開幕十分で即終了のお知らせ……!
前世モブ推しの俺は黒幕幼馴染との両思いifストーリーを現実にします
むすめっすめ
BL
俺は目覚めたら、昔ハマっていたラブコメ漫画【しあわせの欠片⠀】の世界に転生していた。
しかも自分が憑依したキャラクターは序盤で主人公に嫉妬した幼馴染(黒幕)に主人公をいじめるように仕向けられ、いいように使われた結果ヒーローに制裁をくらわせられ退場するモブ役だった。
前世はモブの斉藤友推しだった俺は彼に幸せになってもらうために斉藤友が密かに一途に思いを寄せている幼馴染、悪役の末沼葵と付き合うことを決断する。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる