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第4章 魔の血脈
しおりを挟む――場所は魔界。灰と紅の空が広がる、冷えた王城の一角。
長女・エリスが玉座のような椅子に腰を掛け、アルマを睨みつけるように言う。
「何をしていた、アルマ。命令は聞こえなかったか?」
「……兄たちの始末など、俺の役目ではない」
「逃げた連中に情けをかけるとは思わなかったわ。あなたも“あちら側”に堕ちたの?」
エリスの声には嘲りが混ざっている。
「あなたには血が流れていないの? それとも、情けに弱い可愛い人間にでも出会った?」
アルマは答えない。けれど内心には宗一の顔が浮かんでいた。
――コーヒーを飲みながら笑った顔。
――ボロ雑巾を洗う姿。
――「大丈夫、何もしねぇよ」と言った声。
自分の中に残っている、その優しさを口にすることすらできなかった。
⸻
同時刻:人間界──宗一の視点
それから数日、カラスは戻ってこなかった。
診察室の窓辺には、空になったケージと餌皿だけが残っていた。
宗一はそれを見て、ただ一言だけつぶやいた。
「……行っちまったか」
悲しんでいるわけじゃない。
でも、喉の奥に何か引っかかるような感覚があった。
やたら静かな夜が、やけに耳に触った。
カラスは喋らなかった。だけど宗一にとっては、不思議と“誰か”だった。
「……また、どっかで会うかもな」
言ってから、自分でもおかしくなった。
けれどその言葉だけは、なぜか信じたかった。
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