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第5章 迷いの刃
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魔界・夜の回廊
石の廊下に、血のような影が差す。
アルマは、赤黒い魔力の奔流を避けながら、息を詰めていた。
目の前に立つのは、かつて心を許した兄――第四子、レグナ。
剣を握りしめ、金色の瞳でアルマを睨む。
「情けをかけるつもりか、アルマ。昔の顔を思い出して手が止まったか?」
「……そうだ。俺は、お前を斬れない」
「ならば死ね」
レグナの剣が一閃した。
迷いのあるアルマには、避けきれなかった。
肩を裂く音。黒い羽が宙に散る。
倒れた石畳の上で、アルマはレグナの目を見上げた。
その奥にある痛みを、兄弟である自分は知っている。
「……お前も、逃げてるだけだ。エリスに従うふりをして……」
その言葉が届いたのかどうかは、わからない。
次に目を開けたとき、アルマは冷たい小部屋に独り転がっていた。
⸻
一方、人間界──宗一の動物病院
午後の光が、診察室の窓を淡く照らしている。
そこにかつてあった黒い影は、もういない。
「兄貴、ここ……マジで鳥飼ってたの?」
律の声が部屋に響いた。
宗一は答えず、ケージを片づける手を止めなかった。
「へぇ……そういや、あんたって最近変だったよね。妙に優しくなったっていうか、間が抜けてた」
「……元から抜けてんだよ、俺は」
宗一はそう言って笑ったが、律はじっと兄の横顔を見ていた。
「……その鳥さ、もう戻ってこないの?」
「さぁな。行くとこあったみたいだし」
「そっか」
律はぽつりと呟いて、窓の外を見た。
兄が何かを失ったのだと、なんとなくわかった。でもそれが何かは、まだ名前がつかない。
そして宗一もまた、その“何か”に名前をつけようとしなかった。
石の廊下に、血のような影が差す。
アルマは、赤黒い魔力の奔流を避けながら、息を詰めていた。
目の前に立つのは、かつて心を許した兄――第四子、レグナ。
剣を握りしめ、金色の瞳でアルマを睨む。
「情けをかけるつもりか、アルマ。昔の顔を思い出して手が止まったか?」
「……そうだ。俺は、お前を斬れない」
「ならば死ね」
レグナの剣が一閃した。
迷いのあるアルマには、避けきれなかった。
肩を裂く音。黒い羽が宙に散る。
倒れた石畳の上で、アルマはレグナの目を見上げた。
その奥にある痛みを、兄弟である自分は知っている。
「……お前も、逃げてるだけだ。エリスに従うふりをして……」
その言葉が届いたのかどうかは、わからない。
次に目を開けたとき、アルマは冷たい小部屋に独り転がっていた。
⸻
一方、人間界──宗一の動物病院
午後の光が、診察室の窓を淡く照らしている。
そこにかつてあった黒い影は、もういない。
「兄貴、ここ……マジで鳥飼ってたの?」
律の声が部屋に響いた。
宗一は答えず、ケージを片づける手を止めなかった。
「へぇ……そういや、あんたって最近変だったよね。妙に優しくなったっていうか、間が抜けてた」
「……元から抜けてんだよ、俺は」
宗一はそう言って笑ったが、律はじっと兄の横顔を見ていた。
「……その鳥さ、もう戻ってこないの?」
「さぁな。行くとこあったみたいだし」
「そっか」
律はぽつりと呟いて、窓の外を見た。
兄が何かを失ったのだと、なんとなくわかった。でもそれが何かは、まだ名前がつかない。
そして宗一もまた、その“何か”に名前をつけようとしなかった。
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