黒羽の約束

猫目オテテ

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第7章 ひとつ屋根の下で

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宗一の家──朝の静けさ

 目を覚ましたアルマは、ベッドの上で身動きせずにいた。

 窓の外では鳥が鳴き、静かな光が差し込む。
 それは、魔界には存在しない“あたたかい朝”だった。

 やがてドアがノックされる。

「……起きてるか? 朝飯、軽めに作った」

 宗一の声。
 以前と変わらぬ、ゆるくて掴みどころのない声。

 アルマは短く「……ああ」と返した。



ダイニング

 テーブルにはトーストと卵、味噌汁という不思議な取り合わせが並ぶ。

「なんか食えそうなもん、適当に寄せ集めた」

 宗一がそう言ってカップを差し出すと、アルマは少しだけ手を震わせて受け取った。
 人間の身体にまだ馴染めていない。

「……ここの食べ物は味が濃いな」

「そっか? うちのはむしろ薄味のほうだと思うけどな」

 律が階段から降りてきて、アルマをじっと見つめる。

「アルマさん!おはよ!やっと名前が聞けて良かったよ」

律は食卓につきそう言った。

「全然喋んないから兄貴、昨夜ずっと名前どうするか考えてたからな」

 宗一が苦笑する。
 アルマは少し目を伏せた。




午後の診察室

 宗一は猫を診ながら、「助手いねーかなぁ」と呟いた。

「……立てるか? 無理すんなよ」

 アルマは弱々しく頷きながらも、椅子に座ってカルテの整理を手伝い始める。
 宗一はちら、と横目で見た。

「無理してんな。……でも、ありがとな」

 その一言に、アルマの手が止まる。
 魔界では聞くことのなかった“ありがとう”。

 その言葉が、体の奥に静かに染み込んでいった。



夜・屋上

 夕飯のあと、アルマは一人屋上に出た。

 人間の身体では、翼も飛翔もない。
 けれど風のにおいは、変わらず空を思い出させた。

「……帰りたいか?」

 不意に背後から声がした。宗一だった。

「いや……まだ、ここにいたい」

 それは本音だった。

 宗一はそれ以上、何も聞かなかった。
 ただ隣に立ち、共に空を見上げていた。
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